密約と壁防衛前編
RaD独房にて
「チッ!」
「こうして顔を見合わせるのは初めてだな。G5イグアス」
「テメェ!ナニモンだ?」
「それを言う前に『G13』の事を知っているか?」
「G13?ウチの欠番ナンバーじゃねぇか!いや、野良犬のナンバー?待てよ野良犬!?俺は何でそんなのが思い浮かんだ!?」
「ん~~?予想と違うな⋯⋯じゃあ『苛つくぜ⋯野良犬に⋯憧れたんだ』」
「それが⋯いや、知っている?俺は確かにその言葉を知っている!?」
イグアスは鉄格子に引っ掴み、
「此れは一体何なんだ!?答えろ!!」
俺は一息付いて、
「そうだな⋯⋯荒唐無稽かも知れないがこれから話すことは事実だ」
コイツには話しておこう。計画の一助の為に
そして語る。
俺は別の世界の人間の魂を持ち、この世界をゲームとして知っている事を、
「⋯⋯お前、頭大丈夫か?」
「お前も人の事言えねーだろ」
うぐっと返すイグアス。
「でだ。俺の頭の中の変な記憶は何なんだ?」
「頭の中の記憶は未来。ゲームで言う3つのルートでお前がラスボスのルートだ」
「俺がラスボス⋯⋯ねぇ」
「ああ、恐らくお前の記憶は原作の621。お前の言う野良犬が行ったコーラルリリースの影響だと思う」
「さっきも言っていたがコーラルリリースってのは何だ?」
「悪いがゲームでもラスボス側がやろうとしたのは分からないが、ラスボス撃破後は621たちがコーラルリリースを行うと青空の下で水没したAC⋯そして、彼と相棒の意識はコーラルになってACになっていた」
「バケモンじゃねえか⋯⋯それ」「俺もそう思う」
「ちょっと待て!そんじゃあレッドガンはどうなる!?」
「壊滅してるよ。俺が殺したG7を始め、ヴォルタが壁越えで、ナイルは捕虜奪還。ウォッチポイントアルファではお前を含むレッドガンは全滅するし、オオサワとかは生きているっぽいけど」
「マジか⋯⋯ん、待てよ?ヴォルタが壁越えで死ぬだと!?」
「ああ、壁を単機で攻略する羽目になってな⋯⋯」
「どうしてそうなってんだよ!」
「複数説有るが、聞くか?」
「早く言え!」
「一つはお前の責任。あの多重ダムで機体を壊されるか621相手に壁越えの情報を漏らしたからで外され、単独突入する羽目になる。
もう一つはベイラム本社の陰謀論説、ミシガンの青少年健全育成が気に入らないベイラムはレッドガンを潰すなり乗っ取る為にミシガンの影響力を減らそうとヴォルタ単独で⋯⋯」
「ああ、あのクソ野郎をレッドガンの総長にさせようとしてたのか」
クソ野郎⋯⋯そう言えばG7も俺はベイラムの重役の息子とか言っていたな⋯⋯
「テメェの話が全部真実だとすると「更に」何だ?」
「俺の知らない何かが動いている」
俺はイグアスに端末を見せる。
「何だこりゃ?」
「オーネスト・ブルートゥ」
「はぁ!?この脳味噌が?」
顔は知らなくても名前は知っていたか、
「ああ、それも3人。もしやとすると増えるかも知れない」
「マジかよ」
イグアスは目頭を押さえる
「ちょっと待てよ!野良犬はどうなっている?」
「ああ、この世界の621何だが、分からん。本人が無口気質だし、ゲームPVじゃサランラップマンだったし」
「何だよそりゃ?」
「まぁ、それは置いといて⋯⋯イグアス。俺と同盟を組まないか?」
「同盟だ?」
「ああ、お前はレッドガンの仲間を助けたい。俺はこの星を守りたい。
だったら、手を組んだ方が良くないか?」
「⋯⋯⋯良いぜ。とりあえずは組んでやる。あの爺にはまだ生きてもらわなきゃいけないからな!」
良いだろう。俺とイグアスは手を組んだ。
それからつつがなくイグアスと捕まっていたサム・ドルマヤンは交換された。叔父さん抜け目無いな〜
それから数日後、俺は壁に居た。
ベイラム側の壁侵攻に対抗する為にだ。
イグアスから聞いた話では、
ベイラム側はベイラム本社・大豊具グループとレッドガン数だけで言うなら八割がベイラム本社側で基本的にレッドガン傘下部隊。しかし、本社側の監督だけがミシガンを越える命令系統を持つ⋯⋯と、殺るならコイツだな
それと、俺からの提案で壁の物資を輸送してもらっている。
持ってくるんじゃなくて、持っていってもらっているのだ。
そして、此処のメインコンピューターにはウイルスを仕込んである。クリスとカーラお手製のな⋯⋯
まぁ、昔有ったアニメ『銀河英雄伝説』のキャラクター。ミラクル・ヤンことヤン・ウェンリーの使った手法と何かの戦争漫画の組み合わせた策略だ。
無論偽の物資とガラクタは置いて燃やしてしまえば物資を燃やしたと勘違い、その頃には壁の中の人間は誰〜もいない。
無論それを悟らせない事も大事だがな⋯⋯
「よぉ!クロウ」
「よっ!メッサム」
俺たちは互いに腕を組む。
「今日は宜しく頼むぜ!ダチ公」
「任せろ!」
メッサムはそう言って自走砲台ジャガーノートに乗り込む。
俺も用意をするか⋯⋯
〔メインシステム 戦闘モード起動〕
俺は壁の上から戦況を見渡す。前もってもしも俺が壁越えを⋯⋯と言う想定で訓練をしている。
俺の想定通りなら、壁側から見て右手側の崖から壁近く迄アサルトブーストで飛翔してくる。
機動力の劣るガチタンならそう動くだろう。
俺は軽くほくそ笑むと、機体を降下させる。
「ちぃっ!此処もかよ!!」
僅かな間にリペアキットは2回使わされ、3回目を切るか切らないかで少し迷う程に減らされている。
まるで自分の行動が読まれている。普通あんな場所にクレイモア(丁度普通のACの胸部に当たる位置)を仕込むだとか粘着地雷だとか、その影響で下半身は最早ボロボロでただでさえ遅い動きがもうカタツムリと言わんばかりの遅さだ。
ヴォルタは心の中で上層部の監督を有らんばかりの怒声で罵る。
そして、無事に帰ってきたイグアスに機体をロストしたレッド。2人は運が良かった。
ああ、畜生。生きてぇ!死にたくねぇ!
自分の意志で死ぬなら兎も角、上層部の思惑なんかで死にたくねぇ!
だから気づかなかった。後ろにいた機体にコアをぶっこ抜かれた事に、
『G4!シグナルロスト!』
「チッ!無能めが」
司令部として使っている小型艦の中で、でっぷりと太った腹を揺らしながら死んだヴォルタを罵る監督、
オペレーターは心の中で無能はお前だろと思うが口には出さない。自分も同じ穴のムジナだからだ。
この小型艦の周りには本社直属のメランダーが2機直衛として付いているし、
警備のベイラムMTも十数機いる。その戦力を壁攻略に使えば良かったのでは?と言いたいがそんな事をすれば明日は我が身となるだろう。
だから彼は口には出せなかった。
ひゅるるるるる〜
まぁ、
彼の命は爆音と共に消え去ったが、
俺は開いた口が閉じなかった。
メッサムに頼んで、最大仰角でジャガーノートの砲撃を陽動に敵本陣に対して突っ込もうとしたら、敵司令部と思わしき艦艇に直撃しやがった。
『えっ?マジで当たったのか?』
「うん。当たった。開いた口が閉じないとはマジこの事だ」
その後の残党処理は簡単に終わったと言っておく。
尚、生き残ったベイラム及びレッドガン隊員は輸送ヘリに寿司詰めにして送り届けたよ。他に捕らわれた解放戦線の仲間たち等と引き換えに、
そして。その中にはG4ヴォルタの姿は無かった。
機体の慣らし運転兼周辺の偵察と言う名の遠出を行うイグアス。
ミシガンからのお小言もなく、いや寧ろ心配された。
イグアスも後で知ったがコーラルリリースを聞いた直後にバイタルに異常をきたしていたので、
レッドの方も無事に帰還は出来たが、初めての撃墜で参っている様だった。
クロウとの一件は話していない。寧ろ頭の病気を疑われるレベルの話だ。
ある程度飛行すると、目的地に付いた。
壁より結構離れた場所のガレージヘリだ。
機体から降りて、ガレージヘリの中に入り込む。
「よう。ヴォルタ。元気にしてるか?」
「此れを見て元気にしてるかと言えるんなら眼科を紹介するぞ。イグアス」
中には手を拘束されているヴォルタが居た。
ぶっちゃけ初期予定はレッドガンは全滅する予定だったのに⋯⋯
そして捕虜奪還のフラグが消えた。