ラブライブ! -彼はどう変わる?-【リメイク】 作:レイヴェル
今日は穂乃果ちゃんの誕生日、おめでとうだよっ!
さてさて、今回も閑話的な扱いになります。また花陽メインです。
「ただいまー」
「おかえり、遅かったわねぇ」
家に入ると、目の前に母が仁王立ちをしていた。
「えっ、えっと....」
そういえば今日は遅くなる、とメールも何もしていなかったことに気がつく。
「ごめんなさい....」
「...まぁいいわ。今度からは遅くなるなら連絡ちょうだいね?私だけじゃなくてお祖父ちゃんとかも心配するんだから」
「...はい」
お祖父ちゃんやお祖母ちゃんは昔から心配性。冗談抜きに心配で探しだすとか言いそうでちょっと複雑。心配してくれるのは嬉しいけど、もう体力もアレになってきてるから無理しないで欲しい。
「さ、お風呂入っちゃいなさい。あなたが最後よ」
「う、うん」
いつから母は待っていたのかわからないことに少し罪悪感を覚えながらも、足早に自室へと向かい、風呂に入る準備を始めた。
「はぁ....今日は色々あったなぁ」
凛ちゃんに部活のことを聞かれたり、高坂先輩達と会ったり、真姫ちゃんとお話したり.....そして、
「悔いのない答え....か」
不意に頭をよぎるのはついさっき言われた斉藤先輩の言葉。
「私の....答え」
本音を言えば、スクールアイドルはやってみたいと思う。
UTXを諦めて、平凡な高校生活をしようと半ば諦めていた私に、希望をくれたμ's。斉藤先輩の言う通り、こんなチャンス二度と無いと思う。
「でもなぁ....」
しかしあくまでもそれは憧れ、現実と理想がせめぎ合う。
(...私は緊張すると声がでなくなっちゃうし、やっぱり....)
思い出してしまうのは凛ちゃんとの出来事、斉藤先輩はあぁ言ってくれてはいるが、どうしても進む気にはなれない。
「凛ちゃんは....なんて言ってくれるのかな」
いつも近くにいてくれた凛ちゃん。一度仲が縺れそうになっても、凛ちゃん自身からどうにかしようと歩みよってくれた私には勿体無い友達。
自分が困った頃には持ち前の行動力で引っ張ってくれた。
....そんな凛ちゃんなら、私になんて声を掛けてくれるんだろう。
(ううん。自分ではわかってるよね)
凛ちゃんのことだ。今日もそうだったが応援してくれるだろう。....でも。
『花陽ー?』
「はっ はいぃ!?」
急に呼ばれたことに驚いた私は思わず湯船から思わず立ち上がるも、危うくバランスを崩しそうになる。それで必死に浴槽にしがみついてこらえていると、母が、
『いつまで入ってるのー?のぼせるわよ』
「ご、ごめんお母さん。すぐ出るよ」
『.....?』
どうやらまた長い間考えこんじゃったみたい。.....なんかモヤモヤするなぁ。
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「....ご馳走様でした」
お風呂を大急ぎで上がった花陽がリビングに顔を出すと、既に夕飯の支度が整っていて、すぐに夕飯となった。
だが、思うように食事が喉を通らず、食べることが好きな花陽にしては珍しく、残してしまった。
それを家族が怪訝に思うわけもなく、
「ど、どうしたの?具合でも悪いの?」
「夏バテかの?」
「じいさん、まだ5月でしょ?」
「そうだよなぁ...」
「....どうしたんだ花陽。まさかさっきのでのぼせたわけでもないんだろ?」
と家族が心配してくれる。それはとても嬉しいことだ。だが、そんな理由で食欲がでないのは花陽自身が良くわかっている。
....悪いのはお風呂の時からずっと感じているこのモヤモヤ。なんなのかはわからないけど、とても気味が悪い。
「うん」
俯きながらそう頷く花陽。それに父は箸を置いて真剣な顔で花陽を見る。
「....また、いじめかい?」
「あなた!」
「っ しょうがないだろう?聞くしかないんだから....俺達は学校には行けない。本人から聞くしか方法はないんだよ....」
と苦虫を噛んだように顔をしかめる父。この話題を聞くのさえ相当辛いというのがよく伝わってくる。
前にあったからしょうがないのだ。...そうだ。その時も凛ちゃんが守ってくれたっけ。
ううん。今はそんなことより。
「ううん、違うの。学校の皆とは仲良くやってるよ」
「なら.....なんなんだい?」
あまり家族には心配を掛けたくない。でも、それ以上に、今感じているモヤモヤが少しでも晴れるような可能性があるのなら.....話したい。今自分が悩んでいる問題を。
そう考えて花陽は意を決して顔を上げた。
「....実はね------」
概ねの事情を話した花陽は再度俯く。家族の反応が気になる反面、怖いから。
そう目を背けていると、一番に父が口を開いた。
「....それで、花陽自身はどう思っているんだ?やりたいのか?やりたくないのか?」
「それは....やりたい...よ」
「ならやればいい。...って簡単な問題でもないんだろう?花陽の中では何が引っかかっているんだ?」
「そうよ、花陽は小さい頃から可愛いし、そんなに思いとどまることでも...」
そう言ってくれるのはアイドル研究生だった経験がある母、実際に研究生とはいえなったことのある母がそう言ってくれるのだ。素直に嬉しい。
「けど....私は大きな声とかあまりだせないし...」
「それは最初はだれだって持ってる悩みよ。問題は入ってから如何に努力をするかなのよ。入る入らないの段階で考える問題じゃないわよ?」
「そう...だけど」
「かよちゃんは可愛い、それは俺が保証する。だから胸張ってステージに立ったらええ。それはきっとかよちゃんにとっていい経験になると思う」
とお祖父ちゃんがグッと親指を立てて笑ってくれる。
「じいさんはただ花陽の勇姿見たいだけでしょうに....」
「うっうるさいわい!」
「親父、少し落ち着いてくれ。....なぁ花陽」
「なに...かな」
「君はその西木野さんって子にも誘われているんだろ?」
「うん。....今日一緒にやらないかって」
「どうして一緒にやろうと言ってくれたとのかは聞かなかったのか?」
「それは....」
確かに言われた。それは、
「...私と親しくなれそうって思えたからだって」
「そうか。....それと気になっていたんだが、斉藤先輩っていうのは、もしかしてあの?」
「うん。ぶつかっちゃった先輩」
「......彼はどうなんだい?私達からしてみれば、穏便に済ませてくれたことに頭が上がらないんだが、花陽に何か要求したりとかはしているのか?」
「ううん。優しく接してく貰ってるよ、そんな事件なかったかのように。今日も先輩にここまで送ってもらったんだ」
「....頭が本当に上がらないな。っと、話が逸れた。その斉藤君も花陽の事を勧誘しているのか?」
「うん。高坂先輩達程じゃないけど.....色々助言って言うのかな。アドバイスを貰ったんだ」
「....例えば?」
そう言われて花陽は思い出す。今までに言われたこと。
「....私ってアイドルのことになると性格変わるでしょ?」
「そうね。私もそうだわ」
「俺もだ!」
「親父はいいから落ち着け!....それで?」
「それについて先輩に話したら、あまり自分の中で溜め込まないで、自分にアイドルのことを語ってくれないかって」
「というと?」
「斉藤先輩ってある事情で高坂先輩達のダンスコーチをしてるんだって。でも、自分はアイドルのことに疎いから、傾向とかそういうのを教えて欲しいって。....そしたら私の鬱憤って言うのかな、溜めてるものを外に出せるし、先輩自身も知識として身につくから一石二鳥だろう。って言ってくれた」
「なるほど。確かに理には適っているんだろうが...うむ」
とどこか引っかかるのだろう。父は黙りこんでしまう。
しかし、それでも花陽は続ける。いち早くモヤモヤを取り払いたいから、
「後さっき言われたことなんだけど、これは...アドバイスとは違うかな?悔いのない答えを出しなって」
「っ!」
そんな花陽の呟きに反応したのは考え込んでいた父ではなく、母だった。
「花陽。それって本当?」
「う、うん。できるだけ悔いのない選択をして欲しい。このまま立ち止まってモヤモヤを心の中に仕舞って過ごすか、自分でステージに立って輝こうとするか....だったっけ?」
と思い出していると、花陽はハッと顔をあげる。
「ど、どうしたの?花陽」
急に顔を上げた花陽に怪訝な顔をする母。
「モヤモヤ....そっか、そういうことなんだ」
「どうしたのよ....」
「さっきまで心がずっとモヤモヤしてたの。.....これが....立ち止まるってことなんだ」
言われてわかるこの感覚。このままスクールアイドルには入らずに過ごすことになれば、ずっとこの感覚に悩まされることに...なるのかな。
「.....答えは出たの?」
何かを確信したような、そんな顔をした花陽にお祖母ちゃんが恐る恐る聞いてくる。
「...うん。出た気がする。私は....これからもずっとこのモヤモヤに悩まされるのは嫌だな」
「....いいのか?こう言うのもなんだが、この先進めば、花陽の言う凛ちゃんの二の舞いになるかもしれないんだぞ?」
「....いいの。折角のチャンスだから....私は進むんだ。それにあの頃とはもう違う」
「あの頃?」
「受験前とはもう環境も違うもん。それに....そうなりそうになったら斉藤先輩が止めてくれるって言ってくれた」
「なに?....そうか」
「だから進んでみようと思う。.....いいかな?」
「それを俺らに聞くのか?」
と恐る恐る聞く花陽に叔父は豪快に笑う。
「私達は花陽の味方よ、やりたいと思ったなら進みなさいな。それもアイドルならね、一番好きなモノを突き通せるってのはいいことよ?」
と叔母が続いて微笑んでくれる。
「...そうだな。いい機会だ。UTXに行かずに諦めていたモノ、それが偶然か音ノ木坂学院で始まるとはな。....俺は応援するぞ」
と父も言ってくれる。
「私はやるしかないと思うわよ?そこまで友達や周りの人に思われちゃね。....頑張ってね。応援するわ」
「....ありがとう」
心なしか、モヤモヤは感じなくなったような気がする。....これでよかったのかな、凛ちゃん、真姫ちゃん、...斉藤先輩。
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「...どう思う?あなた」
「ん?なにがだ?」
夕食後、叔父と叔母は時間により寝室へ向かった為、今リビングにいるのは花陽の母と父だけ。そんな中、母が神妙な顔つきで切り出した。
「花陽の言ってた斉藤君のことよ」
「....彼か。どう思うも何もなぁ...」
「彼は少し危険だわ」
「危険?」
「....あまりにも判断力や、先手を打つのが上手いわ」
「それで?」
「....あの子がいいように使われないかが」
と心配そうに拳を握る母。
それに父はフッと鼻で笑う。
「大丈夫だよ。彼はそんなひどい人間じゃない」
「なにを根拠にっ」
「シー 聞こえるだろ。....頭下げに言った時のこと覚えてないのか?彼の目を見ればわかる。そんな悪い人間じゃない」
「そんな適当な...」
「俺がいい証拠だ」
「...え?」
「花陽の言っていた彼のアドバイス。....アレは俺によく似ている。俺も同じようなことを花陽に言ったことがあるんだよ」
「...初耳ね」
「そりゃぁ初めて言ったからね。ただ問題はそこじゃない。...彼は俺よりも数倍頭が回る賢い子のようだね」
「え?」
「考えてみろ。家族として長い間いる俺と違って、たった数日で花陽に的確に近いアドバイス、対処、そして答えを見つけさせるための種まき。....恐ろしいくらいに優秀だ」
「.......」
「今の時代にもあんなシッカリした子がいるのに俺は驚いたね」
とコップに残っていた酒を一気に口に流し込むと、父は立ち上がり、台所へと向かった。