ラブライブ! -彼はどう変わる?-【リメイク】   作:レイヴェル

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どうも、レイヴェルです。


第71話

「えっと...先輩?」

「...先輩?俺が...君の?」

 恍けていたりする様子は全く見られないことに更に拍車がかかり、真姫はあわあわと口を小刻みに震わせる。

 それにどうしていいかわからない神綺は頭を掻きながら、

「あー....えっと、ここは保健室なんだな?...なら、先生を呼んできてくれないか?」

「え?あっ はい!」

 一瞬頭が真っ白になって神綺の言っている意味がわからなかったが、瞬時に思考が回復して先生を呼びに行こうと慌てながら保健室を出ていった。

 

「....どういうことだ」

 神綺は目の前の不可解な状況に頭を悩ませる。

(俺は車に引かれた....はずだ。だが今俺は....見知らぬ保健室、しかも自分はYシャツを着ているし、壁に上着が掛けられていることから学生...なのだろう。だが、どういうことだ...これは夢なのか?)

 だが、先ほどの真姫を思い出す。

(夢にしてはおかしいな....俺はあんな女性..いや、女子生徒か。そんな人との付き合いはない。不可解すぎる)

 と無意識に頭を押さえていると、勢いよく保健室の扉が開き、

「「神綺君?!」」

「っ!?」

 急に扉が開いたと思ったら、女子生徒が2人揃って自分を呼びながら向かってくる。

(どうやら俺は同じ神綺...という名前なのか)

「大丈夫!?」

「階段から落ちたって...」

「階段?....しかし...君達は誰だ?」

「「..え?」」

「斎藤君!...あら、絢瀬さん達...」

 二人が呆然としていると、後ろから白衣を着た保健室の先生らしき人が出てきた。

「せ、先生!神綺君が!?」

「ちょっと落ち着きなさい。....気分はどうかしら?」

「...頭が痛いですね。して、ここはどこなんです?」

「...それはどういうことかしら?」

「俺は私服を着ていたはずだ.....なのに制服らしき物を着ているし、彼女達を見ればここが学校であるのはわかった。だが、どこの学校だ?」

「あなたっ....いいわ。ここは秋葉原の音ノ木坂学院よ」

「秋葉原?.....もうわけわからん」

 轢かれたのは埼玉だ。原因のわからない頭痛も相まって思考もまともに働かない。

「...俺はどうしてここに?」

「....そこにいる西木野さんと階段でぶつかったのよ。その拍子に背中から下の階に落ちて頭を打ったの。頭痛がするのもそのせいでしょうね」

「階段?....そうですか」

「せっ先生!ちょっと私と二人っきりにさせてください」

 そこで声を上げたのは希だ。

「希?なにを...」

「....わかったわ。なにかあればすぐ呼んで」

 一瞬断ろうとしたが、なにか思うところがあるのか了承した。

 

 

 

 

 

 

「....それで?なぜあなたは俺と二人っきりなんかに?」

 先生達が出て行って落ち着くと、希より先に話を切り出した。

「....最初に自己紹介しよっか。私は東條希、あなたは?」

「...小林神綺だ」

「そっか。....ひとついいかな?」

「...なんですか?」

「小林さん。あなたは...アイドルでしたか?」

「....なに?」

 神綺は耳を疑った。初対面の女子に思いもよらないことを聞かれたから...

「どうしてそんなことを?」

「いいから答えてください。これからにかかわります」

「....確かにやっていた。だがなぜ君がそれを?」

「はぁ....やっぱり」

「どういうことだ?」

「いいですか、小林さん。あなたは.....斎藤神綺という人の記憶の一部...でしょうね」

「...は?」

 まったくもって言っている意味がわからん。

「えっと...斎藤君は言っていました。自分は前世の記憶を持っている、と」

「.....その記憶が今の俺...だと?」

「そう....だと思います。斎藤君から聞いたことをまとめて今の状況を踏まえると....」

 と言いながら希はメモ帳をポケットから取り出してなにかを書き始める。

「こうです。....小林さんは車に引かれて亡くなりました。多分あなたは直前の記憶がこれのはずです」

 神綺はスパスパと正解を言い当てられ鳥肌になりながらもうなずく。

「その後、その記憶を持ったまま斎藤君が産まれて、成長した。けど....」

 とそこで希は俯いてしまう。

「....となるとなんだ?その....俺の生まれ変わりが今まで生きてきたが、その階段の一件でそいつの記憶がすっとび、その前の俺の記憶だけが残っている。...ということか?」

 と回らない頭をフル回転させながら導いた仮説を希に話すと、小刻みに震えながらも、うなずいた。 

 頷いたのを確認すると神綺は目をつむり、大きな溜息を吐く

「はぁぁぁぁ.....なるほどな。...だが、それはちょっと無理がある気がするが...」

「....どこがですか?」

「いや、その俺の生まれ変わりが君に前世を話したってんだろ?....今の俺には考えられん」

「しん...斎藤君も同じく悩んでいましたよ。つい最近までアイドル関係とは距離を置いてましたから」

 そう苦笑いしながら希は言う。そこで神綺はあるところに引っかかった。

「...なぁひとついいか?」

「...なんですか?」

「その斎藤って奴はさ。俺とは別人...なのか?それとも交通事故を起こした今の俺がそのまま斎藤になり、ここで生活をしていたのか?」

「...おそらく後者だと思います」

「そうか....辛いだろうにありがとうな。態々現状を教えてくれて」

「っ...いえ....」

「君にとって俺は...その斎藤とは別人なんだろうな」

「.........」

「ま、俺のことはいいさ。とりあえず俺は...記憶喪失ってことで終わるだろう。....記憶が戻るかどうかは別として」

「.....っ」

 どうにかして希を落ち着かせようと考えるが中々思いつかず、仕舞にはぽろぽろと希は泣き始めてしまった。

「お、おいおい......はぁ」

 そうして神綺はなにも思いつかないのなら、と希の涙を指で拭う。

「っ」

 その行動に希は一瞬目を見開いたが、すぐにしゃくりあげる。

 それに神綺は

「...確かに俺と斎藤は別人だ。辛いのもわかる。....だが、それを我慢するのはもっとまずいぞ?...泣きたいなら泣け。それを咎める奴はここにはいないからな」

 と言い聞かせるような声で言う。それに耐えられなくなった希は声をあげて泣いてしまった。

 

「希!?」

 と、その声を聞いて外で待っていた絵里が勢いよく中に入ってくる。

「ち、ちょっと神綺君!?希になにしたの!?」

「....すまない」

「すまないじゃないわよ!どうしちゃったの?なんで希を泣かせるのよ!」

「いいんだよ絵里ち...本当に...」

 錯乱しているのか、絵里は神綺に突っかかるが、希がそれを止める。

「希....」

「....神綺君はね。神綺君じゃなくなっちゃった」

「...え?どういう...」

「...東條が言うに、俺は記憶喪失...らしい。君は....俺の過去を知っているか?」

「知ってるよ....他にも数人」

「そうか...」

「ちょっと...どういうことよ」

「いいか、君。俺は....君達の知る前世の神綺だ」

「...え?」

「階段の件で斎藤神綺として生きた記憶がショックで跳び、斎藤神綺より前...つまり前世で生きた記憶だけが残ったってことだ」

「そんな....」

「だから.....君達の知る俺がどう君達とつるんでいたかは知らない。だが、今の俺は別人同然だ。だから、もう付き合いたくないと思うのであれば、縁を切ってくれて構わない」

「ちょっと何言って...」

「だってそうだろう?同じ声、同じ顔、なのに考えていることは前の人格とは違う。....気持ち悪いとか思わないのか?」

「そ、それでも神綺君は神綺君よ!」

 そう必死に、軽く涙目になりながらも絵里は言い返す。

「...そうか」

「ねぇ....絵里ち、先生は?」

 そう。さっきの希の声で入ってきたのは絵里一人。先生と真姫の姿はない。

「西木野さんが先生を呼びに行ったわ...もうそろそろ来る頃よ」

 と噂をすれば

「どうしたのかしら?東條さんの泣く声が聞こえたようだけど?」

 と先生がこちらへ向かってきた。

「もう大丈夫です...落ち着きました」

「そう....それで?斎藤君はなにをしたの?」

「...なにも」

「あら?君って嘘つくタイプだったかしら?」

「先生!本当になにもないんです。...ただ」

「ただ?」

「...神綺君は記憶喪失みたいです」

「....やっぱりね。さっきの会話でもそうかなとは思ったけど....」

「記憶....喪失....」

 と真姫が顔を真っ青を通り越して真っ白にしながらつぶやいた。

「西木野さん....そこまで重く受け止めなくても...しょうがない事故よ。100%あなたが悪いわけじゃないわ」

「で、ですが....」

 流石に神綺も居心地が悪くなり、フォローをする。

「....一応俺は生きているし。手足も動く。それに最低限の知識も残っているようだしな。地形とかを少し教えてもらえれば当分は大丈夫だろう」

「何言ってるの。病院行きよ」

「...本当ですか?」

「当たり前じゃない。頭打ってるのよ?その頭のアイシングは応急処置、これから病院で検査よ。記憶無くなってるのに野放しにできるわけないじゃない」

「...そうですか」

「そうねぇ...あ、東條さん。彼って親御さんと住んでるか知ってる?」

「えーっと、一人暮らしです。両親は引っ越したと聞いてます」

「....厄介ね。しょうがないわ、西木野さん。あなたの親御さんに連絡させてもらうわ」

「....はい」




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