おじさんが魔女裁判に連れてこられてしまったときの話   作:長雪 ぺちか

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ここから下ネタが多くなると思われるのでで苦手な方はお控えください(注意)


おじさん殺人事件①

 

[医務室]

 

氷上さんに、自身が“黒幕”であることを告げられ一週間。

 

黒幕の一員となったとはいえ、私は日中これまでとなんら変わりのない生活を送っていた。

 

しかしながら、全くの変化もなかったわけではない。

 

それは少女たちが牢へと戻る夜時間になってから始まる──

 

《氷上メルル》

「それではおじ様、本日もよろしくお願いしますっ……」

 

氷上さんは宣言通り、毎晩夜這いを仕掛けるようになっていた。

 

《氷上メルル》

「中々赤ちゃんが出来ませんね。方法は合っているはずなのですけど……」

 

《おじさん》

「人間の妊娠期間は昔から十月十日と言われているからね。お腹が大きくなり始めるのは大体5ケ月くらいはかかるかな。もし氷上さんが妊娠していたとしても、それがわかるのはまだまだ先だよ」

 

《氷上メルル》

「妊娠していたとしても……?」

 

《おじさん》

「…………今のは言葉の綾だよ。氷上さんはちゃんと妊娠している。そのはずさ」

 

《氷上メルル》

「うううっ……でも私少し心配になってきました。もしかしたら私たちの愛が足りていなかったのかもしれませんっ」

 

《おじさん》

「……はい?」

 

《氷上メルル》

「おじ様も仰っていましたよね。私がこの計画を思いついたのは愛がもたらした奇跡だって!」

 

《氷上メルル》

「赤ちゃんが産まれるのだって、奇跡のようなものです! 愛の力で乗り切れるはずですっ!」

 

《氷上メルル》

「おじ様、もっと私のことを愛してくださいっ! 私も、もっとおじ様のこと好きになりますっ!」

 

《おじさん》

「…………あ、ああ。その通りだね。氷上さん、大好きだよ」

 

《氷上メルル》

「えへへっ……おじ様に好きって言われるとなんだかポカポカした気分になります。私も……おじ様のこと大好きですっ。で、でもっ勘違いしないでくださいね。二番目にですよ?」

 

《おじさん》

「誰か助けてくれ……もう理性が保たない……」

 

少女の純粋な笑顔に私の理性が削られ、そんな彼女を騙していることで心が痛む。

 

早く……早く大魔女を見つける他の方法を見つけないと……

 

???

「…………………………」

 

 

 

 

[図書室]

 

《おじさん》

「はあ……どうしてこうなってしまったんだ」

 

自分で撒いた種とはいえ、こう連日氷上さんのような美少女と同衾するのは多大な心労がかかる。

 

心頭滅却し、書物へ向かう時間が癒しの時間になっていた。

 

《おじさん》

「大魔女に関する記述。魔女の中には強大な魔力を持つものとそうでないものがいるのか。単に魔女たちの長、というわけではなく強い力を持った者……なるほど」

 

《おじさん》

「となると、氷上さんはそこまで強力な魔法を持っていない、ということだろうか。彼女自身は大魔女ではないのだろうから」

 

《氷上メルル》

「おじ様、私のことを呼びましたか?」

 

《おじさん》

「うわああ! びっくりした……なんだ氷上さんいたんだね」

 

氷上さんの話題を出した途端に、背後から彼女に声をかけられる。変なことを聞かれてはないだろうか。

 

図書室へとやってきた彼女は何故か大きなバケツを手に持っていた。

 

《おじさん》

「バケツなんか持ってどうしたんだい?」

 

《氷上メルル》

「エマさんが熱を出してしまったんです。その看病で……」

 

《おじさん》

「そうだったんだね。それは大変だ。おじさんに手伝えることは何かあるかな?」

 

《氷上メルル》

「そのことでおじ様にお話があって来ました」

 

《氷上メルル》

「毎晩おじ様は医務室で寝ていますが……今夜は図書室でお休みになってもらってもいいでしょうか? エマさんの看病がありますので……」

 

《おじさん》

「なるほど。氷上さんは偉いね。おじさんの寝床についてはもちろん大丈夫だよ」

 

《氷上メルル》

「ありがとうございます。そういうことですので……」

 

《氷上メルル》

「今夜はおじ様と子作りできません。エマさんの体調が戻ったらまたお願いしますねっ」

 

《おじさん》

「……了解だよ。そのときはまたよろしくね」

 

そう耳打ちすると、氷上さんはにっこりと笑顔を向けて図書室を後にした。

 

心臓に悪すぎる……

 

なんにせよ桜羽さんの体調が戻るまで図書室に籠りっきりの生活になりそうだ。

 

《おじさん》

「図書館でお泊まり……少しいけない気分で楽しみだ」

 

感覚としてはキャンプに近いだろうか。こんな歳だというのに図書室に住み込み生活を送ることにワクワクしている自分に驚くのだった。

 

 

 

 

[医務室]

 

翌日。

 

夜が明け、朝の日差しが医務室へ注ぐ。

扉を開けると朝の清々しい空気が部屋を駆け抜けた。

 

《氷上メルル》

「エマさん、体調はどうですか?」

 

《桜羽エマ》

「ありがとう、メルルちゃん。おかげで少しは良くなってきたと思うよ」

 

《氷上メルル》

「それはよかったですっ。朝ごはんは食べれそうですか? 食べたいものがあれば言ってください……」

 

《桜羽エマ》

「それじゃあ、りんごが食べたいな。風邪にもいいって聞くから」

 

《氷上メルル》

「分かりました。私、食堂で取って来ますね……」

 

 

[食堂]

 

食堂ではシェリー、ハンナ、アリサ、レイアが朝食を取っていた。

 

《遠野ハンナ》

「このゴリラ女!りんごをすりつぶしてジュースにするんじゃねーですわ!勿体無いでしょう!」

 

《橘シェリー》

「いいじゃないですかー。これも美味しい食事を取るための工夫ですよ! はい、ハンナさん、飲んでください!」

 

《遠野ハンナ》

「わたくし用でしたの!? シェリーさんが自分で飲んだらいいのに」

 

《橘シェリー》

「りんごをつぶしたら手が汚れてしまって今はそれどころじゃないんです。手を洗いに行ってきます!半分くらい残しておいてくださいねー」

 

《遠野ハンナ》

「ぶ、無様ですわね〜!」

 

メルルに気がつくとレイアはパンをテーブルに置き手を上げた。

 

《蓮見レイア》

「おや、メルルくんおはよう。これから朝食かい?」

 

《氷上メルル》

「あっ、いえ……エマさんがりんごを食べたいと言うので取りに来たんです……」

 

《蓮見レイア》

「そういえばメルルくんはエマくんの看病をしていたんだったね。何か助けが必要なときには私になんでも言ってくれたまえ!」

 

《氷上メルル》

「ふふっ……ありがとうございます。それでは……後でバケツの水の交換を手伝っていただけると嬉しいです……」

 

《蓮見レイア》

「了解した! 食事を終えたら医務室に運んでおくよ」

 

《紫藤アリサ》

「氷上、桜羽の様子はどうなった?」

 

《氷上メルル》

「もう熱は下がりました。ただ……まだ体調は優れないみたいです」

 

《紫藤アリサ》

「そうか……これも持っていってやってくれ。炎の魔法で炙ったパンだ。ウチにできるのは……これくらいしかねえ」

 

《氷上メルル》

「あ、ありがとうございますっ! エマさん、きっと喜ぶと思います」

 

メルルがその場を離れようとしたところで、眠そうに目をこすりながらアンアンが食堂へやってきた。

 

《夏目アンアン》

『アリサ、わがはいの分も炙ってくれ』

 

《紫藤アリサ》

「挨拶より先にそれかよ、夏目。まあいいけどよ」

 

《夏目アンアン》

『最近朝食が美味しくてわがはいの食欲が爆発している』

 

《紫藤アリサ》

「それは否定しねえ。ったく、ゴクチョーは何考えてんだ?ウチらに不味い飯と美味い飯を交互に食わして実験でもしてんのか」

 

《夏目アンアン》

『不味い飯を出すのはもうやめていただきたい』

 

一週間前まだ出されていた朝食を思い出し、絶望に満ちた表情でアンアンはパンを齧る。

 

アリサの魔法によって仕上がったそれはサクッと音を立て、アンアンはすぐに満足そうな顔になるのだった。

 

 

[裁判所前通路]

 

エマが再び眠りについたので、メルルは図書室へ向かっていた。

 

《氷上メルル》

「おじ様は元気でしょうか……エマさんのことを見ていたらおじ様の体調も心配になって来ました……」

 

《氷上メルル》

「一晩会っていないだけだというのに……私、どうしてこんなに不安になっているのでしょう……」

 

大魔女の捜索は軌道に乗っていた。このチャンスを逃すわけにはいかないという焦りがメルルにはあった。

 

 

[図書室]

 

《氷上メルル》

「おじ様……いらっしゃいますか……?」

 

メルルは恐る恐る図書室へと踏み入れる。おじさん以外に誰かがいてもいいように、囚人としての態度を貫いた。

 

《氷上メルル》

「何やら変なにおいがします……何かあったんでしょうか……」

 

メルルはそのまま図書室の中を探索する。幸い他の囚人がいる様子ではなかったのでその歩みは段々と早くなる。

 

そして、彼女は見つけてしまった。

 

 

<下半身を露出したおじさんの死体スチル>

 

 

《氷上メルル》

「おじ様……おじ様!?」

 

図書室の最奥。大きな机の上に下半身を露出したおじさんが横たわり、ピクリとも動かない。

 

彼の周囲には白い液体が大量に撒き散らされており、それはさながら芸術品のようにおじさんを演出していた。

 

《氷上メルル》

「いやああああああ!!!!!」

 

メルルの痛烈な悲鳴が図書室に響く。

 

図書室に少女たちの囚人生活が始まりおよそ半月──最初の事件の犠牲者は場違いなおじさんとなるのだった。

 

 

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