ラブライブ! -彼はどう変わる?-【リメイク】   作:レイヴェル

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どうも、レイヴェルです。


第72話

 先生が真姫の両親に連絡をすると言って保健室を出て行ってから数分。

 保健室内には顔の優れない希と絵里、そして顔面蒼白で微動だにせず固まっている真姫。

 この悪い空気の中、流石に耐えられなくなった神綺は意を決して口を開く。

「な、なぁ...東條さん...だっけ?」

「ん?...なんか変な感じ、神綺君にそう呼ばれるのって」

「....俺は君のことをなんと呼んでいたんだ?」

 神綺は前世で女性を苗字以外で呼ぶことがなかった。

「私のことは名前で呼んでたよ、こっちの絵里ちのこともね」

「名前でか.....付き合いは長いのか?」

「そうだね。中学の頃から一緒だったからね」

「なるほどな....」

 どうしたものか、と神綺は頬を指で掻きながら考える。先ほども言った通り、名前で呼んだことなどない。....抵抗があるのだ。

「別に無理して呼ばなくてもいいよ?私も気にしないし」

「そうか....ならそうさせてもらうよ」

 一安心、といったところだろうか。深く息を吐いて胸をなでおろす。

 しかしここでまた一つの問題が浮上する。

「...それでさ。その....君?」

「えっ?あ、.....はい」

 ずっと固まっていた真姫に話を振る。

「君は...俺とぶつかったんだよな?」

「そ、そうです....」

「あぁ、そんなに怯えないでくれ。こっちが逆に困ってしまうんだが」

「す、すみません....」

「まぁ、いいさ。それでさ、君に怪我はないのか?」

「...え?」

 真姫にしてみれば予想外の問い掛けだった。なにか嫌味でも言われるのでは、と警戒していたから尚更なのだが、自分のことを心配されるとは思っていなかった。

「いや、俺みたいに包帯とかの処置が見えないから大丈夫なんだろうが、念の為知りたくてね」

「えっと...私は大丈夫です。先輩に覆いかぶさるように落ちたので....ですが私は....」

「あぁ、別に気にしてないから大丈夫だ。ただ、俺だけじゃなく、君まで怪我してるのなら居心地が悪いな、と思っただけだからね」

「へぇ.....やっぱり神綺君は神綺君なんだね」

 と今まで少し落ち込んでいた希が初めて笑った。

「ん?どういう意味だ?」

「そのまんまの意味だよ。記憶が飛んでも、神綺君は優しいもん。自分のことより相手を心配してる」

「.....自己満足だ。言ったろ?あの子が怪我をしていれば居心地が悪い、と。結果的に彼女は無傷だから問題ないが、本質はそこまで褒められるもんじゃない」

「そうかな....」

「俺の考えだがな....」

「えっと...東條先輩」

「ん?なにかな、西木野さん」

「先輩は...本当に記憶喪失...なんですか?」

「ん?どうして?」

「事故を起こした私が言うのはあれですけど....記憶がないにしては....先輩の自我が安定しているような....とても記憶がなくなっているようには思えないんです」

「なるほどな」

 そこで反応したのは希ではなく神綺だった。

「私はこれでも医者の娘なんです。親からの話も聞きますし、家にも医学関係の書物もあるのである程度の知識はあるんです」

「ほぅ...」

「ですが....斎藤先輩の場合、混乱はありましたが、比較的情緒が安定しています。不安がられている様子もありませんし....にわかに信じがたいんです」

「いい観察力を持ってるんだな。確かに、自分で言うのは何だが、自分でも精神状態は安定していると思うよ。だが、西木野さん。慌ててどうする?不安になってどうする?」

「え?」

「慌てたところで記憶は戻らないし、不安になったって返って自分が辛くなるだけだ.....なら答えは一つだ。今を進むしかない」

 それに、と神綺は続ける。

「所詮は書物だ。実際その患者を相手にしたわけでもないんだろ?なら、そんな本の情報は参考にはなるが、絶対じゃない。結局は実体験と経験がものをいう」

「..........」

「ま、俺は自分が異例のケースだということは重々承知しているよ。事情が事情なんでね.....なぁ、東條さん?」

「ん?」

「西木野さんは俺のことはどこまで知ってるんだ?」

「.....多分全然知らないと思う」

「そうか....ならそう疑問を持っても仕方がないのか...」

 真姫は前世の件を知らない。これだけでも神綺が彼女に対する対応が変わるのだ。

「....先輩には元々なにかあったんですか?」

「....どうしても知りたいのなら、話さないこともない。君がそれを信じるか信じないかだ。だが、これを知れば少しは今俺に対して感じている違和感に納得がいくんじゃないか?」

「あれ?結構アッサリ教えちゃうの?」

「場合が場合だ。それに、これを知れば西木野さんも多少は肩の荷が下りるだろう?....ずっとそんな暗い顔をされるのは嫌なんだ」

「そっか...」

「さぁ、どうする?聞くも聞かないも君の自由だが」

「き、聞きます!」

「...そうか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「.......」

「これがさっき東條さんから聞いた今までの現状を踏まえて整理した事柄だ。...信じるか?俺に前世の記憶があったことを」

「....確かに信じられないような話です。ですが、そういうことなら納得がいきます。今のあなたの態度、振る舞いに」

「そうか....ま、信じてくれるのなら、それに越したことはないよ。ただ...他言無用だ。流石に無暗に言いふらしてもらいたくない」

「わかっています」

「よし、ならあとは先生が来るのを待つだけだな」

 

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 場所は変わって病院。なんでも西木野総合病院だとか。名前の通り、真姫の親が運営している病院だ。

「....随分立派な病院だな」

「私も入ったことなかったよ...」

「私もよ....」

 上から神綺、希、絵里である。保健室の先生を筆頭に、みんなついてきたのだ。

「さっき言った通り、西木野さんの親御さんが急遽時間を作ってくれるみたいだから、呼ばれるまでここで待ってましょ」

「....病院なんてあの事件以来だ....」

「そりゃ、普通の人はこない場所だもの....」

「元気なら病院にお世話になることもないしね」

「そうだな....」

 と物珍しく辺りを見渡していると、とある一部屋の扉が開き、看護師さんがこちらに一人向かってきた。

「あの、音ノ木坂学院の方々ですか?」

「えぇ、保健室の養護教諭の藤崎です」

「そちらの方々は?」

「あぁ、彼女は西木野さんで、こちらの彼が斎藤君。こっちの二人は連れですので気にしないでください」

 その説明にどうもと軽く頭を下げる希と絵里。

「そうでしたか。...では、先生がお待ちですので、こちらへ」

「わかりました。それじゃぁ東條さんと絢瀬さんはここで残っててね」

「「はい」」

 そうして神綺達は案内された部屋へと入った。




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