ラブライブ! -彼はどう変わる?-【リメイク】   作:レイヴェル

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 絢瀬絵里ちゃんハピバ!!!

 っということで、絵里ちゃん誕生日記念の番外編となります。

 本編の進行とは一切関係ないifですのでご了承を。


 メドフェス絵里ちゃん初日取りしたので時間なくて焦りましたけど終わってよかった(震え声)


【番外編】絵里へのプレゼント【絢瀬絵里ちゃん生誕祭記念】

 定期考査の時期も過ぎ、気が緩みだす10月の下旬に差し掛かった日。

 

 放課後の生徒会室で、神綺と絵里はセッセと書類の整理に追われていた。

 

「神綺君、こっちは終わったわ」

 

「わかった。じゃぁ打ち込みするから貸してくれ」

 

「はい」

 

 というのも、もうそろそろ神綺達3年生は本気で受験体制になるのと同時に、この学校のこれからを担う後輩である2年生へとバトンタッチをする時期なのだ。

 そして、そのパスを円滑に行うために神綺達は引き継ぎ資料を、自分達にしてもらったことを思い出しながら作成していた。

 

「あ゛ー めんどくせ」

 

「そんなこと言わないの、先輩達も同じことしてきてるんだから」

 

「そうは言うけどなぁ...」

 

 普通に優秀な生徒が生徒会に立候補し、運営してくれるならそれでいい。こちらも安心できる。...のだが、

 

「穂乃果達だろ...なんで穂乃果が立候補してんだよ」

 

 これが一番の問題。どこで間違えたのか時期生徒会役員の立候補者はなんと穂乃果、海未、ことりの3人なのだ。

 

 別に海未とことりの2人だけならば、常識もあるし、融通も効く。しかし穂乃果は違う。閃きや積極性は評価できるが、チマチマとした事務仕事や勉強を大の苦手とする人間には生徒会は向かない。

 

 だからこそ、そんな穂乃果にもシッカリとやってもらえるように、人一倍優しく、そして丁寧に書類やマニュアルを作っているのだ。...はっきりいってここまでする必要があるのか疑問でしかないが、穂乃果に甘い絵里がやると決めてしまったからしょうがない。

 

「知らないわよ...それは本人達に聞かないと。けど廃校から持ち直したのは彼女達のおかげでもあるし、他の子も投票する気満々みたいよ」

 

「大丈夫なのかぁ?海未が生徒会長なら文句はないんだが」

 

「海未は真面目だけど、上に立つの好きじゃないから...」

 

「まぁチームワークという点ではずっと幼なじみで付き合いがある分問題ないんだろうが、穂乃果のスキルが問題か」

 

「穂乃果は...事務作業とか無理そうよね」

 

「絶対丸投げするだろうな...あ、絵里ここ間違ってるぞ」

 

「え?...あ、ほんとだ。ごめんなさいね」

 

「いや、なんとか修正できるところだしな。よし、これで大丈夫だ」

 

 後はプリントしてファイルするだけだな。

 

「こっちも終わったわ」

 

「ならもう帰るか」

 

「そうね...そういえば希はどうしたの?」

 

「希?あいつなら用事があるって帰ったぞ」

 

 なんでも両親がこっちに来ているんだとか。だからここ数日の間、希は俺の家から元の家に戻っている。俺なんかといるよりも、やはり親に甘えられる時に甘えたほうが良い。あいつの性格的にもな。

 

「そう。...そっか」

 

 だが、絵里はそうではないらしく、ちょっと不満らしい。

 

「なんだ?誕生日プレゼントでも貰い損ねたか?」

 

「えっ!?」

 

 実は今日、21日は絵里の誕生日だったりする。これで絵里も18歳だ、おめでとう。

 

「なんだ?忘れてるとでも思ったか?」

 

「そ、そうじゃないけど...いきなりだったから」

 

「そうか、そりゃ悪かった。んで?希に何か用があったのか?」

 

「...ううん。ただ神綺君と一緒に誕生日を祝って欲しかったなーなんて...」

 

 実は絵里、いつもはキリッと優等生...というよりはお姉さん振るのだが、親しい間柄になると結構甘えん坊になるところがある。

 

 別にそれが嫌だということではないんだが、俺はいつもの真面目な絵里との方が付き合いやすいから少し調子が狂ってしまう。もう絵里とは数年一緒に居るがこれはまだなんともならない。

 

「ま、あいつもあいつで事情があるんだ。その代わり何か奢ってもらえ、誕生日すっぽかした罰ってな」

 

「そんなことできるわけないじゃない...」

 

 ...確かにそんな性格じゃないか。

 

「なら、希の分まで俺が祝いますかね。...これから暇か?」

 

 実は誕生日プレゼントが家にあるから取りに来てもらいたいところだったが、どうやらそれは無理らしい。言葉には出ていないが、明らかに困った顔をしている。

 

「それは...亜里沙が待ってるから無理よ」

 

「ふむ。じゃぁ後でまた絵里の家にお邪魔するわ」

 

「えぇ!?どうして?」

 

「そりゃ、家にプレゼントがあるからな。それを取りに行く」

 

「あ....ありがとう」

 

 おい、絵里。そりゃ受け取った時に始めて言う言葉だぞ。

 

「待っとけよ?とびっきりのプレゼントを今年は用意したんだからな」

 

「...なら楽しみにしてるわね」

 

 今年は例年以上に世話になっているからな、それなりに力の入ったものに変えてある。...ま、その分費用や時間も掛かったがこのくらいいいだろ。

 

 

 

 

---------------------

 

 

 一度絵里と別れた神綺は一度帰宅し、絵里の為に予め用意しておいたプレゼントを持って絵里の家の前へ到着する。

 

 すると神綺はインターホンへ手をやる前にいたずらな笑みを浮かべながらプレゼントへ目を向ける。

 

「...反応が楽しみだ」

 

 今年は例年に比べて生徒会やμ'sの方で世話になっている。だから例年とは一味違うプレゼントに変えてあるのだ。...おそらく今回のは絵里にとっては予想外な代物のはずだからどんな反応をしてくれるかが楽しみで仕方がない。

 

「さ、行くか」

 

 インターホンを押し、ピンポーンと良く聞く電子音が鳴ると、ドタドタと忙しそうに足音が聞こえてきた。...そこまで急ぐものでもないだろう。

 

「神綺さん!」

 

「あ、亜里沙ちゃん?」

 

 こりゃまた驚き。絵里が出てくるだろうと思って待っていれば、ドアから顔を出したのは妹の亜里沙だった。

 

「こんにちは!お姉ちゃんから話は聞いてます!どうぞ中へ」

 

「あ、あぁ。お邪魔します」

 

 穂乃果の様に人懐っこいテンションにタジタジになりながらも俺は玄関に入る。だが、ここに来た最大の理由である絵里が見当たらない。

 

「絵里は居ないのか?」

 

「お姉ちゃんならキッチンです。今仕込み中で」

 

「仕込みか。そういや、そんな時間だもんな」

 

 ふ~んと思いながら廊下を亜里沙に連れられついていくと、確かにトマト系のいい匂いが鼻孔をくすぐった。

 

 すると亜里沙と自分の足音に気がついたのか、絵里がひょこっと廊下に顔を出した。

 

「あ、神綺君。いらっしゃい、悪いわね外出れなくて」

 

「いや、お構い無く。それよりも料理はいいのか?離れちまって」

 

「そうだった!」

 

 おいおい...それでいいのか絵里よ。

 

「あはは...お姉ちゃん舞い上がってますね」

 

「ん、そうか?」

 

「はい♪ 余程神綺さんが来るのが嬉しいんでしょうね」

 

「...なら来た甲斐があるよ」

 

 希が来れない分、俺だけでも来てやらないと、余りにも可哀想だからな。

 

「じゃぁ先輩はここで待っててください。今お茶持ってきます!」

 

「え、いやそこまでしなくても...」

 

「いいんです!最近いいお茶っ葉が手に入ったんです!」

 

「そう...じゃぁご馳走になるよ」

 

 ニコニコとそこまで屈託のない笑みをされては断り切れない。...仕方ないか。

 

 それよりも絵里のプレゼントを渡した時の反応をいち早く見たいのだが、あの調子じゃ暫くは台所から離れられないだろう。

 

「よっと....ふぅ」

 

 とりあえず立ったまま待つのもなんか変だと思った神綺は、亜里沙に勧められたソファに腰を掛ける。

 

「...中々に座り心地が良いなこれ」

 

「それはロシア製のソファよ」

 

 あまり見慣れない少し派手なデザインなソファが珍しく、神綺は少し興味ありげに擦ったりクッション性を確かめていると、絵里がお盆にお茶を載せてやってきた。

 

 ロシアか...道理で見慣れないデザインなわけだ。っと、そうだ。

 

「あれ、料理は?」

 

「亜里沙がやりたいって言うから変わったわ。...珍しいこともあるわね、亜里沙が料理をしたいだなんて」

 

「...その、大丈夫なのか?」

 

「料理の腕に関しては問題無いわよ。ただ私の料理を気に入ってくれているみたいでね、自分からはあまりやらないってだけ」

 

「そうか」

 

「それよりも、はい。亜里沙は紅茶にしたみたいだけど大丈夫?あまり得意じゃないでしょ?」

 

「飲めないことはない。ありがとう」

 

 コーヒーの方は好きだというだけで、別に飲めないわけではない。...ただ茶葉の品種や香りの違いがわからないだけだ。

 

「...ん、これジャムか?」

 

「そうよ、簡単なロシアンティー」

 

「へぇ、飲むのは初めてだな」

 

 なんだかんだで絵里の家には何回かお邪魔しているが、絵里は俺が紅茶を飲まないことを知っている。だから大体麦茶か緑茶を出してくれていた。

 

 しかし...どうやって飲むんだ?普通に溶けば良いんだっけか?

 

「飲み方は人それぞれよ。最初に溶かして飲むも良し、後はスプーンで少し掬って口に含んでから紅茶を飲むも良しね」

 

「ほー」

 

 神綺が悩んでいるのを察したのか、絵里が丁寧に飲み方を教えてくれる。

 

「ちなみに絵里はどうやって飲んでるんだ?」

 

「私は口に含んでから飲んでるわね。ほら、ジャムって普通冷蔵庫とかに入ってるから冷たいでしょ?だから紅茶が冷めちゃうし」

 

「なるほどな、確かにそうか...よし、なら俺もそうしてみるか」

 

「ならスプーンね。....んー、はい」

 

「...ん?」

 

 絵里がスプーンを差し出してくれるが...このスプーンは、

 

「? はい、スプーン」

 

「いや、はいじゃねぇ。それお前が使ってたろ」

 

 スプーンに問題はない。用途に問題がある。...このスプーンは今飲み方を教えるのに絵里が口をつけている。

 

「別に風邪なんてひいてないわよ?」

 

「風邪云々じゃない。お前は気にならないのか?」

 

「え?...~~~~っ!?」

 

「ん」

 

 言われてやっと気がついたのだろう。ゆでダコの様に耳まで顔を真っ赤にさせて俺が受け取ったスプーンを絵里はすごいスピードで奪い返した。

 

 ...よかった。確認をとっておいて。絵里はたまに天然でこれをやるから困る。どう反応すれば良いのか俺には理解しかねるからな。

 

「お姉ちゃん大胆...」

 

「っ あ、亜里沙!?」

 

「ねぇねぇ!あれって間接キスって言うんでしょ?」

 

「亜里沙!」

 

「わかってるよぅ。....ごめんなさい神綺さん。お姉ちゃんちょっと抜けてて」

 

「あ、あぁ...」

 

 もはやどうリアクションをすれば正解なのかがわからなくなってきた。

 

「そ、それよりも亜里沙?」

 

「なに?お姉ちゃん」

 

「向こうのことはいいの?」

 

 向こう、とは台所の料理のことだろうか。

 

「うん。後は食べる前に温めるだけだよ」

 

「そう、ありがとう」

 

「...何作ってたんだ?」

 

「ボルシチよ」

 

「へぇ、そういえばボルシチってまだ食べたことがないな」

 

「食べる?夕飯まで待ってくれればご馳走するわよ?」

 

「なに?だがそれは...」

 

 今日は絵里の誕生日だ。俺が持て成すのならわかる。だが、誕生日である絵里からご馳走されるのは...気が引ける。

 

 これは断ろう。そう口を開こうとした時、

 

「いいねお姉ちゃん!」

 

「...え?」

 

 亜里沙が興奮気味に後押しをする形になってしまった。

 

「やった!私神綺さんと話したい事いっぱいあったんです!」

 

「そ、そうなのか?」

 

「はい!μ'sのこととか!学校でのお姉ちゃんの様子とか!」

 

「あ、亜里沙...」

 

「...わかった。まずそうだな...絵里はいつも-------」

 

 神綺は亜里沙にせがまれ、仕方なく付き合うことに。

 

 だが神綺は当初の目的であったはずのプレゼントを絵里に渡すことなど忘れてしまい、ただただ亜里沙と二人でからかいがいのある絵里の反応を楽しみながら、時間を費やしてしまった。

 

 

---------------------

 

 

 

 あれからどれだけの時間が経ったのだろう。亜里沙が笑い疲れてきていてそろそろ潮時か、と思い始めた時、

 

ピー

 

 なにかの電子音が鳴り、それに釣られて俺は話すのを止めた。

 

「ん?」

 

「あ、ご飯が炊けたみたいです」

 

「なに?もうそんな時間か?」

 

 お腹を擦りながら涙目でそう言う亜里沙の言葉に神綺は思わず目を見開いてしまう。

 

「本当だ、外ももう暗いわ」

 

 なんとか今までの流れを食い止めたかったのか、あからさまな話題変更をしようと立ち上がる絵里。だが神綺はそんなことを気にはせずに、絵里に続くように窓に目をやる。

 

 見てみれば本当に日は陰り、秋葉原の街灯や看板の光がチラチラと見えていた。

 

「...悪いな、長居し過ぎたようだ」

 

「何言ってるの、食べるんでしょ?ボルシチ」

 

「いやだから俺は別に...今日はお前の誕生日で...あ」

 

「ん?」

 

「どうかしました?」

 

 今日は絵里の誕生日。そこでようやく神綺はプレゼントのことを思い出し、ソファの横に置いておいた紙袋を持つ。

 

「すまん忘れていた。...絵里、誕生日おめでとう。これは俺からの気持ちだ」

 

「あ!やっぱりそれプレゼントだったんですね!」

 

「悪いな、渡そうと思ってたんだがタイミングがな...それで今の今まで忘れていた」

 

「いいのよ...でもありがとう。開けていい?」

 

「あぁ、いいぞ。喜んでくれるかはわからないがな」

 

 そう伝えると絵里は顔をほころばせながら紙袋の中に入っている包まれた箱を取り出す。

 

「ねぇお姉ちゃん!軽い?重い?」

 

「こら亜里沙...失礼よ?こういうのは気持ちが一番嬉しいんだから」

 

「そう言いながらも嬉しいんでしょ?口元緩んでるよ!」

 

「なっ!?ほ、ほら!開けるわよ!」

 

 亜里沙にからかわれ、絵里が顔を赤くして言い返す。もう何度目のやり取りだろうか。ようやく包み紙を剥がす。

 

「これは...」

 

「おぉ?」

 

 どうやら絵里の方はなんなのかわかったようだが、亜里沙はわからない様で興味深くそのモノを観察している。

 

「どうだったかな?」

 

 例年なら何かの小物を渡すのだが、今年の絵里へのプレゼント...それは。

 

「嬉しいわ...これってマカロンでしょ?」

 

 俺お手製の色とりどりのマカロンだ。ちゃんと、絵里の好きなチョコを使ってある。

 

「正解だ。今年は少し趣向を変えてみることにしたのさ」

 

「なんか可愛い!この...マカ...マカ?」

 

「マカロンだぞ、亜里沙ちゃん」

 

「ハラショー...」

 

「私名前では知ってたけど...初めて本物を見たわ」

 

「そこらの店とは出来も違うけどな。ま、味は普通だから安心してくれ」

 

 俺は普段料理はする。だがお菓子とかスイーツとなると話は変わる。食べる分には甘くて好きなんだが、自分で作るとなると手間や器具が必要だったりと面倒なのだ。だから俺は今までお菓子を作ったことがない。

 

 そのせいか初めは大変だった。ぎこちないし、元々の生地が上手く作れなかったりと挫折も多かった。

 

 しかし、希監修のもと、何度も練習し、試食をしてもらい、なんとか今日に間に合った。

 

「美味しそうだなぁ...」

 

「駄目よ亜里沙。食べるならデザートに、ね?」

 

「やった!」

 

「喜んで...貰えたかな?」

 

「勿論よ。...私のボルシチでお返ししきれるかしら?」

 

「もう十分お返しは貰ってるさ」

 

 絵里の喜ぶ顔が見れた。これだけで十分だ。

 

「そういえば絵里、お前ん家は風呂に入るの遅いのか?そろそろ沸かさないと遅くなるだろう?」

 

 なんとなく腕時計に目をやれば18時になりそうだ。そろそろ沸かさないと夕飯前に入るのは難しい。

 

「それもそうね...亜里沙、お願い」

 

「わかった!」

 

 絵里がマカロンの入った箱を台所に持って行きながら亜里沙にそう言うと、亜里沙は敬礼をしながら上機嫌な様子で浴室へと向かった。

 

 ...絵里よりもマカロンに喜んでいるのが少し笑えてくる。俺にも妹がいればよかったな。

 

 そんなことを思いながら、時間が経ってしまって冷めた紅茶を飲み干そうとカップを口につけた時、絵里がジトッとこちらを睨んできた。

 

「...ねぇ、神綺君」

 

「ん?」

 

「神綺君って亜里沙の事が好きなの?」

 

「ブフッ!? がはっ ごっほごっほ...な、何を言い出すんだ急に!?」

 

 なんで俺が亜里沙の事を好きになるんだ?

 

「そ、そんなに驚かなくてもいいじゃない...」

 

「驚くわ!...どんな風の吹き回しだ」

 

「別に...ただ亜里沙の後ろ姿を見てる時の顔が気になっただけよ」

 

「なにもない。俺にも亜里沙ちゃんみたいな妹がいればなって思っただけだ」

 

「...そう」

 

「それに亜里沙ちゃんだって俺を兄としか見てないのはわかる。相手がその気じゃないのに好きになるつもりはない」

 

「...そう(なんで亜里沙のことはわかるのに、私の好意はわからないのよ)」

 

「...でもまぁ、俺が好きになるなら亜里沙ちゃんよりも絵里だな」

 

「えっ」

 

「だってそうだろう?中学からの付き合いで、お前のことはなんとなくだがわかっているつもりだ。今だって理由は知らないが拗ねてるだろ?」

 

「なっ...貴方ねぇ...」

 

「...否定しないってことはアタリか。...いや待てって、なぜそんなに睨む」

 

「神綺君が鈍感だからよ」

 

「どこがだ、おい。現に今言い当てただろ?」

 

「そういう所が鈍感だっていうのよ...はぁ、もういいわ。なんか疲れちゃった」

 

「まだ寝るには早いぞ?」

 

「誰のせいよ...亜里沙と一緒になってからかった癖に」

 

「う゛...いや、それはまぁ...悪かった。ついな」

 

 余りにもいい反応をしてくれるものだから、つい...

 

「もぅ」

 

 はぁ、と絵里がため息をつく。だが、それからはなぜか会話がピタッと止まってしまった。

 

 風呂を沸かしに行った亜里沙はさっき部屋に入るのをチラッと見たきりだし、絵里はボルシチや他のおかずの様子を確かめているようで無言だ。...どうすればいい。

 

 なにか話題はないかと辺りを見渡すが、あるのは紅茶が空になったカップが目の前にあるだけ。とてもじゃないが話題になるようなものでもない。

 

 とその時。

 

「あのね、神綺君」

 

「な、なんだ?」

 

「...今度のライブ、上手くいくかしら」

 

「...ハロウィンのか」

 

 実は今月末の31日。秋葉原でハロウィンの仮装イベントが開催されるのだが、その催しの一環として絵里達μ'sはライブをすることになっているのだ。

 

「...ちょっと自信ないわ。私達をどう見せれば、私達らしいのか」

 

 とぼとぼ、そんな表現が一番しっくりくるだろう。そのくらいさっきの明るい笑顔とはかけ離れた顔でこちらに歩いてきて、絵里は俺の隣に腰掛けた。

 

「亜里沙も私の気持ちが伝わってるのかさっきみたいに無理して笑わせようとしてくるし、気を使わせちゃって可哀想でね」

 

「...俺はお前達みたいに演じるわけではないから100%正解、なんて答えは言えない。だがこれだけは思う、いつも通りでいることが大事だ」

 

「いつも通り...でもそれがわからないのよ。気にしたことがないから」

 

「...簡単なことだ。お前達はなんでスクールアイドルをやっているんだ?」

 

「それは...廃校を阻止する為に...」

 

「そうだな。でもそれだけじゃないだろ?廃校問題とは別に、絵里を動かしている原動力があるはずだ。それはなんだ?」

 

「私の原動力?...わからないわ」

 

 ふむ、これじゃまだ駄目か。もう少し掘り下げるとしよう。

 

「じゃぁ質問を変えよう。絵里、お前はなぜスクールアイドルになった?勿論、廃校問題は考えないで」

 

「...それは神綺君も知っている通り、私は思い出を作りたくて入ったわ」

 

「そうか。ならその後は?それは達成できたか?」

 

「それは...確かに、ライブも楽しかったし、充実してたわ。けど今はラブライブという目標がある」

 

「そうだ。今はその明確な目標があり、絵里だけではなく皆も同じ気持ちだ。そこまでわかっているならもう俺から言うことなんてないだろ?」

 

「...よくわからないわ」

 

 絵里は んーっと首を軽く傾げながら体を伸ばすと、こてっと神綺の肩に頭を預けてきた。

 

「どうした?」

 

「ううん、なんとなくこうしたくなったの。神綺君にくっつけば答えが出るかなって」

 

 なんだそれは...だが、

 

「おいおい、絵里はもう答え言ってるぞ?」

 

「え?」

 

「俺はお前がμ'sに入るって時に言ったはずだぞ?穂乃果達は『今を楽しんで』スクールアイドルをやっていると」

 

「今を楽しんで...っ」

 

「わかったか?お前達は初心を忘れているんだ。ま、明確な目標が出来たからこそでもあるが、初心は絶対に忘れてはいけないものだぞ?」

 

「そうね...ライブは楽しむものよね!」

 

「そうだ。自分達が楽しまないで誰が楽しむ?そんなんじゃ伝えたい気持ちも伝わらん」

 

「そうよね...ちょっと廃校が見送りになって浮かれてたわ。...駄目ね、私が引っ張らないといけないのに」

 

「いいじゃないか、ここで気がつけたんだから。まだまだ日にちはある」

 

「そうね。後一週間ちょっとだけど、気持ちを入れ替えて行かなくっちゃ!」

 

「その意気だ。応援してるぞ?」

 

「勿論よ、μ'sの大事な大事なマネージャーさん?」

 

「ははっ そう来たか。いいだろう、そっちこそA-RISEなんか負けないように輝いててくれよ?μ'sのダンスコーチさん?」

 

 

 

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 あの後ボルシチをご馳走になったが、流石にこれ以上の長居は不味いと考えた神綺は、まだ居てくれと駄々をこねる亜里沙を仕方がなく宥めた。

 

 そしてようやく亜里沙が諦めると、神綺はホッとしながら玄関へと歩いて行く。すると後ろから絵里が見送りに来てくれた。

 

「ご馳走様。悪いな、お前の誕生日なのにボルシチまで頂いちまって」

 

「いいのよ。貴方のおかげで吹っ切れたし、マカロンも美味しかったわ」

 

「そうか、そりゃよかった。...ん、どうした?」

 

 それじゃまた明日。そう言おうとした時だった。

 

 神綺は帰ろうと一歩前に出ようとしたのだが、知らぬ内に絵里に上着の裾を掴まれていて突っかかってしまった。

 

「...ねぇ、亜里沙の言う通りまだ居てくれてもいいのよ?」

 

「...(お前もか、絵里)」

 

 まさか絵里までもこうなるとは思ってもいなかった。だが流石姉妹といったところ、引き止め方や表情までも一緒である。...狙ってるのか?

 

「はぁ...あのな、絵里。俺を好いてくれてるのは嬉しいが俺今一人暮らし同然だからな、洗濯とかしなきゃ駄目なわけよ」

 

「洗濯ならウチの洗濯機があるわ」

 

「...寝る場所もな?ないだろ?」

 

「...わ、私のベッドがあるわよ?」

 

「...おい、流石にそれは」

 

「なによ、私と寝るのが嫌?」

 

「なんでそうn....ん?」

 

 おや? そう神綺は疑問に思った。

 

 よくよく考えてみればおかしい。確かに絵里は偶に幼児退行したかの様に甘える事がある。だがこれは...度を過ぎているし、やるのは希と一緒に居る時でおふざけ半分だ。でもこれは...本気に思える。

 

 今だって胸を俺の背中に押し付けて抱きついているのだ。...寂しいのか?でも亜里沙がいるからそれは...

 

「神綺君...」

 

「...なんだ」

 

「.......」

 

「...おい。...おい、絵里?」

 

「......」

 

 何かがおかしい。なぜ返事がない?

 

 そう真剣に考えようと押し黙ると、

 

「すぅ......すぅ.....」

 

「...あ?」

 

 静かになったからこそ聞こえた。....絵里の寝息が。

 

「寝てるのか?...おい?」

 

「ん~....んっ.....」

 

 この反応、ワザとではないらしい。

 

「勘弁してくれ...」

 

 これじゃぁ身動きが取れない。仕方がないので神綺はゆっくりとしゃがみ、絵里からの拘束を解く。

 

「これで大丈夫か....ん?」

 

 おんぶやだっこは身長的にも無理なため、お姫様抱っこで運ぼうと手を絵里の背中にまわした時、自然と絵里と顔の距離が近くなった神綺はある事に気がついた。

 

「この匂い...おいおい、まじかよ...」

 

 いつどこで飲んだのか、わからないのだが絵里からは微かにアルコールの香りがしたのだ。...つまりは酒である。

 

「酔ってたっていうのか?...まさか」

 

 ここで思い当たるのはさっきの亜里沙だ。...亜里沙も絵里と同じように駄々をこねていたということは、亜里沙も飲んでいた可能性がある。

 

 だがいつ?俺はずっと2人のどちらかと話していたから、飲むタイミングは絶対にないはずだ。

 

「...考えていても仕方がないか」

 

 ここは玄関だ。この時期になってくると流石に肌寒くなってきて部屋着の絵里じゃ風邪を引いてしまう。

 

「よっと...久しぶりだな、絵里の部屋に入るのは」

 

 絵里をだっこしたまま、器用にドアノブを捻って入ると、ベッドに絵里を下ろして、布団を掛けてやる。

 

「んん~....」

 

「気持ちよさそうに寝やがって...たくっ」

 

 はぁ、と今日何度目になるかわからないため息をつくと神綺はゆっくりと部屋の扉を閉めて、台所へと向かった。理由は勿論。

 

「俺がずっといたんだ。アルコールを摂取する機会といえば...これしかないよな」

 

 そう言いながら立ったのはボルシチの入った鍋。その蓋を開けてみる。

 

「....なるほどな。確かにするな、酒の匂い」

 

 結果はビンゴ。見事にアルコールの香りが鍋から溢れ出てきた。....大方香りつけかなにかで分量失敗してアルコールがシッカリ残っているんだろう。

 

 なのになぜ神綺がなんともないのか。それはただ単にアルコールに強いのと、絵里達よりも量が少なかった。それだけだ。

 

 じゃ次になぜ今の今までわからなかった?

 

 それも理由がある。実は神綺がこの家に入った時には微かにアルコールの香りが漂っていたのだ。だがそれよりもトマトピューレとかの匂いが勝って気が付かなかっただけ。おそらくその後に継ぎ足しをしたか、なにかしたんだろう。

 

 味もそうだ。初めて食べたからそういうものなのだろうと割りきって食べてしまった。

 

「想定外だった...にしても参ったな。これじゃ帰れん」

 

 そう。家主が寝てしまった以上、自分は帰ることが出来ないのだ。

 

 なんせ鍵は持っていないから、このままここを出てしまえば、鍵を開けっ放しの状態で放置することになる。それは防犯上よろしくないからアウトだ。

 

「残るしかないか...」

 

 幸い昼間に座ったソファは中々に使い心地がいい。そこで横になろうと考えながら、水につけてある食器類の片付けを初める神綺であった。

 

 

 

 

 

 

 

「よし、これで大丈夫だな。...後は」

 

 後は寝るだけなのだが、どうしても気になることがあった。それは...

 

「...悪いな亜里沙ちゃん。開けさせてもらうぞ」

 

 亜里沙の状態の確認であった。度合いは違えど絵里と一緒で酔っていたんだ。どんな格好、体勢で寝てるかが心配で仕方がない。

 

 恐る恐る部屋を開けると、中は暗く、ベットで布団に包まっているのが見てわかった。

 

「...大丈夫そうだな。おやすみ、亜里沙ちゃん」

 

 そう小声で言うと、静かに扉を閉めて、隣の絵里の部屋へと入る。

 

「絵里はどうだ...おいおい」

 

 妹は綺麗に寝ているというのになんだこの姉は...さっき掛けたばかりの掛け布団を引剥して寝ている。

 

「流石に風邪引くぞお前...たくっ 絵里ってそんな寝相悪かったか?」

 

 しょうもない悪たれをつきながら神綺は優しく掛け布団を絵里に掛けてやる。すると、気持ちよさそうな顔をする絵里を見て脱力してしまう。

 

「...はぁ」

 

 やってられない。そう思いながら今度こそリビングに戻ろうとするも、何かに突っかかった。...デジャブを感じる。

 

「まさか....」

 

 そのまさかである。なんと絵里が神綺の腕を掴んでいるのだ。寝ているのに。

 

「勘弁してくれ...」

 

 しかも何かにうなされているようで、つい数秒前の夢心地の顔ではなかった。

 

「...仕方ないな。大丈夫だ、俺はここにいる。安心しろ」

 

 うなされているのであれば、落ち着けばこの腕の拘束も解けるのでは?と考え、絵里を安心させるために頭を撫でる。

 

 すると、面白いものでみるみると絵里の顔色は良くなっていく。

 

「へぇ、こんなに違うものなのか」

 

 しかし問題の腕は、

 

「...はぁ」

 

 掴むどころか、抱枕にするかのように密着されてしまった。これでは益々抜け出せない。

 

「...諦めるか」

 

 困ったお嬢様だ。そう項垂れ、神綺はリビングに行くのを諦め、絵里に付き合うことにした。




 閲覧有り難うございました。

 どうだったですか?私にしてみればいつもとは少し違う路線でやったつもりではありましたが、お楽しみ頂けたでしょうか?

 よろしければ、感想、ご指摘よろしくお願いします。


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さてさて、前回に引き続き告知でございます。

本日、21日から秋葉原にて、夜咲麗(@K2S11)様主催のお誕生日企画が始動致します!
http://www3.hp-ez.com/hp/eririnbd
場所は秋葉原駅電気街口目の前のセガ秋葉原です!

私も学校が終わり次第、現場の様子見と神田明神へ痛絵馬を奉納しに行く予定です。

Twitterで騒いでると思うので、リプを送ってくだされば反応しますよ!

ではでは、本日の昼間は秋葉原で僕と握手!(謎テンション)


下のイラストはセガ秋葉原で掲示される物と同一です。

【挿絵表示】
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