おじさんが魔女裁判に連れてこられてしまったときの話   作:長雪 ぺちか

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夏目アンアンとの話③

 

【審問開始】

《おじさん》

「夏目さんは昔からトラブルを引き起こしていた。かつては両親を壊れた人形にしてしまい、現在は魔女裁判を起こしてひとりの命を奪おうとしている」

 

《おじさん》

「しかし魔女裁判に関しては完全に夏目さんだけのせいとは言い切れない。例えば、氷上さんの死体の確認を怠ったことも問題だったと言えるだろう」

 

《夏目アンアン》

『それでも、わがはいがきっかけを作ってしまったことは否定できない』

 

《おじさん》

「それはその通りだ。しかし、被害者であるおじさんが夏目さんのことを許している以上、現在の魔女裁判の責任全てが夏目さんに帰着するとは考えられない」

 

《おじさん》

「むしろ本件に関しては勘違いをした氷上さん、融通の効かないゴクチョーさんの2人の方が過失の割合が高いとは考えられないかな?」

 

《夏目アンアン》

『考えられない。過ちは繰り返される。元を断つことこそが、最善の策のはずだ』

 

《おじさん》

「夏目さんはそう考えるんだね」

 

《夏目アンアン》

『わがはいの考えが間違っているというのか?』

 

《おじさん》

「もちろんだとも。君は間違っている。夏目さんがそれを受け入れられなくても、おじさんが何度だって否定してみせる」

【審問終了】

 

 

《おじさん》

「夏目さんはやはり自分がトラブルメーカーである自覚はあるらしい。その結果生まれたのが、究極の自己抑制による再犯防止ということか」

 

《おじさん》

「しかし、世の中はそこまで窮屈なものじゃない。世間知らずのお姫様に現実を教えてあげよう」

 

 

【審問開始】

《おじさん》

「夏目さんは昔からトラブルを引き起こしていた。かつては両親を壊れた人形にしてしまい、現在は魔女裁判を起こしてひとりの命を奪おうとしている」

 

《おじさん》

「しかし魔女裁判に関しては完全に夏目さんだけのせいとは言い切れない。例えば、氷上さんの死体の確認を怠ったことも問題だったと言えるだろう」

 

《夏目アンアン》

『それでも、わがはいがきっかけを作ってしまったことは否定できない』

 

《おじさん》

「それはその通りだ。しかし、被害者であるおじさんが夏目さんのことを許している以上、現在の魔女裁判の責任全てが夏目さんに帰着するとは考えられない」

 

《おじさん》

「むしろ本件に関しては勘違いをした氷上さん、融通の効かないゴクチョーさんの2人の方が過失の割合が高いとは考えられないかな?」

 

《夏目アンアン》

『考えられない。過ちは繰り返される。元を断つことこそが、最善の策のはずだ』

 

 

<ガラスの割れる音・おじさんの論破スチル>

 

《おじさん》

【賛成】「過ちは繰り返される……その通りだと思うよ。きっと、夏目さんが生きていればこれからも多大なる問題を引き起こすだろうね」

 

《おじさん》

「でもね夏目さん。人生は…… 何度だってやり直せるんだよ」

 

《夏目アンアン》

「……っ!?」

 

《おじさん》

「夏目さんはきっとこれまで間違いすぎた。何度も間違えると人は無力感を覚える。自分は何をやってもダメだって人生を悲観してしまうことだろう」

 

《おじさん》

「その結果、“元凶を断つ”という考えが君の中に生まれたのかもしれない。自分が何も言わなければ、自分が誰とも関わらなければ、自分が我慢すれば、自分が死ねば…………確かにそうすれば、間違いは起きない」

 

《おじさん》

「でもこの世の中はそのようにできていないんだよ。誰だって過ちを犯す。ふとした瞬間に、被害者にも加害者にもなる」

 

《おじさん》

「だから過ちを犯したら罪を償うんだ! もちろん罪を償っても完全に真っ白な人間に戻れるわけじゃない。これは法律的にではなく、人の感情的な話だ」

 

《おじさん》

「それでも、白になることを目指して何度だってやり直していいんだ! 少なくともおじさんは、何度間違ったって夏目さんのことを受け入れるよ」

 

《夏目アンアン》

「………………」

 

《夏目アンアン》

『わがはいは許されてもいいのか』

 

《おじさん》

「もちろん。夏目さんが自分を許せなくても、おじさんは君を許す。夏目さんが自分のことを許せる日が来るまで、おじさんはいくらでも君の力になるよ」

 

私は夏目さんの目をしっかりと捉えてそう告げる。

少女の様相が完全にではないが徐々に“人間”らしくなっていく。

それは彼女が自身を赦すことができつつある証拠だった。

 

《夏目アンアン》

『おじさんは優しすぎる』

 

《夏目アンアン》

『わがはいが許されてもいいことは納得した。そして、死で償うことがよくないことも』

 

《夏目アンアン》

「だけど…………」

 

《夏目アンアン》

『だが、わがはいは分からないのだ! わがはいは一体何をすれば……“家族を崩壊させた罪”が許されるんだ!』

 

《夏目アンアン》

『教えてくれ、おじさん。わがはいが受けるべき罰を!』

 

夏目さんの目に光が浮かぶ。彼女はすでに、生きることを受け入れた。

あとは彼女の背中を一押しするだけだ。

閉廷は近い。2人ぼっちの法廷で、私たちは最後の審問へと突入した。

 

 

<おじさんと夏目アンアン最終戦のカットイン>

 

【審問開始】

《夏目アンアン》

『わがはいは【洗脳】の魔法で両親を操り人形にし、家庭を崩壊させた

 

《夏目アンアン》

『おじさんの言う通り、当時わがはいの魔法は弱かったことからお父さんたちにはわがはいのわがままを叶えてあげたい意思があったのだと思う』

 

《夏目アンアン》

『それでも、原因がわがはいにあったのは変わらない。わがはいが“わがまま”すぎたのが全ての始まりだった』

 

《夏目アンアン》

『わがはいは強欲だ。昔から欲しいものがあればなんでも手に入れたくなってしまう。だから、わがはいは幸せを願ってはいけないのだ!』

 

《夏目アンアン》

『これは誓いであると同時に──家族を崩壊させた、わがはいへの罰だ』

 

《夏目アンアン》

『わがはいの考えは間違っているのか? わがはいにはこれ以上の罰が思いつかない。罪を償うためなら何でもしてみせる。命以外の全てを捧げる! わがはいにはその覚悟がある!』

【審問終了】

 

 

《おじさん》

「夏目さんは相変わらず考えが極端だ。彼女なりに考えた結果なのだろうけども、そんな生き方はあまりに辛すぎる」

 

《おじさん》

「彼女がするべき償いは決まっている。さあ、全てを終わらせて一歩前へと踏み出させよう」

 

 

【審問開始】

《夏目アンアン》

『わがはいは【洗脳】の魔法で両親を操り人形にし、家庭を崩壊させた

 

《夏目アンアン》

『おじさんの言う通り、当時わがはいの魔法は弱かったことからお父さんたちにはわがはいのわがままを叶えてあげたい意思があったのだと思う』

 

《夏目アンアン》

『それでも、原因がわがはいにあったのは変わらない。わがはいが“わがまま”すぎたのが全ての始まりだった』

 

《夏目アンアン》

『わがはいは強欲だ。昔から欲しいものがあればなんでも手に入れたくなってしまう。だから、わがはいは幸せを願ってはいけないのだ!』

 

 

<ガラスの割れる音・おじさんの論破スチル>

 

《おじさん》

【反論】「幸せを願ってはいけない人間なんてこの世にひとりもいないんだよ。公共の福祉に反しない限りね」

 

《おじさん》

「男も女も、若者も老人も、善人も悪人も……幸せを追い求める権利をおじさんたち全ての人間が持っているんだ」

 

《おじさん》

「そして夏目さん、君は根本から間違っている。考えうる限りそれは最悪の償い方だよ」

 

《夏目アンアン》

「…………っ」

 

夏目さんの顔が歪む。

当然だ。私は今、彼女の全てを否定したのだから。

 

《夏目アンアン》

「……じゃあ何だったんだ……」

 

《夏目アンアン》

「わがはいだって……いっぱい考えた……いっぱい悩んで、いっぱい後悔した……」

 

《夏目アンアン》

「わがはいの人生は……全て間違いだったのか!」

 

興奮した夏目さんは手よりも先に口を動かす。

表情と熱量で、彼女の伝えたいことは自ずと分かった。

 

《おじさん》

「その通りだ。君は全て間違えている! 何故ご両親に夏目さんの魔法が効いたのか忘れたのか!」

 

《おじさん》

「君のことが好きだったからだろう? 可愛くて可愛くて仕方なかったからだろう!?」

 

《おじさん》

「だったら君は幸せにならないとダメだ! ご両親がそう願ったように!」

 

《夏目アンアン》

「…………っ!」

 

夏目さんは大きく目を見開く。過去の記憶が彼女の心を貫いた。

 

《おじさん》

「親が子供の幸せを願うのは当然のことなんだよ。君から見てご両親がどんな存在なのかは分からない。だけど、ご両親から見た君はきっと、君が願った通り──お姫様だったはずだ!」

 

《おじさん》

「夏目さん、もう一度やり直そう。今度は他の人に迷惑がかからないようにしながら、幸せを願うんだ」

 

《おじさん》

「そうして“親孝行”をすること──それが君に最もふさわしい贖罪だと……おじさんは思うよ」

 

私は一歩ずつ近付き、夏目さんの手を取る。

少女の手は小さく脆い。

気付けば魔女化によって生まれた角は小さくなっていた。

一度は道を踏み外しかけた彼女は“人間”へと戻ってきた。

 

夏目さんはボロボロと涙を流し、嗚咽まじりに筆を走らせた。

 

《夏目アンアン》

『本当に良いのか? わがはいなんかが幸せを願って』

 

《おじさん》

「いいんだよ、夏目さん。人間はその権利を生まれながらにして持っている」

 

《おじさん》

「もし夏目さんが本当にご両親に報いたいというのならば、君はその権利を手放すべきじゃないよ」

 

《夏目アンアン》

「……ううっ………………うわあああああああ!!!!!」

 

そして夏目さんは私の胸へと飛び込む。

夏目さんの鳴き声は、きっと裁判所に響いているんだろう。

生まれ変わった彼女の第一声を聞くことができず残念だ。

 

不意に押し寄せた疲労感に、私は裁判席にもたれかかるのだった。

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