ラブライブ! -彼はどう変わる?-【リメイク】 作:レイヴェル
「ふっ ふっ ふっ ふっ」
新品のジャージを購入した神綺は一度家に帰ってから着替えていつも通りのトレーニングを始めた。
普段通りの道を走り、神田明神へと向かっている。
神田明神に着いたら男坂で4往復の階段ダッシュ。後に腹筋や腕立て伏せなどの筋トレを行っている。
しかし今回から神綺は新たにメニューを追加することにしたのだ。
理由は先日のナンパ相手と対峙した時にできた筋肉痛だ。
生まれ変わってからは一度も護身関係の型をこなしたことがなかったのだ。
その為今回から型を練習することにした。
「ふっ ふっ ふっ ん?」
秋葉原と言えど大通りが賑わっているだけであり、少し脇道に行けば静かになる。だが、男坂へと続く一本道へ出るといつもは聞こえない笛の音と、階段を走っている先客がいた。
(おぉ?今日は使っている人がいるのか....どうすっかな)
とりあえず階段ダッシュは後回しにして取りあえず坂を上がるか、と先客の邪魔にならないように脇を歩いて昇る。すると
「あれ?斎藤先輩ですか?」
「あ?」
呼ばれると思わなかった為呼ばれた方を向くと
「穂乃果?それにことりに海未もか...」
「やっぱり先輩だ!さっきはありがとうございました」
「いや、いいんだが...なにしてるんだ?」
遠目で女性が走っているのは見えていたが、変に見てるのが見つかって難癖付けられると困ると思いチラッとしか確認していなかったのだ。
まさか穂乃果達とは思わなかったが、
「早速トレーニングです!」
「トレーニング?」
すると海未が階段を下りてきて
「はい、今の穂乃果達は体力がありませんので。階段ダッシュをしてもらうことにしたんです」
「なるほどな....」
「でも海未ちゃんたらひどいんですよ!こんなキツイのに階段ダッシュ往復5回できるまで続けるって言うんですよ!?」
「5回!?」
「えぇ、それくらいできなければ話になりません」
「.....」
神綺はその発言に絶句してしまう。
「おい...悪いことは言わない。今すぐやめろ...」
「なぜですか!?」
「ほーら!」
「....冗談抜きでやめるんだ」
神綺がその場のノリでふざけて言っていないと気がついた海未は一度目を瞑り、
「....なぜですか?」
「....言い方は悪いが穂乃果達の体は未熟だ。そんな状態で階段ダッシュなんて無謀だ」
「ですからなぜそう仰るのかを聞いているんです」
「海未、お前は日舞をやっていると前に言ったな」
「...はい」
「日舞は緩急を極める舞踊だ。体力も相当使うだろう。だから体がある程度鍛えてある海未はいいとしても、未熟な穂乃果達が同じことをやってはすぐに膝が壊れるぞ。知ってるか?階段ダッシュは同じ距離を平坦な道で走るより何十倍も膝に掛る負担は大きいんだぞ?」
「.....」
「まだお前達は若い。そんな時期に膝を壊すなんて嫌だろ?階段ダッシュをするのはいいが精々2往復にしておけ、その分ランニングの距離を増やせばいい」
「ほぇ~ なんかおじいちゃんみたいなこといいますね先輩」
「俺はまだ高3だぞ?....わかったか?海未」
「はい....考え直します」
「それがいい」
「にしても先輩よく知ってますね」
「俺もトレーニングしてる身だからな」
「そういえば先輩はどうしてここに?」
息を整えて落ちついたことりが聞いてきた。
「日課さ、毎日ここで筋トレしてるのさ」
「ほぇ~だから先輩って体格いいんですね」
「標準だろ。そんな筋肉ムキムキってわけでもないしな」
「そうですか?私のクラスの男子は先輩ほど筋肉ついてませんよ?」
「そうか....ま、無駄話はこんくらいでいいだろ」
「そうですね...休憩は終わりです」
「えー!?」
「取りあえず階段ダッシュはほどほどにな」
「はい...」
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「お、今日もお疲れ様。神綺君」
神綺は腕立て伏せをしていると不意に後ろから声を掛けられた。振り向くと箒を持った巫女服を着た希がいた。
「希か。そっちもバイトお疲れ様。...時間には気をつけろよ?」
「わかってる。...それ、新しいジャージ?」
「あぁ、今日はこれを買う為に生徒会を早く終わらせたのさ」
「なるほど...あ、ごめんね。筋トレ中に話しかけて」
「別に構わないさ。にしても.....希は見たか?穂乃果達がトレーニングしてるの」
「あぁ、さっき話してきたよ。お参りも忘れずにってね」
「ここを使わせてもらってるからな....忘れずにしないとな」
「そういうこと。....ねぇ、神綺君」
「ん?」
「神綺君ってさ、その...トラウマのこと。今でも気にしてる?」
「....唐突だな。どうしたんだ急に」
「今日の占いで出てたんだ....神綺君、今悩み事があるでしょ」
「悩み事..か。まぁあるっちゃ、あるが」
悩み事、それは穂乃果達のこと。
自分は確かにアイドルとして活動していた。大変だったことも、楽しかったこと、色々含めて体験している。
そして自分はあいつらを手伝いたい、と少なからず思ったのも事実。だが、自分が情けないせいでそれが叶えずにいる。
歯がゆいのだ、効率的な運動メニュー、ストレッチ、発声練習法。性別は違えど殆ど変わらない練習法を自分は熟知しているつもりだ。
さっきもそうだが、自分の拒絶反応が起きる基準はあいまいだ。さっきの階段ダッシュの件だってアイドルになる為に頑張っている彼女達へのアドバイス、手伝っているような物だ。なのに頭痛や動悸はなかった。
そうして黙りこんで考え込んでいる神綺に希は
「私に...相談してくれてもいいんだよ?」
「相談...か」
「私ね、実はちょっと悲しかったんだよね」
「...なに?」
急に話題が変わったことに戸惑った神綺は無意識にそう返す。
「だって小学校の時から一応は知りあってたことになるし、私は神綺君のことを大切な友達だと思ってた。でも、私より絵里ちの方が先に神綺君のトラウマの事情を少ないけど知っていた」
「.....」
「その時ね。ちょっとやるせなかったなぁ....私の方が神綺君とは付き合いが長いのに、相談もなにもしてくれなかった」
「...それは違うぞ、希。しなかったんじゃない、本当は絵里にさえ言いたくなかった」
「え?」
「これはあまり人には話したくないことなんだよ。それに...自分でトラウマとは言ったが最近違うんじゃないかとも思ってきているんだ」
「へ?」
「さっき、俺は穂乃果達に明らかにアドバイスといえることを助言した。でも、頭痛が起きることはなかった」
「....どうして?」
「わからない....だからトラウマじゃないのかな、とな。結局は自分がそう思い込んでるだけなのかってな」
「それじゃぁ....」
「俺がただ足踏みしてるだけってことさ....」
そう言いながら神綺は軽くオレンジがかった空を見上げた。
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