ラブライブ! -彼はどう変わる?-【リメイク】 作:レイヴェル
申し訳ない!題名にことりと入っていますがことりちゃんは出ません!
でも次はことりちゃん主役ですから!
アイドルショップに強引に連れてこられた俺だったが、中で売られている物よりも物色をしている穂乃果達に目がいっていた。
「な、なぁ希」
「ん、なぁに?」
そして穂乃果達と同じように身近な場所にある棚から気になったものを手にとって物珍しそうに見ていた希に俺は声をかけた。
「あいつらって買い物になるといつもあぁなのか?」
「んー女の子だし、やっぱりテンション上がるんじゃないかな?」
「そうか...」
今の穂乃果達を見ているとどうも頭が痛くなってくる。
唯でさえ高い声だというのにキャイキャイとはしゃいでいるし、売り物のバッジを胸元に持って行って似合っているかどうかの品評会を繰り広げていた。しかもそのバッジには色々なアイドルの顔写真がプリントされていて、俺には何がいいのかサッパリわからない。
そんな呆れた俺を見かねたのだろう。希が諦めた様な目をしながら近くの棚から下敷きの様なものを持ってきた。
「神綺君にはお気に召さなかった?」
「少なくともあんな馬鹿騒ぎできるようなテンションは持ち合わせてない。...ってなんだそれ?」
「ん?適当に取ってみたんだけど見て見て、これ花陽ちゃんに似てない?」
と見せられた下敷きを受け取るが、どうも見慣れた顔だ。しかも衣装もよく知っている...これではまるで。
「...本人だな」
そう呟いた時だった。
「にゃぁ~~!?」
「っ どうした!」
急に凛が悲鳴にも聞こえる大声を上げ、店内にいた人は勿論。俺や希の凛の方へ駆け寄る。
「これ!どう見ても海未先輩だにゃ!」
「こっちにもあるわ...これなんか絵里じゃない」
「えっ 私?」
凛が手にする缶バッジには確かに海未が微笑んでいる姿がプリントされていた。
それを確認すると、各々が自分のはないのかと目を光らせて探し始める。だがその姿はまるで...
「お前らはタイムセール中の主婦か...」
「そんなわけないでしょ?あんたが考えるほど甘いモノじゃないのよ!自分のよ?自分のグッズが売ってるなんて本物のアイドルみたいじゃない!」
「そ、そうか...」
確かににこが言っている通り、気持ちはわからないでもない。自分のグッズができていてそれを買ってくれている人がいる。それを知った時は目頭が熱くなった。
でもおかしい。普通グッズにする時は肖像権とかの権利を許諾して貰う為に話し合いの場、顔合わせがあるはず。だが今の様子だと俺もそうだがあいつらもそれは知らなかった。
...つまりはこれは違法物になる。そんなもんだという話は聞いたことはあるが目のあたりにするとは。
そんなことを思っていると、ニヤニヤと口角をあげながら希が両手に色んな物を持って近寄ってきた。...嫌な予感しかしない。
「どうした...」
「ねぇねぇ神綺君」
「なんだ」
「これ、買ってくれない?」
そう言われ見てみると。
「...これ全部お前じゃないか」
見事に希一色のグッズをこれでもかと抱えていた。...なんでそんなにバリエーションがあるんだよ。
「えへへ...ほら、神綺君って私のファン第一号だから!持っててほしいな~って!」
「なんだよ第一号って...」
「μ'sの第一号なんだから私の第一号でもあるの!」
「んな無茶苦茶な...というかお前に毎日会ってるのにグッズなんて必要ないだろ」
会ってるどころか同じ屋根の下に住んでいるんだ。長い時間同じ空間にいるのにこんなもの必要無いだろうに。
「だって神綺君の部屋何も無いんだもん。少しは華が欲しいじゃん?」
...確かに俺の部屋にはこれといってゲーム機だとか、ラノベなどの娯楽と呼べるものはない。あるのは小型のテレビとPCぐらいか。
「でもそれを華っていうんだったら俺はその華を飯食ってる時だって皿洗ってる時だって見てるわけだが?」
「っ」
言ってることは間違っていない。こういうのはバッジに価値が有るのではなく、プリントされている被写体に価値が有るのだ。
しかも希も俺もそうだが、宿題だってリビングだし、特にやることもないから談笑するのもリビングで、自室を使うのは寝る時とちょっとした調べ物をするときだけ。
ハッキリ言ってリビングが共同部屋みたいなものなのだ。
それを言うと今度は顔を真赤にさせた。しかも耳までゆでダコの様になっている。...自分で墓穴掘っておいて気がついてなかったのか。
「なっなな、何を言うのさ急に!」
「お前が自分で言ったんだろうが」
「~~~っ!」
恥ずかしいという感情が頂点を超えたんだろう。もう言葉にすらなっていない。
周りの喧騒も相まって耳を思わず塞いでしまった。すると隣の棚からひょいっと絵里が顔を出してきた。
「神綺君...今度は何したのよ」
「俺が何かしたの前提なのか」
「だって希が顔真っ赤なんだもの。神綺君がからかったしか無いじゃない」
「よくご存知で。でもこれは希が墓穴掘っただけだ」
「うわぁ~ん絵里ちぃ」
「はいはい...全く何したのよ」
「お前最低だな。希が墓穴掘ったって言ったのに本人の前で掘り返すのか」
「うっ」
出た、お得意の天然ボケ。
よく生徒会の中では生徒会長という立場もあって、絵里はしっかり者で完璧美女!と謳われる事が多い。出処は会報新聞だったか、誰かが調子に乗ってそんな記事を書いてから急速に広まったのがはじまりだ。
今はそうでもないが、数カ月前の余裕がなく常に眉間にシワが寄っているような状態じゃ、そんなのも頷けてしまう。近寄りたくても近寄れない。
けれどそれは絵里のほんの一部分でしか無い。
本当の絵里は何かあるとすぐ涙ぐむし、暗い所は苦手だし、純粋な所も相まって変な知識や間違った認識を鵜呑みにしてドヤ顔で披露してくることもある。
日頃はほほんとしてて場を盛り上げようと弾けるが、裏ではよく考えを巡らせている希とは正反対といったところか。...まぁそれがギャップというやつで可愛くも思うのだが、間違ったことをドヤ顔で聞かされるこっちの身にもなってほしい。まるで自分のことのように恥ずかしくなるから。
「...それより絵里はなにか見つかったのか?希は自分のやつを抱えてたが」
このままでは場の空気が息苦しくなるのを危惧した俺はサラッといつものことだと流して話題をすり替えた。
「私はそこまで...でもこれだけ買ったわ」
「それは...消しゴム?」
「私がμ'sに入ってからすぐの頃に亜里沙が私のグッズがでたら買ってきてって言われてたの」
「...希もそうだが、お前ら二人がμ'sに入ってからまだそんな日にち経ってないよな」
「...そういえばそうね。1週間ぐらいしか経ってないわ」
「でもこれちゃんと前のオープンキャンパスで歌った時の衣装だよ?」
『......』
なんなんだ本当にこれを作った会社は。
1週間足らずでこうも量産がきくものなのか?というかどうやって彼女達の素材を入手しているんだ....謎だ。
「ま、まぁ...これで売れてくれれば他のアイドルを追っかけてくれている人の目にも止まるし...」
「ここは人通りも多いから何となくで入ってくれた人も見てくれるかも...」
「宣伝費...か」
実際これでどれだけの効果があるのかわからないが、かと言って対処のしようもないか。
「てかさっきから気になってたけど神綺君の持ってるその袋とかなに?」
顔の赤みも引き、平成を取り戻し始めた希がジーっとコピー紙の方に視線を移す。そういえばさっき嫌な音がしていたがケーキ箱の中身は無事なのだろうか....取り敢えず後で見よう。
「これは生徒会の備品だ。プリンターの紙少なかっただろ?」
「えっ あれは今度私達で行くって言ったじゃない」
「そうだよ!」
「今日は暇だったからいいんだよ。...それよりもちょっと持っててくれないか?」
「ん?いいけど...重っ これずっと持ってたの?」
「そうだぞ。少しの間だから頼む。....さてさてどうかな」
「...なにその箱」
「まぁ待てって」
恐る恐る、希達には見えないように箱を開けてみる。中では無残に保冷剤でペシャンコに...なんて地獄絵図を想像はしたものの、幸いケーキの周りにあるフィルムが少し折れている程度で、中身は綺麗な形を保っていた。
「良かった....」
「ねぇなんなの?それ」
「ケーキだよ」
「「ケーキ?」」
「希のお土産にな」
「ほんと!?」
「あぁ」
「.......」
女の子らしく甘いモノが大好きな希は目を輝かせてどんなケーキか顔を覗かせてくる。遠慮ないな。
そしてその後ろで喜ぶ希を羨ましそうに見ている絵里を俺は見逃さなかった。
...これもさっきことりとの一件がなかったら気がついていなかったんだろうな。
「絵里も食べるか?」
「えっ?」
「一応希の分と俺の分で2つ買ってあるんだ」
「悪いわよ...神綺君の分なんでしょ?」
予想通りか、絵里は遠慮するが別に気にしない。
「俺はもう店で食べてるんだよ。だから味は知ってるんだ」
「でも...」
「希も絵里と一緒に食べたいよな?」
「うん!」
その場での思いつきだが、希は俺の考えを読み取ってくれたらしく、明るい笑顔で頷いた。...これだけで通じるんだ。そりゃ嘘なんかバレるわけだわ。
「...じゃぁ頂くわ、ありがとう」
退路を塞がれ尚且つ食べたかった絵里は少し申し訳ない気持ちが勝っていたがすぐに折れた。
あんな物欲しそうな顔をされたら誰も断れないと思う。
「この後ウチに来いよ。保冷剤入れてるから安心だし」
「そうさせてもらうわ...でも一体どこで買ったの?」
「え゛」
...俺までも墓穴掘っちまった。自分からこの話題につい持って行っちまった。
当たり前だがここでストレートにメイド喫茶と言ってしまったら終わる。色々と。
だが運良くそこで俺は閃いた。この箱には店の名前は書かれていないということを。これならいくらでも誤魔化せる。...それとさっき希に言われたことを気をつけて言えば完璧だ。
「あ、あぁ...道端で露天をやっててな?前を通りかかったらそこの売り子さんが店の中でケーキのフェスをしているからどうか?ってな。ついでに中で食べてから買ってきたのさ」
あえて店の名前はぼかして言ってみる。嘘は嘘だが、半分は本当だ。
「で、店の名前は?」
「悪いが覚えてない。...これにも名前は書いてないし」
「それじゃ仕方ないわね...」
よし、食い下がった。
「じゃぁ今度連れてってよ!」
「......」
...嘘だろ。その手があったか。
「あ、あぁそうだな...また今度な」
「...あーなんか嘘ついてるね。これ連れてってくれないよ絵里ち」
「えっ」
あ゛、予想外過ぎてやっちまった...希には勝てない。
そう誤魔化しが効かないことに焦りを覚えると急に希が俺の方を指差して自信満々に言い放った。
「う~ん...これはケーキの値段が高いと見たっ!」
「あぁ、確かにそれはあるかもしれないわ。安ければクラスの誰かしらが行って話題になるはずだもの」
「よ、よくわかったな」
これはナイス勘違い...で良かったのか?
それなりに希の考えも筋が通っていて絵里がすんなりと納得してくれた。良かった...
「ふふん。スピリチュアルパワーでなんでもわかるよっ!」
「え?なになに?」
えへんっとお決まりの立派な胸を張ってドヤ顔を希がしていると、店の奥から買い物を終えた穂乃果達がゾロゾロと歩いてきた。
「ん...買い物はいいのか?」
「はい!あれ、希先輩は?」
「え?」
「何か買われないんですか?」
「えっあ...うん!」
μ'sの中で唯一何も買ってない希に視線が集中するが、当の本人は顔をまた赤くしながらも頷いた。...また思い出してるのか。
「じゃ、今日はこれで帰ろうと思うんですけどどうします?」
「えっもう帰るの?」
穂乃果が解散の流れに持って行こうとする。が、店の中で予め話を決めていたわけではないらしく、後ろにいる凛が不満をこぼす。
すると海未がにこの方を見ながら
「ここに来たのもにこ先輩に着いてきなさいって言われたからですし、長居する理由もないでしょう?」
「悪かったわね...」
「えー」
だがこの展開は俺にとってはありがたい。ここにいる過半数が帰る気のようだし、もうひと踏ん張りだな。
「もう夏休みの宿題も配られてるだろ?早く家帰って進めろよ。今年は今までと違って練習で忙しいんだからな」
「そうよ。朝から夕方まで練習になったら夜しか勉強する時間ないでしょ?しかも凛だったらそのまま寝るだろうから今のうちにしておきなさいよ」
「え~!?真姫ちゃんまでそう言うの!?」
「本当のことでしょう?」
「ちっ違うもん!」
「まぁまぁ...折角今日は練習ないんだし勉強しようよ凛ちゃん。なんだったら一緒にやろ?」
「うぅ....」
凛は不完全燃焼といった感じだが、花陽のフォローでなんとか収まった。流石は友達だ。
「それじゃぁ今日はここで!解散!」
『お疲れ様でした~』
穂乃果の元気のいい号令で自分達の家がある方面へと歩き出す。
それじゃ俺も、と歩き始めると後ろから希が駆け足で向かってきた。
「ん、どうした?」
「耳貸して」
「?」
急になんだ。そう思いながら背中を丸めて頭を落とすと衝撃の言葉が飛び込んできた。
「...後で嘘ついた本当の理由教えてね」
「なっ!?」
「さっきは嬉しいこと言ってくれたから誤魔化したけどやっぱり気になるから」
「それは...」
「希ー?」
「はーい!...ほら、神綺君。早くしないと絵里ち行っちゃうよ?」
「あ、あぁ...」
これは...どうするべきなのだろうか。
閲覧有り難うございます。
今年中にもう1,2話はいけるかな?
感想、ご指摘お待ちしております。