願いという名の呪い   作:炙られた足

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本筋とは全く関係ありませんが、ヘルマンの簡単なプロフィールです。

性別:女性
年齢:15歳
身長:168cm
体重:51.3kg
誕生日:7月5日

容姿:紺色の髪に、黒色の瞳をしている。髪型はベリーショート。
フレームメガネをつけている。が、度は入っていない。

服装:グレーのシャツに黒いズボン。上着はベージュ色。

好きなこと:考えている時間

嫌いなこと:押し付けられる事

禁忌:【◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎】
(記憶を無くした弊害により忘れているようだ)


魔法:【透明化】
集中すると自身の姿が消える。
但し、服や身につけているものは残る。


引いた一線はやがて地の底へと

次の日の自由時間、私はエマとシェリーと共に牢屋敷の外の探索へと出た。

空は晴れている。まばらに浮く雲が日差しを遮って、少し暗かった。

 

「こう見ると随分と堅牢そうですねぇ」

「でも、外に出られるなら脱出口はあるはずだよ」

(建物に見覚えはない。が……この違和感はなんだ?)

 

牢屋敷は高台に位置し、景色が一望できた。花畑や森が確認できる。

自然音の中に、鳥のさえずりも聞こえた。小動物なども住んでいるようだ。

行こう、というエマの掛け声と共に歩き出す。

石畳に沿って歩いていると、ログハウスのような建物が3棟見えた。

 

「ちょっと調べてみましょうか」

 

シェリーの言葉に従って、ログハウスの中を見る事にした。

中は普通の部屋だ。少なくとも、いつも寝ている房よりは随分に良く見える。

 

「ここは……マップだと【火精の間】かな?他の棟にも名前が振られているみたい」

「他は【水精】と【地精】の間があるのが確認できます……木彫りのゴクチョー?」

「むむむ、ここは恐らくゲストハウスの類ですかね!多分、国の偉い人がここを見に来る時に使うんですよ!

牢屋敷に泊まるのは危なそうですしー!」

「なるほど……」

 

私は木彫りのゴクチョーを調べながら話を聞いていた。

これを枕元に置いたら、眠れなくなりそうだ。

……なんでこんな物があるのかについては考えるのを止めておこう。

 

「わぁ、今日は私の推理が冴えてます〜!何としても証拠を見つけたいですね!」

「ふむ。しかし家具や調度品はごく普通の物ですし、不審な点は見つかりません。

他の場所を探索した方がよろしいかと」

「あ、あの、シェリーちゃん。他の所を見回りに行こうよ」

「むー、そこまで言うなら仕方ありませんね」

 

しぶしぶ、といった様子のシェリーを連れ、私達は歩を進めた。

暫く進むと、大きい塀が見えた。これがアリサの言っていたものか。

 

「この塀を越えれば、外と連絡が取れそうじゃない?」

「材質はコンクリートの様です。この場所が境界であるのは間違いないと思われます」

「どうします?一旦ぶっ壊しましょうか?」

「紫藤アリサは駄目だったと言っていましたし、やめておいた方が良いかと」

「じゃあ、ボクが登ってみるよ!ちょっと足場もあるし」

 

エマは壁に手をかけて登ろうと試みたが、彼女の身長程の高さまで登ったところで指の力が尽きたようだ。

落ちてきた彼女を受け止める。

 

「あ、ありがとうヘルマンちゃん……」

「お気になさらず」

「登るのも駄目ですかー。これにも魔法がかけられているのかもしれませんね」

「あなたたち、何をしていますの?看守に見つかったら懲罰房ですわよ?」

 

ハンナがひょっこりと姿を現した。いつから見ていたのだろうか?

彼女も脱出口を探していたのだろうか。

 

「遠野ハンナ。あなたも脱出口を?」

「そうですわ、けどなんの手がかりもありませんの」

「何か分かった事はありますかー?」

「少し歩いた所に監視のフクロウが飛んでいましたわ。恐らくあれに見つかると看守が飛んできます。

それと、恐らくここは島ですわね。塀に耳をつけると波の音が聞こえました」

「ふむ」

 

塀に耳をつけてみると、確かに波の音が聞こえてくる。

なるほど、ここは島か。脱出の見込みは限りなく小さくなりそうだ。

 

「塀を越えられても、海じゃ……」

「はい。残念ですが脱出の見込みはかなり少なくなりますね」

「冗談じゃありませんわ……早く、早くここから出ないと……」

「は、ハンナちゃん、大丈夫?」

「大丈夫じゃありませんわ!!!化け物にずっと見張られていて!!!

こんな所はもう嫌ですわ!!!いつか私たちもあんな風になるのかもしれませんのよ!!!」

「落ち着いてください、ここで────」

 

私がそう言った瞬間、隣から爆音と揺れがした。

見ると、シェリーが塀を全力で殴りつけていたようだ。

しかし、塀はびくともしていない。破壊はやはり不可能か。

 

「……探偵さん。塀の破壊は不可能だと進言したはずですが」

「いやー、ハンナさんが可哀想で見てられなくて!試してみたんですけど、駄目でしたねー!この塀、めちゃくちゃかたいです!!」

「いきなり素手でどうにかできると思いましたの!?」

「ね、ねぇみんな。あれ、やばいかも……」

 

先程の音を聞きつけたのか、看守が木々の中からぬっと出てきた。監視フクロウ達もゾロゾロと来ている。

看守はそのままこちらへと向かって来る。移動速度は今までより速い。

 

「に、逃げよう!!」

「一体どこへ逃げるんですの!?」

「牢屋敷までの撤退を推奨致します。時間は私が稼ぐので、手早くお願いします」

「ならお願いします助手さん!エマさん、ハンナさん!こっちです!」

 

彼女らが駆け出したのを見た私は、ゲストハウスからこっそり持っていた木彫りのゴクチョーを看守に投げつけた。コントロールは悪くない。看守の仮面にそれが直撃し、奴はこちらへと顔を向けた。

 

「………」

「一曲いかがですか?」

 

ちょっかいをかけられたのに反応して、看守はこちらに向かって来る。

私は森の中へと逃げ込み、看守との追いかけっこが始まった。

 

 

 

 

 

 

 

(ふぅ。奴は……こっちを見失ったようだな)

 

深い木々の中、私は息をつく。何とか看守を撒けたらしい。牢屋敷の方角は覚えているから帰還は問題ない。かなり時間を割いてしまった。心配されないうちに戻ろ───

 

「動かないで」

 

後ろからカチャ、と音がした。銃を向けられているのだ、と知覚する。ゆっくり手を頭の後ろに回す。その声には聞き覚えがあったから、抵抗はしなかった。声の主はジリジリとこちらへと近寄ってくる。その顔は──

 

「黒部ナノカ。何故このようなことを?」

「……銀輪ヘルマン」

 

同じく閉じ込められた少女、黒部ナノカがいた。こちらに長銃を向けている。しかし、こちらを確認した彼女は銃を下ろす。こちらへの警戒を解いてくれたのだろうか?私も後ろに回していた手を元に戻した。

 

「どうかしましたか?貴女はずっと単独で行動していたはず」

「……見慣れない人影があったから、警戒してたのよ。貴女こそ、なんでこんな所に?」

 

だからといって銃を向けるのは遠慮するべきではないだろうか。とはいえこっちにも事情がある。説明はすべきだ。

 

「看守に追いかけ回されていて。一時はどうなるかと思いました」

「そう。……ちょっといいかしら?」

「まだなにか?」

「私の髪リボン、知らないかしら?凄く大事な物なのよ」

 

どうやら無くし物を探していたようだ。本当にそうなのかを追求するのは失礼だと思うから、よしておいた。

 

「髪リボンは今のところ、見た事はありませんね」

「本当?なら……」

「私は牢屋敷に戻りますので、他の人達に聞いてみましょうか?」

「いや、私も戻るわ。案内を頼めるかしら?」

「問題ありません、しっかり着いてきてください」

 

私が進もうとした時、ナノカは立ち止まった。まだ何かあるのだろうか?

 

「ちょっと足元が不安だから、手を繋いでいてくれない?」

「ふむ……大丈夫ですよ。ちゃんと掴んでおいてくださいね」

 

彼女から差し出された手を掴んだ。何故か彼女の顔は怪訝な表情へ変わった。どうしたのだろうか。

 

「銀輪ヘルマン、あなたは……」

「どうかしましたか?早く行きますよ」

「……そうね」

 

薄暗い森を進んでいく。そこまで遠い場所ではなかったのか、数分程歩くとすぐに到着した。心地いい疲れを、体が感じていた。看守との追いかけっこが意外と運動になったようだ。

 

「驚いたわね。一度も迷わずに戻れるなんて」

「記憶力には自信があるもので」

 

ナノカはそれだけ言い残して中へと入っていった。

私もそれに倣って牢屋敷に入った。

 

「あっ、助手さーん!無事だったんですね!」

「よかった……ずっと帰って来なかったから、みんな心配してたんだよ」

「大丈夫ですか…!?け、怪我とかしてませんよね」

「そこまで貧弱ではありませんから。それと、黒部ナノカ氏の髪リボンが無くなったようです。

何かご存知の方は?」

 

何とか彼女らと合流し、これまであったことを聞いた。

とはいえ、特に目立つ事もなかったようだが。

 

「髪リボンは知りませんけど、さっきナノカさんがボウガンの行方を訪ねてましたわね」

「そうだった……何で持ち出したんだろう」

「ボウガンですか」

 

それは、あからさまな凶器が持ち出されたという事を意味する。

ナノカが気にするのも仕方ない。ただ、私もそれを知らないのは事実だった。

 

「てめぇ、一体何のつもりだ!?」

 

アリサの怒声が廊下まで響いた。位置は娯楽室の方だろうか。

また何かトラブルがあったようだ。

 

「あれ、さっきナノカちゃんが向かったのって娯楽室だったよね?」

「見に行ってみましょう!」

 

私は─────

 

☠️もう休むと言った

シェリー達に着いていった<

 

私は彼女らに着いていく。娯楽室に入ると、アリサとナノカが今にも喧嘩になりそうな空気になっていた。

話を聞くと言っていた筈だが。どういうことだ?

 

「人の事をいきなり泥棒呼ばわりってどういうことだ!?てめぇの方がよっぽど怪しいだろ!」

「いかにもあなたは何かしそう。話を聞くまでもないわ」

「この……ふざけてんのか!?」

 

……私は正直、ナノカを信用しすぎていたのかもしれない。

話し合いどころか喧嘩騒ぎを起こすとは想定外だった。

結局この場はエマの説得で事なきを得たが、彼女もかなり危ない人物かもしれない。

 

 

今日は疲れてしまったので、シャワーを浴びた。レイアが配信をするらしいが、見る気は起きなかった。

肉体的な疲労が溜まっていたから、先に寝る事のみを伝えて、私は床に就く事にした。

目を閉じる。今日は幾分か快適に眠れそうだった。

 

[さ◼︎、◼︎◼︎は◼︎◼︎べ◼︎◼︎◼︎の◼︎に。◼︎◼︎ようか。◼︎◼︎◼︎判を]

意識が沈む瞬間、ノイズに塗れた誰かの声が確かに聞こえた気がした。

 

 

目が覚める。時間を確認すると、もう朝だった。

誰かが廊下を歩く音が聞こえる。看守ではなさそうだ。

体を解す為に立ち上がった瞬間、悲鳴が聞こえた。牢の扉を開けて、急いで外に出る。

廊下にはアンアンとエマがいた。二人とも、城ケ崎ノアの房を唖然とした様子で見ている。

私も房の中に視線を向ける。そこには……

 

(……!)

 

城ケ崎ノアが、胸を貫かれて死んでいた。傷は心臓を直撃していて、もう助かる見込みはなさそうだった。

第一の喇叭が鳴り響く。地獄への扉は今まさに私達を呑み込もうとしていた。

 

 

 




次回、第一裁判開廷。
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