ラブライブ! -彼はどう変わる?-【リメイク】 作:レイヴェル
「ふむ....まぁ、別にいいと思うんだが」
神綺ははぁ、とため息をつきながら今自分がどうしても声に出さずにはいられない悪たれをカラオケボックスで弱々しく呟く。
「....どうして俺まで連れて来られなきゃならないんだ」
というのも、神綺達はにこが言う考えがなんなのかを固唾を呑んで後の言葉を待っていると、
「こうなったら実力勝負よ。歌と踊りで誰が一番上手なのかを決めるわ!それで一番になった人間がリーダーということにしましょ?」
とにこはホワイトボードに新しくルールなどを書き始めた。
「歌はカラオケで高得点を出せばいいだけだから説明はいらないわね。踊りはゲームセンターにあるやつでやるわ。こっちも高得点を取ればいいだけ。簡単でしょ?」
「恨みっこ無しの実力勝負か....」
「皆はどう思う?」
「おぉ!面白そう!」
「でも...ゲームセンターなんてあまり行かないし...」
「私もどんなものか想像もつかないわ」
「あんた達....ダンエクも知らないの?」
「なんだそれ?」
実は神綺もわかってなかったりする。なんせ自分はゲーセンに行かないからわからないし、自分は関係ないから多少理解していなくても高みの見物をするため気にしない。
「神綺....まぁいいわ。ダンエクはダンスエクスプロージョンの略よ。曲に合わせて矢印が流れてくるからタイミングに合わせて同じ向きの矢印が描かれているパネルを踏むだけよ」
「うわぁ...難しそう」
「でも面白そうにゃ!」
「私にできるでしょうか...」
「とにかく!この2種目でトータル点数が一番高かった子がリーダーになるってことで異論はない?」
「俺は構わないと思うぞ」
「穂乃果も賛成!面白そうだし!」
「凛も!」
「...ま、別に構わないわ」
「が、頑張ります...」
「...じゃ、みんな頑張ってくれ。俺は帰る」
ここから先はμ'sのメンバーである彼女達だけでやればいい。メンバーでもない俺は帰ろう。というか生徒会に行こう。
そう思いながら席を立つも、隣に座っていたことりに腕を掴まれる。
「ん...ことり?」
「先輩は一緒に遊ばないんですか?」
「え?俺関係ないだろ。俺がリーダーになるわけじゃあるまいし」
「何言ってるのよ。帰らせるわけないじゃない」
「は?」
神綺はにこの呆れるような声に素の反応をしてしまう。
嘘だろう?なんで俺まで....
「なに不良みたいな反応してるのよ、似合わないわね。...それよりも最初からあんたが必要ないならここに呼ぶわけないじゃない」
...それもそうだな。
「じゃぁ俺に何をさせるために呼んだ?」
「そりゃ本当にこうなるとは思わなかったけど採点を頼みたくて呼ばせてもらったわ。ほら、こういうのって公平な第三者の目が必要でしょ?」
「...わかった」
なんてやつだ。なんてため息をつきながら神綺はとぼとぼとことりに手を引っ張られるがまま、冒頭のカラオケボックスへ向かったのだった。
「いい?さっきも言った通り、歌と踊りが一番上手い人間がリーダーになるの。...ほら神綺!シャキッとしなさい!」
「うるせぇ!マイクで大声出すな!」
「...ほら、あんたはこのノートに一人一人の点数を記録していって貰いたいの」
「あいよ...んで?トップは誰だ?」
「はい!穂乃果行きます!」
「...じゃぁぱっぱと終わらせようぱっぱと」
「頑張りまぁす!」
「頑張って~穂乃果ちゃん~」
「あんたら緊張感無さすぎ!どんだけリーダーに対しての関心がないのよ!?」
まぁ、にこの嘆きが普通なのだろうが、残念ながらそれに共感する人間はこの場にはいなかった。
そうして順々に持ち歌を披露していき、ラストは海未となり....
「...ふぅ。緊張しました...」
なんでも片手で数えられるほどしか来たことがない、とのことだったが、普通に上手かった。
そして海未の背後のディスプレイに表示された点数は...
「おぉ!93点!」
『おぉ~』
高得点だ。
前々からここのカラオケは採点が厳しいとクラスでも度々話題に上がっていたのだが90点以上。しかも今ここにいる自分以外全員ときた。...スクールアイドルやってるだけはあるが化け物かこいつら....
「や、やるじゃない...し、神綺!」
「なんだ?」
「点数はちゃんと記録したんでしょうね!」
「え?あぁ。ほら」
変な難癖はつけられたくない為に神綺はにこに点数の書かれたページを見せる。
「くっ....一番は真姫なのね...」
「そうだな」
ちなみに穂乃果が92点、ことりが90点、真姫が98点、花陽が96点、凛が91点でにこが94点と、にこ自身も上手かったのだが、真姫は次元が違っていた。流石は音楽に精通しているだけあって基礎はシッカリおさえているみたいだ。
「ぐぬぬぬ.....」
しかしそれが気に入らないのか、にこは唸り始め、キッと神綺を睨んだ。
「もうこうなったらなんでもいいわ!神綺!あんたも何か歌いなさい!」
「はぁ!?」
「おぉ!」
これは不味い。非常に不味い。
「そういえば先輩の歌声は聞いたことがありませんね...」
「楽しみだにゃ!」
「いつも指示する側なんだから...ここで実力見せてよね」
「馬鹿言うな。俺は踊り担当だぞ、歌は違う」
「またまた~ そんなこと言っちゃって~ 取り敢えずはい!マイクどうぞ!」
といたずらな笑みを浮かべながら穂乃果がマイクを手渡してくるが、神綺は取ろうとしない。
「往生際が悪いですよ、斎藤先輩。折角来たんですし、歌いましょうよ」
「俺連れてこられたんだけど?」
「いいからいいから!」
どうにかして抵抗するも、流石に神綺以外は歌え歌えと急かすばかり。これでは分が悪すぎる。
しかしこれ以上ゴネて場を白けさせるのは絶対に出来ないため、仕方なく曲を選択し始める。
「覚えてろ....」
「いいじゃないですか!折角のカラオケですよ!楽しまなくっちゃ♪」
だから俺は来たくて来てる訳じゃねぇ。そう内心ボヤいていると、無情にもイントロが流れ始めた。
「...はぁ」
なんとか曲は歌いきったものの、久しぶりに歌ったこともあり中々に辛かった。
が、加点項目で誤魔化した。
しかし....穂乃果達がシーンと静まり返っているのは少し反応に困る。やはり誤魔化しがバレた?
そんな不安を抱きながらも背後に映しだされた点数は....
「き,96点....」
「うそ...」
「負けた....」
点数的には花陽と同率。いやはや、よかった。
「なんとかなったな...」
「すごいですね先輩!」
「神綺にも....負けるなんて...」
穂乃果達が純粋に賞賛してくれる中、にこは自分よりも上の点数を取られたことが余程悔しいのか膝から崩れ落ちた。
「先輩の声すごいキレイですね!」
「そうか?...ありがとうな」
「聞き惚れちゃったにゃ~」
「大げさな...」
「いえ、私も聞き入ってしまいました」
「...照れるな」
「あーっもう!次行くわよ!あんた達もこれで油断しないことね!次で絶対に差を広げてやるんだから!」
と気持ちを入れなおしたのか強気に戻るにこ。
....だがにこ。それはフラグだぞ?
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「さ、さぁ!気を取り直していくわよ。次はこれ、ダンエクね」
「おー」
「見ての通り、4方向の矢印があるわ。これの4種類のいずれかが曲と一緒にこの画面にでてくるの。それをタイミングよく同じ方向の矢印を踏めば得点アップよ」
「中々難しそうですね...」
「動けるかなぁ...」
「ま、どうにかなるでしょ」
「ふん!せいぜい足を掬われないことね!」
結果。
穂乃果がAスコア、ことりがBスコア、真姫がBスコア、花陽がBスコア、にこがAスコアで、なんと初挑戦と言っていた凛がAの上をいくAAスコア。
これには本人どころか周りもビックリ。
運動神経が良いのは知っているが、これは化けるかもしれない。
ちなみに俺はAだ。初めてだがまぁ、なんとかなった。
「これも中々面白かったね♪」
神綺の記入したノートを皆で囲んで眺めていると、ことりが楽しそうに笑った。
「でもこれって結構僅差よねぇ...」
「これではどう決めたら良いかわかりませんね」
「もうこれリーダーなくて良いんじゃねぇの?」
どうせ皆同じレベルなんだ。もういいだろ、いなくても。
そんな投げやりな事を思っていると、にこが、
「やるわねあんた達....正直予想外よ。ここまで僅差になるとは思わなかったわ」
「でもどうします?ここまでになっちゃうと...」
「...こうなったら第三の種目、誰が一番チラシを配れるかを勝負しましょう!」
とにこが指を差して勢いよく宣言するが、
「チラシなんて用意してねぇぞ」
なんせ何も言われていないからな。
「うぐっ」
「それに配った所でライブするわけでもないんだから知名度アップの効果も望めねぇぞ」
「それは.....」
「諦めろ。幸か不幸かみんなハイスペックなんだ。誇れ誇れ」
本音を一言で言えば、なんだこの集団、だ。
いくら自分が踊りを教えているとはいえ、ここまで動けるとは思ってもいなかった。
しかも目測ではなく、機械で点数が出る分信憑性には欠けるが、ひとつの指標しはなる。
今回のこのリーダー決めを考案したにこには少し感謝しなければならないな。....ただ強引に連れてくるのはやめてくれ。
「ぐぬぬぬぬ....」
「...ねぇ、みんな」
『?』
神綺の慰め?ににこが唸る中、不意に穂乃果がきょとんとした顔で、
「リーダーいなくてもいいんじゃないかな?」
「...へ?」
「ちょっ あんた何言ってるの?」
「穂乃果....本気ですか?」
「...みんなひどくない!?」
「俺はいいと思うぞ、リーダーなしでも」
「神綺!?ちょっと待ちなさい!リーダーがいないグループなんって聞いたことないわよ!?」
「にこ、前例は作るためにある」
「何キメ顔で言ってんのよアホ!そんなの認めないわよ!」
....成績上位なんだが。
「じゃぁ...逆に皆リーダーってのは?」
「穂乃果ちゃん....」
「流石にそれは....」
「だって、今までだってリーダーなんて考えずに練習してきたじゃん」
「まぁ、そうだな」
「でも...そしたらセンターは?」
「んー....皆がリーダーなんだから....皆がセンターになればいいんじゃないかな!」
「えぇ....」
「無理やり過ぎない?」
「全然!皆で歌えばいいんだよ!」
「...それ元々じゃない?」
「違うよ!皆が皆センターになるように、1人1人で歌うところを作ればいいんだよ」
「...なるほどな。ソロパートを作って歌うのか」
「そうです!」
確かにそれならば皆がセンターという課題も一応はクリアとなる。なんせ一時的にソロパート、つまりは一人にスポットライトが当たるのだから。
「...盲点だったわ」
「いつもアイドルの動画とか見て思ったんだ!そういうのあれば素敵なんじゃないかな~って!ねぇねぇ!それを活用するときって今じゃない!?」
なるほど。俺達は勘違いをしていたらしい。
実際、にこや海未達と違って穂乃果はこれといった役割がない。
だが、逆に考えれば何のしがらみにもとらわれず、自由に、柔軟に物事を考えられるのではないか。
そう、穂乃果の持っているのは閃きと行動力だ。スクールアイドルも雑誌を見て閃いて、中心になって動き始めた。
....これは誰でも持っているものではない。
閃きは新しい物の発見を意味する。そこまではいいのだが、そこから行動するには人一倍勇気が必要になってくる。
なんせ新しいことに挑戦するのだ。前例がなく、不安になることもある。
でも穂乃果はそれを乗り越えた。これは...穂乃果だから出来たこと。
「流石...だな」
「ん?なにか言いました?」
「いいや、何も」
「? でさ!どうかな?」
「まぁ...歌は作れなくはないですけど」
「確かにそういう曲もあるわね、良いと思うわ」
「ことりちゃんは?そういう振付とか融通効くかな?」
「ううん。できると思うよ」
「よし!じゃぁ決定!」
....俺はこの歳になってまた新しいことを穂乃果達から学んだな。
「それじゃぁまだ時間あるし学校戻ろうよ!練習練習!」
「えぇ!?今からぁ!?着替えないわよ!」
「軽くだよ!軽く!」
「まぁ...折角思いついたんですし、風化しない内にある程度は決めておきましょうか」
「さっすが海未ちゃん!ねっ 行こう!」
「それじゃぁ学校まで競争にゃ~!」
「あっ待ちなさいよ!」
「待って~」
「穂乃果が一番だぁ!」
.....あいつらもわかっているんじゃないかな。
リーダーは決めるもんじゃない。自然と決まるものなんだって。
そう、今彼女達の先頭に立っているのは
「ほらほら速く!」
紛れも無い穂乃果だ。このスクールアイドルという賭けに出て、みんなを自然と引っ張っている人間。
彼女こそがこのμ'sにふさわしいリーダーだ。
閲覧有り難うございます。
お気づきになられた方もいるかもしれませんが、ダンエクの花陽ちゃんのスコアをCからBにあげてあります。
これはチラシ配りをしないことによる格差を縮める為と、神綺の指導の結果と思ってください。
感想などなど、お待ちしております。