スキンヘッド(泣)・ざ・ろっく!   作:厄介な猫さん

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てな訳でどうぞ。


コウカイショケイノハゲ

「バカ……自分のバカ……不意の呼び掛けで動揺して、命のカツラを浮かすだなんて……」

「ごめんなさい……陽キャになれたかもと調子に乗ってごめんなさい……」

 

自分と、少しして帰還した後藤さんは先ほど昼食を食べていた場所で撃沈しています。最短距離で隠れられる場所が他に思い浮かばなかったのと、ショルダーキーボードも置いてきていましたし。

明らかに友達が多そうな人にハゲ疑惑……いや、ハゲバレした可能性が高いです。もういっそ、カツラ用の接着剤やテープでくっ付けようかな?体育の授業で一度使って、無理矢理取られて揶揄られてから使わなくなったそれを、また使うしかないのかな?

あ、後藤さんがギターを弾き始めた。ギターの音色が、自分たちの傷付いた心を癒してくれる……けど、何もしないと気持ちがどんどん重く暗く……現実逃避でセッションしよう。そうしよう。

 

「……自分も弾いて、いいですか?」

「……どうぞ」

 

自分もショルダーキーボードを取り出して、後藤さんのギターに合わせて演奏します。今の気持ちを現すように、低めの音源で。

 

 

~♪~♪~

 

 

「……どこに行ったんだろう?」

 

喜多郁代は現在、後藤ひとりと毛利拓也の二人を探していた。ひとりのアイデンティティが崩壊する音で二人が廊下の窓際にいることに気付き、誰かに会いに来たのかと思い話しかけたのだ。

しかし、拓也は驚いた数秒後に逃亡。ひとりもビートボックスのような声を上げ、郁代の前から足早に立ち去ってしまったのだ。自分が二人の用事を邪魔してしまったと勘違いした郁代は、二人を探しに行くことにした。それでゴミ箱の蓋を開けて中を確認する辺り、地味に失礼であるが。

そうして二人を探していると、郁代の耳に暗~い音が聴こえてくる。その不気味でありながらも綺麗な音に郁代は少し警戒しながら音がする方へと近寄っていくと、探し人であるひとりと拓也が楽器で演奏している光景が目に入った。

 

(二人とも此処にいたんだ……後藤さんのギターは分かるけど、毛利くんのは……キーボード?ギターみたいな見た目だけど、あれってキーボードよね?)

 

音楽に対する知識が薄い郁代には、拓也が使っている楽器が変わったキーボードにしか見えない。それでも、素人の耳からでも上手に弾けているのは理解できる。

 

(けど、恐い!二人とも泣いているし、弾いている曲もホラー映画やお化け屋敷で流れていそうな感じの、物凄く暗い雰囲気だし!二人の周りで人魂が見えたような気がしたけど、あれは唯の幻覚よね!?)

 

理解できるが、二人が放つ負のオーラと相まって感心より恐怖が勝っていた。とにかく恐怖を覚える音色なのに、ついつい耳を傾けたくなる。

結局郁代は最後まで、二人が奏でる恐怖のセッションを聴くのであった。

 

 

~♪~♪~

 

 

一頻り演奏を終え、自分と後藤さんは揃ったように息を吐きます。演奏したおかげで幾ばくか気持ちが楽になりました。現実は非情なままですが。そう考えながら顔を上げると……喜多さんが直ぐ近くにいました。

きき、喜多さん……!?どうして、いや、何でここに!?後藤さんも喜多さんがいる事に驚いて少し退いていると、喜多さんは気にした様子がないように話し掛けてきました。

 

「すごいね二人とも。ちょっと恐い演奏だったけど、二人はバンドでもしてるの?」

「えっ、あっ、はい……」

 

喜多さんの質問に後藤さんが答え、自分は無言で頷きます。本当は自分も喋るべきなんですが……後藤さんと違って喜多さんはその……圧倒的な光が放たれていて、凄く話しづらいです……店長さんや伊地知さん、山田さんたちと違って同じ学年ですし……

 

「毛利くんのそれはキーボードよね?キーボードにしては変わった形だけど」

 

って、考えていたら自分に話が振られてきました。

 

『はい。これはショルダーキーボードと言って携帯して演奏するキーボードなんです』

「なんで文筆なの?」

 

ごめんなさい!マトモに喋れず、文筆に逃げてごめんなさい!次はちゃんと言葉にして出しますから!

 

「けど、意外かな。キーボードって台座に載せて弾くだけかと思ってたんだけど」

『それはショルダーキーボード自体の種類が少ないからです。それに加えてキーボードはギターやベースと比べて初期費用も高いですし。本体だけでも安くても八万円はかかりますし』

「そうなの?それにキーボードって、三万円くらいあれば買えるんじゃないの?」

「「……え?」」

 

喜多さんの疑問に、自分と後藤さんは揃って信じられないという意味で声を上げました。確か喜多さんは以前、バンドでギターボーカルをしていたんですよね?バンドをやっていたなら、触り程度には把握していると思っていたんですが、違うのですか?

 

「あの……確かに三万代で買えるキーボードもありますが……それはポータブルキーボードでして……」

「ポータブルキーボード?それって他のキーボードとどう違うの?」

 

あまりの衝撃から普通に問い掛けましたが、自分の問い掛けに喜多さんは本気で首を傾げています。

えっ……?本当に知らない……!?冗談でもなく本当に!?

ちなみにポータブルキーボードは、音源が少なく、音の調整もあまりできないキーボードのことです。単に弾くだけならそれで十分なんですが、バンドやライブに必須とも言える音作りが圧倒的にできないんです。事実、昔は安物のキーボード―――ポータブルキーボードで現実逃避していた自分も、もっと色々な音で演奏したいと思って買い替えを決めたんですから。

 

「あっ、あの……失礼なんですが、本当にバンドを組んでいたんですか……?実は……バンドのギタボを探してて……」

「そうだったの、後藤さん……だとしたら、ごめんなさい。私、本当はギターを全く弾けないの」

 

え……ギターを弾けない……?バンドに入っていたのに、ギターを全く弾けない?完全な初心者でも入っていたのなら、一緒に練習していたのでは?そもそもバンドを組んでいた話自体が嘘?でも、そんな嘘をつく意味も必要もないし……

自分のそんな疑問を解消するように、喜多さんは申し訳なさそうに話を続けていく。

 

「確かにバンドに入っていたのは本当なんだけど……そのバンドの先輩が目当てで、弾けるって嘘をついて入っていたの。結局、何一つ分からなくて逃げ出しちゃって……」

 

その説明を聞いて納得しました。簡単に要約すると、駆け出しなのに経験者と嘘をついて入ってしまい、どうにもならなくて逃げる形で止めてしまったと。

……なんて言えばいいんでしょうか?コミュニケーション能力が皆無に近い自分には、ハードルが高すぎます。

 

「それにギターって、こっちでジャンジャンするだけじゃないのね。この木の棒も飾りかと思っていたし」

「「えっ……」」

 

喜多さんの呟きに、自分と後藤さんは再び声を揃えて上げてしまいました。

いや、あの……バンドに入っていたんですよね?いや、完全な初心者だと仕方ないんでしょうか……?自分もキーボードを弾き始めた最初は、入門書に書かれていたコードについてチンプンカンプンでしたし。

 

「そもそも初心者が一人で始めるには難しいのよね……メジャーコード?マイナー?野球の話?」

 

そ、そこから何ですか……?い、一応入門書は売られていますし、ネットでも検索すれば一定の情報は得られる筈なんですが。念のために簡単に説明しますと、メジャーコードは高い音を出す弾き方で、マイナーコードはその逆の低い音を出す弾き方です。

 

「だから、一度逃げ出した私がもうバンドなんてしちゃ駄目なのよ」

 

そう話を締め括った喜多さんの表情は、本当に申し訳なさそうにしている。このままうやむやにし続けていたら、きっと喜多さんはどんどん暗くなる。でも、安易に謝りに行った方が良いとも言えないし……

 

「あっ、あの……そのバンドの人たちって、どんな人たち……なん、ですか……?い、今……自分と、後藤さんがいるバンドの人たちは、本当に優しくて……」

「本当にいいバンドなんだね。私の方も本当に良い人たちで……だからこそ、嘘をついた挙げ句、逃げ出したのが本当に申し訳なくて……」

「でっ、でも……ここで諦めたら一生、その事を引き摺るんじゃ……」

 

勧誘なんて二の次で、自分と後藤さんは喜多さんのことを本気で心配していく。そんな良い人たちを裏切ってしまった事を本当に後悔している喜多さんを、このままにしておけないし……!

 

「……それなら、後藤さんがギターを教えてよ。私の先生になってくれないかな?」

「……ヴぇっ?」

 

少しの沈黙からの喜多さんの申し出に、後藤さんが潰れた蛙のような声が洩れ出てきました。後藤さんが喜多さんのギターの先生……?あっ、いや、確かにギターを弾く人に教わるのは間違った選択ではないんですけど。今までの反応から、人見知りの激しい後藤さんには鬼門そのものなんですよ。

あっ、後藤さんが自分に顔を向けて助けを求めてきました。このまま断っても喜多さんの問題は解決しませんし、このまま後藤さんを見捨てるわけにも……!こここ、こうなったら!?

 

『本当に申し訳ありませんがバンドの人たちも交えてお話してもよろしいでしょうか!?もしかしたらもっといい方法が思い浮かぶかもしれませんので!!』

「また文筆!?で、でも、それくらいなら……」

 

単なる問題の先送りではありますけど、一応はこの場を切り抜けられました。次はロインで伊地知さんに報告を!!

 

『急に申し訳ありません。急遽同級生の人生相談を請け負うことになりました。後藤さんと一緒に連れて来ますので内容はスターリーでお話しします』

 

これで送信……っと!急な無茶ぶりをして本当にごめんなさい!でも、このまま放置は自分たちの罪悪感が凄まじいんです!ここまで聞いて見て見ぬ振りなんて、心労がマッハになってしまうんです!自分は内心で伊地知さんたちに謝っていると、伊地知さんから返信のロインが来ました。

 

『よくわかんないけどわかったよ』

 

ありがとうございます伊地知さん!ロクに説明せずのお願いなのに、聞き入れてくれて本当にありがとうございます!!

こうして無事に許可が下り、自分と後藤さんは放課後、喜多さんと一緒にバイト先であるSTARRYへと向かいます。

 

「二人のバイト先って下北沢だったのね……」

 

ギターケースを背負った喜多さんは、少し怯えたかのように呟いています。後藤さんが来たことがあるのかと質問しますと、喜多さんがいた前のバンドも下北沢を活動拠点にしているそうです。加えて、その人たちの住まいも下北沢とも。

 

「あっ、あの……でしたら、マスクを使いますか……?未使用の新品ですので……」

「それはありがたいんだけど……何で帽子にサングラス、マスクまで着けて顔を徹底的に隠しているの?」

「ごめんなさい……これは自分の大事な防衛線なので」

「?」

 

自分の返しに喜多さんは首を傾げている。これは……自分がハゲであるとバレてない……?もしかして、あれは見間違いだと思ってくれている……?

自分は喜多さんにハゲがバレていないことに安堵し、使い捨てのマスクを喜多さんに渡します。

 

「あっ、あの……できれば私にも、マスクを……」

 

後藤さんもマスクを所望したので、同じく未使用の使い捨てマスクを渡して一緒にバイト先に向かいます。自分、喜多さん、後藤さんの順番での列車状態で。

 

「ご、ゴメンね毛利くん。一応マスクで隠しているけど、万が一見つかって気付かれでもしたら……」

「わっ、私もすみません……まだ、この道に慣れていなくて……」

「い、いえ……困った時はお互い様ですし……」

 

後ろから喜多さんと後藤さんが申し訳なさそうに謝ってきていますが、他に方法がないので諦めています。自分も本当は隠れて移動したいですけど。周りから視線を感じて、本当に辛いですけど。

そうやって列車状態で道を歩いていると、喜多さんは何故か青ざめたかのように周りをキョロキョロしています。もしかして、前の人たちに出会わないかと不安になっているんでしょうか?

 

「あっ、あの……もうすぐバイト先に着きますので……それまで辛抱して、下さい……」

「そ、そうなの……?すごく、見覚えのある道なんだけど……」

 

怯えるように震える喜多さんを挟んだまま、自分と後藤さんはSTARRYの階段前へと到着します。STARRYを前にした喜多さんは、安心するどころか急にガクガク震え始めました。

 

「えっ……?ここ……?二人のバイト先って、ここ……なの?」

「はっ、ハイ……時間的に、伊地知さんと山田さんも、来ていると……」

 

お二人の名字を出した途端、喜多さんは身体の震えだけでなく額から汗をだらだらと流し始めました。そんな明らかに動揺している喜多さんは、恐る恐るといった様子で口を開きました。

 

「ね、ねぇ……二人が入っているバンドは、どんな名前なの……?」

「えっ、あっ……け、結束バンド、です……」

「ガッ!?」

 

最後尾の後藤さんがバンド名を答えた瞬間、喜多さんが絶句したように声を洩らしました。直後、喜多さんは目だけでも分かる程に焦った様子で、有無を言わさない雰囲気を纏って自分と後藤さんに話し掛けてきました。

 

「ごめん二人とも。理由は言えないけどそこにだけはどうしても行けないの。その人たちにも私が此処に来たことは絶対に言わないびぇっ!?」

 

喜多さんは早口で捲し立てるように自分自身が来たことを言わないように伝えようとしましたが、階段から足音が聞こえたことで最後に奇声のような悲鳴を上げてガタガタ震えています。明らかに追い詰められた表情を浮かべているであろう喜多さんは、何故か自分の顔を凝視しています。

 

「―――ゴメン、毛利くん!」

 

突然の謝罪と共に暗かった視界が明るくなり、頭部が急に涼しくなった。

 

「…………え?」

 

喜多さんは呆然としたかのように目を丸くしています。その手には自分が着けていたサングラスと……帽子が握られています。そして、ふぁさぁ……と落ちていく、黒い塊―――自分の、カツラ。

 

「ヴぁ」

 

それだけで、自分は理解しました。この大通りで、喜多サンニヨッテ、帽子ヲ取ラレテ、ハゲガ公開サレタト。

 

「急に凄い音が……黒焦げの真っ黒死体!?」

「あ、アワワワワワワワ……」

「ぼっちちゃん!?一体何が……って、あぁあああっ!?逃げたギター!?」

「あひぃいいいいいいいいっ!?」

 

何デ……何デ……自分ハ悪イコトナンテシテナイノニ……喜多サンノ悩ミヲ解決シヨウトシタ、ダケナノニ……

 

「その声……やっぱり喜多ちゃんだよね?どうして此処に……って、それ!帽子とサングラスだよね!?まさか、毛利くんが着けてたやつ!?」

「あっ、その……咄嗟に顔を隠そうと……それが、こんな事に……」

「じゃあ、あの黒焦げ死体は毛利くん!?秘密が喜多ちゃんにバラされてこうなちゃったの!?」

「わ、私……ど、どうしたら……」

「今は毛利くんをSTARRYの中に!カツラも回収して早く!」

「えっ、あっ、はいっ!」

 

アア……今日カラ、『高校生ノハゲ、下北沢ノライブハウスニ現ル』ト話題ニ……人ノ口ハ本当ニ軽イカラ……ソレガ関ワリノナイ他人ナラナオサラ……

 

「あれ?郁代、生きていたんだ」

「今死にかけているのは、喜多ちゃんじゃなくて毛利くんなんだけど!?」

「……何で毛利は黒焦げなの?ヘアスプレー、持ってくる?」

「何でヘアスプレーなんですか!?リョウ先輩!」

「あっ、その……毛利くんは、前に砕け散った時、ヘアスプレーを使って……元に戻りましたので……」

「砕け散ったって何!?本当に毛利くんは人間なの!?」

 

人間、ジャナイ……ハゲハ人間ジャナイノ……ドウシテコノ世界ハハゲニダケハ厳シイノ……?不登校トズル休ミガ、ソンナニ罪深イノデスカ……?

 

「最後にカツラを被せれば、蘇生完了」

 

…………はっ!?

ここはSTARRYの中……?自分はいつの間に此処に……?確か、店のすぐ近くで―――

 

「毛利くん!布にくるまって隠れないで!気持ちは本当に分かるけど!」

「ごめんなさい無理です外でハゲがバレてしまったんです特に喜多さんには確実にバレています」

 

まさか喜多さんの手でバラされるなんて……あの反応からして顔を隠したかっただけとはいえ、彼処であんな目に合うだなんて……

 

「え?ハゲ!?丸刈りじゃなくて本当にハゲているの!?その歳で!?」

「ん。毛利曰く、生まれた時からみたい」

「わ、私……本当に何てことを……!」

 

ハイ。この歳でハゲているんです。頭の毛根が最初から存在しなかったかのようにハゲなんです。

 

「何でもしますから私の数々のご無礼をお許し下さい!どうか私をめちゃくちゃにして下さい!リョウ先輩!!」

「色々と危ない発言は止めて!?」

「ごめんなさい。本当にごめんなさい。これから引き籠り生活になってしまってごめんなさい」

「謝らなくて大丈夫だから!幸い……本当に幸いなことに、喜多ちゃん以外に人はいなかったから!」

 

見られてない……?喜多さん以外に、見られて……ない?

 

「……本当に?自分を慰める嘘じゃない?」

「本当だよ!それに、あたしが来た時には黒焦げだったから、近くで見ないと頭髪の有無は判断できない程だったから!」

「虹夏の言う通り。ある意味頭皮が黒くなっていたからセーフ」

 

本当に……?お外でハゲだとバレてない……?

 

「ハゲの秘密は、守られた……?」

「うん。ちゃんと守られてるよ。喜多ちゃんも言い触らしたりしないから、大丈夫だよ」

「ハイ!毛利くんの秘密は、墓の下までお持ちします!何ならリョウ先輩が私をめちゃくちゃにして弱味を作って頂いても―――」

「微妙に願望混ざってない?」

「あっ、いや……他言無用でいてくれるなら、それだけで……」

 

何度も土下座で謝ってくれている喜多さんに、これ以上の追い討ちは逆に此方が申し訳なくなってきました。それに、ハゲの事実を隠してくれるならそれ以上は何も望みませんし。

 

「毛利くんの話はこれで終わりとして……喜多ちゃんはどうしてお店の前にいたの?それもぼっちちゃんたちと一緒に」

「アガッ!?そ……それは……」

 

……あれ?そう言えば、何で伊地知さんは喜多さんのことを知っているんですか?

逃げたギターボーカル……本当は弾けなかった喜多さん……もしかして……

 

「あの……もしかしてですけど……以前お二人が仰っていた逃げたギターボーカルって……」

「うん。そこにいる郁代。連絡が取れなくなっていたから、てっきり死んだと思って毎日御線香を上げてた」

 

まさかの事実。世間は狭いとは正にこのこと。喜多さんが前にいたバンドが結束バンドだったなんて……後―――

 

「ど、どうしようもない事情だったと考えていたことを、褒めるべきでしょうか……?」

「た……確かに……!」

「いや、普通に酷いと考えていいよ?」

 

 

 




「……お姉ちゃん、このヘアスプレーの山は何?」
「それはアイツの接着用だ。既に三回も砕け散っているからな。後、店長って呼べ」
「全部、安物の粗悪品」
「髪がないアイツにはそれで十分だろ。実際、前に使ったヤツもそうだったし」

~黒焦げからの蘇生中~

「ふっ、吹き掛けた箇所から、きき、綺麗になってますね……」
「本当にヘアスプレー……?ヘアスプレーは髪を整えるためのものじゃ……」
「深く考えたら負けだよ、喜多ちゃん」
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