ラブライブ! -彼はどう変わる?-【リメイク】 作:レイヴェル
100話到達記念(?)ということで前に番外編でリクエストを頂いたので、作成しました。
番外編と銘打っている通り、この話は本編とは全く関係ありませんので、こんな可能性もあるんだな、というifであることをご理解ください。
ラブライブ!を成功させたμ's。そして音ノ木坂学院を卒業し、各々の大学へと進路を進めた神綺達。
そんなある日、神綺の携帯に一通のメールが届いた。
音ノ木坂を卒業した神綺達。にこは文系だった為に同じ大学に進むことは叶わなかったが、絵里と希は神綺と同じ大学に進学し、充実した大学生活を送っていた。
「暇だな.....」
卒業してから4ヶ月。日差しも強くなり、湿気でジメジメとした日本特有の高温多湿となる夏。クーラーの効いた家の中で神綺は希と一緒に麦茶を飲んでだらけていた。
「レポートは終わったの?」
「終わってるよ。だから暇なんだ」
希も希でこの家を出る、ということはせず、今もこの家で居候をしている。希はこのことについて複雑そうだが、母である陽子達はいいお嫁さん候補ね♪なんて言いながら公認している為になお質が悪い。
ま、俺自身嫌とは思ってないからいいのだが。
「そういえば穂乃果ちゃん達はどうしてるんだろうね」
「どうせ穂乃果のことだから勉強もしてないだろうな....」
神綺は思い出す。にこや凛と一緒に毎回テストで赤点取るか取らないかの危ない状況になっていた日々を。
「でも懐かしいね。ちょっと前のことなのに」
「大学に通い始めて色々あったからな....」
ラブライブ!で無事優勝した希達μ's。その後もなんやかんやあり、全国にまで彼女達の存在は知れ渡った。勿論、続けて欲しいなどの要望は強かったが、彼女達は解散する道を選んだ。
俺はその時、素直に彼女達を尊敬した。周りにどんなことを言われても自分達で決めたことを折らずに突き進むその勇気。自分なら絶対にそんな選択はできなかったと思う。
まぁここまではいいんだが、問題はここから。
先も言った通り彼女達の顔と名前は全国に知れ渡っている。ということはだ。勿論通おうとしている大学にμ'sのファンがいないとは言い切れないのだ。
実際入学式当日に希と絵里を見つけたファンが殺到して俺が必死に押さえ込んでいたのが懐かしい。
「穂乃果ちゃん達...元気かな」
「音ノ木坂行ってみればいいじゃないか。OGなんだし普通に入れんだろ、しかも希レベルなら顔パスで」
そしてμ'sのおかげで音ノ木坂は持ち直し、無事1学年4クラスという今まででは考えられなかった人数が新入生として入学している。
「今度行ってみる?にこっち達と一緒に」
「お、いいな。にことも最近会ってないもんな」
と離ればなれとなっているメンバーとの再会を想像しながら笑っていると不意に神綺のスマホから通知音が鳴る。
「ん?....ほぉ、こりゃまた珍しい」
「どうしたの?」
「真姫からメールだ」
「真姫ちゃん!なんだって?」
丁度話し合っていたμ'sのメンバーである一人、真姫からのメールに希は興味津々だ。
「えっと?.....なるほど。お誘いだ」
「どっか行くの?」
「場所は知らん。ただ今週の日曜空いてるかだってさ」
「今週?なにもないね。行ってくれば?」
「希は来ないのか?」
「.....はぁ」
「あ?」
なぜ希がため息をついたのかがわからない神綺は素の反応をしてしまう。
「神綺君。それは君宛でしょ?私に来てないのに私が行くって言うと思う?」
それに、と希は続ける。
「多分それはデートのお誘いだよ。そんなのに私が行くわけ無いじゃん。そこまで無神経じゃないもん」
「で、デート?」
「だってそうでしょう?とにかく、OKって返しておいたら?」
「確かになにもないが....デートかぁ?」
「男と女が二人っきりでお出かけなんてデートしかないでしょ!」
「....さいですか」
なんか納得行かない神綺だが、実際なにも無い為、大丈夫だ、と送っておく。
「それじゃ私は絵里ちとお出かけしようかな....あっ にこっちも誘おっと!」
そう言いながら希は部屋へと行ってしまった。これからどうするか、となんとなくスマホをいじっていると通話コールが表示された。相手は真姫。
「もしもし?」
『急にごめんなさい。メールよりこっちの方が早いと思って電話させてもらったわ』
「別に構わないが、どうしたんだ?」
『実は先日、ママからチケットを貰ったのよ』
「チケット?なんのだ」
『舞浜にあるテーマパークのよ。2人分って仕事のお付き合いで貰ったらしいのだけれど使う暇がないからって私にくれたの』
「なるほどな。....でもお前なら凛ちゃんとかいるだろ」
『凛を誘ったら花陽まで誘わなきゃならないじゃない』
「....お前自身も行きたかったんだな」
『なっ 何言ってるのよ!そんなわけないじゃない!』
「だったらそのチケットを凛ちゃん達にあげればいいだろ?それをしないってことは...そういうことだろ?」
『~~~~っ! 違うわよ!よく考えなさいよ....ママが貰ってきたのよ?それを他人に渡せるわけないじゃない』
「はいはい、そういうことにしとくさ。取り敢えず俺は暇だからOKだ」
『....はぁ。もういいわ。それじゃ時間は追々知らせるわ』
「あいよ。それじゃ」
『えぇ』
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そんなこんなで日曜日。希はあの時言っていた通り、にこと朝早くに出かけていった。絵里は?と聞いたが家族の方の用事で来れないとのこと。
そして今は秋葉原駅構内から改札口に向かっている。俺の家は神田寄りということもあり、神田から1駅電車に乗って待ち合わせ場所である秋葉原駅へと向かったのだ。
現在の時刻は6時半。約束の時間まで約20分はある。恐らく真姫はまだついていないだろう。
と思っていたんだが、現実は違った。
「遅いわよ、シン」
「なっ 真姫....」
改札を出ると目の前にはすでに真姫が立っていた。ちなみにシンとは俺のアダ名だ。
「遅いったってまだ20分はあるじゃないか」
軽く不安になり再度腕時計を確認したがやはり20分前であり、遅刻はしていない。
「私より遅いから遅刻よ」
「なんだそれ...」
んな無茶な、なんて心の中で呟きながらも、ずっと改札口近くにいても邪魔になるだけなので端っこに移動する。
「来るの早くないか?」
「そう?遅刻しないよりいいじゃない」
「確かにそうだが聞きたいのはそこじゃない。何分前からいたんだ?」
「ついさっきよ。同タイミング」
「そうか...っと、時間もそうないな。来てそうそう悪いが行くぞ」
今日は日曜日、休日だ。いくら連休よりは人は少ないだろうとはいえ早めに行って損はない。
「別にそんなに急がなくても大丈夫よ。チケットだってもうあるんだから」
「でもいち早く行きたいんだろう?ウズウズしてるのが丸わかりだ」
「っ!」
神綺の指摘に顔を真っ赤にさせる真姫、図星だったらしい。
「こっ子供じゃないんだからそんなわけないでしょう?」
と平静を装うがもう遅い。
「ははっ ま、いいさ。行くぞ」
「あっ 待ちなさいよ!どうやって行くかも知らないんだから!」
そう。日時は真姫に知らされていたが、行き方は決めてなかったのだ。だから神綺が考えた行き方で向かうことになっている。
「安心しろ。俺に付いて行けば着く」
「それが納得いかないから聞いてるんじゃない」
「わかったよ....こっから東京駅に向かってそっから京葉線で一本だ」
「....混む?」
「少なくとも電車の中は大丈夫だ。京葉線に至っては始発だからな、座れるぞ」
そう言うと安心したのか緊張していた顔が少し柔らかくなったような気がする。
「夏の電車は苦手だわ」
「我慢しろ....ところで真姫は長袖で大丈夫なのか?」
大方夏の電車内は汗とか色々な匂いが混じるから苦手なのだろう、と結論つけた神綺だが、フッと真姫の服装を見る。
「何言ってるのよ。長袖じゃないと日焼けしちゃうじゃない」
ちゃんと日傘もあるわ、と折りたたみ式のを見せてくる真姫。それに神綺は吹いてしまう。
「なっ なによ!」
「いや....女性も大変だなっと」
「本当よ。肌からスタイルから、男と違って気にすることが多すぎるわ....」
「....ま、あまり無理するなよ」
「どうしたのよ急に」
「見た感じ通気性は良さそうだが、この時期だ。熱中症には気をつけないとだろ?」
「当たり前じゃない。これでも医者の娘よ?」
「それもそっか。...でも用心しておいて損はないだろ?」
「まぁね。....さ、乗りましょ。丁度来たわ」
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「うわぁ.....」
「すげ.......」
特になにもなく現地に到着した神綺達は目の前の光景を前にして絶句した。
「そ、想像以上ね....」
「流石は日本一...伊達ではないな」
自慢じゃないが神綺がここに足を運んだのは初めてだ。理由は単純、興味が無いから。
しかし今回は真姫からのお願い、そしてどうせ家にいるくらいなら、という暇つぶしも兼ねていた。
だが、目の前の人の行列には驚きを隠せない。
そして対する真姫はというと、
(これは....想像以上だわ。でも、ここならいけるかもしれない!)
実は今回の件、殆ど嘘なのだ。母親から貰ったというのは本当だが、別にお付き合いで譲り受けたものではなく、神綺に好意を抱いている真姫の為にと母親が購入したものだったのだ。
最初は真姫も顔を真っ赤にしながらも断ろうとしていたが、母親の勢いには負けてここにいる。
だが今の真姫は決心をしていた。折角用意してもらった場なのだ。ずっと引きずってきたが、今日を逃せばもうチャンスはない。告白するなら今日だ、と。
「ほら、真姫。いつまでそこに突っ立ってるんだ?行くぞ」
しかし当の神綺はそんなこと知らない為に、動かない真姫の手を取り列に並ぼうとする。
「あっ ちょっと!自分で歩けるわよ」
「こんだけ人がいるんだ。はぐれたらどうする」
「そ、そうだけど...」
真姫は不意打ちにとことん弱い。その為神綺の予想外の行動に体温が上がるのを真姫自身自覚した。
「そういえば、このチケットって優先的に入れてくれるんだっけ?」
こういうのに疎い神綺は頭を掻きながら真姫にチケットを見せる。
それに真姫は深呼吸をしながら心を落ち着かせてチケットに目を向ける。
「そのはずよ。なんでも日付指定の奴は入場規制に引っかかったとしても入れてもらえるとか」
「でもこの人の量か....」
「大丈夫よ。これはこれからチケットを買う人の列。もう持ってる人はもっと奥よ」
「そうか...安心した」
「こういう所来たこと無いの?」
「興味がないんでな。っと、そうだ真姫」
「なに?」
「帽子か何か持ってるか?」
「帽子?日傘あるし持ってきてないわ」
どうしてそんなことを?なんて思う真姫だが神綺は真姫の顔を指差す。
「...なによ」
「顔だよ顔」
「顔?」
「おいおい...自覚足りねぇんじゃねぇか?お前μ'sだったろ?顔バレたらどうするんだ、遊ぶどころじゃなくなるぞ?」
「....なるほどね」
そう言われてみれば、と真姫は辺りを見渡すと、数人がこちらを見ていた。
「ほら、そんなキョロキョロするな。バレるだろ」
「難儀なものね。有名になるのも」
と真姫は溜息をつく。
「お前達はまだ音ノ木坂にいるからいいが、希達は卒業してる分質が悪い」
「なんでよ?」
「簡単だ。真姫達に会いたければ音ノ木坂に行けばいい。だが希達は卒業している分、どこの大学もウチに来てないかと血眼で探すのさ」
「あー....」
なんとなくわかる気がする。
「真姫も覚悟しとけよ?将来はお前もそうなるんだから」
それに真姫は軽く笑いながら、
「でもそれってシンにも言えることよね?」
「俺?」
「だってあのμ'sを頂点にまで成長させた張本人だもの」
そう言うと神綺は軽く照れながらも
「俺は何もしていない。努力したのはお前達だ」
「確かに私達も努力したわ。でもあなたがいなかったらあそこまでは行けなかったわ。それだけは確信してる。私だけじゃなくて、みんなね」
「そんなことないさ」
「ふふっ でも知ってるんだから。シンがμ'sでの能力に目をつけられてスカウトされてるの」
「なっ!?なぜそれを....」
明らかに狼狽えている神綺に真姫はいたずら顔で、
「希から聞いたわ。シンが今日もまたスカウトされたーって、それも自分のことのようにウキウキと」
「あの馬鹿....」
「別に隠すこと無いじゃない。なんですごいことなのに隠すのよ」
「....別に俺は有名になりたくてやってたわけじゃない。それに、俺が最後までやり通したのは真姫達だったからだ。知らない第三者と関わるつもりはない」
「...嬉しい事言ってくれるわね。ならこれからも断り続けるの?」
「勿論だ。ま、お前達が芸能の方に出るんならやらないこともないがな」
「ありえないからってそういうこと言うんじゃないわよ。穂乃果達に火がついたらどうするの」
「海未達が止めるだろ」
「...どうかしらね?」
「え?」
真姫の小さい呟きは周りの騒音によってかき消される。それに神綺は聞き返すが、真姫はわざとらしく声を大きくして、
「なんでもないわ。さ、行きましょ」
「...わかったよ」
としぶしぶ真姫の後を追う神綺。
そしてゲート前で真姫は振り返り、
「そうそう。ここからは私達だけよ。希達のこと考えたりしたら許さないんだから」
「? ま、いいだろう」
なんでそんなことを?と思った神綺だが、特に気にせず了承した。
「ふふっ♪」
「シン!次はあれよ!」
「はぁ!?少しは休ませてくれ....」
「何言ってるの!今のうち乗らないと混んじゃうでしょ!」
入場して1時間。入場前に前の方の列に並んでいたことから、早い段階で色々なアトラクションを楽しめた2人。しかし、神綺の疲労は徐々に溜まっていった。主に精神面。
体力は有り余るほどあるのだが、周りの視線が痛い。真姫が赤毛という特徴的な容姿をしているというのもあるだろう。しかしそれ以上に真姫は綺麗で美人だ。周りの目を集めないわけがない。そんな真姫と一緒に居る俺に視線が集まるのも必然なわけで、なんとも素直に楽しめない状況になっていた。
それに真姫は気がついていないようだったが、ここで強行して流れを止めるのは気が引けた為にしょうがなくついていく。
「安心しなさい。これ乗ったら休憩するから」
「...わかった。行こう」
そうして辿り着いたのは丸太を真似たボートに乗って滝のようなものから急降下するアレだ。
「これ一度は乗ってみたかったのよ」
「そ、そうか......」
「どうしたのよ?」
「い、いや....」
テレビで見たことのある神綺が顔を引き攣らせる。実は神綺、ジェットコースター系が苦手なのだ。
「まさか...苦手なの?」
「じ、実は....」
いつかくるだろうとは思っていたが、いざ目の前にすると軽く足が震える。
それに見かねた真姫がため息をつく。
「はぁ。ならいいわ。他行きましょ」
「いや、いい。乗ってみたかったんだろ?」
「でもシンが苦手ってわかってるのに乗れないわよ」
そう真姫が気遣ってくれるが神綺は首を横にふる。
「よ、よく言うだろ?こういうのは慣れだって...」
折角来て、しかも一度は乗ってみたかったとまで言われたのだ。いくら怖くても引くに引けない。
「....はぁ。気分悪くなったら言ってよね、一緒に遊んでていい気しないわ」
「善処する...さ、混まないウチに行くぞ」
と震える足を何とか前に出しながら順番待ちをしている列に神綺は並んだ。
そして自分達の番になり、ボートに乗り込んだ。そうしてボートは動き出す。
「へぇ、やっぱりクオリティがすごいわね」
「そ、そうだな...」
出発したら即ボッシュートというわけではなく、ディズニーのキャラクター達の物語だろうか、それに沿った場面場面の再現がされていた。
「そろそろね...」
「っ」
「ふふふっ 本当に苦手なのね」
「し、仕方ないだろう...」
興味がないのも相まってジェットコースターなどの体験をあまりしたことのない神綺は完全に顔が引き攣ってしまっている。それを面白く思った真姫は思わず笑ってしまった。
それに軽く見とれていた神綺は後で後悔する。この時薄暗かった周りが日の光で明るくなっていたことに。
見とれて油断した瞬間。
「っ!?」
急激な浮遊感ににたなにかが神綺を襲う。それにみっともなく
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」「きゃぁぁぁぁぁぁぁっ!」
と叫んでしまった。
幸い、他に同乗していた人達も同じように叫んでいた為に浮きはしなかったが、みんな楽しんで叫んでいるのに対し、神綺だけ明らかに恐怖からくる絶叫と化していた。
「ぷっははははは!なにあれっ お、お腹がっ」
「う、うるさい!」
アトラクションを後にし、休憩として近くのベンチに座った二人。
だがさっきの神綺の反応がツボにハマった真姫は思い出すようにお腹を抑えながら大笑いをしていた。
「だってあの叫び...ふふふっ」
「.....」
あまりの恥ずかしさに言葉が出ない神綺。しかしこのままでは真姫のペースになってしまう。と苦し紛れに話題を変える。
「そ、そういえば...さっきどこに行ってたんだ?」
「え?あぁ、これよこれ」
「ん?」
と渡された冊子の様なものを開くと、
「なっ」
先ほど乗った丸太ボートに神綺達が乗っている写真だった。
....しかもさっきはそれどころでは無かった為に気が付かなかったが、必要以上に真姫が神綺にくっついていた。
そして極めつけは....
「よりによってあそこの写真か....」
完全にホラー映画を見た時のような顔をしている神綺だ。
「そりゃそうよ。というかこれ撮りたくて乗ったんだもの」
「なるほど....」
「ただこれは傑作だわ。意外な一面が見れたし」
「....これどうするつもりだ?」
ここでμ'sの皆に見せるとか言われたら悶絶モノである。
「部屋に飾るわ。記念だもの」
「みんなには...」
「ふふっ 怯えすぎよ。そんなことしないわ、苦手は誰にもあることだもの。敢えて言いふらすような事はしないわ」
「.....助かる」
この写真が真姫の部屋に飾られるのも抵抗があるが、それで皆に見せるとか言われたら再起不能にまでイジられる可能性がある為に神綺は喉まで出かかった言葉を飲み込んだ。
希に知られたら最後。凛達と一緒に便乗して一生攻撃してくるだろう。
「気分はもう大丈夫?なんならパレードでも見て時間空ける?」
とパンフレットを見ながら気遣ってくれる真姫。こういう気配りができるから神綺はいくらイジられようが彼女のことは嫌いになれない。
「いや、もう大丈夫だ。....次はどこだ?」
「んー、こことかどう?」
「わかった。そこに行こう」
「決まりね♪」
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「流石に周ったわね.....」
「あぁ....」
時刻は18時。食事や休憩で休んだとはいえ、こんなに遊びまわったのは何年ぶりだろうか。流石の神綺も初めての連続で余計体力を消耗していた。
「休憩しましょ。疲れちゃったわ」
と流石の真姫も疲れたようで、丁度空いたベンチに腰掛ける。
「俺もだ。...はぁ、中々疲れるな、遊ぶというのも」
「シンはこういうのに疎いかもとは思ってたけど、ここまでとはね」
「生憎踊りか歌か勉強かの3択でずっと動いてたからな。その中にない遊びはからっきしさ。 はぁ~ぁ....すまん」
久々の疲労感が心地よく、思わずあくびが出てしまった神綺。
「いいわよ。別に....そうだ。はい、ここ」
「ん?」
なんだ?と真姫の方を向くが、いまいち何がしたいのかわからない。
「...なにしてるんだ?」
ぽんぽんと軽く自分の太ももを叩く真姫だが、ピンとこない。
「っ 膝貸してあげるってことよ!言わせないでよ、恥ずかしいじゃない」
とそっぽを向かれてしまう。
「恥ずかしいならするなよ。....ま、ありがたい。貸してもらうよ」
「っ」
真姫自身すんなり神綺が応じるとは思っていなかった。ずっといる希にでさえ、素晴らしい鈍感と呆れてしまうほどにこういうカップルがやるようなことには疎くて応じないのだ。だが、今の神綺はどうだろうか。小言を一言言っただけですんなり真姫の膝に頭を乗っけて横になっている。
本当、自分で言っておいてなんだが、恥ずかしくなってくる。
「最近どうだ?真姫」
「え?」
「μ'sの活動が終わって数ヶ月....どうだ、音ノ木坂は」
「.....とても賑わってるわ。アイドル研究部にも結構な人数が入ってきたし」
ま、その代わり面倒見るのが大変だけどね。なんて真姫が本音を零すと神綺はクスクスと笑う。
「なんで笑うのよ」
「いいや。あの生徒の少なかった校舎が今どうなってるのかが気になってしょうがなくてね。想像したら思わず笑っちまった」
「...今度来れば?歓迎するわよ」
なんなら久しぶりに今までやってきたものでいいからもう一度踊りたいとも思う真姫。
「安心しな。今度にこ達全員つれて顔出すから」
「ほんと!?」
「あぁ。実は希と話しててな、またみんなで揃いたいねって」
「そうだったの....」
「っと、そういえば真姫以外の話はしちゃいけないんだったな」
失敬失敬、なんて白々しくいいながら目を瞑る神綺。そんな神綺に真姫はジト目で睨みながら
「そんな白々しく言われてもいい気しないわよ。それに、そこまで守って欲しかったわけでもないしね」
「そうなのか?」
「その場のノリってやつよ。今まで守ってくれてたことに驚いてるわ」
「ははっ そうだったのか。まぁ.....ここまで来て他の奴らのことを話す気になれなかっただけだ」
「....ありがと」
「ん?お礼言われるようなことか?」
「今のことだけじゃないわ。今までのこと全て感謝してるの。パパを説得してくれたことや、μ'sのことを見捨てずに尽くしてくれたこと。感謝しきれないわ」
「....何度言ったかわからないが、俺がしたくてやったことだ。気にしないでくれ」
「あら、ならこっちも何度言ったかわからないけど、感謝されてるんだから素直に受け取りなさいよ」
「....ははっ こちらの負けだ」
と器用に両手をあげて降参のポーズをする神綺。
「本当に、感謝してるわ。今日だって急だったのに来てもらっちゃったし」
「暇だったからな。それに....折角勇気出して来てくれてるのに無碍に出来ないだろう?」
「えっ?」
その神綺の言葉に真姫は呆気に取られる。今神綺はなんて言った?まさか...
「あ、あなたまさか...気がついて...」
それに神綺は笑いながら、
「いわゆるデートって奴なんだろ?」
「どうして....」
真姫からすれば夢でも見ているのではないかと思ってしまうほどだった。あの神綺が気がついていた。あの鈍感な神綺が。
「希もそうだが、お前達は勘違いしている」
「勘違い?...どんなよ」
「俺は鈍感、鈍感なんて言われてるが、そうじゃない。人の好意もしっかりわかる」
盛大なカミングアウトに真姫は目を白黒させる。そして、
「そ、それじゃ何?今までのあれはわかっててやってたっていうの!?」
とすればなんと恥ずかしい。いやそれどころではない。それでは神綺に弄ばれていたことになる。
「話を最後まで聞け。....真姫は覚えているか?俺の過去を」
「過去...アイドルのこと?」
今でも覚えている。去年の4月。思いがけない神綺との事故で知った神綺の過去。
「そうだ。....それでな、アイドルってのも大変でハニートラップに警戒して生きてきたってのも話したろ?」
「...そうね」
「そうして俺は生きていくウチに....人の好意をワザとシャットアウトしてきたんだ」
「...え?」
イマイチ神綺の言っていることにピンと来ない。なぜシャットアウトなんてする必要が.... そんな疑問を予想しているかのように神綺は話を進める。
「簡単だ。そんな状況で誰かを好きになってみろ。その人が罠で裏切られたらどうしようという不安を抱きたくないってのもあるが、逆に言えば好きになった人を一生疑いながら生きていかなければならないだろう?」
「た、確かに....そうね」
「それでは相手に失礼だ。なら話は簡単。それ以前の好きになるという行為をやめればいい。だから俺はそういう行為にはできるだけ素っ気なく、何も考えないようにして生きてきた。....ま、さっきの真姫の様子からするに結構な回数アタックしてくれてたみたいだが、俺はそういう事情があって気がついてない。...あれ、だったら鈍感じゃないって言い切れないじゃないか」
なんて真剣に考え始める神綺。しかし、真姫はそれどころじゃなかった。
「待ってよ!ならどうして今回はわかったのよ.....」
「...希だ」
「希?」
どうしてここで希が?
「お前からメールを貰った時、希が言ってたのさ、これはデートだよってね」
「っ」
そこで真姫は顔を真っ赤にする。そういえば神綺は希と同居していた、と。今まで完全に忘れていた。
「最初はそれも疑っていた。でも....今日一日の真姫の仕草で分かったさ。日頃の私服を見ていないってのもあるが、私服も似合うものを着ている。最近の流行のやつだろ?
それにいつもとは化粧も力が入っているようにも見える。これで確信したよ」
「.........」
「それでこの膝枕と来た。...そうなんだろ?真姫」
「...そうよ。実はママに貰ったのは本当だけど、仕事のお付き合いで貰ったのは嘘。私のためにママが買ってくれたの」
「なるほどね。....真姫の母さんも絡んでるのか」
「ごめんなさい。騙すようなことして」
「別にいいさ。俺も久しぶりに遊べて楽しめたしな。....それで?こんな形になったがするのか?....告白」
「...自分から言う?デリカシーないわね」
そう真姫が呆れると神綺は高らかに笑う。
「はははっ!なんせ疎いものでね」
「もぅ....」
自分はなんでこんな男を好きになったんだろうと自分に呆れながらも心を落ち着かせて腹をくくる。
「いいわ。シン...いや、神綺。私はあなたが好き。....だから付き合ってください」
言えた。でも最後の方は声が小さくなってしまう。断られたらどうしよう。自分はどうしていけばいい。そんな不安ばかりが真姫を襲う。
そんな真姫を真剣な顔で見つめながらしばらくすると上体を起こして神綺は真姫と向き合う。
そんな神綺に真姫はなんて言われるのかが怖くてまっすぐと神綺のことを見ることができない。
「真姫。...告白は素直に嬉しい。なんせ人生で初めてだからな。だが、それは受けられない」
「っ」
言われてしまった。覚悟はしていた。だが、それでも、断られた瞬間。ポッカリと胸に穴が空いた気がした。
しかし、そんな真姫を真っ直ぐみつめたまま言葉を続ける。
「だから、時間がほしい」
「.....え?」
理解が出来ない。振っておいて時間がほしいなど。
「俺は今回振ったわけではないんだ」
どういうことだ。ならなぜ受けられないなんてことを...
「真姫がいつから俺のことをそういう風に見てくれていたかは知らない。だが、俺は今の今まで真姫のことを恋人にしたいかなんて考えたことはなかった。....だから、時間がほしいんだ。真姫のことをしっかりと見られるように」
そう真剣な顔で真姫の手を取る神綺。
そんなことを言われては、抑えようと頑張っている涙も止まらなくなってしまう。
「そ、それじゃ....」
「恋人にはまだなれないが、恋人候補、恋人見習いとして、これからもよろしくな、真姫」
と曇りのない笑顔で真姫を見る神綺。
今までの線を引いた、仮面の様な笑顔ではなく、根っからの本心からくる笑顔。そんな珍しい神綺の本当の顔を少し見ていたいとも思った真姫だったが、それでも涙がこらえきれずに神綺の胸へ顔を埋める。
「...シンっ!!」
「おっと....」
そんな真姫に神綺は若干戸惑ったが、ぎこちないが真姫の頭を優しく撫でた。落ち着くように、今まで溜め込んでいたモノを全て吐き出せるように。
「ごめんなさい....」
「落ち着いたか?」
「えぇ...」
なんとか涙が引いた真姫は恥ずかしそうに神綺から跳ぶように距離をとった。
「....そろそろ帰るか?時間も時間だし」
時間は18時半。流石に夏で日の入が遅いとはいえ、少し涼しくなってきたとなってきたのもあるが、真姫は高校生で女の子だそんな遅くまで連れ回すことは気が引ける。
「...そうね」
だが、なんともいえない気まずい雰囲気になる二人。流石にやりづらい。
しかし、それでも先に動いたのは真姫だった。
「っ 真姫?」
急に腕に抱きついた真姫に驚く神綺。
「...いいでしょ?恋人見習いでも恋人だもの」
「....そうだな」
なんて真姫の甘えを許していると不意に声を掛けられた。
「あ、あの!」
「ん?なんですか?」
振り向くとそこには女性が2人並んでいた。
「えっと...西木野真姫さんに、斉藤神綺さん...ですよね?」
「「っ」」
見破られた。その事実に目を見開く二人。いやまぁろくな変装もせずに帽子被っているぐらいなのでそりゃそうなのだが。
「えぇ、そうですけど....」
「よかった...あの、サイン下さい」
と控えめに色紙を前に出してくる。
よくいつも常備してるなーと感心しつつ、神綺は真姫に目をやる。
「...真姫、書いてやれ。っとその前に一つだけ条件が」
「なんですか...?」
「このことは内緒にしてください。ここで大々的にやってしまえば営業妨害にもなりかねませんし、なにより自分達疲れてるので」
嘘はついていない。
幸い相手も理解してくれたようで、他の人からはあまり見られないような角度に色紙を隠してくれる。
「....ありがとう。さ、真姫」
「えぇ...では、貸してください」
「はいっ」
すると真姫は慣れているのかスラスラとサインをしていく。
「慣れてるな」
「そりゃ色々あったもの。...はい、次はシンよ」
「は?なんで俺なんだよ。俺はμ'sじゃないぞ」
そう言い返していると、申し訳無さそうに女性が、
「あのぅ....斉藤さんもお願いします」
「....わかった。貸してください」
しかしここで問題が生じる。今まで神綺はサインを書いたことがない。いや、前世ではあるのだが、コーチとして活動をしている時は俺は断っていたから初めてということになる。
それを見かねた真姫が小声で
『この際しょうがないから前世の書いちゃいなさいよ。私も見たこと無いし』
「馬鹿言うなよ。俺はコーチだ、お前達より目立つサインなんて書けるか」
『どんだけ派手なのよ...でもシンは卑下しすぎ、あなたは私達を育てたんだから私達より目立つぐらいのほうがいいのよ』
「.....」
「...はぁ、わかったよ。やればいいんだろ?」
と半ば諦めながら長い間書いていなかったとはいえ、体に馴染んでいるサインを思い出す。
そしてペンを滑らした。
「「ありがとうございました!」」
その後もう一人の分もサインをした神綺達は別れの言葉を掛けてから駅へと向かい始める。
「もうサインはしない」
「あら、プレミアでもつけるつもり?セコいわね」
「違うわ。俺はコーチ、そんなに目立っていい存在じゃない」
「....今のあなたが言っても説得力無いわよ。手遅れね」
「....はぁ」
「にしてもいいサインじゃない。一体どんなものかと思ってたけど」
「アレでもマシな方だ。派手な奴はもっとすごいぞ」
ま、書くのも時間かかるがなと付け足す神綺。
それに真姫は呆れる。
「どんだけよ....てかなんでそんなにサインに種類があるのよ」
「これでもトップアイドルだったもので....色々あるのさ」
「ふ~ん。....それで?」
「ん?」
「さっきの子達...どうだった?」
「どういうことだ?」
「だから...その...」
と真姫は顔を赤くしながら歯切れを悪くする。
「?」
「だからっ 私以外に目移りしたー...とかないでしょうね?」
「....ぷっ」
「笑わないで!」
「いやぁすまんすまん。ま、大丈夫だよ」
と神綺は笑いをこらえながら真姫の頭を撫でる。
「俺は真姫しか見ないぞ?」
「...それ浮気する男が言うセリフよ」
「.....本当だ。.....恥ずかしいが、俺が鈍感とか言われる理由を話したのは真姫が初めてだ」
「えっ」
「あの希にも言ってないんだ。ならどういうことかっていうのを考えてくれ」
「.....卑怯よ。そういうの」
「ははっ そうかもな。....安心しろ、俺は二股とかするほど甲斐性ないから」
「どうだか」
「ま、今は信じてくれとしか言えないか」
「別にいいわ。私から行動すればいいんだもの」
と真姫は神綺より少し早歩きをして神綺の前で振り返る。
「どうした?」
「シン、動かないでよ」
「?」
と神綺が怪訝な顔をした時、真姫は飛び乗る様にジャンプして神綺の唇に自分の唇を合わせた。
...いわゆるキスだ。
「なっ」
キスされたことに戸惑う神綺に真姫は勝ち誇った顔をして、
「これで私しか見なくなるでしょ?なんたってこの真姫ちゃんだもの」
「お前なぁ...」
「あら、不服?」
「そういうわけではないが...」
ここは人が多い。現に周りから冷たい目で見られている。特に男から。
「さ、私だって恥ずかしいし早く行きましょ」
「あっおい!...たくっ」
と駆け足で駅へと走って行く真姫にやれやれと溜息をつきながらも神綺は真姫に続いた。
閲覧有難うございます。
取り敢えず一言。 なんだこれは...(困惑)
お気楽な感じのやつにしようとしたらこんなことになってしまった....^q^
これでは真姫ちゃんがヤンデレみたいじゃないか。...それもいいけど。
これも全て5,6時間という短時間で作成したのが悪いんですね...うん。
リクエストくれた方、申し訳ありません!思っていた通りの進行になったかが怪しいのですが、こうなりました。
そして今までで一番の文字数になったんじゃないすかね。一万三千文字なんて初めて見た気がします。
最後に、活動報告の方に現在の心境を載せました。ご興味のある方は見てやってください。
無関係な追記になるんですけど、この作品を読んでくださってる方に挿絵を他サイトに投稿してるの見つかって肝が冷えたゾ(白目)
お暇な方は...探してみると私の黒歴史が見れるかも?(画力的な意味で)