転移先がカロス地方だった件について   作:ゾネサー

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事件は会議室で起きてるんじゃない!現場で(ry

「お待たせ!」

 

「遅いわよ姉さん!」

 

「仕事を片付けてきたから、これでも急いだのよ」

 

 バトルが終わってほどなくしてパンジーさんが現れた。

 

「待ちくたびれて乗り込んじゃうところでした!」

 

 止めなきゃ本当に向かってました。

 

「そちらの彼は新顔ね」

 

「カイトです。セレナさんの助手として一緒に調査します」

 

「実力は折り紙つきよ!」

 

「ビオラが言うなら間違いないわね」

 

 俺達はジムに入ると蜘蛛の糸のようなオブジェクトを伝うようにして会議室へとやって来た。全身を使った運動で息が大きく乱れる。なにゆえ会議をするのに芥川龍之介の小説のような試練を課されるのか。これが分からない。

 

「それでは作戦会議を始めましょう」

 

 嘘だろ!? 椅子に座ったら休憩なしのノータイムで始まった。よく見ると二人とももう息が整い出している。セレナさんに至っては涼しげな顔で全員分のアイスコーヒーを淹れる余裕すらあった。本当に怖いのはポケモンではなくポケモントレーナーの方だった?

 

「まず始めに——」

 

「私たちのチーム名を決めましょう!」

 

「いる? 書類上はリーグの所属よ」

 

「いいんじゃない姉さん。気分の問題よね!」

 

 分かりみが深い。

 

「活動名があった方が何かと便利かと」

 

「一理あるわね。何か候補はある?」

 

「ホワイト団!」

 

「ハクダンだけに?」

 

「よく分かったわね!」

 

 恐ろしいことにセンスは合うみたいだ。

 

「いいんじゃない、いいんじゃないの!」

 

「ええ? まあみんながいいなら。それではホワイト団の会議を始めます」

 

 するとスマホロトムが出て来てホログラムが空中に浮かび上がった。淡い青色の光が部屋に反射する。あれ? ホロキャスターじゃないのか。

 

「まずはこのように今のミアレには街中に野生のポケモンが溢れかえっているわ。原因は不明よ」

 

「え! 行きたい!」

 

「どうどう。トレーナーじゃない人もいるでしょうし、それだけでも危険なのでは?」

 

「ひとまずはクエーサー社がワイルドゾーンというホログラムを作った隔離空間によって区分けしてるみたいね」

 

「聞いた聞いた! ポケモンの共生って言ってるのよねー」

 

「うーん。ちょっと違和感?」

 

「とはいえ野生ポケモンが増えたなら必要な処置ではあるかもしれませんね」

 

 人工的ではあるが共生というキーワードからもどことなくレジェアルを彷彿とさせる。あの時も最初は明確な隔離があった。同じように少しずつ歩み寄れるかが重要そうだな。

 

「ただ完全には収まらないみたいで。中にはこんなポケモンもいるの」

 

 脳裏にレジェアルのことを思い浮かべていたのもあり、目の前に浮かんだ身体が大きく目が赤く染まった姿に思わず目を見開いた。

 

「オヤブンポケモン!?」

 

「あら。よく知ってるのね」

 

「え、ええ。昔ヒスイ地方に存在したらしい強力な個体ということは」

 

「是非戦ってみたいわね!」

 

「私がミアレ美術館で調べた内容をもう知ってるとはね。ポケモンの歴史に興味があるのかしら」

 

「まあ、そんなところです」

 

 ……発言は慎重にした方がいいか。ヒスイの文化が伝わっていて助かったが、場合によっては知っていたら変なこともあるだろう。

 

「オヤブンがいるならヒスイと似た異変かと思ってラベン博士の残した資料を調べたの。そしたら荒ぶるポケモンがいたことが確認できたけど、いかんせん残ってた資料がモノクロで……君はどう思う?」

 

 早速来たか。考える時間が欲しいな。

 

「暴走メガシンカの記録はありますか?」

 

「ええ。ちょっと待ってね」

 

 あの暴走はギラティナとウォロの謀略による次元の裂け目から落ちた雷が原因だ。トレーナーがいないのにメガシンカするという情報から察するに直接関係は無いだろう。しかしここまで知っていたらさすがに変だ。

 

「数は多くないけど写真が何枚かあるわ。どう?」

 

 写真で見る限りだとトレーナーがいないことを除けば普通のメガシンカだな。

 

「ヒスイの暴走ポケモンは発光が特徴としてあったと聞いたことがあります」

 

「そういえばラベン博士の記述に類似する文章があったような気がするわ。いかんせん数が膨大でね」

 

 さすがラベン博士! あれだけ細かくポケモン図鑑の文章を一人で書き上げたなら、それくらいの記述は残してますよね! ていうかラベン博士の功績が残ってるの嬉しすぎるな?

 

「メガシンカの発現は比較的最近だし違いそうねー」

 

「その暴走メガシンカの特徴を先に知りたいですね」

 

「それもそうね。まずは知っての通りトレーナーがいないわ。暴走したポケモンはメガシンカのエネルギーに苦しんでいるという報告もあるわ」

 

「可哀想……。メガシンカ自体与えているエネルギーは過剰なのに」

 

「そ、そうなんですか?」

 

「だからこそキズナで結ばれたトレーナーがキーストーンを通じて、エネルギーを制御するのが大切なのよ」

 

「なるほど」

 

 XYの図鑑説明で、メガシンカはポケモンを苦しめているような描写があったっけな。あれで使うことに罪悪感が湧いたりもしたけど、おかげで胸を撫で下ろせた。

 

「つまり暴走の原因はトレーナーがいないこと自体ってこと?」

 

「と、見るのがいいでしょうね」

 

「問題はトレーナーがいない状況でメガシンカが発生する理由、ですか」

 

 すると会議が始まって初めての沈黙が流れた。ここだな。この原因を調べるのが俺達の仕事ってわけか。

 

「うーん。ユウリも連れてくれば良かったかな。でもあっちも大変みたいだったし」

 

「えっ!」

 

「ガラルに行ってたんだ! いきなりチャンピオン同士交流してるのはさすがとしか言えないけど」

 

「うん! ダイマックス楽しかったし、カレーも……美味しかった! あ、でもダンデさんが入れ替わりでミアレに来てたみたいでそこはちょっと残念だったわ」

 

 そういえばガラルはカロスから泳いでこれる距離にあるんだっけか。待てよ。ガラルと言えば!

 

「ガラルも野生のポケモンが突然ダイマックスして暴れる事件がありませんでした?」

 

「……! ちょっと待ってて」

 

 パンジーさんがものすごい勢いでタイピングを始めた。さすがやり手の記者だなと思うほど鬼気迫る勢いだった。ビオラさんがこうなったら話し掛けても気付かないからと談笑を挟んでいると、ダイマックスした暴走ポケモンの写真がスクリーンに映った。

 

「これね! この頃チャンピオンだったダンデが鎮静させるまでの様子が残っていたわ」

 

「お帰り姉さん。メガシンカとダイマックスの違いはあるけど、トレーナーがいないのに暴走する様子。鎮めたらひとまず落ち着くこと。他に特徴的な要素がないってのは同じかも?」

 

「原因はなんだったの?」

 

「ローズ委員長がエネルギー問題を解決するためにガラル粒子を利用しようとして、ムゲンダイナをコントロールしきれずに各地にばら撒かれ、野生ポケモンが反応してしまったという流れだったかと」

 

「よ、よく他地方の事件を一瞬ですらすらと言えるわね?」

 

「好きなんです。こういう知識が」

 

 剣盾のメインストーリーだしな。何周もしたから自然に頭に入ってた。

 

「ローズ委員長ってあのマクロコスモスの社長だったわよね。今回似たようなことが起こってるなら、ずばり再開発に手を挙げた外資のクエーサー社が怪しいってことね!」

 

「待ってビオラ。確かにクエーサー社には怪しい噂もあるし、それは私も考えたの。けど今のところ偏見に過ぎないわ。ジャーナリストとしてその判断は危険なものよ」

 

「うーん。そっか」

 

 パンジーさんが姉として制するとビオラさんもすぐに納得して考えを改めていた。姉妹の会話に俺達は顔を見合わせて綻ばせる。

 

「でもエネルギーが原因というのはいい着眼点かもよ! 何か形になっていないかしら?」

 

「それが、実はあるのよ」

 

「えっ? あるんですか」

 

「メガ結晶といって、メガエネルギーによって生まれているらしいのだけど、その他のことが全て不明でね。これよ」

 

 するとビルや公園に蔓延る薄いピンク色の結晶体が映し出された。クリスタルのような輝きは綺麗だが、こうも散乱してるとそんな魅力も半減だな。……ん?

 

「…………」

 

 そんな呑気な感想とは裏腹に、ここまで饒舌だったセレナさんの身体が硬直していた。まるでここだけ時が止まっているかのようだ。

 

「セレナさん? どうしました?」

 

「……! ああ、その。最終兵器が起動された時の結晶体に似てたからビックリしちゃったの」

 

 記憶だと無色寄りの結晶体だったようなような気もするけど、確かに似ているかもしれないな。最終兵器か。今回の事件に関係あるのだろうか。それにゲーム内ではプレイヤーキャラはボタンを押して二分の一で起動するか否かを試された。セレナさんがどちらを押したのかは分からない。分からないが……。

 

「そ、それより! メガ結晶を破壊すればいいんじゃないかしら!」

 

「かもしれないけど。破壊しても増え続ける一方なのよ。クエーサー社も見かけたら破壊するよう呼びかけてるんだけど」

 

「試す価値はあるかもねー」

 

「メガ結晶はミアレだけでしか発見されてませんか?」

 

「そうね」

 

「ガラルと同じと仮定すれば、ムゲンダイナのようにエネルギーを出し続ける何かがミアレにあるのかもしれませんね」

 

「確かに! さすが私の助手ね!」

 

「まあ何かというあやふやもいいところですが」

 

「それでも方針は見えたわね。要点を纏めましょう。一つ目、まずメガ結晶が暴走メガシンカと関係している可能性が高いから、ひとまず可能な限り破壊して様子を見ること。二つ目、メガエネルギーを出し続けている何かがあると仮定して情報収集を行うこと」

 

「いい感じに纏まったわね! ただ私はジムがあるから手伝えないの。ごめんね!」

 

「いいわよ! 拠点に人がいないと困るし、かといってここで待ちぼうけなんて私耐えられないもの!」

 

 でしょうね。

 

「私は出版社に持ち帰ってメガエネルギーを出す原因がないか。クエーサー社のことも含めて調べてみるわ。セレナとカイトはメガ結晶の調査と破壊をお願いしてもいい?」

 

「任せて!」

 

「分かりました」

 

「念のため暴走メガシンカについて共有しておくわ。暴走したポケモンの周りでは特性がはたらかないみたいなの」

 

「そうなんですね。特性が無いってことは単純な力の押し合いが強まることに……」

 

「まさしく暴走ね。他にはあるかしら?」

 

「これが一番の注意点なんだけど、暴走を鎮めるためにはメガシンカあるいはワザプラスが必須みたいなの」

 

「ワザプラス?」

 

「そっか。メガリング持ってないもんね。ワザプラスはポケモンの技の威力を上げることができるの。メガリングのエネルギーを使う必要があるし、メガシンカと同じで信頼関係がないと使えないけどね」

 

「へえ……! 面白いですね」

 

「決め手は私に任せてくれればいいから!」

 

 このお方すぐにでも戦う前提でいらっしゃる。

 

「今回の目的はメガ結晶ですからね?」

 

「念のため、ね!」

 

 こうして会議が終わり俺達は下に降りていく。帰る分には棒を伝って降りるだけだから楽でいいな。ジムだけあって、挑戦後にスムーズに入り口に戻れる仕掛けが似通っているのかな。

 

「ご飯用意して待ってるからねー!」

 

「ええ! 沢山お願いね!」

 

「落ち着いたら私にも振る舞ってね」

 

「もちろん! カイト君もセレナのお世話お願いねー!」

 

「はい!」

 

「逆でしょ!?」

 

 こうして俺達はビオラさんに見送られ、迷路のようなパルテール街道の庭園を抜けていき、ミアレシティへと辿り着いた。

 

「おお……!」

 

 門が開くとそこには近未来的な都市が広がっていた。そのあまりの広大さやホログラムが街中の至る所に配置されているのが圧巻の一言だった。観光客の姿もちらほらと見え、暴走メガシンカなど本当にいるのかと思うほど。しかし確かにいることも胸に留めなくては。期待と不安を抱きながらも、街へと踏み出す一歩はやはり軽やかなものになっていた。

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