ラブライブ! -彼はどう変わる?-【リメイク】   作:レイヴェル

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 どうも、レイヴェルです。


 なんとか間に合いました締めくくり。

 これが今年のラストです。


第131話 ことりの秘密 終

 ケーキをご馳走した後、絵里を帰したところまでは何事も無く極めて平常心で接することが出来た。

 

 だが希との二人っきりになった途端、ついさっき見ぬかれたことを気にしてしまいどうしても落ち着かなくなってしまう。

 

 

 

 今回のことりに関しては親友である穂乃果達にさえ秘密にするほど本人にとって大事なこと。なのに第三者の俺が勝手にべらべらと言いふらしていい道理がない。

 

 でもどう希に説明する?変に誤魔化しても看破されるのは目に見えている。かといってありのままを話す訳にはいかない。

 

 

 

 どうすれば....

 

 

 八方塞がりになり俺は頭を抱える。そんな時だった。ジーっと俺の方を見ていた希が口を開いた。

 

「...神綺君」

 

「...なんだ?」

 

「それって私に言えないこと?」

 

「......そうだな。俺が言いふらしていいようなものじゃない」

 

「そっか」

 

 

 

 またも静寂。

 

 

 何か話を続けるわけでもなく、希は小さく頷くとコップに淹れてあるお茶を一気に飲み干して立ち上がった。

 

「...希?」

 

「ごめんね、神綺君。まさかそこまで悩んでるとは思わなかったの」

 

「...え?」

 

「本当はただケーキ屋さんを知りたかっただけなんだ。...いつも和菓子の方ばっか買う神綺君が洋菓子を買ったから余計気になって」

 

「......」

 

 言われてみれば確かに俺はケーキやクッキーよりは、穂むらのまんじゅうやあんみつとかをよく買う。...盲点だったな。

 

「でも話せない事情はそれだけじゃないみたいだし。私が踏み込むべきものでもないから」

 

「希...」

 

「ごめんね!もう聞かないから...」

 

 もう聞かない。その言葉に俺は安堵した。これでなんとかバレずに済んだ。

 

「...助かる」

 

「...じゃぁ私は夕飯の支度するね。今日当番だし」

 

「あぁ...」

 

 

 堅い笑みを浮かべると希はささっと逃げるようにキッチンへと行ってしまう。

 

 いつもの神綺ならば希の変化に気がつくことが出来ただろう。何かを恐れるようなたどたどしさやどこか違和感のある接し方に。

 

 けれど今の神綺は目の前の問題が片付いた安堵感とことりの相談事がなんなのかということで頭が一杯だった。故にその些細な変化には気がつくことができなかった。

 

 

 

 

 

------------------------

 

 

 

 

 数十分後。神綺の携帯がバイブした。誰かからメールが来たのだ。

 

「きたか...」

 

 そして今のタイミングで来るとしたらことりしかいない。バイトが終わったということだ。

 

 試しに立ち上げれば名前にはことりと表示され、内容は短く、

 

『バイトが終わりました。これからお会いできますか?』

 

 とあった。

 

 それに神綺は了解の旨を返信し、用意しておいたジャージに手早く着替えた。

 

 

「希、少し出かける」

 

「え?今から?」

 

「ちょっと走ってくる。昼間よりは夕方のほうが過ごしやすいから」

 

「...わかった。気をつけてね」

 

「あぁ」

 

「夕飯までには帰ってきてよ!お風呂も沸かしておくから」

 

「わかってるさ。それじゃ行ってくる」

 

 

 

 

 

 

 

 

-------------------------

 

 

 時刻は17時後半。夕方とはいえ今は夏。まだ日差しはあるし、辺りは昼のように明るい。

 

 そんな中神綺はことりに指定したとある公園へと到着した。

 

 

 ここはいつも神綺が立ち寄る公園とは別の、秋葉原から離れた人通りが少ない公園だ。

 

 本当はいつもの公園でも良かったのだが、できるだけ身内に合う確率を下げておきたかったのだ。

 

 

 

 だが家から走ってきた神綺は流石に息も上がり、汗もかいている。予め首に巻いていたタオルで汗を拭くと、あたりを見渡してことりの姿を探した。

 

「...あれ」

 

 だがことりの姿はなかった。

 

 おかしい。いくら走ってきたとはいえ、家からこの公園に来るのとメイド喫茶からこの公園に来るのとでは距離が全然違う。ことりの方が早く着ていなきゃおかしいのだ。

 

「...迷ったのか?」

 

 でも地図はデータで渡したし、迷うような娘でもない。

 

 そんな時だった。

 

「だーれだ?」

 

 急に視界が暗転し、目を何かに押さえられたような軽い圧迫感を感じるのと同時に聞き慣れた声が聞こえた。

 

「...ことりか」

 

「えへへ...流石にわかりますか」

 

 手の拘束が解けると、制服姿のことりがいたずら成功と軽く舌を出してウィンクをしていた。

 

「特徴的な声だからな。...まったく、どこにもいないから迷ったのかと思ったぞ」

 

「といってもついさっきですけどね。少し先輩を驚かせようかと....はい、どうぞ」

 

 と渡されたのは冷えた缶コーヒーだった。

 

「...いくらだ?」

 

「いいですよお金は。日頃の感謝の気持ちと、今日の相談料だと思って下さい」

 

「相談料安いな」

 

「えっ」

 

「冗談だ」

 

「...もぅ」

 

「取り敢えず座ろう。立ったままなのも変だろ?」

 

「そうですね。そこのベンチにしましょうか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 二人がけのお手頃なベンチに腰掛けると、俺は冷えた缶コーヒーのプルタブを開けて中のコーヒーを胃に流し込む。

 

 すると走ってきたばかりで火照っている体が冷却される感覚がして不思議と気持ちよかった。

 

「ごめんなさい先輩。急にお呼びしてしまって」

 

「別にいい。元々俺もそのつもりで連絡してくれって言ったんだしな」

 

「それで...えっと、穂乃果ちゃん達には...」

 

「バレていない。...だが希は薄々感づいてる」

 

「えっ」

 

「ことりが相手とは思っていないだろうが、俺がなにか隠しているのをあいつは見ぬいてきた」

 

「...そうですか」

 

「...なぁ、良ければ教えてくれないか?なんであそこでバイトしてるのか」

 

「...わかりました」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 事の発端は、まだμ'sが三人の頃。つまりは駆け出しの時だった。

 

 その頃はまだ毎日の様に練習、と言うよりはまだ俺にマネージャーをやってもらえないかと話し合っていた時期らしい。

 

 そんなとある学校帰りにUTX学園の前でチラシ配りをしていたあのあかりという人にスカウトされ、あのメイド喫茶のアルバイトを始めた。なんでもあのメイド服が可愛くて始めた、となんともことりらしい理由ではあった。

 

 でもその裏で、ちゃんとした理由もあった。

 

 それは自分を見つめなおすこと。

 

 今までとは違う、アルバイトという新しい世界を経験して何か自分を変えるキッカケが欲しかった。そうことりは言った。

 

 でもこの話は前にも聞いたことがある。前にことりと衣装の生地を買いに行った時、喫茶店で同じことを聞いて自分なりの考えを言ったのも覚えている。

 

 

「はい...私もちゃんと覚えています。先輩に言われたことも」

 

「ならなんで...」

 

「それでも認められなかったんです。日を重ねるごとに...練習をすればするほど、いやというほどに私と穂乃果ちゃん達との差が浮き彫りになってくるんです」

 

「......」

 

「穂乃果ちゃんの様な皆を引っ張る力はないし、海未ちゃんの様なシッカリとした考えもない。...結局は二人の後ろを今も昔も着いて行っているだけなんですよ」

 

 何もかも諦めたような、脱力をした笑みに俺は待ったをかけた。

 

「...ことり。お前は俺の言った意味を理解してないな?」

 

「え?」

 

 ことりは間違っている。人間、誰しも得意不得意があり、全てにおいて完璧な人間なんてこの世にはいない。

 

 俺が言いたかったのはその場の気休めじゃない。

 

「俺がお前に言いたかったのはな?得意なモノを伸ばして欲しいってことなんだ」

 

「伸ばす...ですか」

 

「あぁ。確かにことりは穂乃果達のような力はない。でも穂乃果達が持っていない強みがお前にはある」

 

「......」

 

「他を言えば絵里の様な統制力もないし、真姫のような作曲知識もない。けれど...衣装への情熱や、アイドルのやる気は負けてないだろ?」

 

「それは...」

 

「正直驚いたぞ。最近始めたのかと思っていれば、まさか4月からとはな...」

 

「...ごめんなさい」

 

「別に怒っている訳じゃない。希だってバイトしてるし、学校も禁止にはしていない。...それでな?ことりはアルバイトをしながらも、スクールアイドルとしての練習を弱音もそんな吐かずに続けてきているじゃないか。4月の時なんかは禄に走れなかった坂も今は楽々走っているし、元々それなりに柔らかかった体も動かしやすくなってるだろ?」

 

「...はい」

 

「...それに、楽しいんだろ?アルバイト」

 

「それは...勿論です」

 

「ならそれでいいじゃないか。スクールアイドルも楽しいから続ける。そしてアルバイトも楽しいから続ける。なんら問題はない」

 

「でも...穂乃果ちゃん達には...」

 

「打ち明ければいいじゃないか。別に隠すことでもないんだから」

 

「......」

 

「...なんか思うところがあるのか?」

 

「...ちょっと怖いんです。海未ちゃん達に言うのが」

 

「長い間隠してきたからか?」

 

「はい...ずっと騙していたことになるんですもん」

 

「...でもさことり。そんなもんで、あいつらが怒ると思うか?」

 

「...わかりません」

 

「そうか。...でも俺はこう思う。あいつらは笑って済ませるんじゃないかって」

 

「どうしてですか?」

 

「だって何か悪いことをしてきたわけじゃないだろ?後ろめたいことをしたんじゃなく、ただアルバイトをしていただけ。しかも今までも普通に練習にも休まず出てたんだからな。驚きはするだろうが、怒るとか、嫌うとかにはならないと思うぞ」

 

「......」

 

「もっと気楽に行こうぜ。人間だれしも趣味はある。その趣味がことりの場合はアルバイトになっただけだろう?それに成績も特段下がっているわけでもないんだ。胸張れよ」

 

「先輩...」

 

「ずっと悩んでばかりじゃ人生つまらないだろ。楽しめる時はうんと楽しめ。...スクールアイドルで居られるのは高校の間だけだし。大学に行けば出来ないんだぞ。輝ける今を大事にして、進もうぜ」

 

 今のことり達は眩しい宝石だ。でもそんな宝石が輝いていられる時間は少ない。ならばせめて輝ける時間の間は目一杯輝いていて欲しい。それが俺の願いだ。

 

「...そうですね。くよくよしてちゃ駄目ですよね!」

 

「あぁ。お前にはちゃんとした魅力があるし、長所がある」

 

 それにことりはもうあの二人の背中を見て歩いていない。今はちゃんと3人で肩を並べて歩いているんだ。もう...ファーストライブまでの決断が中々できないことりはいない。

 

「それに俺が躓いた時に手伝ってくれると言ったのはことりだ。だったらことりが躓いた時に俺が手を貸すのは当然だろ?俺も一緒に隣に立ってやる」

 

「覚えているんですか...」

 

「当たり前だろ?だからまた何かあれば相談してくれ。今回みたいに時間が経ってからじゃなくてな」

 

「....ありがとうございますっ」

 




 閲覧ありがとうございます。


 これにて今年の投稿は終了となります。

 一年間ありがとうございました。また来年もよろしくお願いします。

 それでは皆さん、良いお年を。



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