ラブライブ! -彼はどう変わる?-【リメイク】 作:レイヴェル
いや~これで一段落。といったところでしょうか。
ライブが遂に始まった。1ヶ月前とは比べられないほどに成長した彼女達、確かにまだアイドルとして胸を張れるほど踊りが上手いわけでもないし、声量が安定しているわけでもない。
だが、それでも、彼女達は確かに、俺を魅了させた。これは身贔屓なのかもしれない。自分が手がけたから、見守ってきたから人一倍感動しているだけなのかもしれない。
でもその考えも霧散する。チラッと隣で腕を組んでいたにこを見たのだ。
するとどうだろうか、みっともなくも口を半開きにしてライブに釘付けになっている。
よかった、俺だけじゃない。他の人にも彼女達の気持ち、想いは届いている。それがわかっただけでもここまでやってきた甲斐があったというもの。
しかも気がつけば観客が増えていた。小泉さんの隣には凛ちゃんがいるし、扉の前には西木野さんもいた。そしてみんなに共通していることは、ライブに見とれているということ。
....彼女達は辿り着いた。アイドルとはなんたるものかに。
勿論、歌とダンス、ルックスも重要だ。だがやはり、それだけでは駄目なんだ。それだけではいい曲だな、とかいい振付だねで終わる。良いライブだったね、楽しかったねまではいかない。
それでは彼女達を見ているのではなく、その曲を作った作曲家、振付師への称賛になってしまう。それでは駄目なんだ。彼女達のことを見てもらわなければ。
でも彼女達は気がついている。足りないピースがなにか、それは想いだ。
歌詞が彼女達の今を表しているというのもあるだろう。それに相まって彼女達がなにをしたいのか、彼女達がどのくらい本気で向き合っているのかが伝わってくるのだ。
....おめでとうμ's。このライブ、大成功だ。
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パチパチパチパチ....
人数は少ない。だが見ていた全員が惜しみない拍手を送る。神綺もその中の一人だ。
「お疲れ様!やりきったな、3人共」
「はい!ありがとうございます!」
踊って歌ったのだ。息も上がって絶え絶えになっているが、穂乃果達は笑っている。心から楽しんだといった清々しい笑顔だ。
そして終わった余韻に浸っていると、革靴特有の硬い音が講堂に鳴り響く。
「絵里....」
音のする方を向けば歩いているのは絵里。だがハッキリ言って異質だ。
周りは感動などで笑顔や見とれてるのに対し、絵里の顔は険しい。
それには穂乃果達も表情を引き締めてしまう。相手が生徒会長だからというのもあるが、それだけが理由じゃない気がするのを穂乃果はなんとなく感じていた。
「ライブお疲れ様」
「っ ありがとうございます!」
硬質な、日頃の柔らかい声とは似てもつかない突き放すような冷たい声。これに神綺は眉を潜めるも、神綺は絵里のほぼ真後ろにいる為に絵里は気がつかない。
「たった1ヶ月でこれ程のモノができるとは思ってもいなかったわ。本当に、お疲れ様」
「....ありがとうございます」
だが、素直に喜べないのはなぜだろうか。純粋に褒めてくれているはずだ、なのに言葉に刺があるような気がした海未は軽く戸惑いながらも御礼の言葉を返す。
「....ま、ここまでは私個人の感想ね。こっちが本題」
と絵里は一度深呼吸をする。
「ここからは生徒会長として貴方達スクールアイドルに問います」
「は、はい!」
「これからどうするつもり?」
「どうする...とは?」
「ライブは確かに素晴らしい物だった。それは私も思ったわ。でも....この有り様。どうするの?」
絵里が言いたいのは恐らく観客の人数。だが神綺は信じていた。穂乃果が次にいう言葉を。
「続けます!」
「なぜ?これ以上続けても意味があるとは思えないわ。お客さんも疎ら、このまま続けても成功しましたと胸を張って言えるの?」
「言えます!それに続けるのだって、私達がやりたいからです!」
と穂乃果は一歩前に出て、チラッと左右にいる海未とことりに目をやる。そして二人が頷いたのを確認すると、絵里と面と向かって絵里を見つめる。
「ライブを終えて....私、もっと歌いたい、踊りたいって思ってます。...多分海未ちゃんとことりちゃんも感じてると思うんですが、今まで16年間生きてきて、こんな気持ち初めてなんです!やってよかったって、やり遂げてよかったって本気で思えたんです!」
すると胸に手を当てて講堂を見渡す穂乃果。そして深呼吸をした。
「今はこの気持ちを信じたい。....確かに生徒会長の仰る通り、このまま見向きもされずに、納得のいく結果も残せないかもしれません。それでも、私は今日ここに来てくれたみんなの気持ちを無駄にしたくないんです!斉藤先輩も言ってました。ライブは感謝の気持ちを表すモノでもあると....だから私達はそれに応えたいんです!私達が本気であると、楽しい物なんだと、届けたいんです!」
「.....そう」
「ここで宣言します!私達は必ず!いつか必ず!ここを満員にしてみせます!」
「....くくくっ くっはははははは!」
「ち、ちょっと神綺!?」
別に笑うところではない。だが、神綺はなぜか笑いがこらえられずに盛大に笑ってしまう。それににこは狼狽する。
「いやぁ悪い悪い。...くくっ 随分と大きく出たな、穂乃果」
「当然です!私達は本気ですよ!?」
「別に馬鹿にしているわけじゃない。.....いやぁ、すまなかった。俺はお前達を甘く見ていたらしい」
「え?」
「そこまで決意を固めていたとはな。.....俺も心を入れ替えよう。これからは俺も、誠意を持ってお前達の練習に付きあわせてもらう」
ハッキリ言って穂乃果達がここまでやる気になっているとは思わなかった。目的は廃校の阻止、そのはずなのに....もっと先を見据えているような気がしてならない。なんとなくだが、廃校阻止なんかよりもっと大きい。もっと大事なナニカに向かっているようなそんな気がした。
「...はい!」
イマイチ神綺の言葉の意味が読み取れていない穂乃果だったが、元気な返事で応えてくれる。
「と、いった感じだが....お前はどうする?にこ」
「....考えさせて」
「あいよ。....よし、これでライブは終わりだ!みんな来てくれてありがとう。またこういう機会があると思う。その時はまた来てくれると嬉しい、よろしく頼む」
「「「よろしくおねがいします!」」」
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「やっほ~神綺君」
「希....どうしたんだこんなところで」
ライブの後片付けを軽く終わらせた神綺は講堂から廊下へでると、そこには希がいた。
「んー?ライブ見に来たんだよ。お疲れ様」
「希も居たのか....ありがとう。といっても俺は何もしてないがな」
「またまた~ 穂乃果ちゃん達が折れそうになった時に発破かけてたじゃん」
「なっ その時から居たのか....」
「勿論だよ!っと、これこれ、渡しとくよ」
よ希が差し出してきたのはビデオカメラ。
「...なにこれ」
「今回のライブの映像だよ。見てみる?」
「いや、いいんだが...なんでこんなことを?」
「絵里ちに頼まれたんだよ」
「絵里?」
ちなみに絵里は一足先に帰っている。なんでも考えたいことがあるとか。
「うん。絵里ちの立場って微妙でさ、色々苦労も多いんだって」
「まぁそうだろうが...それとどんな関係が?」
「わかんないけど、色々悩んでる奴の1つがこのビデオを撮ることで解決するらしいんだよね」
「....ふむ。んで?撮ってどうするんだ?」
「サイトにアップして欲しいんだって」
「サイトねぇ...」
サイト。十中八九動画サイトだと思うが、そこで神綺はハッと気がつく。
「ん?なにかわかった?」
「あぁ....なんとなく絵里がしたいことがわかった気がする」
「おぉ、さすが神綺君。...それで?どうして絵里ちはこんなことを?」
「恐らくだが....第三者の評価が欲しいんじゃないか?」
「というと?」
「今回のライブ、まぁ小泉さんとか来てくれたが、みんな一度は面識のある子ばかり、言い換えれば身内で集まってる様なものだ」
「ふんふん」
「となれば、いくら好評価を貰っても身贔屓と言われればそれまで。ならば、面識のない外部の人間の評価はどうだろうか?と思い立ったんだろう」
「だからネットなんだね。確かにネットなら建前なしの本音で評価ができる」
「絵里も中々いいことするな」
「それに気がつく神綺君も神綺君だけどね」
「とにかくだ。.....これはいいチャンスだ」
「そう?」
「だってこれで高評価が貰えたら?穂乃果達自身のモチベーションアップにも繋がる」
「なーるほど」
「これを利用させて貰わないわけがない。有効活用させてもらう」
「ま、元々神綺君にアップしてもらうつもりだったし、やり方はどうであれアップさえすれば絵里ちは満足すると思うよ」
「あぁ。...それじゃ希は先に帰っててくれ」
「え?神綺君はどうするのさ」
「俺は穂乃果達の所に行ってくる」
「了解。あ、ビデオのことは話す?」
「いいや、これは話さないでおくよ。絵里が穂乃果達に言ってなかったんだ、俺が言うのは問題だろ?」
「流石、わかってるみたいだね」
「伊達に付き合ってねぇよ。それじゃ」
「うん、また後で」
ばいばい~と手をひらひらさせる希を尻目に神綺はそろそろ着替え終わったであろう穂乃果達を迎えに控室へと向かった。
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次で100話になりますね~ ってことで、次話は番外編となります。お楽しみに~
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