スキンヘッド(泣)・ざ・ろっく!   作:厄介な猫さん

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……規約に引っ掛からないと信じたい。
てな訳でどうぞ。


エンソウスルハゲ

ドーモ皆さんコンニチハ。新しいショルダーキーボード欲しさにバイトしようと訪れたライブハウスで、ハゲであることがバレてしまった毛利拓也です。説明する相手なんて家族以外、何処にもいませんけど。

店長さんの提案(という名の死刑宣告)により、今度のお休みにSTARRYで演奏する羽目になったのですが……本当に地獄です。

 

ハゲバレの次の日なんて、いつ後藤さん経由でバレるのか気が気でなかったです。休み時間中、ずーっと聞き耳立てて様子を窺っていましたし。え?チラチラ見なかったのかって?そんな真似をしたらますます悪目立ちして、針の筵になるじゃないですか。学校ではとにかく幽霊のように存在感を無くさないといけないのに……!

幸い、後藤さんは一言も言葉を発しませんでした。さすがぼっちちゃんと呼ばれていただけあります。

 

そんな脅えて過ごして迎えた運命の土曜日。自分は朝早くからSTARRYの入口前に来ています。帽子、マスク、サングラスのフル装備で。

早くからライブハウスの前に来ても、当然ながら開いている筈がありません。だから、入口前で体育座りで待つことにします。適当な場所で時間を潰すなんて、ハゲの自分にはできないので。

本当はこのまま消えるように逃げ出したい。でも、それをしたら後藤さん経由で来なかったことを聞かれる。そして逃げたことが知られたらハゲバレがガガガガガガガガッ。

 

「不審者!?」

 

えっ!?不審者ってどこ!?まさか自分以外に人が……!?

 

「いや不審者は君だよ!?何で他に人がいるかのように反応してるの!?」

 

あっ、不審者は自分なんですね。怖がらせて申し訳ありません。

 

「す、すみません……今日、此処で呼び出しがあって……」

「……その声、毛利くん?」

 

サングラスで視界が暗いから気づけなかったけど、この声は伊地知さんの声だ。階段を降りて近づいて来ている人はサイドテールで髪を結った年が近い少女……間違いなく伊地知さんだ。

 

「あっ、はい……ここで秘密がバレた、毛利拓也です。約束通り来ましたので、どうかあの件だけはご内密に……」

「言わないよ!?後、マスクとサングラスだけは外して!顔が隠れて本当に誰なのか分からないし、完全に不審者だから!!」

「あっ、いや、その……せめて、店内に入ってからで……」

 

外で外すなんて自殺行為、出来るわけないじゃないですか!人が大勢いる前で顔を晒すなんて、自分には無理なんです。

そんなこんなで伊地知さんと合流して、店長さんから預かっていたらしい鍵を使ってライブハウスの中に入りました。

 

「それにしてもこんなに早く来るなんて意外だね。時間を指定してなかったから、てっきりお昼頃に来るのかと……」

「いえ……早い方が人が少ないので……少ない方がバレる危険性が低くて本当に楽なので……」

「ちなみにだけど……此処までどうやって来たの?」

「電車で二時間掛けて……地元の高校にだけは、絶対に行きたくなかったので……昔、勇気を出して要望通りに太陽○をしたら、『本当にやったよ!ギャハハハハッ!!』と馬鹿にされた挙げ句、『ハゲが太陽○をマスターしたぞー!』と周りに言いふらされて……止めてとお願いしても、全然止めてくれなくて……」

「ぼっちちゃん以上に重いよ!そんなに辛いなら、無理に話さなくていいから!!」

 

後藤さんも県外からの通学なんですね。ぼっちちゃん呼びは伊地知さんと山田さんが付けた後藤さんの渾名だ。

誰もいない、暗がりの室内……ああ、本当に落ち着く。

 

「この暗く静かな雰囲気……自分の心みたいで落ち着きます」

「……そんな哀しいこと言わないで」

 

そうして伊地知さんに案内されたスタジオで、家から持参してきたショルダーキーボードを専用のバッグから取り出して機材に繋げていきます。一応そのままでも弾くことはできるけど、せっかくスタジオに案内されたならちゃんとした方がいいですよね?

 

「本当にショルダーキーボードを弾くんだね。ちなみに始めてどれくらい?」

「あっ、え、その……キーボード自体は小二の頃から……今使っているのは小六からで……」

「結構前から始めてるんだね。普段は何弾いてるの?」

「……あ、アニメソングや、ゲームソングがほとんどで……たまにネットに上がっている動画の音を真似る程度、です……」

「へー、アニソンがメインなんだ」

 

うう、絶対にオタクと思われてる……顔は見れないけど、絶対に引かれている……ハゲでオタク……社会的に抹殺される光景が簡単に脳裏にっ!!

 

「すんごい震えているけど大丈夫!?」

「だだだ大丈夫、です……ハゲなオタク認定されても、最底辺なのには変わらないですから……」

「アニソンを弾く程度でオタクじゃないから!アニソンにも良い音楽があるのは知っているから!!」

「そそそ、そのお気持ちだけで、じゅじゅじゅ十分です。しょしょ、しょれでは聴いて下さい……ゲームのエンディング曲、【○の在り処】」

 

ショルダーキーボードを機材に繋げ終わりましたので、確認も兼ねて伊地知さんの前でよく弾く音楽を奏でます。切なく、儚い音色……ED前のシーンもあって涙を誘う名曲(個人的)です。

ああ、優しい音色が自分の傷ついた心を癒してくれる……

 

「おお、意外と弾けるんだね。音の震えが凄いけど」

 

伊地知さんがどこか感心したように呟きながら正面に回ろうとしてますが、自分はとにかく身体をずらして向き合わないように必死に動きます。もちろん、演奏の手は緩めずに。

 

「露骨に避けないでよー。そんなに避けられるとショックなんだけど?」

「ごめんなさい女子と向き合うなんて無理なんですお願いですから勘弁して下さい」

「本当に君もぼっちちゃん並みに扱いが難しそうだね」

 

ごめんなさい本当にごめんなさい。こんな関わりたくないハゲでごめんなさい。演奏が終わったら帰るので許して下さい。

 

「……貴重なお時間ありがとうございました。片付けが終わったら帰ります」

「帰ろうとしないで!まだリョウとぼっちちゃんが聴いてないから!!」

 

そんな……まだ帰れないんですか?

 

「おおお、お二人は何時になったら……?」

「リョウはまだしも、ぼっちちゃんも県外だからね。最低でも二時間――」

「――ゴフッ」

「口から白い何かが出てるんだけど!?そこは吐血じゃないの!?いや、吐血されても困るんだけどさ!」

 

二時間も此処に足留め……ハゲがバレかねないお外で、二時間も……

 

「ゴミ箱……ゴミ箱ハドコ……?」

「ゴミ箱を探そうとしないで!しばらくスタジオに籠ってていいからさ!!」

 

伊地知さんの素晴らしい気遣いのおかげで、自分はスタジオに籠城することができました。

籠っている間はもちろんキーボード演奏で時間潰し。【千本○】【ライ○ン】【○の意志】【ji○ad】……気に入っている音楽を自室に籠っている時のように弾き続ける。

ああ……この瞬間だけは、ハゲである現実から逃げられる……一人きりの世界にいられる。

 

「ん……?」

 

ふとした気持ちで視線を泳がせたら、数枚の紙が目に入りました。

これって楽譜……だよね?誰かが持ち帰り忘れたのかな?譜面自体は難しくないし……試しに弾いてみようかな?

少し申し訳ないと思いながらも、覚えた譜面の通りにショルダーキーボードを弾いていく。せっかくだから色々な音源を加えてみようかな。

 

 

~♪~♪~

 

 

「で、アイツは今スタジオに引き籠っていると」

「ゴミ箱を被って隠れられるよりはマシかな~~、って……」

「……少なくともヤドカリになるよりはマシだな。幸い、午前中は空いているし。で、アイツの演奏を聴いてどうだった?」

「……下手じゃないけど、上手くもないって感じかな?指が震えて音が覚束ない感じだったし」

 

良くも悪くも中途半端な感じか?まぁ、バンド目的じゃなく、現実逃避が目的で弾いていたなら、クオリティはそんなに高くなくても不思議ではないか。

虹夏や他のスタッフに指示を出してから、スタジオに引き籠っているハ……ゲフンゲフン、毛利拓也の様子を見に行く。あの歳……というか生まれてからスキンヘッド(ハゲ)なアイツには、さすがに涙を禁じ得ない。笑い飛ばせれば本当に楽なんだけど……

 

スタジオの扉のガラス越しで中の様子を見やると、アイツはショルダーキーボードを弾いていた。指は……全然震えていないな。むしろ迷いが一切ない、流暢な動きだ。さすがにここからじゃ音の方は分からないな。防音はしっかりしているから当然だけどな。

音を立てないよう、こっそりと扉を開けて聞き耳を立てる。今弾いているのは……この前の虹夏たちのライブのやつか。虹夏のやつ、この前の楽譜を置いていくとか……アイツの奇行でうっかりしていたのか?いや、わざわざ楽譜を用意する意味もないし……これでアイツの実力を確認するつもりだったのか?

 

にしても……上手いな。虹夏が下手でも上手でもないと言っていたが、それが疑わしくなる程に上手い。ショルダーキーボードは肩に掛けて演奏する以上、どうしてもサイズは抑えられて鍵盤数が少なくなる。AX-Synthはショルダーキーボードの中では大きめで鍵盤数が多めとはいえ、それでも対応できるパートには限度がある。ある程度はアレンジでカバーできるとはいえ、ここまで出来るキーボーディストは早々いないだろうな。

指の震えは……人前で演奏した経験がないからだろうな。それにコンプレックスも抱えている。仮にバンドメンバーに加わったとしても、その実力を発揮仕切れないだろう。

 

「―――ヒィイイイイイイッ!?ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!スタジオを占領して、勝手に電源を繋げようと考えてごめんなさいっ!!今すぐ帰りますから!!」

「だから土下座は止めろって!逆にこっちが辛いから!後、電源くらいは大目に見てやるから!」

 

 

~♪~♪~

 

 

山田さんと後藤さんが来る前に店長さんへ土下座謝罪して、お二人にも自分の演奏を聴かせたました。スタジオにあったあの楽譜での演奏を。

 

「……ビミョー」

「あっ、えっと……悪くないと、思い、ます……」

 

自分の演奏を聴き終えた山田さんは半目で呟き、後藤さんは目を逸らしてのコメント。それだけで自分の演奏は期待外れだと分かりました。

 

「ハハッ……お聴きになった通り、素人に毛が生えた程度の腕前だと判明しました。大変貴重なお時間を使わせて申し訳ありませんでした」

「だから帰らないで!話はまだ終わっていないから!」

 

ハハハ……まだ帰れないンデスカ……ハゲに人権ハナインデスネ……

 

「あのさ毛利くん。毛利くんさえ良かったらなんだけど……あたしたちのバンドに入ってキーボードをやってくれないかな?ほら!キーボードがいると音に厚みも出てくるし!!」

 

バンド……?勧誘……?もしかして、伊地知さんに山田さん、後藤さんの三人のバンドに……?

 

「ガールズバンドにハゲ……叩かれてハゲバレする未来が……」

「ミイラのように干からびないで!?」

 

華やかな女子高生のバンドメンバーに男が入るなんて、嫌われる未来しかないじゃないですか。嫉妬に駆られたファンが排除しようと、あの手この手で弱みを探して……

 

「あっ、ああああ……どど、どうすれば……!?」

「干からびたなら水に浸せばいい。取り敢えず、水を汲んだバケツを……」

「それは止めてあげて!どう見てもイジメの構図になるから!!普通に水を飲ませようよ!」

 

バケツ……バケツ……カツラヲモップニ……サレハシナカッタケド、ハゲハソウジシロト……

ア……オクチニオミズガ……

 

「ん、戻った」

 

あ……自分は何を……そうだ、伊地知さんにバンドメンバーに誘われて……

 

「……すみませんが辞退させて下さい。ライブに出るだなんて、自分には無理です」

 

大勢の前で演奏するだなんて、自分にはできない。それにハゲであることがバレでもしたら、本当に耐えられない。青春も、華やかな人生も、自分は諦めている。ハゲであることを揶揄されて刺され続けるより、ずっとマシなんだから。

 

「無理強いは出来ないけど……毛利は何かしたいことはないの?」

「したいこと……?ない、です。もう、諦めてますから……」

 

山田さんの唐突な問い掛けに自分はそう返す。キーボードだって、ただの逃避ですし……

 

「あっ、あの、その……えっと……したいことがない、だなんて……ない、ですよね?あ、新しいショルダーキーボードが欲しいって、働こうと思ったんですから……私なんては、働きたくないと、か、考えちゃって……じ、自分から働こうとしたのは……それだけ、やりたかったからじゃ……」

 

…………。

 

「毛利くん。確かにリョウが言った通り無理強いは出来ないけどさ……ぼっちちゃんも言ったけど、本当はやりたいことがあるんじゃないかな?本当に何もなかったらさ、諦めているだなんて出てこないとあたしは思うな」

「そ、れは……言葉の綾、で……」

「虹夏の言う通りだと思う。それに、ただ弾きたいだけならショルダーじゃなくてもいい」

「も、もしかしてですけど……バンドやライブに、憧れていたんじゃ、ない……ですか……?だから……ギターやベースの見た目に似ている、ショルダーキーボードを……」

 

……山田さんと後藤さんの指摘は、間違ってない。本当は、心から笑って……たまたまテレビで流れていた、楽しそうにライブをしていた人たちのように……

 

「でも……自分は、その……頭が……」

「やりたいことにそれは関係ないよ。絶対に笑わないからさ、毛利くんの本当の気持ちを聞かせて欲しいな」

 

自分は……自分は……

 

「……したい、です。小さい頃にテレビで見た、バンドの人たちみだいに……えんぞヴヴぉ、じだい゛でず……」

 

情けない涙声でも、自分の奥底に閉まっていた気持ちを、ほとんど初対面の人に明かすだなんて……本当に情けないと自分でも思う。だけど、だけど……本当は楽しい思い出だって作りたかった。

 

「…………」

「ちょっとぼっちちゃん、溶けないで」

「完全に溶ける前にゴミ箱の中に入れれば、元に戻るかも」

 

……何れくらい泣いただろうか。自分が落ち着くまで伊地知さんたちは待ってくれた。後藤さんは何故かゴミ箱に入っていたけれど。

 

「それじゃ改めて聞くね。毛利くん、あたしたちのバンドに入ってくれないかな?」

「あっ、はい。迷惑でなければ……」

「では改めて……あたしたちのバンドへようこそ!キーボード担当として、歓迎するよ!」

「ちなみにバンド名は《結束バンド》」

 

伊地知さんは笑顔で迎え入れてくれたけど、自分の頭の中は山田さんが明かしたバンド名でいっぱいでした。

結束バンド……?結束バンドってあの結束バンド?コンセントのコードを纏めるのに使う、留め具の結束バンド?いや、バンド名はローマ字でそれっぽくしているだけの気もするし……バンドのボーカルには、似た単語を組み合わせてリズムを刻むラップを歌う人もいる筈だから……

 

「……ラップ系のバンド?」

「違うよ!?」

 

違うんですね。ごめんなさい。

その後は伊地知さんの音頭でスタジオからホールへと移動しました。

 

「……帽子とマスク、サングラスをするんだね」

「す、すすすすみません。女子と普通に話したことは、一度もなくて……後、ライブでもこれで出て大丈夫ですか?」

「せめてマスクだけは外そう」

 

帽子とサングラスはいいんですね山田さん。ありがとうございます!!

 

「わ、私もサングラスを……!」

「その星形のサングラスは何処から出したの?せめて毛利くんのような無難な形のサングラスにしてね」

「グハァッ!」

 

伊地知さんの言葉のナイフで、期待に目を輝かせていた後藤さんが椅子から倒れました。ピクピク痙攣して、瀕死になっています。すぐに復活しましたけど。

 

「それで今後のバンド活動なんだけど……」

「えっと……ついさっき入ったばかりなので、簡単な説明を……」

「ライブをするにもお金が掛かる。後、ボーカルも探さないといけない」

 

凄く分かりやすい説明、どうもありがとうございます。

 

「……つまり、五人でのバンド活動を思い浮かべているんですか?」

「そうだよー。ちょっと情けない話なんだけど、ぼっちちゃんが加わる前にいたギターボーカルの子が逃げちゃったんだよねー」

 

……どう反応したらいいんでしょうか!?嫌なことを思い出させてごめんなさいと謝るべきなんでしょうか!?

 

「毛利くんが気にすることじゃないから大丈夫だよー。それに何だかんだで、新しいメンバーも増えたし」

「ギターとキーボードが加わったから、ライブのクオリティが上げやすくなった」

 

伊地知さんはにこやかに、山田さんは親指を突き立てて問題ないと伝えてきます。本当にいい人たちですね。

 

「どちらにせよ、次のライブを行うにはノルマを補填するお金がいる」

「だからこの前、ぼっちちゃんもここでバイトしよう!という話になったんだよね」

「バイトォ!?」

 

伊地知さんのバイト発言に、後藤さんが大声を上げて反応した。その声は、嫌なことを思い出した人のそれだ。

いや、それよりもバイトでライブのノルマ代を稼ぐ……?それはつまり、自分の当初の目的のショルダーキーボードのお金が……

 

「あびゅう……」

「今度はペラペラになった」

「ゴメンね毛利くん!気持ちは分かるけど、これもバンドの為なの!」

「アハハ……今回ハ大丈夫デス……キット店長サンモ、マスクカ帽子、サングラスノドレカ許シテクレルト思ウノデ」

 

それに多めに働けば、それだけ得られるお金も増えますし……好条件で働けるなら、多少の犠牲は受け入れますよ。

あ、でも、バイトするならちゃんと学校に届出ないと……一応予備を含めて二枚あるしね。

 

「カミ……学校ニ報告スル、紙……」

「あっ、そ、そうなんですよね……バイトするなら、学校への報告が……」

「ぼっちちゃん?何で笑ってるの?」

「……用紙ってこれのこと?」

 

山田さんはそう言って、自分が貰ってきた筈の用紙を見せてきました。

え?何で山田さんがそれを持ってるの?何で?どうして?

 

「ショルダーキーボードのバックの中に入ってた」

「いや何普通に人のバックの中身を漁ってるの?普通にアウトなんだけど」

 

あ、間違えて一緒に入れちゃったんですね。それも二枚一緒に。

 

「せっかくだからぼっちも毛利も今ここで書いて、今度の月曜日に提出したらいい。同じのが二枚あるし」

「だからそれ、毛利くんのだよね。勝手に決めたら駄目でしょ」

「だ、大丈夫です。もう一枚は念のために貰ったものですし……」

 

シャーペンで下書きしてボールペンでなぞれば、一応はセーフの筈。ゆっくり書けば、書き間違わずに済む筈ですから。

 

「……マフッ」

「入れ替わる形でぼっちちゃんがペラペラになった!」

 

……後藤さん、バイト、したくないんですね。働きたくないって言っていましたし。

 

 

―――週明けの月曜日。

 

 

自分と顔面崩壊した後藤さんは、一緒に申請書を先生へと渡しました。

 

 

 

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