ラブライブ! -彼はどう変わる?-【リメイク】   作:レイヴェル

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 どうもお久しぶりです、レイヴェルです。

 いやぁ、中々纏まらなくて書いては消して、書いては消してを繰り返していたら2週間も経っちゃいましたよ。申し訳ない。

 その代わり文字数は気持ち多めですかね。


 ではでは。


第125話 さぁ、進もう

 

 

「......はぁ」

 

 屋上を後にした俺は、なんとなく一服して落ち着こうと考え、どこか休めるような場所をボーッとしながら探していた。

 

 普段ならば生徒会室や教室、色々あるだろう。だが今日は登校している自分たちの方がイレギュラーなのだ。防犯の都合上、殆どの教室は鍵が締まっていて入ることは出来ない。

 

 どこか良いところはないものか。そう思いながら誰もいない廊下を歩いていると、細長い通路ではなく、開けた場所に出た。

 

 見渡してみると周りにあるのは長机丸椅子、後は自販機がある。俺には馴染みがあまりない場所。だが知ってはいる。

 

「...購買か。結構歩いたんだな」

 

 俺は昼の時は弁当と決めている。だからそう購買にお世話になることのなかった為、生徒会の用事以外で足を運ぶことはまず無かった。

 

 いつもならワイワイと購買に食べ物を買いに来た生徒達や、長椅子に違うクラスの連中同士で集まって仲良く食事...なんて光景で賑わっているのだろう。だが、今この場にいるのは俺ひとりで物音ひとつたっていない。とても静かだし...頭を冷やすのには最適だろう。

 

 

 

 立ったままというのもなんか嫌だなと感じた俺は、丸椅子をひとつ拝借し、そこに腰掛けた。だが座って真っ先に目に入った自販機を見ると、無性にコーヒーが飲みたくなり、直ぐに腰を上げてジャージのポケットの中をゴソゴソとまさぐりながら自販機に向かう。

 

「...金足りっかな」

 

 というのも、財布のままポケットに入れてしまっては練習の邪魔になる。だから金が必要になれば一々荷物のところまで行かなければならない。

 

 けどそれが俺には面倒だった。なんせ仕舞ってある場所は俺が普段から使っている自分のロッカーだからな、屋上からだと距離がある。だから俺は練習前に財布から小銭を取り出してポケットに入れるんだが、その時に面倒で小銭を見ないで適当に入れると気がある。そしてそれが今日なのだ。...要は数十円しかない可能性があるということ。

 

 ここまで来てロッカーに戻るのは嫌だ。そう思いながら恐る恐るポケットの中に入れた手を出してゆっくり手を広げてみる。

 

「...ギリギリか」

 

 よかった。いつもは500円ぐらいは入れてあるのだが、今日は135円。缶コーヒーなら余裕の値段だった。

 

ピピ...ガコンッ

 

 ひんやりとして持っていると気持ちがいい缶のプルタブを開けて、中のコーヒーを口に含む。

 

「...美味いな」

 

 はぁぁぁぁっと長い溜息を吐きながら、さっき座った丸椅子に再度腰掛ける。

 

 

 

 すると一段落したからだろうか、落ち着こう、落ち着こうと押さえつけていたはずの感情が段々と溢れ出てきてしまう。

 

「...ちっ」

 

 胸糞が悪い。この表現が今の俺にピッタリだ。

 

 だが落ち着こうとここに来たのにぶり返してしまっては元も子もない。首を横に降って強引に忘れようとするが、効果はなく、思わず頭を抱えたその時、

 

「なにか悩み事かしら?」

 

「っ!?」

 

 今日は俺や穂乃果達以外に生徒はいない。なのに声がするのはなぜだ。

 

 まったく予測していなかったことに驚きを隠せなかった俺は思わず立ち上がってしまった。

 

「...理事長」

 

「どうしたの、こんな所で。なにか深刻そうだけれど」

 

 ...今一番会いたくなかった人物かもしれない。

 

 

 

----------------------------

 

 

 

「斎藤君でも悩み事があるのね」

 

「理事長は私のことをどう思っているんですか...私だって人間です。悩みもしますよ」

 

「ならその相談にのってあげるのが私の役目かしら?」

 

 いい提案だ。確かに一人でいてもさっきみたいに堂々巡りになってしまうだけ。

 

 だが、相手が悪すぎる。このことは理事長にはとてもじゃないが言い出せない。

 

「...いえ、理事長にお話できるようなものではありませんので。お気持ちだけ有り難く頂戴します」

 

「いいのよそんなの。前は私の相談に乗ってもらっちゃったし、それのお返しよ。理事長が生徒に借りを作ったままってのもあれでしょう?」

 

「しかし」

 

「μ'sのことでしょ?隠さなくてもわかるわ」

 

 これには目を見開いた。なぜ理事長はまだ何も言っていないのにわかるんだ...

 

「どうしてって顔してるけど...今日学院に来てるのは先生方を除いて貴方達だけよ?それに朝は聞こえた練習の声は聞こえないし、お昼にしては時間がズレてるわ。それに貴方が練習を抜けてここにいるのが何よりの証拠よ」

 

「...確かにそうですね」

 

「上手くいってないの?」

 

「そうですね...挫折しました」

 

 少し自分が理事長を舐めていたというのもあるが、ここまで読まれてしまい、あまつさえ主導権を握られてしまった。こっちは従うしかない。

 

「それで?斎藤君はどうしたいの?」

 

「俺は......俺は続けたいですよ。ここまで来たんですから」

 

 やっとここまで来たんだ。それもオープンキャンパスでいい結果を出せばいいという明確な目標が課された今。突き進む以外道はない。

 

 なんせ今までは不明瞭で具体的な解決策もでなかったんだ。目標ができたことでどれだけ安堵したか。

 

 ...でも、

 

「...ですが俺は道を間違えました」

 

「...どんなふうに?」

 

「俺はあいつらに期待を押しつけすぎたんですよ」

 

「期待しちゃ駄目なのかしら?」

 

「いいえ。程々の期待であれば、当人達のモチベーション向上に繋がる場合があります。ですが俺は高望みをしたんですよ。今までできたんだから今回もできる、と」

 

「...それで仲が悪くなったの?」

 

「...どうなんでしょうね。ただ俺はあいつらの言葉を信じたかっただけなんです。理事長に廃校を止める条件を提示されたあの日、俺は言ったんです。今まで通りにやっても成功は難しい、と。だからダンスに腕が立つ絵里もμ'sに入ってもらってパフォーマンスの底上げも狙いました。けど...俺のその言葉は彼女達にとってみればその場だけで、あまり頭にも残っていなかったんですよ」

 

「自分だけ馬鹿を見ているみたいで嫌になったの?」

 

「...それも少なからずあるのかも知れませんね。俺は勝手にあいつらのやる気を信じて力を貸してきましたが、当人達が怠け始めている今、俺は何に向かって、そして何をするべきなのかがわからなくなりましたよ」

 

 それだけならまだいい。

 

 だがさっき俺は何をした?自分の思い描いていた練習風景とはかけ離れていることにイライラして絵里に八つ当たりまがいな事をしてしまった。

 

 ...あの中で絵里は穂乃果達に比べれば必死に頑張ろうとしていた。なのに俺は一番頑張っているであろう絵里に矛先を向けてしまったんだ。まるでお前はまだ頑張っていないだろうとでも言うように否定し、逃げるようにここに来た。

 

「はぁ...」

 

「中々上手く行かないものね」

 

「...そうですね。ここまで盛大に空回りしたのは初めてですよ」

 

「人生何事も初めてから始まるものなのよ。...けどいいじゃない。斎藤君は自分が間違ったと気がついたんでしょう?」

 

「一応、ですがね。時間が経ったのと理事長と話していて痛感しましたよ。もっとあいつらのことを思いやっていれば、マシな結果になっていたんじゃないかって」

 

 今回はあいつらの慢心が原因だ。なら逆にあいつらをやる気にさせるナニカを見つければよかったんだ。なのに俺は周りが見えなくなってしまってそれが叶わなかった。

 

 ...情けない。

 

「いいのよ。失敗も経験って言うじゃない。それに斎藤君はまだやり直せるわ」

 

「....え?」

 

 馬鹿な。

 

 俺は理事長の言葉を疑った。...間に合う?この状況で?オープンスクールというタイムリミットまで一週間しかないのに?

 

「だって斎藤君は自分の間違いに気がついたじゃない。今回は失敗はしたけど、まだオープンキャンパスは始まってもいないわ。まだ修正は効くはずよ」

 

「そんな...流石にそれは...」

 

「無理だと思うのは斎藤君が彼女達のことを信じきれていないからよ」

 

「...どういうことですか?」

 

「今の斎藤君は今までのμ'sを基準に考えているはず。なら心を入れ替えたμ'sだったら?」

 

「...仰っている意味がわからないのですが」

 

「言葉の通りよ。今回はあの子達が気を抜いたせいで失敗したのであって、元々期待するのが無理な話だった。けど今まで斎藤君が信じてきた真剣に臨むμ'sだったら?それでも1週間じゃ無理なのかしら」

 

「......」

 

 その言葉に俺は言い返すことが出来なかった。

 

 悔しいが、理事長の言う通りなんじゃないかと思ってしまう。

 

 だがそれではまた俺は空回りをしてしまう気がするし、何よりも俺は彼女達を切り捨てるようにしてここに来たんだ。今更一緒に頑張ろうなんて口が裂けても言えない。

 

「もっとあの子達の事を信頼してあげてもいいんじゃない?」

 

「信頼ですか...」

 

「あの子達は強いわ。これで廃校になったら周りからどんな目で見られるかも容易に想像できるのに、それでも前に進もうとしていたわ。少なくとも、1週間前まではね」

 

 そうだ。あいつらは頑張っていたじゃないか。テストで赤点を取らないように、軽口や不満を言いながらでも問題は解いていた。そして...結果を出した。

 

「っ!」

 

 ...いや、確かにあいつらならできるかもしれない。さっきも不満をタラタラいいながらも練習はやっていた。

 

「...どこか思うところがあったの?」

 

「...はい。ですが今の俺はあいつらに合わせる顔が...」

 

「シッカリ謝ればいいのよ。それに一度亀裂ができたくらいであなた達の仲は裂けちゃうの?そんなに柔じゃないでしょ?」

 

「......」

 

「確かに廃校をなんとかする手段が貴方達μ'sしかいないのを悔しいけど理解しているわ。しかもそれが知らない内にジワジワと生徒達にも伝染して貴方達に見えない重荷となってしまってるのも知ってる」

 

「......」

 

 重荷か...たしかに俺が焦ったのも要因だもんな。別にステージで俺が踊るわけでもないのに。

 

「けれど貴方達は今までに結果を出してきたわ。正直言ってあんなに世間で評価されるとは悪いけど思わなかったの」

 

「...俺もですよ。良い線を行ってるとは思いましたが、あそこまでとは...」

 

「それも全て斎藤君が居たからよ」

 

「...俺が?」

 

「貴方は知らないと思うけど、ことりからよく聞かされるわ。穂乃果ちゃん達と3人で帰っている時の話題は貴方のことばっかりだったって」

 

「あいつらが?」

 

「えぇ。それも上機嫌に言っていたから嫌ってないのは確かね」

 

「...何を仰りたいんですか?」

 

「んー、要はそんな簡単に人間関係は壊れないってことよ。それにあの子達もそんなに馬鹿じゃないわ。自分達の間違いにも気がついているはずよ」

 

「...どうでしょうね。案外もう帰っているかもしれませんよ?」

 

 俺はあの時にもうやめるという逃げる選択肢を勢いとはいえ与えてしまった。それにあの状態のあいつらじゃ間違いなく...

 

 

 

「あら、じゃぁそこにいるのは偽物さんかしら?」

 

「え?」

 

 まさか、そう思いながら振り返るとそこには、

 

「...神綺君」

 

「絵里...」

 

 絵里だけじゃない。穂乃果達も一緒に練習着のままこちらを力のこもった目で見据えていた。

 

「どうしてここに...」

 

「貴方を探してたのよ、皆で」

 

「何処にいるのかと思えば理事長と楽しくお話中とはねぇ...」

 

「こら、にこ!」

 

「じ、冗談よ」

 

「...私達ね、話し合って決めたわ。これからどうしていくべきか」

 

「...それで?」

 

「答えは思ったよりもすぐに纏まったの。これからも続けるって」

 

「...あと1週間しかないのに?」

 

「1週間もあるじゃない。死ぬ気でやるわ」

 

「そうか......」

 

 俺は...正直まだわからない。

 

 理事長に言われたことも理解はしたつもりだ。言いたいことも。

 

 だが、俺の内心ではそう簡単に折り合いが付きそうにないんだ。本当にこのままでいいのか?これで廃校以前に彼女達の体が故障したら?

 

 そればっかりが頭の中を行き交う。

 

 そんな俺を見ぬいたんだろう。真姫が呆れたように棘のある口調で俺を射抜いてきた。

 

「はぁ。どうしたんですか先輩?まさか怖気づいてるんじゃないでしょうね?」

 

「......」

 

「ちょっと真姫ちゃん...」

 

 明らかにこれは挑発であり、馬鹿にしているような言い方だ。それに穂乃果が焦りながら止めようとするが、真姫は止まらない。

 

「いつの日か先輩は言いましたよね、後悔をしない道を選べ、と」

 

「っ」

 

 あぁ。確かに言った。そしてそれは真姫にだけじゃない。花陽や絵里にも言っているから当然聞いたことがあるメンバーは反応を見せた。

 

「それで私達は道を見つけました。後は斎藤先輩の番なんですけど?今先輩の中で一番後悔しない選択は...なんですか?」

 

 俺が一番後悔しない選択....か。

 

 考えていなかったな。どれもこれもマイナスで保守的な思考になってたが...それじゃ駄目だ。

 

『もっとあの子達の事を信頼してあげてもいいんじゃない?』

 

 強い意思を持っていて澄んでる真姫の目を見た時に、さっきの理事長の言葉が蘇った。

 

「...信頼か」

 

「え?」

 

 ...なるほど、信頼か。信用とは少し違った根強い繋がりとなる言葉。

 

 もう、逃げちゃ駄目だ。俺はあいつらのマネージャーになるって前に決めたじゃないか。俺に迷うべき道は最初からない。あいつらがやると決めたのならば、俺はそれに合わせるだけだ。それが俺にとって...最も後悔しないベストな道。

 

「いや、悪かった。おかげで目が覚めた」

 

「...それで答えは?」

 

「俺は進む。お前達が決めたモノについていくのが俺にとって後悔しない唯一の道だ」

 

 俺はこいつらの笑顔や努力するところが見たくてマネージャーを引き受けたんだ。

 

 こんな所で俺がへばっていたらそれは見れなくなる。それは絶対に後悔するだろう。

 

「...なんかパッとしない答えね」

 

「だがそれが列記とした答えだ。俺はお前達の努力を見たくてマネージャーを引き受けたんだからな」

 

「...了解です。なら、これからもよろしくお願いしします」

 

「あぁ、こちらこそ。...迷惑をかけて悪かった」

 

「お互い様です。私達も問題がありましたから。...ここで初心に戻って走り出しましょう?」

 

「あぁ!」

 

「...話は決まったわね。ならこれから屋上行くわよ!」

 

「なに?...だが...」

 

 絵里の鼓舞に各々が賛同し、屋上に向かって走り始めるが、神綺は思わず止めてしまう。なんせ今は日中で一番日射しがキツイ時間帯だ。いつもだって練習はしない。

 

「さっき神綺君が言ったでしょ!1週間しかないのよ!練習よ!練習!死ぬ気でやるわよ!」

 

『おぉー!!!』

 

「おいおい....」

 

「良かったじゃない。皆やる気のようだし」

 

「理事長...」

 

「いい青春を見れたわ。ありがとう」

 

「こちらこそ...理事長のおかげで目が覚めました」

 

「そう...ならよかった」

 

「では...練習がありますので」

 

「えぇ、頑張ってね」

 

「はい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 神綺達が去り、再び静寂が訪れた購買部に残った理事長は、神綺が捨て忘れた缶を手に取る。

 

「...斎藤君は気がついてるのかしら」

 

 そういう理事長は懐かしむようにしながら缶に語りつける。

 

「今の言葉、数カ月前の斎藤君に聞かせたいものね」

 

 学院で初めて廃校を決定すると発表したあの日。絵里を連れてやってきた神綺のことを思い出していた。

 

「これからどうなるか...頑張ってね、μ'sのナイト君」

 




 閲覧有り難うございます。



 遅れましたが、お気に入り登録数1600件突破ありがとうございます。嬉しいです!

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