ラブライブ! -彼はどう変わる?-【リメイク】 作:レイヴェル
「お、逃げないでいてくれたね」
制服に着替えた希が戻り、神綺に抱きついていた穂乃果が離れた。
「こんなことされれば逃げる気も失せる」
確かにもがけばすぐに穂乃果の拘束なんて解ける。だが、神綺は小さい頃から親に女子には乱暴なことをするなと教え込まれている為に行動に移せなかった。
「そっか。....さ、話す気になった?」
「....もういいさ、降参だ。....もし笑われたってこらえるさ」
「む....まだそんなこといってるの?」
「うるさい.....んで?本当に聞くのか?」
最後の確認として神綺は聞いた。本当なら聞いてほしくないが、それを貫く精神力が神綺にはもうなかった。
「勿論!」
「何のためにここにいると思っているんですか?」
「....はぁ」
そうため息を吐き、ある意味覚悟を決めた神綺は話すことにした。
「....なぁ、お前ら」
「ん?」
「お前らは前世ってのを信じるか?」
「ん?そりゃぁ前世はあるとは言われてるけど...」
「....自分の中では記憶がありませんからなんとも言えませんよね」
「そうだ。それが普通だ。....だが俺にはその記憶がある」
『え?』
笑われる、そう重い構えたが
「本当ですか!?」
「っ...あ、あぁ...」
そんなことはなく、目を輝かせて穂乃果が詰め寄ってきた。
「すごいじゃないですか!...?でもそれって私達に言いにくいことになります?」
「そうですよ。確かに信じがたいですが、そこまで頑なに避けることでも....?」
予想外な反応に戸惑ったが、神綺は続けることにした。
「まだ先がある....俺が生きていたのは前世と言えば前世だが、俺が生まれたのは1988年」
「...え?」
「そして俺が21で死んだから享年は2009年。どうだ?前世にしてはおかしいだろう?」
「ど、どういうこと?だって今は2014年だよ?」
そう年齢計算があわないのだ。だが、それもそのはず
「ああ。だって俺が生きた前世と今生きている世界が違うからだ」
「...どういうことですか?」
「簡単だ。俺の生きていた世界に秋葉原は存在したが、音ノ木坂なんて地名も、学校もなかった」
「そんな....」
「所謂並行世界ってやつ?」
「だろうな。....な?こんなこと言ってみろ。すぐさま変人確定だぞ」
「....たしかに、日ごろの会話で言われてもそう簡単には信じられませんね」
「それが俺には嫌だった....それで友達も、希や穂乃果達も離れられてみろ...俺は学校で一人、家で一人。.....そして学校に行けば鼻で笑われる。....俺には耐えられるもんじゃないね」
「.....」
「だ、だとしても。一ついいですか?」
「....なんだ、海未」
「それとアイドルがどう関係しているんですか?先輩が今仰ったことがトラウマというのでしたらどこに関係が?」
「あぁ.....俺は前世で、アイドルをしていたんだ」
『えぇ!?』
神綺のカミングアウトに全員がそろって驚きの声を上げる。
「ちょっと....アイドルって....」
「うそ!?」
「本当だ....ユニット名は『amuse』。これでもオリコン1位とるぐらいは人気あったんだぞ?」
「ほぇ~」
「流石にそれは驚きです....」
「そこからが問題だ.....(17話トラウマ関連の内容なので割愛)」
「そんな....」
「それから俺はアイドルから離れ、町工場に弟子入りしたのさ。機械弄りは好きでね」
「....やはりアイドル関係は辛かったんですか?」
「辛いなんてもんじゃないね。今はそうでもないが当時はすごかった。ニュースでアイドル関連が出ただけで吐き気とかするんだから」
「....」
「それが段々と楽になって、今ではなんとかお前達と普通に.....ならよかったんだが、いかんせんカウンセリングに通っている時期に交通事故で死んだもんでね。ズルズル引きずってこの体たらくさ」
「....相談されたりとかは?」
「ないさ。親にも、勿論絵里や希にも。....言っても信じてもらえないしどこかバカにしながら相手されるのが目に見えてるからな。態々地雷に突っ込む真似はしないさ」
「.....」
「そんな状況さ。頼れる人なんていなかった。親にぐらいなら、って思うかもしれないがな?....俺の中での本当の親は前世で育てて貰った両親であって今の親じゃない。同じ顔、同じ声、でも考え方は違う今の二人と一緒に今まで暮らしてきたが....ハッキリ言って疲れるし息苦しいね」
日頃からは考えられないほどの毒を神綺は吐く。それだけ日ごろからため込んでいたということだろう。
「あの二人の顔を見ると前世の二人の顔が思い浮かんでしょうがない。親よりも先に死んだ自分に同じ顔で微笑んでくるんだぞ?....やってられない」
「.......」
ある程度覚悟はしていたが、重すぎて声が出せずにいる穂乃果達だったが、希が動いた。
「だから神綺君は一人暮らしに?」
「あぁ、離れれば少しはすごしやすくなるかも、とな」
「そっか。.....でも今はどう?」
「どういうことだ?」
「さみしいとかないの?」
「どうだろうな....事情が事情だからな。寂しいのか、楽しいのかも考えたことが無い」
「......私はね、前から一人暮らしなのは知ってるよね?」
「あぁ。だがそれがどうした?」
「一人暮らしを始めてから数年たつけど....私は寂しいな。前までは帰ればお母さんがいて、家族でご飯を食べて、色々お話もした。でも一人暮らしになってからは、誰もいないし、食事も一人だし...」
「そうか.....だが俺は一人暮らしは前世でもしてたんでな。慣れてるんだ」
「そっか。でも神綺君も落ちついたらわかると思うよ?寂しいって」
「そんなもんかね」
「うん」
すると穂乃果が
「...でも先輩」
「なんだ?」
「先輩の事情...はわかりました。でも、どうしてそこまで辛い思いをしたのに私達のことを....」
「....それは俺にもわからない。ただ、自分の後輩になるかもしれないんだ。少なくとも嫌な感情は湧いてこなかったな」
それに、と神綺は続ける。
「可能ならば、俺が教えて俺みたいにならないように道しるべができたらな。とも思ったな」
「道しるべ...ですか」
「確かに俺がやってきたアイドルは仕事で、お前達のやるスクールアイドルはお遊びだ。だが、おのずとライバルができて、人間関係が複雑になって、いろんなやつと会うことが多くなるだろう。そこでの教訓とかを教えられればいいかな、とか一丁前に思ったんだが、頭痛やらなんやらで無理でな」
「そうだったんですか....」
「ほら、これが今の俺の悩みだ。どうだ?馬鹿馬鹿しいと笑うか?」
「神綺君くどすぎ。私は笑わないよ?」
「私もです!でもこれでハッキリしました」
「...なにが?」
「斎藤先輩!私達のコーチをしてください!」
「....は?何言ってんだ?」
今までの話は聞いていたのか、とそんなことを神綺は思ってしまった。
「ですから、コーチしてください」
「...なぜだ。信じるって言うのか?今の話しを...」
「信じます!私は先輩がそういう重い話を嘘で作らないことを知ってますから!....私達はまだまだ駆け出しの素人で、右も左もわかりません。でも...先輩がいればどこまでもいけます!」
「.....」
「私からも、お願いします」
「お願いします!」
「あらあら、予想外な切り出しだね」
「...白々しいぞ希」
「なんのことやら?」
「はぁ....言っただろ?お前達から申し出てくれるのは嬉しい。だが、できているならすでにしている」
「そんなことわかっています!ですから荒療治ってやつです!」
「荒療治って....」
「先輩だって留まるのは嫌なんでしょう?でしたら進みましょうよ!私達と一緒に!」
「先輩。おひとりで怖いのなら、私達と踏み出しませんか?」
「また躓きそうになったら手伝いますから!」
「お前ら....」
「おやおや、美少女3人からここまで言われて、神綺君は断るの?」
「っ.....」
「甲斐性見せたほうがいいんじゃない?」
「っ...わかった。痛みぐらい我慢してやろうじゃないか」
ニヤニヤを通り越し満面の笑みとなった希の煽りに負け、神綺は折れた。
だが、
「やった!これからよろしくお願いします!斎藤先輩!」
「「おねがいします!」」
「...あぁ、とことん厳しくしてやるからな!」
そう言う神綺の顔はふっきれたことによる清々しさからか、それともやっと前に進めるようになった安心からか笑顔だった。
閲覧ありがとうございます。
やっと終わりました....いや~ない頭絞ったもんで疲れた疲れたw