多重ダム防衛
独立傭兵クロウの朝は早い。
腕枕している彼女を起こさずにベットから出て、水を一杯飲み込む。終わったら昨日の内に洗ったシーツを干して乾かす。
未来の世界でも此れは当然なのだ(ルビコンの技術が低いだけかも知れないが)
そして、ウェアに着替えて、トレーニングを開始する。
ランニングは基本だ。
灰色の空の元、口から白い吐息を出しながら走っていく。
歓楽街では馴染み(普通に知り合い)の娼館関係者が片付けをしており、そっち関係の飲食店が開店の準備をしていたり、
俺は流し目に見ながら駆けていた。
自室に戻ると今度は器具を中心にした筋トレを始める。
俺は強化人間では無いので、ACで掛かる負荷に耐えるには耐G機能の付いたパイロットスーツと機体の耐G機能と個人のフィジカルで頑張るしかないのだ。
シャワーで汗を流すと朝食の準備⋯⋯と言ってもエナジーバーとフィーカしかないので直ぐに終わり、起きてシャワーを浴びたクリスもやってくる。
「おはよう。クロウ」「おはよう。クリス」
朝食を即食べて、片付けて⋯俺は依頼を端末でチェック因みに、俺は企業の指名依頼は余り来ません!
対企業や封鎖機構ならまだしも、対解放戦線は受けない俺は潜在的な敵だからね。
因みに、前回の一件でミシガンからお礼のメッセージを頂いた。
『独立傭兵のクロウだな!ウチの役立たず共が世話になった!貴様さえ良ければレッドガンに誘いたいところだ!』
俺は丁重にお断りのメッセージを返しておいた。
独立傭兵の仕事の合間や機体のオーバーホール等時間が空いている場合はACのパーツ設計やRaDの新商品の開発をしている。
クリスもプログラミングや母親の介護(汚部屋掃除)したりしている。
そして今日は、もしもの時に備えての近隣の集落に内燃式ジェネレーター(JOSO)を輸送している。
予想通りならレッドガンによる多重ダム襲撃が有るが⋯⋯ダナムのおっさん⋯⋯俺がアセン相談等で若干強化してはいるものの精々がノーザーク程度。
イグアスとヴォルタのコンビに勝てる気がしないので顔を見に行くかと、多重ダムへとヘリを向かわせた。
クロウが向かっている最中。レッドガンはG4ヴォルタとG5イグアス。そして、
「ヴォルタ先輩。イグアス先輩よろしくお願いします!」
G6レッドである。
621はどうした?
本来の歴史では外からの刺激が欲しいと考えていたウォルターだったが、この世界ではクロウやクリスがいるのでレッドガン入りは無くなった。
別の件では紹介するかも知れないが⋯⋯
閑話休題
『レッド!足を引っ張るんじゃねぇぞ!』
『なーに、テメェの腕前は知ってる。トチらなけゃ問題は無ぇ』
イグアスとヴォルタがレッドに話しかける。それは621の時とは違い、仲間内でやるような気楽な物だ。
『聞こえるな!役立たず共!愉快な遠足の始まりだ!!』
レッドガンによる侵攻が始まる。
真逆、レイの代わりにレッドかよ⋯⋯
「ダナムのおっさん!」
『済まない!クロウ!手伝ってくれ!』
最低一機潰さないと撤退しないだろう。
丁度いいと言うより少し早かった。壁越えでヴォルタに使おうと考えていたのに⋯⋯
「了解した!クリス!ハッチを!」
『うん!気を付けて!』
ハッチが展開して、ブラックバードが現れる。
しかし、それは何時ものブラックバードではない。
「ブラックバード・アサルト行くぞ!」
両手に重ショットガンと左肩にはパイルバンカーを装備したブラックバードが飛翔していく。
ブラックバード・アサルトカスタム。
以前ブルートゥと戦った時に俺が撤退した理由の一つは数の優位。それを覆すには即殺。このアサルトはバショウ腕のW重ショパイルの
最初の変電施設を破壊し、此処は大丈夫だろうと2つ目の変電施設はレッドに任せ、イグアスとヴォルタは先へと進む。ミシガンもレッドを信頼している為文句は言わない。
「よし!これで!」
左手のバズーカで変電施設を破壊し、二人の先輩に追いつかないと考えた瞬間。
『G6!敵だ!!』ピーッ!ピーッ!
ミシガンと警告音が同時に鳴り響く。
イグアスたちならクイックブーストで直撃は避けられるかも知れないが、未熟なレッドは直撃を喰らってしまう。
「くぅ!」
二つの爆発の衝撃が機体に走り、レッドは歯を食いしばる。
「てっ、敵は!?」
レッドは敵を視認する。黒い機体が重ショットガンを2丁構えて此方に発砲してくる。
ダダンッ!
再び走る衝撃にスタッガーを取られる。
そして、レッドが見たのはパイルバンカーを構える
しかし、レッドの眼にはこう映った。
「し⋯死神?」
『G6!脱出しろ!!』
『堕ちろ!!』
その一撃はレッドの機体ハーミットのコアの左側を貫き、左腕と左肩の装備が吹き飛ぶ。
レッドは反射的に脱出レバーを引いて命からがら脱出出来た。
クロウはそれを一瞥すると、直ぐに飛翔していく。
「レッドがやられた!?」
『嘘だろ!?』
『嘘ではない!G5!G4!合流して迎撃しろ!急げ!!』
何時もの様な罵声は無く、ただ単純な命令に此れは本当に危険な状況だ。
「合流は出来ねぇ!ヴォルタ!先に行って変電施設を破壊してくれ!俺が足止めをする!」
『G5!何を言っている!?』
「俺等の目的は変電施設の破壊だろうが!耄碌したか!?糞爺!!」
熱くなりつつも、正論を放つイグアスに面を喰らうも
『G5。それだけの啖呵を切ったんだ!死ぬ気で食らいつけ!』
「応よ!!」
親子の様に犬歯を剥き出しにしながら2人は笑う。
『死ぬなよ!』
「ああ⋯⋯」
イグアスは落ち着いていた。
なぜだかは分からない。だが⋯⋯夢を見た⋯⋯何度も負けて⋯⋯相手より強い機体に乗って戦っても負けてしまう夢を、相手は分からない。見たこともないACに乗って見たこともない武器で戦い。バカでかいミミズの化け物にも勇敢に立ち向かって行った。
そして憧れた。
⋯⋯⋯に、この事はヴォルタにも話していない。いや、バカ強いACに負けた夢を見た程度には話しはしたか⋯⋯
だから⋯⋯憧れに負けない様に訓練には一層身が入り、戦闘スタイルの新しい風を取り入れようとアセンを組んだり(シミュレーターで試したり)色々している。
だからこそ、
「テメェなんぞに負けるわけには行かねぇんだよ!!」
「コイツ!」
フレームはメランダーC3。見た目も原作通り⋯⋯だが、武装がパルスシールドの代わりにパルスブレードに代わっている。
『行くぞ!カラス野郎!!』
状況は悪い。おっさんとアンジー(重四脚MT)が居るがヴォルタ相手なら精々が十分持てば良いだろう。
「一つ問うが⋯⋯コーラルリリースと言う言葉に聞き覚えは無いか?」
『ああ?何言ってん⋯⋯痛ぅ。何だ?頭が』
動きが緩んでいる?
なら死なない程度にブチのめす!
普通じゃ出来ないほぼゼロ距離のW重ショットガンの2同時発射を頭部に、
意味が無い?いや、そもそもACは何故APが0になるまで戦えると思う?ゲームだから?ゲームなら問題は無いが此処は現実だ。
そもそもリペアキットはどうしてAPを回復させる事が出来る?
答えは簡単だ。アーマーポイントとは装甲値では無い。機体表面を纏う不可視のパルスアーマーの数値だ。これと装甲板を組み合わせる事で多少傷ついていても数値通りになる(欠損しているJAILBREAKでは数値が低くなる)。
これとACSを組み合わせる事によりACは乗り手にもよるが高い性能を誇る。
しかし、破壊される事も有る。
ラスティとの戦いでスティールヘイズの右腕が破壊されたのを覚えているだろうが?
後、少し前の
故に、衝撃力が高いショットガンが二方向から撃てはACSは働かない。
そして、ヘッドブリンガーの頭部はもげてしまう。
そして、ACは何処ぞのニュータイプとは違って頭ぶっ壊れたらどうしようも無い。
俺は背中に周り、肩部武器の接合部を破壊する。
「G4ヴォルタに告げる!此方は独立傭兵のクロウ!G5イグアスは捕虜とした!仲間の命が惜しければ此処から立ち去れ!」
『イグアスの野郎!あんだけ大口叩いといて早すぎるだろ!!』
「返答は如何に!?」
俺の言葉にヴォルタは舌打ちをし撤退旨を伝えようとするも、
『G4!G6を拾って帰投しろ!』
『⋯⋯了解』
「賢明な判断に感謝する。ミシガン殿」
『⋯⋯ウチの役立たずに何をした?』
「とある事を聞きました。只それだけです」
『⋯⋯良いだろう。G5はどうするつもりだ?』
「此方で預かりましょう。捕虜返還はRaDタウンで行います」
『承知した⋯⋯一つ問いたい。コーラルリリースとは何だ?』
「以前無人機を倒した時にこの様なデータが有りました。旧世代の強化人間を使った何かの計画コーラルリリースと」
『⋯⋯そうか⋯⋯』
「それでは失礼致します」
俺は通信を切った。
通信室でミシガンは椅子に深く座り込む。
「一体、アイツに何が起こっているんだ?」
その問に誰も答えられなかった。
どうしてこなた?どうしてこなた?
イグアス初期予定では単なる中盤ボスキャラ枠にしようとしたのに⋯⋯