スキンヘッド(泣)・ざ・ろっく!   作:厄介な猫さん

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てな訳でどうぞ。


編曲スルハゲ

アー写撮影から数日が経過し、本日もスタジオ内で演奏の練習をしています。

 

「……簡単な曲のコピーでも、破綻寸前」

「厳しい意見だけど……喜多ちゃんはミスが目立つね。ぼっちちゃんと毛利くんはミスはないけど、リズムが合ってないから……」

「「「す、すみません……」」」

 

リズム隊である山田さんと伊地知さんの厳しい御指摘に、自分達は謝るしかできません。どうしようもない事実ですから。ちなみに、練習で使っている曲にはキーボードのパートはありません。耳コピしてからのアレンジです。

キーボーディストはその立ち位置から、アドリブやアレンジ能力が求められます。事実、キーボードパートがあるバンドの曲は少ないですし、あっても難しいものである場合があります。それらに加えて、自分はショルダーキーボードです。鍵盤数が限られているショルダーキーボードでは、どうしても足りない音域が存在します。特にピアノの音源は最低でも61鍵盤からでないと対応しきれません。

 

「でも、喜多ちゃんは最初と比べたら大分上手くなっているし、ぼっちちゃんもマシになってきているよ。毛利くんもアレンジ自体は感心できるレベルだし」

「ん。即興でアレンジできるのは普通に凄い。大抵のキーボードは迷子になるか、しょっぱいアレンジになる」

「あの……本当に失礼なんですけど、キーボードの人はそんなに凄いのですか?どう凄いのか、分からなくて……」

「あっ、その……キーボードは他の楽器と違って、参考にできるものが少ないんです……」

「そうなの?同じ鍵盤楽器なら、ピアノを弾く人たちを参考に出来そうな気がするんだけど……」

 

ああ、喜多さんが微妙に勘違いしていますね。ピアノが出来るならキーボードも出来るは、大きな間違いなんです。参考が少ないのは、後藤さんの言う通りなんです。

 

「えっ、と……ピアノとキーボードは、似てるようで……実は全然違うんです……確かに同じ鍵盤楽器ですけど、根本的な作りが違いますから……転向は、そう多くないんです……」

「え?そうなの?」

「ハイ……ピアノはハンマーアクション……分かりやすく説明しますと、鍵盤を押すと弦が引っ張られてその先にある木槌で叩いて音を出すのに対して……キーボードは鍵盤を押した際の信号で音を流すといった感じなので……鍵盤の感触は勿論、押した際の強弱による音の変化もないんです……」

 

それこそ、ピアノと同じ感覚で弾いたら相当浮いてしまうくらいに。初心者キーボードあるあるにも出てますし。

 

「もちろんキーボードも物によってはピアノに近い感触のモデルもあるし、演奏中でもある程度は変化は付けられるモデルもある。けど、その場合は片手のみで弾くことになる場合もあるし、普通に高いし重い」

「そうなんだよね~。キーボードは初心者モデルでも八万円はするし、物によってはその倍にもなるんだよ。重さもモデル次第では十キロ以上もするし」

「倍……本当にキーボードは高いんですね……後、持ち運びも不便そうです」

 

キーボードの金額に、喜多さんは改めて遠くへ行くかのように呟いています。

 

「そこに加えて、毛利くんのキーボードは種類が本当に少ないショルダータイプだから、参考に出来るのが無いに等しいんだよ」

「特に演奏方法が普通のキーボードと違う。だから独学になる」

「……つまり、独学でちゃんとアレンジして演奏できる毛利くんは凄いってことですね!」

 

凄くざっくりと纏めましたね、喜多さん。その認識で大丈夫ですけど。

スタジオ内での練習も終わり、後片付けをして撤収……の直前で山田さんが自分に何かを差し出しました。

 

「USBメモリー……?」

「ん。それにぼっちの歌詞で思いついたメロディー……原曲が入ってる」

 

あっ、後藤さんが提出した歌詞《ギターと孤独と蒼い惑星(ほし)》から作ったメロディですね。後藤さんが完成させてから数日で作曲を終えるだなんて……山田さんは音楽に関しては本当に凄いです。他は本当に残念ですけど。

 

 

~♪~♪~

 

 

バイトのない、休日の自宅。

後藤さんが作った歌詞と、山田さんが作ったメロディ。この二つが揃ったことで、自分の編曲の出番がやってきました。

編曲をするために必要なものはパソコンと音楽ソフト……そして、ショルダーキーボードのAX-Synth。

AX-SynthはUSB MIDIにも対応していますので、音楽作成向けのMIDIキーボードとしても使えます。ショルダーキーボードのおかげで打ち込み作業が本当に楽となって大助かりなのです。さらにソフトを起動したパソコン画面には楽器が表示されていて、コードを打ち込めばどう弾いたのかが一発で分かるようになっています。単純なコードの打ち込みだけだと、演奏のイメージがしづらいですしね。

 

まずは山田さんから受け取ったUSBメモリー内にある音を聴いてから……後藤さんが書いた歌詞と合わせて聴かないと、全体のイメージが掴めませんので。

……イメージとして『一人きりの世界』かな?一人しかいない世界だけど、誰かと交わりたい……自分の知らない新しい世界を見たい……そんな訴えを感じさせます。本当のところは違うかもしれないですけど。

 

「先ずはドラムから……全体のリズムを作ってから……」

 

歌詞とメロディ、リズムをイメージしながらドラムのコードを入力していきます。ちゃんとリズムを作りつつ、盛り上がるように打ち込んで……

次はギターのパート……こちらは二つ用意しないと……リードギターとボーカルも兼任しているギターとでは、受け持つ音も違ってきますし……

ここでベースを……山田さんのベースは四弦ですから、ちゃんと音域内に収めないと……

 

最後に自分のパートであるキーボード……ピアノは難しいからロックオルガンをベースに……いや、これだとサビパートが厳しいかも……?なんというか、心に響きそうにない気が……サビパートで高めにしたらイケる……?いや、ここは思い切って違う音源に……

そうしてざっくりとした感じでコードを打ち込んだ曲を、全体を通して聴いていきます。

……何処と無く違う気がします。曲の印象を決めるイントロとAパロはまだしも、繋ぎのBパロと一番盛り上がるサビがこれではない感が……

 

「拓也ー、いる?」

「うぇあっ!?」

 

予想だにしていなかった声に、自分は変な声を上げて驚いてしまいます。そのまま反射的に扉に顔を向けると同時に、ガチャリと扉が音を立てて開きます。自分の部屋に入ってきた人は…自分の姉さんでした。実家を出て一人暮らし中の。

 

「ね、姉さん……何で、家に……」

「ちょっと用事があって近くを通りかかってね。せっかくだから顔出しで家に寄っただけだよ。後、愛しの弟と妹の様子も見たかったしね」

 

姉さんの用事……仕事?プライベート?どっちなのかな?どんな仕事をしているのかは、全然知らないけど。

 

「顔に出ているよ。今回はちょっとした息抜き。仕事でちょっと息詰まっちゃってね。スランプに陥る前にリフレッシュしないとドツボに嵌まりそうだったし」

「……やっぱり、大変?」

「そりゃ、ね。好きなことでも仕事となると勝手も違ってくるし」

 

姉さんは何てことのないように言葉を返す。好きなことを仕事に出来て、髪もある……妹にも髪があるのに、何で自分だけハゲなんだろう……?

 

「まーた落ち込んでるね。理由は……何となく分かるけど。それより拓也、母さんから聞いたよ。最近、バイトとバンドを始めたんだって?」

「あっ、うん……今、オリジナルソングの……編曲、中……」

「ああ、だからパソコンとキーボードの前にいたのか。オリジナルソングの編曲をさせてもらえるなんて、凄いじゃん」

 

そうなの……かな?お情けでやらせてくれた部分もあるし……

 

「……もしかして、押し付けられた?」

「あっ、違っ……試しにやらせてもらっている、だけで……」

「その反応は嫌々じゃなくて自信のなさからか。まっ、一発で成功するなんて早々ないから、気楽に考えた方がいいよ。むしろ気楽に考えないとさっき言ったドツボに嵌まるし」

 

気楽……気楽、かぁ……ハゲの自分には、本当に縁遠い言葉……でも、このままだと本当にドツボに嵌まりそうだし……

 

「じゃあ、さ……一度、聴いてくれる……?」

「いいよー。歌詞もあるならそれも見せて」

「う、うん……」

 

姉さんに後藤さんが書いた歌詞を見せながら、先程の微妙な曲を流していきます。

歌詞を見ながら曲を聴き終えた姉さんは、納得したように頷きました。

 

「なるほどね。部活動としてなら十分すぎる出来映えだね。歌詞も悪くないし、むしろ深みがあっていいと思うよ」

部活動なら……それはつまり……

 

「ライブハウスでやるには、不十分……?」

「全くとまではいかないけど……微妙というのが正直な感想かな。実際に弾くとどうしてもリズムのズレが微妙に出てくるだろうし……それを表情へと変えれたら一番だけど、そこが難しいところでもあるしね」

 

はい。それは自分もよく理解(わか)っています。この前の練習でさえ、いつ破綻してもおかしくなかったですし。

 

「ああ、別に歌詞や曲が悪いわけじゃないかな。逆に凄いと感心するくらいだよ。ちゃんと世界観が染み込んで頭の中に入ってくるから」

「……世界観?」

「そう、世界観。音楽以外にも言えることだけど、人気の作品は共感しやすく、深く入り浸れるからでもある。これはアタシの持論だから違うかもだけど……深く刺さるからこそ、名曲や名作は時が幾ら経っても根強く支持されるんだよ」

 

それは……そうかもしれない。好きな曲は不思議と引き込まれるし、誰が歌っているかは気にならないこともあるし。

 

「後、売れ線の歌詞に縋ってないのも個人的にはプラスかな。売れ線なんて時間が経てば代わるものだし、むしろ自分の歌詞を新しい売れ線にしてやる!くらいの方が丁度いいんだよ。自分で何も生み出せないと、絶対に苦労するからね」

「姉さんも、経験があるの?」

「そこは学生時代の軽音部での経験かな。一度ノリでオリジナルソングを売れ線メインで作ってみたら、ものすっごい微妙だったからね。それで逆にセオリーガン無視で作ったら、出来は良いとは言えないけど全員が納得出来たんだよ」

言いたい事は何となく伝わってくる。要は納得がいくまでやればいいのかな?

 

「まぁ、結局ボツになったけど。演奏技術ガン無視で作っちゃったから、どう頑張っても弾けない音になっちゃって……」

 

そのオチ、いるのかな?美談から一気に残念な感じに終わったんだけど。

 

「どちらにせよ、自分の感性を信じてやってみなよ。こういうのは結局、自分の感覚頼りなんだからさ」

 

自分の感性……か。

 

「……ありがとう、姉さん。編曲、頑張ってみる」

「その意気だぞ、弟よ。これを気に帽子とサングラスから卒業―――」

 

帽子とサングラスから卒業……!?それって、素顔でお日様の下を歩いて……急な突風や人同士の衝突、それによってカツラが取れて……

 

「ふぎゃああああああああああああああああっ!?」

「……あー、まだ駄目だったか。ショックでのっぺらぼうになっちゃってるよ」

 

オソト、コワイ……ヒキコモリタイ……デモ、働カナイト生キテイケナイ……

その後、自分は育毛剤で元に戻りました。

 

 

~♪~♪~

 

 

―――翌日。STARRYにて。

 

「……どうぞ、お納め下さい」

「上納金みたいに差し出してきた!?」

 

自分が編曲して出来上がったデモ楽曲が入ったUSBメモリーをトレイに乗せ、伊地知さんたちに差し出します。これが採用されるのか、それとも不採用に終わるかは……メンバーの皆さん次第です。

 

「意外と早かったね。てっきりぼっちのように手間取るかと」

「あっ……一応出来ましたけど、これで良いのか分からないので……一度聴いてもらえたらと……」

 

山田さんの質問に、自分はオドオドしながらも答えます。バイトもなく、休日で時間があったのもありまして、楽曲自体はこの休日で作り上げることは出来ました。太鼓判を押して貰えるかは不明ですけど。

 

「何にせよ、早速聴いてみよーか」

 

伊地知さんがノートパソコンを用意し、皆さんの前で自分が編曲した曲を聴いていきます。最初は感心したように聴き入っていたのですが……その表情は徐々に悩ましげに変化していきました。

やっぱり、凄く微妙……?一応、何個か用意したんだけど、全部不評……?

 

「あのさ、毛利くん」

「ひゃ、ひゃい!」

「この二つの音源さ……凄い極端だよ!!」

 

きょ、極端!?

 

「コード見たら一目瞭然だし!演奏レベルが一と百で開き過ぎなんだけど!?」

「わ、私でも聴き比べたら、簡単な方は薄っぺらいというか……」

 

伊地知さんだけでなく、喜多さんも同調しています。

実は、最初に出来上がった曲は実際の演奏技術を無視して作ってしまったハイレベル仕様。全く弾けないという訳ではなく、今の結束バンドには難易度が高過ぎる曲なんです。逆に演奏技術重視で作った楽曲は、簡単に弾けるけど演奏に厚みがないお遊び仕様。自分でもこれはないと悟るくらいでしたし。

 

「でも、音自体は全く悪くない。どれも曲のイメージは崩れてないし、むしろ当てはまっている。特にこの《デモ楽曲4》が今の私たちに丁度いいレベル」

「そうなんですか?少し、私には厳しいような気が……」

「挑戦的な方が技術向上に繋がりやすい。それに最初のデモ曲は高い技術が要求されているだけで、演奏不可能なレベルじゃない」

「確かに落差は激しかったけど、曲自体は普通に良いと思えたんだよね」

 

えっと……つまり?

 

「今回の新曲……《ギターと孤独と蒼い惑星》は毛利くんが編曲した《デモ楽曲4》を採用します!拍手ー!」

 

伊地知さんが高らかに宣言すると、それに同意するように喜多さんと山田さんが拍手しています。自分の編曲が採用された……?でも、作詞した後藤さんは……ゴミ箱に入って倒れてます!

 

「……作詞に一週間以上掛かったのに、リョウさんと毛利くんは数日で……お二人はチョチョイのチョイで作り上げたのに……調子に乗っていた私は家族にも引かれたのに……」

「後藤さんが溶けかかってるわ!?」

「こんなところで溶けないで!ぼっちちゃん!」

 

後藤さんが精神的なショックを受けた為か、身体が徐々にスライムのようになってきています。このままスライムになったら、色々な意味で大変ですから……

 

「こ、小麦粉を掛けます……?」

「ぼっちちゃんは食べ物じゃないよ!?」

 

伊地知さんにお叱りを受けました。

後藤さんスライム化は結局止められなかった為、その場しのぎで溶けきる前にゴミ箱を起こして分散を阻止しました。ゆるキャラみたいな表情で、プルプルと揺れています。

 

「これで結束バンドの曲が一つ出来上がったけど……ライブをするにはまだ足りないかな」

「ライブをするには一曲じゃ不十分。後二曲は欲しい。カバー曲で埋める手もあるけど、どうせやるなら全部オリジナルソングがいい」

「一曲だけじゃ駄目なんですか?」

「えっと……自分も後で知ったんですが……最低でも三曲弾く必要がある、そうです……」

「ライブの時間にもよるけどねー」

 

そう。ライブをするのに一曲だけというのは普通はあり得ない。喜多さん逃亡と自分の加入前のライブでは、一曲だけでも出させてもらったそうですけど。

 

「……本当の意味での初ライブは、まだ遠いですね」

「そうだね。でも、こうしてバイトしていればノルマ代も稼げるから、お金と曲があれば出してくれるよ!」

「え?出さないけど?」

 

ノートパソコンとにらめっこして仕事していた店長さんが、バッサリと伊地知さんのお言葉を切り捨てました。

 

「……そうですよね。ハゲがいるバンドなんて、恥ずかしくて出せないですよね」

「違ぇよ!お前の有無は一切関係ないから!後、なんで幽霊のように消えようとしているんだ!?」

 

ハゲノ存在ハ不要……ハゲノ存在ハ不要……

 

「これ、どうしたらいいんですか!?」

「……こういう時こそ、ヘアスプレー」

「分かりましたリョウ先輩!」

「喜多ちゃんも馴染んできたね」

 

アア……ドウシテ自分ハ自惚レテイタンダロウ……少シバンドニ貢献シタダケデ、有頂天ニナッテタ自分ガ恥ズカシイ……

……はっ!?

 

「さすがヘアスプレーですね!消えかけていた人をこうして元通りにできちゃうんですから!」

「それは毛利くん限定だよ、喜多ちゃん。ほら、リョウがぼっちちゃんにヘアスプレーかけてるけど、全然回復の兆しが見えていないし」

 

え?え!?一体何が起きて……!?確か、店長さんがライブに出さないと言った辺りから記憶が……

 

「それよりお姉ちゃん。何でそんなこと言うの?そりゃ、今はお金も曲も足りてないけどさ」

「お金と曲の話じゃない。単純に実力の問題なんだよ。出たいなら先ずはオーディションな」

「この前は出してくれたじゃん」

「あれはお前の思い出作りの為にだ。この前は特別に出してやったけど、同じクオリティならまず無理だからな」

 

伊地知さんが店長さんとライブについて口論しています。えっと、話を要約しますと、前回は特別に出したけど次からは正当な手順を踏まないと出さないってことです?

あっ、いや、店長さんの言い分は完全に正論ですけど。本来は審査で落ちるレベルだったにも関わらず、思い出作りの為にと特別に出してもらえたんです。それに毎回身内贔屓すれば、他のバンドがSTARRYを敬遠してしまうかもしれません。自分たちはオーディションを受けているのに、身内のいるバンドは自分たちより下手にも関わらず出してもらえる……少なくとも不信感を抱いてしまいます。下手をすればSTARRYが閉店―――

 

「未だにぬいぐるみ抱―――」

「伊地知さん!正当な手順でライブに出ましょう!ここが潰れでもしたら一大事です!!多額の損害賠償請求が……ッ!」

「かない、と……えっ!?何でそうなるの!?」

 

伊地知さんが驚いて自分に顔を向けていますが、伊地知さんを早く説得しないと!!多額の負債を抱える未来は何としても避けないと!!

 

「カクカクシカジカ、ウマウママルマル」

「謎の言葉の羅列が飛び出てきた!?」

「そいつの言う通りだ。他のバンドにも失礼だからな」

「確かに毛利の言葉にも一理ある。だけどさすがに請求まではしないと思う。代わりに虹夏の胃が死ぬけど」

「何でお姉ちゃんとリョウは今の言葉で理解できるの!?後、あたしの胃が死ぬのは何で!?」

 

自分の言葉では伊地知さんに上手く伝えられませんでした。代わりに店長さんと山田さんが説明して納得しましたけど。

 

「だったらあんな言い方しなくていいでしょ、お姉ちゃん。あれじゃ、二度と出さないって言ってるようなものじゃん」

「そうは言ってないだろ」

 

どうやら伊地知さんは店長さんの言葉を誤解して受け取ってしまっていたようです。今は誤解が解けてムッスリしていますけど。

 

「どちらにせよ、練習あるのみですね!後藤さんも頑張っ、て……」

 

話を理解した喜多さんも改めて意気込み、ゴミ箱の中にいる後藤さんに同意を求めましたが何故か言葉が萎んでいます。後藤さんがスライス状態のままだったとしても、萎む理由にはならない筈ですが……

 

「喜多ちゃん、どうし……ぼっちちゃんが犬になりかけてる!?」

 

……えっ!?

伊地知さんの驚愕の声に自分も慌ててゴミ箱の中を覗きますと……後藤さんがスライスの形状から犬の形状に変化していました。全身ピンクで徐々に犬の形に変化していますので、何かしらの理由で再生に異常が起きていることが想像できます。

これは……緊急事態です!

 

「このままだと後藤さんが本当に犬に……!」

「ぼっちちゃん!早く人間の姿に戻って!」

「ぎ、ギター……!ギターを持たせれば……!」

「それ、私のベース」

 

その後、犬化が進行しつつあった後藤さんにギターを持たせ、擬似的に弾かせることで何とか元の姿に戻すことができました。

 

 

 




ぼっち視点

(……え?ライブハウスが潰れて損害賠償請求!?それも多額!?そんな大金、陰キャの私には用意できない!返済の為に働いて……またお店を潰して損害賠償を請求されて……借金がどんどん膨れ上がる無限ループ!!どうすれば最初の賠償から逃れられて……お父さん、お母さん、ふたり、ジミヘン……ジミヘン…………そうだ、犬になろう!犬になれば損害賠償請求されない筈!!犬に支払い能力がないから、逃れられる!!私は犬……私は犬……犬、犬、イヌ……)

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