おじさんが魔女裁判に連れてこられてしまったときの話   作:長雪 ぺちか

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プロローグ

???

「私、ゴクチョーと申します」

 

???

「皆さん、今すぐラウンジに集合してください」

 

 

広いラウンジに少女たちが集められていた。

 

物静かに怯えている者、自由気ままに絵を描く者、恐ろしい形相でキレ散らかす者、部屋の空気に嫌悪感を示す者、不敵な笑みを浮かべる者……そして、背中に大きな銃を背負う者。

 

分かりやすい凶器を目の当たりに私は唾を飲む。

 

こんな状況だというのに、探偵然とした青髪の少女はお人形のような金髪の少女とサクラの花を携えた銀髪の少女にちょっかいをかけていた。

 

空気が重い。個性的な少女たちをこんな空間に閉じ込めて一体なにが始まるというのだろうか。

 

???

「みんな初対面だと思うから、自己紹介でもしないかい?」

 

《蓮見レイア》

「私は蓮見レイア。言い出した私から名乗るのが礼儀だろうから、名乗らせてもらうよ」

 

《遠野ハンナ》

「遠野ハンナ……ですわ。よろしくお願いご機嫌遊ばせ?ですわ!」

 

《橘シェリー》

「はーい! 橘シェリーですっ。何だか重苦しい雰囲気ですよねー!事件があればこの名探偵にお任せください!」

 

《桜羽エマ》

「ボ、ボクは桜羽エマだよ」

 

《氷上メルル》

「わ、私はっ……氷上メルルです……っ」

 

桜の少女のセリフ半ばでビクビクとした少女が割り込む。自己紹介に失敗し、桜の少女は肩を落としていた。

 

シスター然とした少女は桜羽さんに駆け寄ると、膝に手をかざした。すると驚くことにその傷が、治っていく。

 

氷上さんの不思議な力に、少女たちは一同驚きを隠せずにいた。まさか、彼女も使えるのか──魔法が。

 

そして、自己紹介は続く。

 

《沢渡ココ》

「あてぃしは沢渡ココね。よろ〜」

 

《宝生マーゴ》

「私は宝生マーゴよ。可愛い女の子がこんなに、ウフフ」

 

《紫藤アリサ》

「チッ、紫藤アリサ。おめーらとつるむつもりはねぇから話しかけんな」

 

???

「………………」

 

《蓮見レイア》

「どうしたんだい? 警戒するのも分かるけど、ぜひ君にも自己紹介をしてもらいたい」

 

《夏目アンアン》

『わがはいは夏目アンアンである。ほおっておいてほしい』

 

少女はスケッチブックに文字を書き自己紹介を済ます。言葉を発せないのだろうか?

 

《黒部ナノカ》

「……黒部ナノカ」

 

《二階堂ヒロ》

「私は二階堂ヒロだ」

 

《城ケ崎ノア》

「のあはのあだよ?城ケ崎ノア」

 

私を除く全員の自己紹介が終わり、少女たちの視線が私に集まる。さて……私も何かを言うべきか……

 

呼吸する音すら聞こえてきそうな緊張感の中、猫耳少女が沈黙を破る。

 

《沢渡ココ》

「てかさ、そのおっさん誰?」

 

その声を掻き消すように天井の方から不気味なフクロウが飛来する。間一髪、少女たちの注目を奪った。

 

フクロウの到着に合わせて、見上げるほどの背丈をした人外がスッと現れる。人外は鋭く大きな鎌を六つの腕で構えていた。

 

《ゴクチョー》

「全員揃ったみたいですね……。この屋敷の管理を任されているぷりちーなフクロウ、ゴクチョーと申します」

 

《ゴクチョー》

「薄々気づいていると思うので……さっさと説明していきますね……」

 

《ゴクチョー》

「簡単に言って、皆さんは【魔女】になる因子を持っています。【魔女】はこの世に災厄をもたらします。ですから、この牢屋敷へ隔離する必要があるんですね。つまりまあ、この世界の悪者ということで……諦めてください」

 

《ゴクチョー》

「というわけで皆さんには今日からこの牢屋敷で囚人として生活してもらいます。食事も衣服も保証されてますので……余生はここで楽しく過ごしてください」

 

《ゴクチョー》

「【大魔女】が見つかれば話は別ですけど……あまり期待とかさせてもあれですね……」

 

《ゴクチョー》

「くれぐれも脱獄なんて考えないください……看守がいますので……死にます、簡単に……」

 

《二階堂ヒロ》

「…………間違っている。この中に魔女がいるならば、それは明白だ」

 

二階堂さんはまっすぐと指し示す。その先にいた桜羽さんは両手をあげて無罪を主張した。

 

《桜羽エマ》

「ボ、ボクじゃないよ!」

 

二階堂さんは火かき棒を手にする。なにをするのかは明白だった。

 

私はすぐに彼女の腕を掴み、その歩みを止めた。

 

???

「ちょっと君、なにをするつもりなんだい」

 

私が言葉を発したことで、少女たちに緊張が走る。見ようによっては、私は面前の異形たちより異質な存在だ。

 

何故なら私はこの中で唯一、『おじさん』なのだから。

 

《ゴクチョー》

「ありがとうございます、ミリアさん……止めなかったら彼女、死んでたかもしれないので。初日から残業は嫌ですから……」

 

《沢渡ココ》

「え、ミリア? おっさん、ミリアっていうの?うげー。キラキラネームかよ」

 

???

「い、いや。おじさんはミリアでは……はあ、そういうことだったんだね」

 

《おじさん》

「おじさんは佐伯ミリアさんの知り合いの……弁護士のおじさんだよ」

 

《二階堂ヒロ》

「べ、弁護士!? た、正しすぎる……!」

 

《桜羽エマ》

「ヒロちゃん?」

 

《ゴクチョー》

「おや?そんなはずはないんですけどね……あまりネタバレするのも良くないですが……ミリアさんの魔法は【入れ替わり】です。中身は正真正銘少女ですよ……」

 

《橘シェリー》

「入れ替わり! このおじさんの中に女の子の精神が入っているんですねー! すごく魔法っぽくて興味深いです!」

 

《おじさん》

「いや、本当に中身もおじさんだよ。確かに佐伯さんと入れ替わったことはあったけどね……彼女は強かった。ちゃんと自分自身に向き合って、自分の身体に戻ったんだよ」

 

《橘シェリー》

「あれー? 本当におじさんなんですか? 何か証拠はありますか?」

 

《おじさん》

「この見た目が証拠と……言いたいところだけど今はその論が通らないんだよね? 魔法を考慮すると厄介だ。推定無罪ってことにはできないかな」

 

《黒部ナノカ》

「……私がやるわ」

 

そうして銃を背負った少女が私に触れた。ここには魔法の使える少女たちが集められた。彼女は恐らくサイコメトリーに近い能力を持っているのだろう。

 

《黒部ナノカ》

「…………彼の言っていることは本当よ。弁護士の仕事をしていたというのも本当のようね」

 

《二階堂ヒロ》

「やはり弁護士……正しすぎる……!」

 

《ゴクチョー》

「これは困りましたね……こういう場合どうしたらいいんでしょう……マニュアルとかは……ないですよね。とはいえ此処から返すわけにはいきませんし……殺してしまいましょうか」

 

《おじさん》

「ちょ、ちょっと待ってくれ! ゴクチョーさん、貴方はさっき『【大魔女】が見つかれば話が別』と言っていたね。なら、おじさんがそれを手伝う。それでどうかな? おじさんはこう見えても頭がいいんだ」

 

《氷上メルル》

「そ、それはすごいですねっ……でも……どれくらい頭が……いいんですかっ?」

 

《二階堂ヒロ》

「メルル、キミには常識がないのか? 理系の医学部、文系の法学部……高校生であればこれらがどれだけ高いレベルに位置するかくらい知っているはずだ。この低学歴が」

 

《桜羽エマ》

「ヒロちゃん……?」

 

《氷上メルル》

「それは……すみませんっ……うううっ……」

 

《氷上メルル》

「で、でもっ……それはいい考えだと思います! おじ様が大魔女様を探すのは……ゴクチョーさんにも利益がある……ですよねっ?」

 

《ゴクチョー》

「はあ……死体の処理をするのも面倒なんで、それで良しとしましょう。夜時間の間は牢屋敷に戻らず医務室で寝てください……間違いがあってもアレなので」

 

不気味なフクロウと鎌の異形が去っていく。

 

こうして残された12人の少女たちの獄中生活が始まった。

 

明らかに場違いな弁護士のおじさんと共に。

 

 

〜♩

(ここでオープニングムービー)

 

 

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