願いの物語シリーズ【鈴木一】   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第2話『さて。今日君たちを呼び出したのは他でもない』

例の合コンがあった次の日。僕は古谷と佐々木を呼び出して、格安のファミリーレストランに来ていた。

 

そして注文する物を決めながらすぐに話を始める。

 

「さて。今日君たちを呼び出したのは他でもない」

 

「ハンバーグでも食べたくなった?」

 

「それもある」

 

「じゃあスパゲティが食べたかったとか」

 

「それもあるな」

 

「ドリンクバーは付けるか?」

 

「付けようじゃないか」

 

「ほい。じゃあ注文するぞー」

 

「頼んだ」

 

そして、店員さんを呼びだして、全員注文をして、ドリンクバーに飲み物を取りに行った。

 

オレンジジュースとリンゴジュースだ。

 

「あ。鈴木。二つもコップ持ってきて良いのか?」

 

「どうせ飲むんだから良いだろ。ドリンクバーは全員頼んでるんだし」

 

「店員の洗う手間が増えるだろ」

 

「こういうのはな。食洗器で一気に洗うんだ。労力は大して変わらない」

 

「へぇー。詳しいな、鈴木」

 

「まぁな」

 

僕達は席に座りながら話をする。

 

「なら、こんな話は知ってるか? ドリンクバーで元を取るのは無理だって話」

 

「いやいやそれはおかしいだろ。だって、このコップ一杯半くらいの量が自動販売機で120円とか150円とかだぞ? 三杯も飲めばもう元取れるじゃないか」

 

「それは僕らが買う時の値段だろ? こういう店は大量に仕入れるからもっと安く仕入れられるって話だ」

 

「へぇー。でも確かに元取るのは難しいけどさ。それだって十杯も飲めば元取れるだろうから、無理って事は無いだろ」

 

「甘いな。甘いよ。佐々木」

 

「はぁ?」

 

「君だってスーパーで買い物をした事くらいあるだろ。そこで値段を見比べた事はないか? 小さいペットボトルと大きなペットボトルの値段を」

 

「はっ! まさか!」

 

「そう。大きなペットボトルの方が一杯に対しての値段が安いんだ」

 

「ま、まさか、そういう事か!」

 

「そう! ドリンクバーに使われているジュースはおそらくこの大きなペットボトルのさらに割引版だ。生半可な気持ちでは元を取る事など出来る訳が無い」

 

「そ、そういう事だったのかー!」

 

「でも俺たちは結局お店の奴を買うか、こういう店で飲むかしか出来ないから、お店の値段を超えたら得な事に変わりはないよね」

 

「確かに」

 

「流石は古谷。良い事を言うよな」

 

僕たちは一緒にジュースを飲みながら、旨いと笑う……ってちがーう!!

 

「僕はこんな話をしに来たんじゃない!!」

 

「じゃあ何だ? 近所に旨いラーメン屋でも出来たか」

 

「それは確かに共有しないといけない話だが、それでもない。藤崎さんと紗理奈ちゃんの話だ」

 

その名前を出した瞬間、二人の顔つきが明らかに変わった。

 

早く聞かせろと真剣な眼差しで僕を射抜く。

 

「実は昨日の事だが、二人が合コン会場に現れた」

 

「はぁ!?」

 

「なんで!?」

 

「聞いた話だと、合コンとは知らされてなくて来てたみたいだ。でも重要なのはそこじゃない。大学で紗理奈ちゃんと藤崎さんが一緒に居る事をよく思わない人たちが居るみたいだ。それに何か嫌な空気を感じた」

 

「嫌な空気って、紗理奈が何かされるって事か!?」

 

「落ち着け。そうは言ってない。もしかしたら何かに巻き込まれる可能性があるかもしれないって言ってるだけだ。まだ何も起こってない。気にしてやれって言ってるんだ」

 

「……分かった。怒鳴って悪かったな鈴木」

 

「いや、構わない。てか実のところ、紗理奈ちゃんはそこまで問題じゃ無いんだ」

 

「という事は」

 

「そう。問題は藤崎さんだ」

 

「という事らしいけど、どうなの? 古谷君」

 

「聞かれてもね。俺にはさっぱり。藤崎さんの気持ちが分かれば苦労はないよ」

 

「まぁ、そうだよなぁ」

 

「一応昨日の夜とかどうだったか聞いても良い?」

 

「昨日は行けないって聞いてたから分からないけど、一昨日は、まぁいつも通りな感じだったよ。理性の限界チャレンジをしている気分だったね」

 

「もう告白すれば良いんじゃないかって思うけど」

 

「まぁ、そうなんだろうけどね。もしフラれたらと思うと、怖くて一歩を踏み出せない臆病者だよ。俺は」

 

「古谷も大変だな」

 

「一昨日は特に酷かったよ。いつだったか、俺の家で見つけた写真集と似たような本を買ってきててさ。その写真集を広げながら、同じポーズして、どう? なんて聞いてくるんだよ。理性が飛びかけたね」

 

「それでも耐えてるなんて凄いよ、古谷君」

 

「もう慣れたさ。まぁ、でも夜に同じようなポーズの写真が送られてきて、耐えられなかったけど」

 

「そら好きな女がそんな誘惑してくれば、誰でもそうなる。お前は悪くないよ古谷」

 

「うん。鈴木の言う通りだ」

 

「ありがとう。鈴木君。佐々木君」

 

藤崎さん。相変わらず罪な女の子である。

 

中学の時から古谷の為に弁当を作ってくれて、試合に来てくれて。何かと甲斐甲斐しく世話を焼いてくれて。

 

高校に入ってからもそれは変わらなくて、勉強まで教えてくれていたという。

 

さらに大学に入ってからは一人暮らしをしている古谷の為に、洗濯やら掃除やら、飯の準備をしてくれているとか。

 

そのお礼がしたいと言えば映画が視たいと言うらしいが、それもデートだね。なんて小悪魔みたいな笑顔で言うらしい。

 

しかもやたらと体の接触が多くて、距離感もおかしいから精神が削られるみたいだな。

 

古谷の理性が強すぎて震える。

 

鋼の男である。

 

「実際、僕から見ると結構好意ある様に見えるけどな」

 

「そう思うでしょ? でもさ。思い返して貰いたいんだけど、佐々木君や鈴木君と接する時の藤崎さんってどう?」

 

古谷に言われ、頭の中で藤崎さんと話している時を思い出す。

 

『野球ってよく分からないけど、鈴木君が凄いのは分かるよ。鈴木君が出てくるだけでみんな大喜びだもん。え? 私? 私も当然応援してるよ。だって頑張ってる鈴木君って、格好いいもんね』

 

『んー。ちょっと作り過ぎちゃったなぁ。鈴木君も食べる? なら、味調整するから待っててね。え? 鈴木君の好みくらい知ってるよ。ふふ。でも、料理の隠し味はいつも同じ。愛情。だよ? へへっ、なんちゃって』

 

『もー鈴木君。前も教えたでしょー? しょうがないなぁ。古谷君と同じ学校に行きたいんでしょ? なら頑張ろう? 大丈夫。鈴木君なら出来るよ。自分を信じて。私も信じてるからね』

 

「……あれ? 藤崎さんって僕の事好きなんじゃない?」

 

「鈴木。気持ちは分かるけど、それは無いよ」

 

「いや、でも待ってくれ。え? いや、え?」

 

「完全に混乱してるな」

 

「まぁ俺はいつもこんな感じだけどね」

 

僕ら三人はテーブルに向き合いながら深く溜息を吐いた。

 

女の子の気持ちが分からない。

 

「女の子って難しいな」

 

「藤崎さんが特殊なだけじゃないの? 紗理奈は結構分かりやすいけど」

 

「逆に紗理奈ちゃんが分かりやすいだけだろ」

 

「確かに」

 

「でもさ。俺が思うに一番の問題はそこじゃないんだ」

 

「というと?」

 

「多分鈴木君の不安は同じだと思うんだけど……藤崎さんって自分が可愛いっていう自覚が全く無いんじゃないかって思うんだよね」

 

「……あぁ、そういう事か」

 

「いや、そんな事ある? 紗理奈と一緒に居る時はナンパされて当然みたいな感じだったけど」

 

「それは紗理奈ちゃんが一緒に居るから。だよ。自分がされているとは欠片も思ってないんだ」

 

「なんでそうなるんだ?」

 

「これは僕の推理だけど、藤崎さんの人間関係が影響してるんじゃないかな」

 

「どういう事だよ。鈴木」

 

「思い返して貰いたいんだが、中学時代はずっと僕達野球チームの所に居ただろう? そうすると立花先輩の取り巻きとかと一緒にいるから意識する瞬間が無くて、高校に入って以降はずっと紗理奈ちゃんと一緒に居たから、何かあっても紗理奈ちゃんに対してなんだなと感じていたとか。どうだろう」

 

「ありそうな話だ」

 

「そういう意識が根底にあって、告白とか好意を寄せられても、それをなんか変な解釈で流しちゃうとかじゃないか?」

 

「うぅむ」

 

「まぁそもそも古谷もずっと傍にいたし、告白やら何やらをしてくる奴は元々少なかっただろうけどね」

 

「でも、それならどうする?」

 

「自覚させるしかないだろ。自分が優れた容姿を持つ人間だという事を。その上で、警戒心を持たせるしかない」

 

「ちょっと待った! その作戦が上手く行くと、家には」

 

「最悪もう来ないな」

 

「えぇー!?」

 

「古谷! お前、藤崎さんの安全と、お前の勝手な欲望とどっちが大事なんだ!!」

 

「うっ」

 

「そんなに好きならな、告白しろ! そして玉砕しろ! そしたら僕が藤崎さんを大事にするから」

 

「おい鈴木」

 

「しょうがないだろ。佐々木。藤崎さんは僕が好きなんだから」

 

「それは勘違いだって話だったろ!」

 

「くっ、やるしかない、のか!」

 

「頑張れ古谷君! 鈴木なんかに負けちゃ駄目だ!」

 

「ふっ、ちょうどいい。僕も彼女が欲しいと思っていたんだ。君がモタモタしているなら僕が貰っていくぞ!」

 

「そ、そんな、駄目だ!」

 

「何を言われようが僕は止まらない。バッターボックスに立ったなら、確実に出塁する! それが僕の意地だ。勝負に僕は乗るぞ! 古谷!」

 

「ま、負けられない。俺だって」

 

こうして何故か分からないが、僕と古谷で藤崎さんをめぐる戦いが始まるのだった。

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