ラブライブ! -彼はどう変わる?-【リメイク】   作:レイヴェル

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 どうも、レイヴェルです。

 


第122話 廃校までの猶予

 月日が流れるのは驚くほど早い。

 

 俺ら音ノ木坂の生徒は、過ごしやすい春から蒸し蒸しする夏へと移り変わるのに合わせて、夏服となる。厚手のブレザーは必要なくなり、地の薄い半袖Yシャツでも良くなった。

 

 そして今日は遂に...

 

「穂乃果は大丈夫でしょうか?」

 

「できることはやった。果報は...寝て待て」

 

 理事長に釘を刺されたあの日から、ずっと心を鬼にしながら凛、穂乃果、にこの学力の底上げをやってきた。

 

 週3か4でやっていた練習は週2に減らし、内容も凝ったことはせずに、只今ある力を下げない様にだけストレッチをするなど軽くして少しでも勉強をする時間を多く取った。

 

 そしてその決断が正しかったのかの成果が今日問われる...答案返却日。

 

 幸いその成果もあり、にこと凛は赤点を免れ、今も俺達がいる部室で満面の笑みを浮かべながら教えてくれた仲間に感謝と自慢をしているが、最後の一人。リーダーである穂乃果だけが、まだ部室に顔を出していない。

 

 てっきり海未やことりと一緒に来るのかと思っていたが、穂乃果は海未の言葉に耳も傾けず、誰にも答案を見せないようにしながらジッとテスト結果を眺めていたらしい。

 

 この奇怪な行動がまた、彼女達を余計に不安にさせる。赤点を取ってしまって、責任を感じて動けずにいるんじゃないか...と。

 

 ワイワイと喜んでいた凛とにこでさえ、周りの重い空気に耐えられなくなり、不安がまた伝染した。

 

「...はぁ」

 

「穂乃果...」

 

 ...だが流石にキツイものがある。俺達はできる限りのことはした。簡易の小テストを作ってどれだけ定着しているかも確かめたし、図書室で居残りもした。

 

 これ以上できる手はなかったんだ。さっきも俺が言った通り、彼女が部室に顔を出すのを待つしか無い。

 

「穂乃果なら大丈夫だ。俺達がちゃんと見たろ?」

 

「ですが...ならなぜこないのですか」

 

「知らん。だがテスト前日の小テストで及第点は行ってたろ。別に満点取るんじゃない、赤点回避が目標だ。30点だぞ?あいつならできる」

 

「.....」

 

 あーもう!なんであいつはこんなに遅いんだよ...

 

 こいつらの重苦しい顔見てるの辛いんだよ。

 

「信じてやれよ...あいつらμ'sを始める時言ってたんだろ?やるったらやるって」

 

「...はい」

 

 不安なのはわかるがあの穂乃果だ。絶対にやってくれるはず。

 

 そう自分に言い聞かせた俺は立ち上がる。急に立ち上がった俺に海未達から一斉に様子を伺う視線が刺さるが、少しでもこの重苦しい空気から離れたかった俺は逃げるように窓際へと移動した。

 

 ぼーっと窓から見える校庭を眺めていると、テスト期間が終わったからだろう。運動部の子達がランニングをしていた。

 

 暑いのによくやるねぇ...ま、一応俺らも運動部か。

 

 これから外で練習だりーなんて心の中で愚痴っていると、ガチャッと扉が開く音が聞こえ、全員が一斉に顔を上げる。

 

「うわっ」

 

 するとそこにはずっと俺達が待ち続けていた穂乃果が、顔を引き攣らせて立っていた。

 

 

 

 

-----------------------

 

 

 

 

「穂乃果!テストはどうだったんですか!?」

 

「どうだったの?」

 

「全教科戻ってきたよね?」

 

「凛とにこは赤点回避したぞ。後はお前だけだ、穂乃果」

 

「う、うん」

 

「あんた!私達の努力を水の泡にするんじゃないでしょうね!?」

 

『どうなの!?』

 

 各々が不安を胸に、いつものハキハキとした様子がない穂乃果に詰め寄る。

 

 だがお前達...それじゃ穂乃果も反応に困るぞ。現に入ってきた時同様に顔を引き攣らせたまんまだ。

 

「え、え~っとぉ...」

 

 皆の必死さに軽く引きながら穂乃果はゴソゴソと鞄の中からナニカを探し始める。

 

 そして手が止まる。

 

 ゴクッ...

 

 誰かの固唾を飲む音が聞こえ、俺が息を呑むと。

 

「じゃーーん!!もうちょっと良い点が取れればよかったけど赤点は回避したよー!!」

 

 ババン!と掲げられた解答用紙は数学。そして赤く記されている点数は、64点。

 

 赤点は30点以下であるから...文句なしの合格ラインだ。

 

「いぇい!」

 

 当の本人はもう少し良ければと言っていたが嬉しいのだろう。さっき死刑宣告を免れたと騒いでいた凛達と同様に曇りない笑顔だ。

 

 その笑顔に俺達の不安は霧散し、自然と笑顔になる。これで課題は...クリアだ。

 

「本当に!?」

 

「嘘じゃないよ!ちゃんと赤点回避したよ!」

 

「やったぁ!!!」

 

「じゃぁこれで私達も...」

 

「ラブライブに出場できる!」

 

『いぇーい!!』

 

 良かった。本当に良かった。余りにもタメるものだから信じろと言った俺自身も不安になったが、いい意味で裏切ってくれた。

 

 今まで窮屈な思いをさせた分。今日は全力で、そして真剣に...練習に付きあおう。

 

「よし!これで全員目標クリアだ!これから直ぐに着替えろ!屋上で練習だ!」

 

『おー!!』

 

 さて、男の俺は足早に立ち去りますかね。...女子の着替えを眺める趣味はない。

 

 

 

 

----------------------

 

 

 

 

 俺は男で産まれてよかったと思う。あいつら女子と違って着替えも楽だしな。

 

 

 

 手短にトイレでTシャツとジャージのズボンという動きやすい格好に着替えた俺は、屋上ではなく、理事長室の前へと足を運んでいた。

 

コンコン

 

『はい?』

 

 いつも通り、礼儀として扉をノックすると理事長の声が聞こえる。中にいるようだ。

 

「3年の斎藤です」

 

『どうぞ』

 

「失礼します」

 

 

 

 

「今日はどうしたの?」

 

「先日言われましたμ'sメンバーの成績についてのご報告をと伺いました」

 

「そう。...その格好からすると上手く切り抜けたようね」

 

「はい。全員赤点なしです」

 

「良かったわ。当たり前のことではあるけれど、もし赤点があったらどうしましょうかとずっと考えてたの」

 

「彼女達はやればできる子ばかりです。火をつけてやれば、どこまでも進むでしょう」

 

「そう...正直、斎藤君がいてくれて助かったわ」

 

「...と言いますと?」

 

「ことりから良く貴方の話を今でも聞くのよ。練習で何かがあっても上手く鎮めてくれるって。ほら、あの子周りに敏感でしょ?」

 

「私はちょっとした助言をしているだけに過ぎません。問題の解決は、当人達が互いを許しているからこそ、円満に解決できるんです」

 

「...そういうことにしておくわ。それと、その互いが許しているのって...貴方も入ってるのかしら?」

 

「? どうなんでしょうね。少なくとも私はマネージャー、彼女達はアイドル。それだけです」

 

「...そう」

 

 理事長の質問の意図を解りかねたが、それでずっと黙るのは不味いと思った俺は、とりあえず言葉を濁して答えた。

 

 するとその俺の言葉から何かを感じ取ったのだろうか。短く相槌をうったまま口を閉ざした。

 

「...理事長?」

 

「え?あぁ、ごめんなさい。...ねぇ、斎藤君。貴方は今楽しい?」

 

「それはスクールアイドルのことですか?」

 

「えぇ、そうよ」

 

「...楽しいですよ。生徒会との両立は中々難しいモノがありますが、それでもそんなことが気にならなくなるぐらいに、彼女達の一生懸命さや、真剣さが伝わってくるのが嬉しいんです。それだけこちらも教え甲斐がありますし、応援したくもなりますから」

 

「...そう。なら良かったわ」

 

「どうされました?急に」

 

「いいえ?ただ気になったのよ。私からすれば、斎藤君の頑張りを利用して胡座をかいている様なものだから。嫌々でやってるのなら廃校もそれでまたいいのかなってね」

 

「理事長...」

 

 理事長らしくない言葉だ。この人が人前で弱気みたいなことを言うのは初めて見た。

 

 俺はことりと親しいこともあり、他の生徒と比べれば理事長は俺に対して物腰が柔らかい。だが、それでも俺にこんな事を言ったことは一度もなかった。

 

「...私で良ければ相談に乗りますよ?」

 

「それは嬉しい申し出ね。とても魅力的だわ。...でも大丈夫。貴方は生徒で私は教育者よ」

 

「...出過ぎました。申し訳ありません」

 

「いいのよ、気にしないで。...でも本当は斎藤君になら相談したいってこと一杯あるのよねぇ。貴方と話していると大人と話しているようでついね」

 

 ...一応これでも中身は30後半のおっさんだ。理事長が思っていることもあながち間違ってはいない。

 

「廃校のことでご多忙かと存じますが、溜め込みすぎるというのもまた体に毒ですよ?」

 

「...そうね。ごめんなさいね、貴方に話べきことじゃないのに変な空気になっちゃって」

 

「私は構いません。...ご相談でしたら本当に乗りますよ。それこそ生徒としてではなく、ことりの友達として」

 

「ふふっ 面白いのね、斎藤君って。こんなオバさんなんかに親身になってくれるなんて。でもそっか...なら、少しだけ聞いてもらっちゃおうかしら」

 

 貴方みたいな綺麗なオバさんがいてたまるか、と心の中で思わず呟いてしまう。いやだって若すぎるだろう。これで一児のしかも高校生の母親とは思えない。

 

 っと、顔には出てないよな。冷静に冷静に。

 

「...なんなりと」

 

「そうねぇ...あ、そうだ斎藤君。話は少し戻るけど、ラブライブにエントリーするのよね?」

 

 これは...相談なのか?まぁいいか。

 

「はい、そのつもりです。その為に学力の底上げを練習時間を削ってまでしましたから」

 

「...それでなのだけれど、今度のオープンキャンパスがあるじゃない?」

 

「えぇ」

 

 今まで穂乃果達の方に追われていたから記憶が定かではないが、確か7月の下旬ぐらいにあった気がする。...となれば約1ヶ月後か。...だがそれがラブライブとどんな関係が?

 

「実はね、先日の会議で今度のオープンキャンパスでの評判が芳しくなかったら...廃校することになったの」

 

「...猶予はない、ということですね?」

 

 廃校をできるだけ避ける為に俺達男子生徒を受け入れてから2年。そしてそれでも誤魔化しきれなくなって廃校が現実味を帯びてから約3ヶ月。...よく持った方だと思う。ここはやはり理事長の能力が高いのだろう。

 

 だがもう3ヶ月前とは何もかも違う。

 

 俺は前を少しではあるが向き始めたし、穂乃果達も強い意志を持って前に進んでいる。いいタイミングといえば、いいタイミングだ。

 

「...ごめんなさいね。脅しのようになってしまうけど、音ノ木坂学院は来年からの生徒募集を止めて...廃校になるわ」

 

「...なるほど」

 

 つまりはオープンキャンパスでいい結果を残せということ。ならどうするか?簡単だ。ラブライブからこの話に繋げたんだ。十中八九、μ'sでナニカを...ライブをして、ラブライブへの布石にしろってことか。

 

 もしこれで成功すれば、彼女達自身に自信がつく。スポーツでもなんでもそうだが、面白いことに気持ちってのは結構大事で、コンディションにも影響してくる。

 

 ...これに乗らない手はないな。

 

「理事長の仰りたいことはわかりm「今の話っ本当ですか!?」っ」

 

 お引き受けします。そう俺が言おうとした時、ここにはいないはずの人物の声に遮られ、俺と理事長は目を見開いた。

 

 

 




 閲覧有り難うございます。

 感想、ご指摘お待ちしております。




 っと、さぁさぁまたこの時期がやって参りました。
 遂に明後日の11月1日は星空凛ちゃんの誕生日!

 ...これでピンと来た方はすごい。
 ま、例に習って凛ちゃんの誕生日にまた夜咲麗(@K2S11)様主催のお誕生日企画が始動しまっす!
 そちらにまた参加させていただいておりますので、告知ということになります。
 
 場所は前回同様に、JR秋葉原駅電気街口前の『セガ秋葉原』にてイラストが掲示されます。
 いつまで掲示されるかはわかりませんが、よろしければお立ち寄りください。

 私もラ!CDを買いに誕生日当日は秋葉原に行きますから、時間が合えば僕と握手!(笑)

 Twitterで他の絵師さんのイラストに興奮していたりすると思いますのでリプを下されば反応します。

 変なツイートって引かないでね!
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