ラブライブ! -彼はどう変わる?-【リメイク】 作:レイヴェル
いやぁ、ほんとサブタイトルって難しいですよね。
わけわかめおいしいですよ、ほんと。
「いち、に、さん、し、ごー、ろく、しち、はち!」
「にー、に、さん、し、ごー、ろく、しち、はち!」
リズムよく歌うような掛け声が、今日も音ノ木坂学院の屋上から発せられていた。
「それじゃ、一度休憩にします!」
「だーおわったー!」
「もう無理にゃぁ...」
しばらくすると、一通りの練習が終ったのか休憩になる。するとたちまちメンバー達は疲れからかその場にへたり込む。
「もうですか?まだまだこれからですよ?」
しかし、今日の練習を監督している海未は、日頃積み重ねている稽古のおかげでケロっとしていて、それに皆が呆れる。それが最近の恒例行事になっていた。
「も、もう少しお手柔らかにおねがいします...」
「...仕方ないですね」
「はぁ...なんで今日の海未はこんな力入ってるのよ。神綺はどこ行ったのよ!あいつもう復帰してるんでしょ!?それに真姫もいないし!」
日頃は神綺が仕切ってやっていた練習も、神綺の代打として監督をしている海未に掛かると今のように数倍辛いものになってしまうのだ。それがにこを含め全員わかっているからこそ、神綺にはできるだけ参加して欲しいと思うのだが、生徒会や、今日のように急用で出れなくなると、海未が担当になる。
そして海未が監督をやる翌日は必ず全員が筋肉痛になる。
「しょうがないよ。二人共急用って言ってたし...」
「まさかあの二人デキてるんじゃないでしょうね?」
「えぇ!?」
「まっさかぁ!」
「でも真姫はあいつの家にいたことあるんでしょ?ないとも思えないんだけど」
「う゛、確かに...」
「もし本当にデキてるんだったら別れさせないと...」
「えぇ?!にこ先輩最低ですね...」
「何誤解してんのよ!いい?アイドルに恋愛はご法度なのよ!許されていいものじゃないわ!」
「あー...」
不味い、スイッチが入った。そう穂乃果達は後悔するがもう遅い。こうなってしまったら花陽と一緒で当人が満足するか、周りの空気を感じ取って冷静になるまで終わらない。
だがその被害から逃れられた人物がいた。それは、
「はぁ...」
海未である。彼女はにこ達とは違い、バテること無くずっと立ったままだった。だから練習が終わり、メンバーと一言二言話し終えると、屋上に設置してある安全柵へ近づき、柵の間から見える秋葉原の景色をボーッと眺めながら、あることを考えていた。今日の練習が一段とキツイのも、その事を忘れようとヤケになってハードにしているからだったりする。
そしてそのあることとは一体なにか。
実は海未。数日前から真姫にナニカがあるということを薄々感じ取っていたのだ。
これは神綺の代わりに練習の監督となり、みんなと向かい合ってやるからこそわかること。いつもは一生懸命にやる真姫が、どこか上の空だったり、変に頑張ろうとしていたりと、どこかおかしかった。
だから海未は聞いてしまった。何があったのかを。
すると最初はやんわりとごまかしていた真姫だったが、しばらくすると観念して白状した。そして海未は驚愕する。
なんせ真姫がμ'sを続けられるかもわからない状況なのだから。
それから海未は悩んだ。どうにかして真姫の父親を止められないかを。だが、日々練習に追われ、家でも稽古詰めの海未にはとてもじゃないが、そんな考える余裕はなかった。
そしてそれから数日。遂に展開が動いた。それが今日の練習前に言われた神綺からの一言。
『悪い、海未。今日の練習に俺と真姫は出れそうにない』
それを聞いた瞬間に思わず聞いてしまった。
『真姫の存続について...ですか?』
『...なぜそれを知っているかは今は聞かない。ただその通りだ。これから行く』
『...なら私達も行きます』
なんせ同じメンバーであり仲間だ。その仲間が存続の危機なのに自分達がなにもできないなんて...そうやるせなくなった海未は、神綺に自分達も行かせてくれと頼んだが、答えは。
『駄目だ。それはできない』
『なんでですか!?』
『しっ 声が大きい。...あまり時間がないから簡潔に言うが、これは俺から言い出したことだ。お前達に相談もせず、勝手に真姫をその気にさせてμ'sに入れた俺の責任だ。お前達が背負うことじゃない』
『だとしてもっ』
『それに、だ。俺に考えがあるんだが...それにお前達がついてくると都合がわるいんだ』
『...え?』
『これから話すのは大の大人だ。そんな相手にまともに張り合えるか?』
『それは...』
海未は黙りこんでしまう。なんせ海未も頭が回る人間だ。自分に対して言っていることじゃないのはわかったし、逆に誰に向けての言葉かもわかってしまった。
『...絶対に凛や穂乃果が突っかかる。それだけは避けたい』
『なら私だけでも!私も彼女を勧誘した一人です!』
海未も屋上で凛や花陽達と一緒に真姫に加入するかを聞いた一人だ。それに責任を感じているのかもしれない。だが、神綺はそれも理解したうえで。
『駄目だ』
『......』
『あのな、海未。その気持ちは素直にうれしい。だが相性が悪いんだよ』
『どういうことですか?』
『簡単だ。お前も同じ跡継ぎ娘ってことだ』
『....』
海未も園田道場の跡継ぎを望まれ、日々稽古をしている身。それは海未自身もよくわかっていることだった。
『これから行く場所にいけば、確かに海未の言葉は説得力があるかもしれない。なんせ似たような立場だからな。だが、それは普通の家ならばだ。今回の相手は違う、もっと面倒なんだよ』
『そう...ですか』
『だからお願いだ海未。...俺に任せてくれ』
『...わかりました。お気をつけて』
神綺の言いたいこともわかり、それに自分が入ってはならない理由もなんとなくだが理解した。
だが、
「...だからといって、引き下がれるほど私は冷めていませんよ、斎藤先輩」
そんな簡単にはいそうですか、で終わらせられるわけない。
なんせここまできた仲間なんだから。
そう決心すると、海未は未だ伸びているメンバー達に近づき、
「皆さん!お話があります!」
正解か間違いかわからない。でもこれでもし真姫が脱退になった時。自分はどう思うか。
それを考えれば今何をしなければならないかはわかる。
...今は、自分達も一緒に進むべきなんだ。
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音ノ木坂学院の屋上でワンアクション起きそう、という時。神綺と真姫の2人は真姫の自宅の前に来ていた。
「なんだかんだで俺って真姫の家初めてかもな」
流石病院を経営しているだけあって、家もご立派だ。
「そうでしたっけ?」
「あぁ。病院には何度も顔出してるけど」
「あまり気にしたことなかったですね。...準備はいいですか?」
「待ってくれ...すぅー...はぁ...っ」
緊張と不安で鼓動が早い神綺は、落ち着かせようと深呼吸をする。
しばらくして落ち着くと、気を取り直して準備完了だ。と目で合図しようと真姫の方を向くが、思わず息を呑んでしまった。
なんせ真姫が小刻みに震えているのだ。声だけは強がっていたのかいつも通りに聞こえたが、顔を見れば明らかに不安に押しつぶされそうになっていた。
まるで俺が記憶喪失となり、これからどうすればいいのかわからなくなっていた時のようだ。
「それじゃ...行きますね」
しかしそれを本人はなんとも思っていないのか。はたまた割りきっているのか、全く気にする様子もなくインターホンを押そうとする。そしてあと少しでボタンを押す-------ところで神綺が真姫の手を掴んで止めた。
「せ、先輩?」
「真姫、深呼吸しろ」
「え?」
「いいから」
真姫は神綺のとった行動に驚いて慌てて神綺の方を瞬時に見る。だが、神綺のいつも以上に真剣な目を見てしまった真姫は、言い返すのも忘れて素直に深呼吸を始める。
「...落ち着いたか?」
「ごめんなさい。取り乱してました」
深呼吸をして冷静になったのだろう。震えは治まり、気恥ずかしそうにそっぽを向かれてしまった。
だがそんなのわかっていたこと。神綺はさっきと変わらず真剣な様子で真姫に語りかける。
「いいか、真姫。俺が必ずフォローするから、お前の本心を親父さんにぶつけろ。曇りなくな」
「...私にできますかね」
「できるできないじゃない。やるんだ。...俺が無責任なことを言っているのはわかっている。だが、これはお前自身の問題なんだ。お前が、決めてくれ」
「...わかりました」
「よし、いい目だ。...絶対許可貰おうな」
「...はい!」
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予め真姫にお願いしておいた時間通りに真姫の父親、西木野雄二がリビングのソファで待っていた。
...流石は、都心で大型病院がひしめくこの地で大学系列ではなく個人で運営している総合病院を仕切っているだけあって、何度見ても威圧感や威厳がすごい。...普通に怖気づくぞ、これ。
でもこんなところで折れたらあいつらや真姫に会わせる顔がねぇな。気引き締めろよ、俺。
「...お忙しいところ、お時間を割いて頂きありがとうございます」
「あぁ、そんなかしこまらなくてもいい。...なんとなくだが、君が来た理由もわかる」
...やはりわかっていたか。
「取り敢えず座りなさい。立ったままというのもあれだ」
「...それではお言葉に甘えさせて頂きます」
失礼します、と小さく断りをいれながら俺は真姫と一緒にソファへ座った。
「それじゃ、始めようか。...前に会っているが一応自己紹介だな。私は西木野雄二、真姫の父親だ」
「存じております。私は高校3年の斉藤神綺と申します」
「まぁ、私も君のことは知っているがね、やはり形式とはいえ済ませておかないと歯がゆくてね。...取り敢えず私の方から質問をさせてもらってもいいかい?」
「はい。構いません」
さてさて、まず一番にどんな切り出しがくることやら。
「斎藤君と真姫は...付き合っているのか?」
「...は?」
おっと不味い!?思わず素で反応してしまった。
「いや、最近真姫の帰りも遅いと聞くし、今日は君も来るしで...テッキリ付き合ってる報告にきたのかと思ったんだが...」
...なるほど。性格悪いな親父さん。
「そのようなことはありません。第一、西木野さんに時間を割いて頂いてまでそのようなご報告はしませんよ」
「そ、そうか...」
白々しすぎるぞこの人。絶対ナニカあると俺を理由に帰そうとしてるな...真姫は気がついていないみたいだが。
はっきりいって俺が来ておいてよかったかもしれない。真姫一人なら確実に言いくるめられてるぞ、これ。
「じゃぁ...君は今日何をしに来たんだい?」
...来た本命だ。
落ち着け、俺。ここからは失敗が許されないぞ。
「それは、西木野さんに真姫さんの進路のことでお許しを貰おうとお伺いしました」
「...なに?」
ピクッと親父さんの眉が動いたのに気がついた俺は、一瞬怖気づくも言葉を続ける。
「実は先月より、真姫さんは音ノ木坂学院で活動するスクールアイドルに加入しています」
「...本当なのか?真姫」
「っ う、うん...私、音楽は好きだし...やっぱり諦めきれなくて」
「そうか...それで、斎藤君はそのスクールアイドルと何が関係しているんだ?」
「...え?」
「....」
「あ、はい。私はスクールアイドルのマネージャーとして、日々彼女達の練習を監督しています」
まさかつっかかりもなく、サラッと自分に話を振られるとは思わなかった為、返答がぎこちないものになってしまった。
「そうか...」
それ短く呟いてから数分間。親父さんは目を閉じたまま何かを考えているのだろう。ジッと無言のまま、時間だけが過ぎていった。
それから何分が経っただろうか、親父さんが急に深呼吸をし始め、徐ろに目を開けた。
「...そのスクールアイドルとやら。アイドルと名が付いている通り、世間一般で知られているアイドルの活動と一緒と見ていいのかな?」
「...多少相違点もございますが、そう解釈して頂いても構いません」
「なら、その活動を私は認めることはできない」
「っパパ!」
やはりそう来るよな。
「いいか、真姫。お前には医学部に行って貰わなければならないんだ。そんなことより、勉強に力を入れて欲しいんだよ」
「そんなって...」
「(真姫、落ち着け)」
「(でも!)」
「(いいから)」
覚悟していたこととはいえ、いざ言われてみれば辛かったのだろう。真姫が声を上げて反論しようとするが、俺は小声でなだめる。
「お言葉ですが西木野さん。私が音ノ木坂学院の副生徒会長を務めているのはご存知ですか?」
「勿論だ。学校説明会でも君を見ているからな」
「ならよかったです。それでは恐縮ですが、経緯をお聞きください。まず西木野さん。ご存知かはわかりませんが、現在音ノ木坂学院は廃校の危機に瀕しております」
「...あぁ、知っている。妻から廃校のプリントを貰ったよ」
「それを知ったある女子生徒が立ち上がり、廃校阻止をするには学院の知名度を上げようと始めたのがスクールアイドルです」
「まさか...それが真姫なのか?」
「いいえ、違います。彼女は2年生ですので。それでなのですが、その2年生が真姫さんに白羽の矢をたてまして、勧誘を始めたのが最初でした」
2年生、まぁ穂乃果のことなのだが、そのことを言うと親父さんの目が変わった。
...良かった穂乃果がここに居なくて。明らかに標的にされている。
「その頃から私もその2年生の子と交流を持ち始め、マネージャーになりました。それから数日のことです。私は学院の音楽室で真姫さんと鉢合わせをしました。...そこで私は聞いたのです。真姫さんに置かれている状況を」
「...そうか。だからさっき私が真姫の進学の事を言っても反応が無かったのか」
「そういうことです。...それで私は出すぎた真似とをしているのは重々承知の上で、真姫さんにスクールアイドル...μ'sに入ることを勧めたのです」
「それで真姫が入ったと?」
「はい。彼女の決断ではありますが、既に決めていた進路を私が揺さぶらし、誘ったのは事実です。それを言い訳で誤魔化すつもりはありません」
そうだ。これで怒られるなり、見限られるなりは好きにしてくれ...だが、
「ですが!彼女は自分で後でどうなるかもわかってまでこの道を進み始めたんです。迷いに迷って...やっと踏み出したんです。...だからお願いします。彼女を...真姫さんの決めた道を...否定しないであげてください...」
俺は躊躇いもなく頭を下げる。半ば勢いで言ってしまったところもあるが、本心だ。認めてもらえるなら頭も下げるし土下座だってなんだってやる。あの見てて痛々しくなるような顔を見なくて済むのなら...なんだって...
「......」
「...パパ、私ね。今の学校がとても楽しいの。凛がいて、花陽がいて、放課後になれば先輩達にも会える。...それが嬉しくて仕方がないの。中学校ではそうもいかなかったから...」
「真姫...」
「だから...私はスクールアイドルを辞める気はないの。ここで辞めたら...私は...」
折角形となった凛達との繋がり。それが崩れてしまったらどうなるだろうか。
よく人は言う。楽を知ったら戻れないと。それと同じで、一度人の暖かみを知ってしまったら、離れることはできないし、忘れられない。
「だがな、真姫。将来を考えれば...」
「...わかってる。でもね、パパ。どうしてもやりたいの」
声を振り絞るように、ここだけは譲れないという思いがヒシヒシと伝わってくる。それを親父さんも感じたのだろうか、厳つい目に動揺が走る。
すると、
「真姫ちゃんを辞めさせないでください! うわぁ!?」
「私達には真姫ちゃんが必要なんですぅ!」
「「「っ!?」」」
親父さんがため息をついたと同時だろうか、急にリビングの扉が開き、廊下からはなんと穂乃果達が入ってきた。
「おっお前ら!?」
「えっ...なんで...」
「私達がおとなしくしているとでも?」
「海未...」
「き、君たちは...?」
「音ノ木坂学院スクールアイドルのμ'sです!」
「...君たちが真姫の?」
「はい。仲間です!」
「皆...」
これは予想外だ。まさか海未達全員が来るとは思わなかったぞ.....
「えへへ...急いで来ちゃった」
恥ずかしそうに頭の後ろを掻く穂乃果に俺は気になっていることを聞いてみた。
「どうしてここに?」
「海未ちゃんから聞きました!真姫ちゃんが辞めるかもって。だから急いでここに来たんです。幸い花陽ちゃんが真姫ちゃんのお母さんの携帯番号を知ってたので鍵を開けてもらいました」
「えへへ...」
花陽が?...いや、それよりもだ。
「喋ったのか、海未」
「迷いましたが、私達も同じ仲間です。指を加えて待ってるなんてできません」
「....」
「そうですよ!それに...後悔はしたくありませんから!」
「っ! ...そうか」
そうだよな。...後悔をするなと言ったのは俺だもんな。
「....そろそろ、いいかい?」
いきなり大人数の女子高生が雪崩れ込んできたんだ。流石の親父さんも困惑の表情を隠せない。
だが、その表情には心なしかさっきまでの威圧感はないように見えた。
「まーなんだ。...真姫」
「は、はい!」
「...本当に、やりたいんだな?」
「っ うん!勉強だって頑張って医学部行くから!お願い!」
「俺からも...お願いします」
『お願いしますっ!』
俺だけではなく、穂乃果達も続くように声を揃える。
それから一瞬静寂が場を支配するが、すぐに親父さんが力が抜けたかのように息を吐いた。
「ふぅー.....わかった。認めよう」
「ほんと!?」
「やったー!!」
「ただしだ!...やり遂げるんだぞ」
「...うん!」
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無事、許しを貰えた真姫達は、今頃リビングでお茶を楽しんでいる頃だろうか。
なぜあいまいな言い方かって?それは、
「...なぁ斎藤君」
「なんでしょうか?」
俺は話が終わってすぐに親父さんに連れられて、地下の防音をされている部屋に来ている。なんでも二人で話がしたいんだと。
最初は何かされるんじゃないかとビクビクしたが、そうではなく、ただ単に話がしたかっただけらしい。本当にさっきまでの威圧感なんて嘘のようにフランクな感じになっている。
「そう固くなるな、もう終わったろ?」
「ですが...」
「取って食おうなんてことはないんだから肩の力を抜きなさい。こっちが話しにくい」
「はぁ...」
「...取り敢えず、君の言葉は信じて良いんだな?」
「はい。勉強面は私がサポートします」
「嫌な虫もつかないようにしてくれよ?」
「わかっていますよ」
「ならいい。...それとだ、斎藤君」
「なんですか?」
「君の言っていた...夢を諦めた子、だったか?その子はどう真姫と似ていたんだ?」
「...その子はアイドルを目指していました。ある人に追いついて、一緒のステージに立つんだ。と眩しい笑顔で語っていた女の子がいたんです」
「....」
「ですが、その子の両親はそのアイドルの道へ行くことを否定し、自分達の仕事の跡継ぎにするべく、引っ越してまで、アイドルを諦めさせて、勉強に専念させるようになったんです」
「...それで真姫を?」
「はい。真姫さんは言っていました。音楽の道を諦めたくないと。...自分で言うのもなんですが、私が引き止めてなければ殻に閉じこもっていたでしょうね。自分はその道に行くんだと言い聞かせて無理やり正当化しようとしていました」
「...そうか」
「話を戻します。最後に合ってからしばらく経って、私とその子は再会したんです。全くの偶然でしたけどね。けどその時のあの子の顔は正直見ていられませんでした」
「.........」
「顔は笑っているのに、笑っていなくて。私を見ているはずなのに、どこか違うナニカを見ているようで...とても痛々しかったですよ。現実から目を背ける為に、仮面を被っているみたいで」
「そんなことが...」
「だから私は切り出しました。スクールアイドルをやらないかと。...ハッキリ言って私の自己満足です。綺麗に整った顔をしている真姫さんが...あんな空っぽな笑みを浮かべているところを想像したら怖くて...手を差し伸べた」
「...いや、それで正しかったんだと俺は思う」
「...そうですかね」
「俺でも恐らくそうしただろう。失うことは皆辛いものだからな」
「...そうですね」
医者だからだろうか。命にかかわらず、ナニカを失う怖さと儚さを、親父さんも知っているのかもしれない。
「ありがとう、斎藤君。真姫を...救ってくれて」
「なっ 西木野さん!?頭を上げてください!」
「いいんだ。...下げさせてくれ」
「....駄目です。頭を上げてください」
「....しかし」
「いいですから」
「...しかし、これくらい誰だってするさ...だって、あの子があそこまで誰かといたいと言ったのは初めてなんだ。それを俺に見せてくれたのは君だ」
「私はなにも。あれは彼女自身が望んでやったことです」
「だとしてもだ。君がいなかったら私は高圧的にあの子を萎縮させて従わせていた」
「......申し訳ありませんが、そこは否定できません」
「だろう?だから君のおかげなんだ」
「...そうですか」
「まぁ、あそこで真姫の友達が来るとは思わなかったが」
「私もそうです。練習するようにと言ってでてきたのですが...でもそのおかげで西木野さんにも認めてもらえたので彼女達には頭が上がりません」
「なぁに、俺は君に頭を下げられた時点で認めると決めてたんだよ」
「...そうなんですか?」
「あぁ。君には記憶喪失の件もある。それこそ俺からすれば頭が上がらないよ」
「...意外でした。もっとシッカリとした主張がなければ駄目かと」
「ま、普通はそうなんだけどな。それこそどこの馬の骨かもわからないヤツを連れてきたのなら問答無用で蹴っていた」
「ははは...そこまで信用してくださっているとは、恐縮です」
「...斎藤君。今回は確かに認めた。そして勉強が不安になったら君に見てもらうということも合意した...だがな?真姫を泣かしたらいくら君でも覚悟してもらうぞ?」
「...わかっていますよ。ま、私が彼女を泣かせられるナニカを持っているとは思いませんがね。彼女気が強いですし」
「だからこそだ。そんな真姫が泣いたらタダ事じゃないってことよ」
「肝に銘じておきます」
「よし...それじゃ上に戻るか」
「わかりました」
「...真姫のことを頼むぞ?」
「...言われなくてもそのつもりです」
「あ!先輩!」
俺もそろそろ道を決めなければならない。本当にこのままでいいのかを。....いつまでも希の好意を見て見ぬ振りをするのはできない。いつかは答えが必要となってくる。
それがいつになるかはわからないけれど...
「ありがとうございました、先輩」
「...あぁ」
もうすぐそこまで来てしまっている様な気がする。
閲覧有り難うございます。
そろそろあれですかねーμ'sのメンバー全員登場していることですし、神綺君に対する好感度一覧を久々に作ろうかしら....
感想、ご指摘お待ちしております。