ラブライブ! -彼はどう変わる?-【リメイク】 作:レイヴェル
本当ならもっと後にするつもりだったのですが、100話までにライブ。ということにしたのでここでアレしちゃいます。
「ふぅ....帰るか」
厳密に言えば家ではなく神田明神に向かうのだが、それはいいだろう。
音楽室を出て、昇降口へ向かおうと廊下を歩いて階段へと差し掛かった時。
「きゃぁぁぁぁっ?!どいてくださいぃぃぃ!」
「は?」
上の階から猛スピードで駆け下りてくる女子生徒が一人。
確かに慌ただしい駆け足の音は聞こえていた。しかし、
「がっ」
気がつくのが遅すぎた。いや、早めに気がついていたとしても恐らく咄嗟に動けなかっただろう。
精神年齢30後半の神綺であれば冷静に反応できたかもしれない。だが今の神綺は精神年齢20前半、経験や色んなモノが足りない。
となれば祈るは女子生徒が自分のことを避けてくれることだがそれも叶わず、女子生徒は止まれずに神綺に突っ込んだ。
それに唖然として突っ立っていた神綺はそのまま押される形となり、運悪く掃除の為に置かれている掃除ロッカーに頭を打ち付けてしまう。
「あ....あぁ.....」
そして神綺はどことなくデジャブを感じながらスッと意識を手放した。
それを衝突した女子生徒が見ると、
「だ、誰か助けて.....」
どうしていいかわからずにあたふたするのであった。
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「っ......ん」
神綺は薄っすらと意識が覚醒し、閉じていた瞼を開く。
「....ここは保健室か」
独特の薬品の香り、そして清潔な白いベットがあるところを見ると間違いない。
そしてなぜ自分がここにいるのか、記憶を辿っていると
「あ、先輩」
「っと、ビックリした。....西木野さんか」
急に声がした方を見ると、呆れ顔で真姫が椅子に座っていた。
そんな真姫を見た瞬間、
「っ!?がっ」
「ど、どうしました!?」
名状しがたい頭痛が神綺を襲う。そのあまりの痛さに両手で頭を押さえるほどである。
それには真姫も慌て、保健室を飛び出していった。恐らく先生を呼びに行ったのだろう。
-side神綺-
(な、なんなんだこれは!?)
なぜこんなにも痛いのか、そんなことを思いながら顔をしかめて耐えていると、急に走馬灯のように色々な光景、景色が頭の中に流れてきたような感じがした。
(これは...?)
自分が見たことのない光景、それに神綺はひとつの結論を導いた。
(これは...俺の今まで記憶か。記憶が無くなる前の、交通事故で死んだ後の俺の生きた道k--------)
だが、急に脱力感が神綺を襲い、されるがままに意識も手放した。
「....ここは?」
目が覚めると、一面真っ白の空間に神綺はいた。
『よ』
「っ!?」
急に声がしたと思い、反射的に振り向く。
そして神綺は信じがたい光景に言葉を失う。
『はじめまして、だな。昔の俺』
「ど、どういうことだよこりゃ....なんで俺が?」
そう。どういうわけか神綺と瓜二つの男が立っていた。
『ここは俺の精神世界さ』
「は?」
『ま、俺も長い間眠ってたみたいだからな。詳しくはわからないんだが....』
ははは、と乾いた笑みで頭をかく男。
『取り敢えず自己紹介だ。俺は斉藤神綺、君の言う記憶を失う前の神綺だ』
「....なに?」
『信じられないのはわかるんだが、こうとしか言えなくてね』
「....確かに信じられない。だが、ひとつだけ知りたかったことがある」
『なんだ?』
神綺はひとつだけをどうしても知りたかった。それは、
「俺は、昔のお前なのか?」
『それは、俺がお前の記憶を持っていることについてか?』
「そうだ。どうなんだ?」
そう神綺が聞くと男は、やれやれと溜息をつきながら
『答えはYesだ。俺は確かに交通事故によって死に、斉藤神綺として生まれ変わり、音の木坂学院の副生徒会長を務めるまでになった』
と嘘をついている様に思えない様子に神綺は無言で頷き、
「よし、わかった。それで?俺はどうしてここに?」
『ん?それは俺にもわからない』
「は?」
『言ったろ?俺自身目が覚めたばかりでね。まぁ...少し外の様子をお前から見てたからわかるが、階段での衝突の反動だろう』
「なに?」
『お前と階段でぶつかったろ?その時頭打っただろう?』
「そういえば...」
未だにあの時のことは曖昧だが、なんとなくそんな感じがする。
だがそれでは少しおかしい。
「でも可笑しいだろ。ならなんで俺は一回保健室で目が覚めた?」
『まぁ慌てるなって。続きがあるんだ。確かに階段の一件が引き金になったのは間違いない。....そうだな。階段の一件は火薬で、もう1つが火の粉か』
「? そのもうひとつってのは?」
『西木野さんだ。俺とお前、両方で面識がある相手。それが彼女だからだ』
「....イマイチわからん」
あれ、俺ってこんなに物分かり悪かったか?なんて男が悪たれをつく。
少しイラッとしたのは秘密だ。
『取り敢えず、原理は知らんが西木野さんを見たお前は火薬に放り込まれた火の粉によって記憶が爆発した、なんて思っておけばいいと思うぞ』
「滅茶苦茶じゃねぇか?」
『そもそも記憶がなくなるのが稀なんだ。そんくらいおかしなことがあっても否定はできない』
「...そうか」
『それでだ。お前に、俺の記憶が流れたはずなんだが?』
それには覚えがあった。
「あぁ。確かに、俺の知らない光景や風景が見えたな」
『...そうか』
「なぁ、なんなんだよ。お前が言うに俺はお前なんだろ?そしてお前があの体の本当の主で俺は借りている身、俺はどうなる?」
そう聞くとあからさまに苦虫を潰したかのように顔を歪める男。そして、
『.....俺が記憶を失っている間にあった出来事がお前から抜き取られて俺に吸収される。そしてお前は消えるだろうな』
「.....そうか」
なんとなくはわかっていた。
『...やけにアッサリしてるな』
「大体予想はついていたからな。それに俺は一度死んでるわけだし、いまさら消えるとか言われてもな」
『.....』
「それに感謝している」
『なに?』
男は神綺の言葉に眉をひそめる。だが、本当のことだ。
「不謹慎かもしれないが、お前ならわかるだろ?俺は女性との縁なんてなかったからな」
『そうだな。彼女も居ないもんな』
「....まぁな。それでだ。一度死んだ俺にちょっとした夢を見せてくれた」
『夢?』
「あぁ。園田さん...だったか?彼女とのお茶がとても印象に残っててな」
『そうか。....希とかは特にないのか?あいつが一番お前にアタックしていた気がするが....』
「まぁ、純粋な行為だから嬉しいけどさ。その...ギャップって言うのか?キリッとしてた園田さんが見せてくれた柔らかい笑みが印象に残ってる」
『なるほどな』
「だから俺は消えたとしてもなんとも思わん。ま...彼女は欲しかったが」
『来世頑張れ』
「人事だな。お前こそ頑張れよ?ま、東條さんって相手がいるか」
『残念ながら俺は告白されても受けんよ』
「はぁ!?なんでだよ!あんなカワイイのになにが不満なんだ?」
流石にイライラを我慢できずに声を荒らげてしまう。
『....考えてみろ。俺は20前半で死んでそれプラス17年だ。心はオッサンの30後半だぞ。彼女達は娘みたいなもんだ』
「....納得行かねぇ」
『お前もこのくらいの年になればわかる。....そろそろのようだな』
そう言いながらまた暗い表情をする男。その視線が自分に向けられていることに気がついた神綺はなんとなく自分の体を見る。
すると、
「...消える時間か」
手足が段々薄れていきていた。
『....希のこと。みんなのこと。ありがとう』
「ん?どうした急に」
『希は特に寂しかったりなにかあると以上にハイテンションになったりするんだ。それをお前は救ってくれた。これは感謝しきれない』
そう言いながら頭を下げる男に神綺は鳥肌が立つ。
「やめろよ、気持ち悪い」
『それでも、だ。俺の中で希は特別なんだ。....俺の恩人だからな』
「そう思うなら尚更だ。彼女の気持ちに答えてやれよ」
『...それは無理だな』
「なんだよ...」
そう馬鹿話をしながらも神綺の体はどんどん薄れてゆく。もう時間がない、そう感じながら神綺は口を開く。
「そうだ。最後に言い残すことがあった」
これだけは言って置かなければならない。
『...俺もだ』
「俺は最初、本当に俺の将来がお前だと思っていた」
『俺もそうさ。同じ記憶を持ってるんだからな』
「『だが、今会話をしてわかった....』」
そう二人は声を合わせながら向き合う。そして神綺の体はすでに上半身しかなく、腕も見えなくなってきている。しかし、
「『俺とお前は全くの別人だ』」
まるで見えているかのように、滑らかな動作で握手をした。
そして言い切ると同時に神綺は完全に姿を消した。
そして一人になった男。本物の斉藤神綺は一人呟く。
『あぁ、そうだ。俺とお前は別人だ。....俺ならお前のように笑ってないし、消えるとなったら怖くて怯えてるさ』
そう軽く自己嫌悪しながらも、この精神世界から覗いていた外の記憶が段々と流れてくるのを感じた神綺は目を瞑り、意識を手放した。
-side out-
「.......」
意識の覚醒した神綺はベットに寝かされていた。
しかし、見たことのない天井であり、どこかと上体を起こして周りを見渡した。
すると、
「神綺君!」
「!?」
パッと希と目が合ったと思ったら急に抱きついてきた。
「おっと」
「大丈夫!?」
「だ、大丈夫だ。安心してくれ、『希』」
心配そうに顔を覗いてくる希にそう言いながら頭を撫でる。
そして神綺の呼び方が変わってることに気がついた希は目を見開いて口をパクパクさせる。
「神綺君...記憶...まさかっ」
「あぁ、心配かけたな。もう大丈夫だ」
そう微笑むと希は嬉しさのあまり顔を神綺の胸へと埋める。
「起きましたか。心配しましたよ、先輩」
特徴的なその声に反応して顔を上げると、ドアの近くで髪をいじっている真姫がいた。
そういえばここは個室なのか。てかどこだここ。
「君は...西木野さんか」
「お久しぶりです。でいいんですかね?」
「そうだな。....取り敢えずこれからもよろしく。それでここはどこだ?」
学院の保健室とも違う。どこか病院の様な...病院?
「ここは西木野病院です。先輩、運ばれたんですよ?」
「そうか。...そういえば俺にぶつかった子は?」
そういえばと見渡すも、この部屋には自分と希と真姫しかいない。
「絢瀬先輩達と外にいます。呼んできますね」
流石に全員中にいると狭いので、なんて言いながら真姫はドアを開けて廊下にいるのであろう彼女達へ声をかけた。
すると、
「神綺君!?大丈夫!?」
目を真っ赤にした絵里と、
「先輩!頭打ったって本当ですか?!」
いつもの元気な笑顔はなくなり、心の底から心配してる顔をする穂乃果、
「ここは病院ですよ!お静かに。....起きて大丈夫なんですか?」
自分のことを心配しながらも、周りを気にかけてくれる海未、
「先輩!」
おろおろしながらこちらへかけてくることり、
「災難だねぇ、こんな短時間で病院にこんなにお世話になるなんてね。こっちの仕事も考えてほしいわ」
悪たれをつきながら腕を組み藤崎先生。そして、
「し、失礼します......」
どうしていいのかわからないと言った様子で落ち着かない様子の自分とぶつかった女の子。
「取り敢えず、俺は大丈夫だ」
「西木野さんが言うには記憶が戻ったらしいけど?」
と業務的に聞いてくる。
「はい」
「そ、ならいいわ。後で先生に呼ばれて簡単な検査とかされると思うけど頑張りなさいな」
「了解です」
「さ、貴方達。もう彼の容態はわかったでしょ?安心したら帰りなさいな。女子校生がそんな遅くまで出歩くようなもんじゃないわよ?」
『えー』
「口答えしないの!これでも私は教師なのよ?」
「あ、待ってください先生」
「ん?」
「ちょっと穂乃果に話がありまして」
「え?私ですか?」
「あぁ。....とてもくだらないことなのだが、今日、穂むらに行ってもいいか?」
「え?いいですよ」
「ありがとう。絵里、今何時だ?」
「今は...17時ね」
「なら今日の夕飯の件は中止」
「えー!?」
嘘でしょ、なんて顔で希が抗議するが、
「穂むらで久しぶりに餡蜜とかが食べたいんだ。それを今日の夕飯にする」
「...くすっ」
「おい、西木野さん。笑ったな?」
「だって...くだらないんですもん」
「くだらないことだと最初にことわったぞ?」
「それでもですよ。まぁ、おめでとうございます。記憶が戻ってよかったですね」
「...ありがとう。さ、話したいことも色々あるが....」
辺りを軽く見渡した後、
「君」
ぶつかった女の子。確か前に凛ちゃんと一緒に子だった気がする。
「っ は、はい!」
「名前は?」
「小泉花陽...です」
「小泉さん、君も穂むらに来るんだ」
「え?」
「話したいこととかあるからね。あ、安心してくれ、遅くなったら送るから」
「あら、斉藤君。教師の前でナンパとかなめてるのかしら?」
「冗談言わないでください。そんなことするわけないでしょう。本当に話がしたいだけです」
「ほんとかしら?」
といたずらな笑みを見せるが
「本当です。それより担当医の先生とお話がしたいのですが」
「....しょうがないわね」
中々神綺が自分のペースにハマってくれない為に不機嫌になった藤崎先生がため息をつきながら病室を出て行った。
閲覧有難うございます。
....急な路線変更しちゃってすみませんでした。てへぺろ