今日の天気は珍しく雨だった。
「ウォルター。足元は⋯⋯」
「問題ない」
此処は墓所、大きな戦いの後に621を休ませる序でに有ることを済ませたかったウォルターはクロウを案内を頼み、此処へと来た。
「此処だ」
クロウが止まると、其処には墓が有った。墓の主の名は
ヒロキ・ロングウィット。
クロウの父にしてアイビスの火を起こしたシロウ・ナガイの息子である。尚⋯ロングウィットの苗字は偽名だ。
「久しぶりだな。ヒロキ」
ウォルターは墓参りに来ていた。
「最後に会ったのは何時頃だったろうな⋯⋯」
もう二十年も前に子供の頃のクロウの写真を見せられた記憶を思い出す。
ウォルターはコーラルで失った人が多すぎる。
最初に母を失い、次いで父を、ナガイ教授、618、617、619、620。
けど、手に入れたものもある。
「こんな俺でも父親になった。知らなかったとはいえな⋯⋯
そしてその子はアンタの息子と付き合ってる⋯⋯」
ウォルターの目から雨が流れる。
「だから、見ていてやってくれ⋯⋯あの子たちの事を⋯⋯ヒロキ⋯兄さん⋯⋯」
雨は流していく。ウォルターの嗚咽も何もかも。
クロウはただそれを見て見ぬふりをするだけだった。
クロウは帰宅すると、
「やあ、クロウ。お邪魔してるよ」
「フレディか久しぶりだな」
古馴染のフレディが家でフィーカを啜っていた。
「爺様や叔父さん。元気してるか?」
「ああ、師父も師叔も元気にしてるよ」
俺たちは歓談する。
「で、だ」
フレディは1枚のデータチップを出す。
「同士クロウ⋯君に依頼だ。
詳細は之で⋯⋯」
フレディは友ではなく、解放戦線のリング・フレディとしてで伝える。
「了解した」
俺は短く応えた。
そしてフレディが帰ると俺は自室の端末でチップの中身を見る。
ーーーーーーーーーー
クロウ。君を酷使するようだが依頼を頼む。
スパイからの報告で、XX日の午後XX時にアーキバスが補給物資を壁へと送り込む。
君にはこの護衛部隊とその隊長V.Ⅴホーキンスを撃破して貰いたい。
尚、輸送部隊襲撃は此方で対応する予定だ。頼んだぞ。
ーーーーーーーーーー
俺は今回のミッション概要を聞き、装備を考える。
それからアーキバスの補給日
V.Ⅴホーキンスは端末を観ていた。
ホーキンスはヴェスパーの中では古参であり、スネイルに苦言を申し込んでも許される一人である。(鬼のスネイル。仏のホーキンスとも言われている)
他にも人格者としてヴェスパーの面々から好かれている彼だが⋯⋯一点だけ欠点が有った。
「アリサももう卒業か〜。早いものだね〜〜」
妻子の自慢話がクソ長いのである。
と言うより、ヴェスパーの番号付きで唯一の既婚者⋯⋯子持ちである。
「早く家に帰りたいよ」
と、単身赴任の中高年そのもののため息をしてしまう。
そして、
バスン!
「何があったんたい!?」
『ローターブレードが1基壊れました!?』
『敵襲か!?』
『いえ、レーダーに反応は有りません!スキャンにも反応が無いためステルスの可能性も無いかと』
「仕方ない。このヘリは一度着地して、僕は地上からヘリを護衛するとしよう」
『了解しました!』
「よし、ベターな結果だな」
『しかし、よくもまぁそんなの作ったな』
俺が今回使ったのはゲームでは使わないもの。ACサイズの両手持ちスナイパーライフルだ。
そして、その隣には愛機をリモートとはいえ簡単に破壊されたメッサムがRaDMT(大型センサーと強化式通信アンテナ装備)にスポッターとして観測してもらっていた。
「んじゃま、俺はホーキンスを殺ってくるから、通信宜しく」
「りょーかい」
そう言って俺はスナイパーライフルをメッサムに預けて機体を飛翔させる。
機体を不時着させた後ホーキンスは愛機リコンフィグで外に出ると、
ドドンっ!
グレネードが襲ってきた。
「一体何者だい?」
しかし、クイックブーストで何とか避ける。余裕で回避したと言わんばかりに、
『V.Ⅴホーキンスだな。悪いがお命頂戴致すと言う奴だ』
「悪いけど、それは無理な相談だ」
ホーキンスはプラズマライフルを構え、放つ。
開戦の合図と言わんばかりに
コア以外は記憶にあるリコンフィグだ。
そう言えばあのパーツは封鎖機構が来た以降に作られたと書いてあったな⋯⋯と思い出す。
『識別反応。ブラックバード。ラスティくんの言っていたのは君だね⋯⋯』
「悪いが、お前等と話すこと等無い」
『嫌われてるね⋯⋯無理もないか⋯⋯』
普通、人間を洗脳する再教育センター。人間をMTの部品にするファクトリー。そんな組織に務めている人間と話したいと思うか?
しかも自分はまともですと言わんばかりの態度。
少しだけ腹が立つ。
俺はグリップに込める力が少し増えた事に気が付く。
落ち着け⋯
俺は冷静に奴を殺すだけだ。
2機のACは二脚と四脚の違いはあれども武装構成や戦闘スタイルは似通っていた。
『やるねぇ⋯⋯ラスティくんが苦戦する訳だ』
しかし、戦況はホーキンスの劣勢だ。
元々ホーキンスの戦闘能力はヴェスパーの中でも高い方では無い。
若い頃はそれなりに血気盛んで後輩のスウィンバーンと共に強化人間と化したものの、大切な者を得て、丸くなり(物理的にも)子を授かり、若い才能に驚き、若い才能を育て、会社に貢献していく。
けれど、ある時、心に理由のわからないしこりが残っている事に気づく。
この星に来てからは特に酷い。
『V.Ⅴ。救援を!救援を!』
雑音が酷い。ああ、もう勘弁してくれ!僕は僕は!!
『おい⋯⋯気抜いてるのか?』
「あっ⋯⋯」
気がつけば機体のAPは尽きていた。
目の前には灰色の空が見える。
「死にたく⋯⋯いや、死ね!死ね!死ね!全部!全部!!ぶっ壊れてしまえば良いんだ!!」
ホーキンスは怨嗟を込めた目で空を見あげて叫ぶ。もう自分は死ぬんだからだ。
遠く、地球圏のとある邸宅にて、
「ママ!アーキバス本社の最終面接受かったよ!」
「おめでとう。アリサ!」
「パパにも言わなきゃ!」
騒いでいると、爽やかな男性が歩いてくる。
「見て!
ホーキンスとは似ても似つかない男をパパと呼ぶアリサ。
そう。現代社会でも稀にある托卵である。
パパと呼ばれた男はアーキバスの支社社長である。
この様に既婚者だろうとナンパしては子供を住まわせて夫や彼氏には長期出張等で相手との時間を奪わせる。
特にホーキンスはヴェスパーで自分が何かをする前にあっちこっちに行くし、何年も前から家には帰れないから、弁護士や行政を使い既にホーキンスと離婚(本人には非通知)している。
そして、ホーキンスは妻の托卵の事も全て知っていた。だけど、人を殺し、洗脳し、部品とする。そんな外道の行為に彼の心は耐えきれなく、自分には守るべき物が有るから戦えるんだと思い込まなければ戦えなかった。
ホーキンスは何処にでも居るような普通の男だ。
只少しだけ人よりACの才能を持ち、それをヤンチャな頃に見出されしまっただけの、
世が世なら良い夫で、いい父親、いい上司として組織の潤滑油として過ごせていただろう。
しかし、そうはならなかった。
運が悪い。誰もがよくあるそんな不幸の一例の一つ。
そして、死を目の前にして、彼の善良な仮面は剥がれ、世界を呪い死んでいく。
この世界でよくあるありふれた話だ。
クロウは倒したリコンフィグを背にし、アサルトブーストで飛び去った。
そして、解放戦線は多数の補給物資を手に入れ、輕重部隊のトップであるホーキンスを失ったヴェスパーは暫しの間戦線が硬直した。
因みにサイコパスは予想通りの反応であった。
ぶっちゃけ、片方が変わっているのにもう片方は少しも変わってないのは可笑しいかな?と思って書きました。