おじさんが魔女裁判に連れてこられてしまったときの話 作:長雪 ぺちか
《ゴクチョー》
「死体が発見されました。一定の時間後、魔女裁判を開廷します」
ゴクチョーのアナウンスが屋敷全体に響いた。
◇
[ラウンジ]
《宝生マーゴ》
「うふふ……ついに始まったのね。一体誰が殺されたのかしら」
《沢渡ココ》
「あてぃし絶対死体とか見たくないんですけど」
◇
[医務室]
《二階堂ヒロ》
「殺人……ついに起きてしまったか。私は様子を見にいってくる。エマはここで休んでいろ」
《桜羽エマ》
「ヒロちゃん……ボクも一緒に行くよ。何か力になれるかもしれないから」
《二階堂ヒロ》
「はあ……では私もここにいよう。エマ、君は体調を崩している。今出歩くのは正しくない」
《桜羽エマ》
「……ありがとう。えへへ……ヒロちゃんは優しいね」
《二階堂ヒロ》
「桜羽……エマっ……(怒)(怒)」
《桜羽エマ》
「ヒロちゃん……?」
◇
[花畑]
《橘シェリー》
「ハンナさん!事件ですよ!じーけーん! 早く現場に行きましょ!」
《遠野ハンナ》
「シェリーさんどうしてそんなに楽しそうなんですの……人が死んでいるんですわよ」
《橘シェリー》
「だってシェリーちゃんは名探偵ですから! 血が騒ぎます!」
《遠野ハンナ》
「しょうがないですわね……」
◇
[図書室]
《橘シェリー》
「ここが現場ですねー。一体誰が死んでしまったんでしょう?ワクワクします」
《遠野ハンナ》
「こら、不謹慎すぎますわよ」
《橘シェリー》
「なになにこれは…………」
《橘シェリー》
「ハンナさん……ハンナさんは来ない方がいいかもしれません。写真を取っておくのでそちらで確認しましょうか」
《遠野ハンナ》
「何でですの! せっかくついて来てやったのにそれはねーですわよ!」
《橘シェリー》
「いやー、本当にやめておいた方がいいですよ。普通に気持ち悪いので」
《遠野ハンナ》
「ひいっ……まさかバラバラ死体……」
《橘シェリー》
「いえ、そういうのではありませんね」
《遠野ハンナ》
「じゃあいいじゃありませんの。わたくしも確認しますわ」
《遠野ハンナ》
「……………………」
《遠野ハンナ》
「………………………………」
《遠野ハンナ》
「何ですのこれはーー!!!!」
《遠野ハンナ》
「さいっあくですわ! おじさんの下半身なんて誰も見たくありませんの! それに……アレな液体まで……! 本当に何なんですの!」
《橘シェリー》
「だから言ったじゃないですか。これ、もしかして私たちが被害者なんじゃないですか?猥褻物陳列罪です」
《遠野ハンナ》
「シェリーさん戻りますわよ! こんな卑猥なところにいていられませんわ!」
《橘シェリー》
「そうですねー。気晴らしに外の空気でも吸いに行きましょう!」
*
死体発見から1時間。
シェリーが写真を撮ったこともあり、大半の少女はその写真を見て状況を把握した。
実際に死体の確認をしに行った少女たちも、状況が状況なだけあって軽く一瞥して図書室から去っていくのだった。
《ゴクチョー》
「えー、時間になりましたのでみなさま裁判所までお集まりください」
ゴクチョーのアナウンスが再び屋敷に響く。
一同あまり乗り気じゃない中、裁判の時間が来てしまった。
*
<裁判開始のBGM>
《桜羽エマ》
(ついに始まってしまった魔女裁判。この中に殺人犯がいるなんて嘘だよね……?)
《桜羽エマ》
(それ以上に、話し合いがちゃんと進むのかが心配だ。ボクはシェリーちゃんに死体の写真を見せてもらっただけだけど……何というか……ボクたちが関わるべき内容じゃない気がする)
《桜羽エマ》
(それでもやらなくちゃ。殺人を犯した魔女を見つけないと、いずれボクたちの誰かが被害に遭っちゃうかもしれない)
何を話せばいいのかわからず、少女たちは互いの顔色を伺っていた。
そんな中レイアが手を挙げ、先陣を切った。
《蓮見レイア》
「みんな、気が滅入るのも仕方ない! 私も死体の状況を写真で見たよ。非常に口にしにくい内容だった。それでも力を合わせて犯人を見つけようじゃないか!」
《紫藤アリサ》
「というかこれ犯人本当にいんのかよ。おっさんの自爆ってことじゃだめなのかよ」
《沢渡ココ》
「それはダメじゃね? あのおっさんのことはどうでもいいけどさ、死人が出たってことは誰かが魔女になったってことじゃん」
《蓮見レイア》
「ココくんの言う通りだ。もちろん、おじさんの件は気の毒に思う。しかーし!これ以上死人が出ないためにも私たちは犯人を見つけなければならないんだ!」
《氷上メルル》
「その必要はありません……」
メルルはボロボロと涙をこぼしながらレイアに反論する。
《桜羽エマ》
(メルルちゃん……そんなにおじさんが死んだのが悲しいんだ。確かに仲良くしているところをよく見たけど……)
《蓮見レイア》
「メルルくん? それは一体どういうことなんだい?」
《氷上メルル》
「だって……犯人はもう分かっていますから」
メルルは涙を拭うを、赤く腫れた目でノアをとらえた。
《城ケ崎ノア》
「……!?」
【審問開始】
《氷上メルル》
「おじ様の死体の周りには白い液体が散らばっていました……」
《氷上メルル》
「医務室にそんな色の薬品はありません。あれはきっと……絵の具だったんです!」
《氷上メルル》
「だから犯人はノアさんです! そうに決まっています!」
《城ケ崎ノア》
「の、のあは何にもしてないよ?」
《氷上メルル》
「とぼけないでくださいっ! ノアさんがおじ様のことを殺そうとしたのは知っています!」
《城ケ崎ノア》
「たしかにのあはおじさんのことを殺そうとしちゃったこともあるけど……」
《氷上メルル》
「やっぱり! 動機は十分あります! 犯人はノアさんですっ!ノアさんなんです!」
【審問終了】
《桜羽エマ》
「メルルちゃん、完全に理性を失ってる。それだけおじさんが死んだのがショックなんだ」
《桜羽エマ》
「そのせいで普通になら気付くことに全然気付いていない。……言いにくいけど……言わなくちゃ」
【審問開始】
《氷上メルル》
「おじ様の周りには白い液体が散らばっていました……」
《氷上メルル》
「医務室にそんな色の薬品はありません。あれはきっと……絵の具だったんです!」
<ガラスの割れる音・エマの論破スチル>
《桜羽エマ》
【反論】「ちょっと待って。本当にあれは絵の具だったのかな?」
《氷上メルル》
「そうじゃないんですか……?」
《桜羽エマ》
「うん。ええっと……みんなもそう思うよね?」
エマが皆に同意を求めると、少女たちは気まずそうに頷いた。
《氷上メルル》
「ではおじ様の周りにあったあの液体は……」
《宝生マーゴ》
「あれは“精液”ね。うふふ……」
《氷上メルル》
「“せいえき”……? それは一体どのような液体なのでしょう……?」
《紫藤アリサ》
「氷上、それはマジで言ってんのか?ここには女しかいないし、変にかまととぶらなくてもいいだろ」
《氷上メルル》
「いえ……私本当にわからなくて……すみません……」
《橘シェリー》
「男性の生殖細胞が入った液体のことですねー。一般に、女性の生殖細胞とくっつくことで受精卵となり、やがてそれが赤ちゃんになるんです。こんな説明でどうですか?」
《氷上メルル》
「えっ……赤ちゃんは……あの液体から出来る……?」
メルルは顔を真っ青にした後、再び涙を流す。
《氷上メルル》
「ううう……おじ様……私のことを騙していたんですね……」
《桜羽エマ》
「メルルちゃん、おじさんに騙されたってどういうことなのかな?」
《氷上メルル》
「それは……詳しくは話せませんが……私、おじ様と赤ちゃんを作ろうと思ってたんです。一緒に寝れば赤ちゃんができるって私信じてたのに……」
《沢渡ココ》
「メルっちあのおっさんと一緒に寝てたの!? マジ? おっさんきっしょ!」
《宝生マーゴ》
「あら、ココちゃん。人の恋愛観に口出しするなんて良くないわ。そういうココちゃんはどんな人が好きなのかしら?」
《沢渡ココ》
「あてぃしの話はいいだろ……まあ、あてぃしには推しがいるからね。推し以外のオスに価値なんかねーの!」
《二階堂ヒロ》
「話が逸れている。裁判所は恋愛話をするところではないだろう」
《橘シェリー》
「ヒロさんの言う通りですね。それではここは名探偵シェリーちゃんが事件の整理をしちゃいますね!」
(続く)