願いという名の呪い   作:炙られた足

4 / 13
ここにまのむらとはのうらを間違えたバカがいるらしいな!!!自分です!!!炙られてきます!!!


閉じ込められた魔女

誰かに期待される事は、悪い気分ではない。寧ろ、気分が良くなる。

反面、面倒でもあると誰かが言った。期待などするだけ、されるだけ無駄であると。

期待されて生きてきた自覚はある。誰かにそうされているだけで、自分には居場所があると思えた。

それで?キミはやっぱりしくじったじゃん。上手く出来ない事もある。

可哀想に。哀れで仕方ないよ。他人にそれを決められたくはない。

どうでも良かったんじゃないの?そんな事はない。

ああ。何かが…照りつけて来る。眩いそれが、私に迫る。

もう、全てが─────────

 

 

目が覚めた。景色は寝る前と変わらない、薄暗い牢獄だ。

眩いものは何も無い。少し、少しだけ安心が来る。

 

「あれ、もう起きたんですか?まだ眠ってても大丈夫ですよ」

 

上からシェリーの声がした。どうやら、これは現実のようだ。

 

「いえ、過度な睡眠は体に悪影響を及ぼしますし、夜に眠れなくなりますので。これで十分です」

 

のっそりとベッドから起き上がる。少し手狭に感じる牢の中は、変わらず息苦しい。

私は体をほぐし始めた。丸まって寝ていたからか、体のあちこちが音を立てる。

シェリーはベッドに腰掛けて、足をぶらぶらさせている。些か手持ち無沙汰らしい。

時間的には、そろそろ夕飯の時間だろうか。

 

「そういえば、助手さんはここに来るまで何をしてたんですか?」

「……何をしていた、とは?」

「いいえー!ちょっと知りたくなっちゃって!」

 

そんな事をしていると、突然シェリーから質問が飛んで来た。

……実際、私の方が知りたい。私は何者だったのだろうか。

ここでわざわざ偽る必要はない。真実を話そう。

 

「実は……ここに来るまでの記憶が無く。申し訳ないですが、質問にはお答え出来ません」

「そうですか…ちょっとだけ残念です」

「同感です。自分が何なのか分からないというのは、怖いと感じます」

「あれ、意外と助手さんって怖さとか感じるんですね」

「私とて、マシーンではありませんので。ただ、それを表に出す必要がないというだけなので…

試しに、全力で怖がって見せましょうか?」

 

そんな会話をしていると、スマホからフクロウの鳴き声の様なアラームが聞こえて来た。

どうやら夕飯の時間らしい。牢のオートロックが外れる音がした。

 

「一先ず出ましょうか、余計な事をして何かされても面倒です」

「じゃあ、食堂に向かいましょう!」

 

 

途中でハンナとメルルと合流して、食堂を訪れた。他の少女達も来ているのが確認できる。

エマとアリサ、ノアの姿が確認出来ないのが少し気がかりだが……今は食事を優先しよう。

さて、食事は見る限りビュッフェ形式を取っているようだが……

カウンターの中の料理はとても美味しそうには見えない。というか何だこれは。

人間が食べるものとは思えない何かが詰め込まれている。

とはいえ食事は摂らなければならないから、私は胃が受け付けそうな分と食器、

この中ではまともそうな林檎を取って席に着いた。

 

「……探偵さん、これは人間が食べて良いものなのでしょうか?」

「うーん、まぁ当たって砕けろとは良く言いますし!とりあえず食べてみましょう!」

 

シェリーは勢いよく食事を口にした。顔色に変化は見られない。

(……もしや、意外と美味しいのか?)

私も料理を口へと運ぶ。叫ぶ様な不味さでは無かったが、不快な感覚がした。

あえて言語化するなら、口の中で葬式か通夜でも行われている様な気分だろうか。

少なくとも、食べられないという程ではない。

そのまま二口目を口にする。

 

「…あなたたち、こんなもん良く食べられますわね…」

「少なくとも、土くれを食べるよりかはマシかと」

「そんなもんと比べられても困りますわ」

 

一緒に来たハンナに困惑されてしまった。これを好き好んで食べる人なんてそうは……

シェリーは意外とイケるとは言っていたか……こっちは舌がおかしくなりそうだ。

そのままもしゃもしゃと食事をしていると、エマが食堂に入って来た。

 

「あっ、来ましたねエマさん!貴女の分も取ってあるので一緒に食べましょう!」

「あ、ありがとう……」

 

エマは料理を見て困惑している。これしか食事がないので、どうにも出来ない。

せめて吐かないように、と心の中で少し祈った。

 

「見た目はアレですけど、意外と美味しいですよー!」

「探偵さん、流石にこれを美味しいと形容するのは如何なものかと」

「ヘルマンさんの言う通りですわ。とてもとても美味しいとは思えませんわよ。

あなた、味覚がイカれてるんじゃなくて?」

 

そもそも何処かヘンな人ではあるから、そこに突っ込んでもどうしようもないのではないか。

益体のないことを考えていると、エマが口を開いた。

 

「……これ、看守が作ってるのかな」

「恐らく。看守以外が作るとなれば、それこそゴクチョー位しか作れる者はいないでしょう。

ここに私達以外の第三者がいるとは考えにくいですから」

「アレが料理をしている様は想像できませんわね……」

 

看守とゴクチョーが鍋をかき回したり、フライパンを振る様子を想像してみるが、

いかんせんシュールな様子になる。

しかし、意外と愛嬌は……ないな。人を一刀両断出来る化け物にそんなものは湧くものか。

 

「そういえば、さっきアリサちゃんが看守に連れられているのを見ちゃって……大丈夫かな」

「わ、私も見ました…うぅ、とても心配です……」

「もしかしたら、禁止時間に外にいて看守に見つかったのかもしれませんわね」

「となると、恐らく行き先は懲罰房でしょう」

 

恐らく碌なことはされないだろう。管理する側としては、規則違反者を放置する理由がない。

その場の空気が俄かに暗くなる。何をされているのか想像したのだろうか。

気まずくなったのか、エマの視線がレイアの方に向けられる。

それに勘づいたハンナが口を開いた。

 

「あの女……気に食いませんわ…芸能人だとか何とかで囲いを作って…

ぜってー魔法使ってますわよ!女の子を誘惑するタイプの!!」

「ま、魔法…?」

 

余程レイアの事が気に食わないのか、ハンナは苛立ったまま食事を口にする。

気取った態度が気に障るのは、仕方ない事ではある。

 

「そういえば、メルルさんの魔法も凄かったですよね!

いや、魔法が存在するってだけでもうびっくりなんですけど!」

「そ、そんな……私は大した事は出来ません……エマさんの血を止めただけですし……」

「謙遜する事はありません。無条件で人を助けられるのは貴女の美徳と言えます」

 

メルルは恐縮しながらそう言った。そのまま顔を赤くして、俯いてしまった。可愛げのある事だ。

そういえばと、エマが気付いた様に喋った。

 

「み、みんなは当たり前の様に魔法って言うけど、ここにいる皆も魔法を使えるの?」

「私もエマさんと同じですね。魔法なんて知りませんでしたし、使えません。

「やっぱり貴女達、何もご存じないのね……魔女因子を持つ子は、不思議な力を持ってるんですの。

それが【魔法】。あなたたちも気づいていないだけで、持っているはずですわ」

「ええ〜?不思議な力なんて持ってないですよ私。特技っていうなら……」

 

シェリーはテーブルの上の林檎を持ち上げ……そのまま軽く握り潰した。

果汁が飛び散り、テーブルと床を汚す。それは正に粉砕としか形容できない。

そして軽く、まるで力など入っていない。これはどう見ても魔法ではないだろうか。

エマもハンナも唖然としている。

 

「と、こんな感じでちょっと力が強いだけです!」

「何処がちょっとなんですの!?あなたはゴリラかなにかでして!?」

「ひどいですねー!第一、リンゴなんて誰でも潰せますよ?」

「確かにリンゴを潰せる人もいるでしょうが、貴女は全く力を入れていませんよ。

普通ならば、全力で潰してもそのように粉々にはなりません。これは恐らく魔法によるものです」

 

そう言われてシェリーは、何処か他人事の様に目を丸くしてにへらと笑った。

 

「そっかあ……私も魔法が使えたなんて。いやぁ、ちょっと照れますね〜」

「どうして今まで気付かなかったのが謎ですわ……」

「あ、ハンナさんはどんな魔法を使えるんですか?」

 

 

シェリーが疑問を呈すると、ハンナは得意げになって立ち上がる。

表情も柔らかく、上機嫌そうだ。

 

「仕方ないですわね。どうしても見たいなら見せて上げますわよ?よ?」

 

ハンナは移動して、両手をバッと広げる。そして……

少しだけ床から浮いた。おおよそ10cm程だろうか。

 

「おおおおおー!すごいすごいすごーい!!」

「驚かないでご覧あそばせ、このまま移動もっ、出来ますのよっ!」

 

そのままふよふよと移動する。そして、そのまま着地する。

そしてハンナは肩で息をして喘ぎながら席に戻ってきた。余程力を使ったらしい。

 

「と、こんな感じに私たちは魔法を使えますの。魔女の見習い、と言ったところですわね。

……この力を使えると気づいてから、わたくしは色々調べてきましたの。

魔法を使える少女は、15歳の時に牢屋敷送りになると。都市伝説の類だと思っておりましたが、

まさか本当だなんて」

「確かに、私も友達から聞いた事があった様な…

あっ、そういえば!助手さんはどんな魔法が使えるんですか!?」

 

私に矛先が向いた。魔法。そんなものは空想上の存在だと記憶していたが……

そんな事は重要ではない。私はそんなものは使えない。どう答えたものか…

そう考えた途端、足元が崩れ落ちた。何処かへと落ちていく感覚が私を包み込む。

 

 

 

 

 

 

僅か数秒が、引き延ばされていく。

どこまでも深い水底。水面すら見えない程深い場所に私はいる。

しかし、息苦しさは感じない。寧ろ温かさすら感じる。

[キミの望むものはなんだ?]

沈む意識の中、誰かの声が聞こえる。

私の望み。そんな物はあっただろうか。

[いいや、必ずあるさ。人間は皆それを持つから]

心の奥底、聞こえる声に耳を傾ける。

私は、その声に本音を答えた。

「なら……消えてしまいたいです。誰にも見向きされずにいたいです」

[それが、望みなら。キミに力をあげよう]

聞こえる声は全て遠ざかり、やがて私のみが残る。

[契約は既に済んでいる。寧ろ、キミは遅すぎる位だ]

 

 

 

 

 

 

意識が再び現実へと戻る。……何があった?何も思い出せない。

しかし、体に染み付いた何かが私の中を巡る。

そうだ、私にも魔法があった筈だ。確か────

 

「あれ、助手さん?どうかしましたかー?」

「……失礼、少し眩暈が。多分、私の魔法はこれでしょう」

 

私は息を止めて、集中する。すると、私の体は服を残して消えた。

息を再び吸い始めると、私の体が出現する。

誰かが、驚きの声をあげた。

 

「差し詰め、透明化と言った所でしょうか。服が残るので完全にとはいきませんが」

「おおー!透明人間!SFチックですね!!」

「ゴリラ探偵に透明人間の助手……あなたたち、B級映画の主人公でして?」

「そ、その魔法だとどっちかというと犯人じゃないかな……?」

「殺人が出来るほど私のメンタルは強くありません。全員から刺されたくもないですしね」

「それが言えるならまだ元気そうですわね……はぁ」

 

ハンナが憂鬱そうに嘆息をついた。彼女はここに来てから妙に神経質になっている。

少なくとも、落ち着ききってはいない様だ。

 

「わたくし、牢屋敷の話を聞いてからはずっとこの力を隠してきましたのに…

こんな所に閉じ込められるなんて、どうなってしまうんですの……」

 

そんな言葉と共に、今日の夕食はお開きとなった。

この先どうなるか、そんな不安はみんなの中に渦巻いているのは間違いなさそうだ。

状況はまるで、この流れ行く冷水の様だとシャワーを浴びながら私は考えていた。

止まる事はなく。故に終わりはない。

そして、仮初の平和が砕かれる事になるのもまた私は知らなかったのだ。




どうも、炙り作者です。毎度毎度申し訳ありませんが、誤字脱字などを見つけましたらご手数ですがご報告ください。
また少し忙しくなるので、少し投稿ペースが下がるかもしれません。お許しください!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。