うちはイタチ…再び陰として生きる   作:ペリカン96号

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結成編
第1話 新たな生


 

知識や認識とは曖昧なものだ…。

 

その現実は幻かもしれない。

 

人は皆、思い込みの中で生きている、そう考えることができる。

 

 

……人は誰もが、己の知識や認識に頼り、縛られ、生きている。

 

それを、現実という名で呼んで…。

 

 

…かつて自身が発した言葉を薄れゆく意識の中で思い出す。

 

自身の発したその言葉は、己が関わったほぼ全ての人間に等しく向けたものであった。

 

「(真実は闇にこそ存在する…)」

 

思い出したくもない過去の記憶を暗闇の中でなぞる。

 

「(木の葉隠れの忍びとして…偽りを重ね…過去すらも欺き…)」

 

その記憶は次第に新しいものへと移り変わり、瞼の裏には、愛する弟の顔が浮かんでいた。

 

「(それが未来に繋がると信じ…陰を歩いた…)」

 

尽きかけていた命、言うことを聞かなくなっていた身体を引きずりながら、弟の額へと手を伸ばす己を思い出す。

 

「(そして…何者も知らぬまま…見えぬまま…)」

 

意識が更に薄弱となる。時が来たのだと、そう悟った。

 

「(これで…終わる…。俺の存在と共に…真実も消える…)」

 

…それは一切の偽りのない、イタチの想い…願いであった。

 

しかし…その願いは…叶うことはなかった…。

 

失った意識は、再び取り戻すこととなる。

 

見知らぬ地で、見知らぬ世界で、彼はもう一度、陰に生きることになる……。

 

新たに出会う大切な者と、世界の平和のために…。

 

 

 

 

 

 

 

 

イタチはゆっくりと意識を取り戻す。

 

もう二度と取り戻すことはないと思っていただけに、それは非常に驚きであった。

 

意識を取り戻した際に、地に背中を預けているのを理解し、ゆっくりと身体を起こす。

 

そして、その視界を周囲へと向ける。

 

「ここは…一体どこだ…」

 

見渡す限りの、月光に照らされた草原…。

 

「俺は…死んだはずでは…」

 

柔らかい風が、草木の匂いが、美しい月明りが、ここが死後の世界ではないことを物語っていた。

 

瞬間、自身の身体に違和感を覚える。

 

「なんだ、これは…⁉」

 

その違和感は、自身が知らない力が宿っていることを感じ取ったからであった。

 

「チャクラ…とは別の力を感じる…」

 

チャクラはある。自身が忍として長年の修行の末に洗練したものである。

 

だが、それとは別に、不明な、しかし危険性は感じない内なる力を確かな感覚として感じ取る。

 

神経を集中させると、その力は空中にもわずかに存在しており、イタチが元居た世界とは別の存在であることを物語っていた。

 

そしてそれは、一つの仮説を生むに至る。

 

「時空間忍術…なのか…?」

 

世界を移動する時空間忍術。

 

そんなものは聞いたことがないが、イタチの知らぬところで存在していたという可能性もある。

 

「だが…世界を跳躍するほどの力など…あのマダラの万華鏡でも異空間へ飛ばす程度のもの…」

 

かつて、とある選択を迫られた際に協力を申し出た男の顔と能力を思い出しながら、先の仮説がいかに現実味のないことであるのかと否定する。

 

「なにか、超越たる力が働いたということなのか…」

 

神などという存在を信じたことのないイタチであったが、自身の理解できないこの現象に、思わず信じてしまうほどには混乱している。

 

暫くして、自身の瞳にチャクラを練り込む。

 

次いで、印を結んで火遁を発動させる。

 

…特に制限なく発動するに至る。

 

「写輪眼含め、有していた力は使える…それに何より…」

 

制限なく発動…というよりも、自身が思っていた以上の力が宿っていると気づく。

 

「身体が軽い…病が治っているのか…」

 

長年自身を苦しみ続けていた病…。常用的に薬を服用していなければ、生活することすらままならないほどに進行していたそれが、一切の影を残さず消えていた。

 

「自分の身体ではないみたいだ…」

 

二度と有することのないと思っていた健康な身体に、思わず感慨深げに物耽る。

 

だが、それもそう長くは続かなかった。

 

「ん…?」

 

発動したままであった写輪眼が、普通では認識できない動きを捉える。

 

「あれは…人…か…?」

 

20人程度の人影が、崩れた家屋の周りに集まりを見せる様子が目に写る。

 

この世界にも人間がいたことに些少の安堵感を覚えながら、ゆっくりと立ち上がる。

 

「まずは様子を見るとしよう…善人であるならば、話を聞くこともできるか…」

 

 

 

 

 

 

 

人の集団が集まりを見せていたのは、普通であれば人が寄り付かないであろう、廃れた場所であった。

 

焚火を囲み、談笑したり刃物の手入れをしている様子が見て取れる。

 

一見すれば、野営にも似た雰囲気を有していたが、その集団の服装や言動、態度が真っ当な人間や組織によるものでないことは一目瞭然であった。

 

「(どうやら、盗人の類のようだな…)」

 

すぐそばの茂みに身を潜めているイタチは、少し離れた、辛うじて家の形を保っている家屋へと赤い瞳を向ける。

 

家屋の中に、チャクラに似た力を有した、小さい人間のような輪郭を見つける。

 

「(…人さらいか……年端も行かぬ子どもを攫い、監禁とは…)」

 

再度視線を盗賊たちへと向ける。

 

数は21…。だが、対した力は有してはいない…。

 

「(…この世界がどういう場所かは分からんが、準備運動にはもってこいか…)」

 

隠れるのを止め、バッと茂みから姿をさらす。

 

いくら盗人といえど、何のためらいもなく茂みから現れたイタチに気付かぬわけもなく、一斉に警戒して見せる。

 

「なっ!なんだ!お前は!!」

 

盗賊たちは、全員がイタチへと視線を向け、獲物を引き抜く。

 

「お前らに名乗る名はない…」

 

イタチは非常に落ち着いた雰囲気で、それでいて冷酷な視線を向ける。

 

たった一人で、20を超える相手を前にして放つその圧倒的な冷静さは、盗賊たちにとっては侮蔑にも似た感情を抱かせる。

 

「なんだとッ!」

 

「舐めやがって…ッ!殺せッ!!」

 

盗賊たちは、一斉にイタチへと獲物を向けて突進してくる。

 

だが、それでもイタチの落ち着き払った態度は消えることはなかった。

 

勇猛果敢に突進してくる盗賊とは裏腹に、イタチはゆっくりと一本のクナイを手にする。

 

そこからの戦いは、第三者が見ていたとしたら、一方的な蹂躙のように見えただろう。

 

短剣よりも短い獲物で、ダンスを踊るかのようにして盗賊の急所を突いていく。

 

途中で盗賊の持っていた剣を奪い取って戦う。

 

先ほどまで使っていたクナイよりも何倍も刀身が長いにも関わらず、長年愛用している相棒のように扱って見せる。

 

20人以上いた盗賊も、数分もしないうちに3人を残すのみとなる。

 

「な、なんなんだッ!お前はッ!」

 

イタチの圧倒的な強さに、盗賊たちは怯え切った様子で後ずさる。

 

「悪いが、お前達如きでは、俺に傷一つつけることはできん」

 

イタチの冷酷な一言に、生き残った盗賊たちは跋扈の如く背中を向けて逃走を図る。

 

その背中を眺めながら、イタチは手に持った剣をゆっくりと手放す。

 

剣が地面へと落ち、『ガシャン…』という音が鳴りやむと同時に、とある家屋の扉がゆっくりと開かれる。

 

イタチはその音を背中で聞きながら、ゆっくりと口を開く。

 

「……無事か?」

 

「は、はい…」

 

帰ってきた言葉は、幼い少女の声であった。

 

身体をその声の方へと向け、その姿を視界に捉える。

 

薄紫色の、ワンピースというには豪奢で、ドレスというには陳腐な格好をした、10歳を少し上回った少女であった。

 

美しい金髪は、臀部の更に下まで伸びており、肩から先にかけてはくるっと渦巻いていた。

 

その金髪と同じ色を持つ瞳は、月夜の明かりを受け、静かに輝いているようにも見えた。

 

イタチは、その少女の姿をじっと見つめながら、小さく口を開く。

 

「そうか…それは何よりだ」

 

「あ、あの…救って頂き、ありがとうございます…その、とても素晴らしい剣技でした…」

 

少女の唐突な称賛に、イタチは思わず目を見開く。

 

忍者として、刀剣を扱った経験がないと言えば嘘になるが、手裏剣やクナイに比べればその練度は劣る。

 

故に、剣技を褒められる、という経験は今までになかったことであった。

 

「…気にするな、素晴らしい剣技か………ありがとう」

 

少女から向けられる、この上ない称賛の眼差しに、何と答えればよいか迷ったイタチは、素直にその言葉を受け取ることにした。

 

イタチの抑揚のない言葉に、緊張と困惑を有していた少女であったが、最後のお礼の言葉はどこか柔らかみのあるものを感じたため、些少の緩和へと繋がる。

 

「わ、私は、オリアナ王国の王女、ローズ・オリアナと申します」

 

その緊張の緩和は、自身の名を伝えるという余裕を生みだし、決意にも似た形で言葉に現れる。

 

「王女…?」

 

聞きなれない言葉に、イタチは一瞬言葉を詰まらせた。

 

「は、はい。オリアナ王国へ帰る途中、先の盗賊に襲撃を受け、捕まっていました」

 

次第に思考が進み、オリアナ王国という名から、彼女が国のトップの娘なのではないかという推測を立てるに至る。

 

「なるほど…それで、王女というからには、護衛する者がいたんじゃないのか?」

 

「はい…暫く待てば、見つけてもらえると思います」

 

「…そうか」

 

どうやら、ローズという少女を護衛していた者達は、彼女が知る限りでは無事な様子であった。

 

隙を突かれ、連れ去られたのだろう。

 

暫しの沈黙が流れるが、再びローズが会話を切り出す。

 

「…あ、あの…あなた様のお名前は…」

 

彼女の眼は、どこか憧れに似た感情を含んでいた。

 

イタチにとって、それは非常に眩しく、そして過度なものであると感じる。

 

「俺か…?俺は、うちはイタチだ」

 

「ウチハ…様ですか?…珍しいお名前なのですね」

 

ローズの言葉に、イタチは些少の目の開きを見せる。

 

どうやら、一族名と名前を呼称する順序が違うようであった。

 

「…ウチハは一族名だ…イタチの方が名前なんだ…」

 

「そ、そうだったのですね…。失礼しました」

 

ローズは、長い縦ロールの金髪を揺らしながら、バッと頭を下げる。

 

「…謝らなくていい…。その反応を見るに、この世界…いや、君の国では名前を先に読むのか?」

 

「は、はい。私ですと、ローズが名前で、オリアナが一族…ファミリーネームです」

 

「なるほど…。どうやら、随分と文化の違う世界のようだ…」

 

チャクラとも違う力がある世界だ。

 

今迄の自身の常識が通用しないのも、当たり前ではあると考える。

 

しかし、そこで一つの疑問が生まれる。

 

「(だが、言葉が通じるのはどういうことなんだろうな…)」

 

文化の違いがあれば、言語の違いもあるはずだ。

 

この世界の文字については、未だ確認はしていないが、世界が違うのにもかかわらず、元の世界と同じ言語である可能性は極めて低い。

 

しかし、目の前の少女、ローズとは普通に会話が成立している。

 

そのチグハグさに、イタチは違和感を覚えていた。

 

「あ、あの…」

 

イタチが何かを考え込むようにして、再び黙りこくっているのを見て、ローズは不安を抱きながら小さく呟く。

 

そんなローズの様子に気付き、イタチは些少の焦りを抱いた。

 

「ん…?ああ、気にしないでくれ…。少し考え事をしていただけだ…。それより君はこれから…」

 

弁明も兼ねて、これからのローズのことを聞こうとした矢先、背中に怒号が届く。

 

「なっ!こ、これは一体…貴様ッ!一体何者だ!王女から離れろ!!」

 

馬に乗った、しかし侍とも違う奇妙な格好をした兵士達が、ゾロゾロと現れ、イタチを取り囲む。

 

口ぶりからするに、ローズの護衛か国に属している兵士たちなのであろう。

 

ローズの身柄を預けるに値する者達の登場に、イタチは些少の安心を得るに至る。

 

その様子を見たローズが、安堵感と共に、焦りにも似た声を張り上げる。

 

「ま、待ちなさい!このお方は…ッ!」

 

「どうやら、お邪魔のようだ…俺はこれでお暇させてもらうとしよう…」

 

しかし、ローズの言葉は最後まで紡がれることはなく、イタチの声によって遮られる。

 

「え…ま、待って…ッ!」

 

イタチの言葉に、更なる焦りを見せるローズであったが、その制止は意味をなさず、まるで瞬間移動するかの如くイタチの姿が掻き消える。

 

「き、消えた……ッ⁉…ロ、ローズ王女!ご無事ですか⁉」

 

イタチが一瞬で姿をかき消したことで、驚きを露にしていた兵士達であったが、ローズの姿を捉えたことで、その身を案じるようにして声を掛ける。

 

しかし、ローズにはその声は届いてはいなかった。

 

すでに姿を消し、自身の命を救ってくれた男のことを考えることしかできなかったのでる。

 

「うちは…イタチ…さん」

 

まるで名前を脳に焼き付けるようにして呟いたその言葉は、月夜が照らす空へと流れていった。

 

 

 

 

 

 

1週間後…。

 

ローズを救った後のイタチは、各地を点々としながら、同じように盗賊を狩っていた。

 

理由は大きく2つ。

 

1つは、資金稼ぎ。1つは、戦闘訓練であった。

 

「…人を襲い、資金を集める…。暁時代とやっていることは変わらんな…」

 

「だが、悪人を狙ってという点では、こちらの方がましか…」

 

イタチは、この世界におけるツテというモノが一切ない。

 

全く違う世界に来たのだから当たり前なのであるが、それはつまり、生きていくための資金を調達できないのと同じことであった。

 

いくらイタチと言えども、所詮は人間。

 

水と食料を確保しなければ生きてはいけない。

 

だからといって、身分がはっきりしない者が、働いて金を稼ぐというのは難しい。

 

力や強さを盾にして、どこかの兵隊や騎士になるという案もあったが、この世界に定着していない忍術や瞳術を有しているとバレれば、面倒ごとになるのは火を見るよりも明らかであった。

 

故に、イタチの取った選択は、盗賊を狩りながら資金を集めて生活をする…。というモノであった。

 

また、世界には、イタチの知らない力があった。

 

それが、『魔力』と呼ばれるものであった。

 

この世界において、魔力は広く知れ渡っている力であり、同時にチャクラにも似た性質を有していた。

 

魔力によって自身の身体能力を高めたり、剣に魔力を宿して威力を高めたりすることができるらしい。

 

イタチからすれば、チャクラに比べて汎用性は低くはあったが、扱いはチャクラに比べて容易であった。

 

…なぜイタチ自身にもその魔力が宿っているのかは未だ謎であったが、有しているのであれば、扱えるようにしておいて損はない。

 

というよりも、この世界で目立たずに生きていくには、チャクラ主体ではなく、魔力を主体として戦闘を行えるほうが良い。

 

故に、盗賊を狩るのは、魔力の扱いを訓練する、という意味を含んでいたのである。

 

そんな風にして、暇さえあれば盗賊狩りに勤しんでいたイタチであったが、今日もそれに変わりはなかった。

 

廃村と化した場所に、多くの盗賊が出入りし始めたという情報を得て、その場所へと向かっていた。

 

毎日毎日、一向に減らない盗賊に、感謝と落胆を抱きながら、小さく口を開く。

 

「…どうやらこの世界もあまり治安が良いものではないようだ…」

 

茂みに身をひそめながら、嫌味ったらしく呟いたそれは、盗賊が目撃されたという場所へと近づく。

 

だが、近づくにつれて、喧騒に似た声を拾い、イタチは警戒を強める。

 

「…誰かが戦っているのか?…ッ!子ども…か?」

 

容姿は中性的なものであったが、身のこなしから少年であろうと察したイタチであったが、同時に盗賊と戦闘を繰り広げるその少年に驚愕を抱いた。

 

「…驚いたな…。見た感じ10歳かそこらの子どもだ…。当時の俺でも、あれほどの強さは…。いや、というよりも、今の俺でも大分苦戦するほどの強さだ…」

 

魔力量、魔力制御、戦闘技術…。どれも目を見張るものであった。

 

そのどれをとっても、イタチのそれには届かないが、しかしそれを有しているのが10歳程度の子どもとなれば、話は変わってくる。

 

イタチが少年をその視界に捉えてから、約2分…。

 

複数いた盗賊たちは沈黙を有し、喧騒はピタリとやむに至った。

 

「一体、何者なんだ…」

 

年齢に見合わぬその戦闘技術と、しかし盗賊という戦闘を生業とする大の大人を一方的に蹂躙していたその姿は、先日のイタチと同じと言っていいだろう。

 

そんな風にして思案に耽りながら少年を観察していたイタチであったが、少年の呟きに身を硬くすることになる。

 

「…お兄さん、強そうだね…」

 

「…⁉」

 

イタチは、忍術を用いて隠密をしていたわけではないが、長年暗部として、犯罪者として活動し身に着けた隠密を一瞬で少年に見抜かれたことに、些少の恐怖を覚えた。

 

「盗賊には見えないけど……もしかして、お兄さんも盗賊狩り?」

 

「…驚いたな、完全に姿をくらましていたわけではないが、それでも俺の居場所を見破るとは…」

 

少年の動きに警戒しながら、イタチは諦めたように姿を現し、一定の距離まで歩み寄る。

 

「あー、まあ魔力探知は得意な方なんだ…。それよりも、質問に答えて欲しいんだけど…」

 

イタチの姿を見ても、一切の動揺を見せない少年に、イタチは更に警戒心を強める。

 

「あ、ああ。君の言う通り、俺も盗賊狩り…みたいなものだな…」

 

「ふーん、そっか…」

 

少年は、イタチを値踏みするかのようにして、暫く見つめていたが、『うん!』と何かを決めたようにして首を縦に振ると、無邪気な笑顔を向けながら、口を開いた。

 

「ねえ、お兄さん…。僕の仲間にならない?」

 

「…え?」

 

少年の言葉の意味を汲み取るのに、イタチは数秒を要することとなった。

 

 

 

 

 

少年と対峙するイタチは、今までにないほどに頭を悩ませていた。

 

これほどまでに理解の及ばない、というよりも意味が分からないという経験をしたことがなかったのだ。

 

イタチ本人は否定するであろうが、非常に聡明で理知的な思考を有している。

 

冷静に、俯瞰して物事を捉え、考える能力はピカイチと言っていいだろう。

 

しかし、そんなイタチですらも困惑する。少年が呈した話は、それほどであったのだ。

 

理解は及ばずとも、意味は分からずとも、イタチは何とか少年の考えを整理し、それを自分の言葉として口にする。

 

「…話をまとめると、シドは陰の実力者…というのになりたいと…。その、陰から現れる強大な力を持った謎の男…というのを…」

 

「うん、そうそう。陰から颯爽と現れる、謎の男!そしてその謎の男が主人公のピンチを救い、意味ありげな言葉を残すッ!みたいな?」

 

イタチがまとめた内容は、どうやらシドの意図を汲んだものであったらしく、嬉しそうに頷いていた。

 

だが、肯定されてしまったからこそ、イタチの中には疑問と困惑しか残らなかった。

 

「……悪いな、ちょっとよくわからん…」

 

「うん、別にいいよ。今までも理解されなかったことが多いしね…。それより、今度はイタチさんのことについて教えてよ」

 

イタチの理解不能と言った様子に、シドは特に気にした様子を見せることはなかった。

 

それどこころか、自分の話はお終いとばかりに、質問の対象を変更して見せた。

 

「そうだな…話すよりも実際に見せた方がいいか…」

 

イタチは、一度目を閉じ、再び目を見開く。

 

その瞳は、先ほどまでの黒目と違い、ルビーのような輝きを放つ、写輪眼へと変化していた。

 

瞳の色と紋様の変化に、シドは大きく目を見開いて、覗き込むようにして見つめる。

 

「え…?な、なに、その赤い眼は…ッ!す、すごくかっこいい…ッ!!」

 

写輪眼の輝きと美しさを、シドはかっこいいと評する。

 

その評価にイタチは特に反応を示すことはなく、自身のことについての映像を、幻術としてシドの頭に流し込む。

 

木の葉隠れのこと、忍者のこと、忍術のこと、自身がかつて所属していた暗部という組織のこと…。

 

その他にも、うちは一族や里の風景などを伝える。

 

…もちろん、自身の罪や暁のことに関しては、一切触れていない。

 

「こんな感じで、俺はこの世界とは別の世界から来たわけなんだが…」

 

「すごくいい!!」

 

イタチの説明を待たずして、シドは非常に興奮した様子で両腕を上下に振って見せる。

 

「忍者⁉忍び里⁉忍術⁉暗部⁉…まるで僕の目指す陰の実力者じゃないか⁉」

 

「そ、そう…なのか?」

 

シドの興奮と、怒号にも似た声にイタチは思わず、後ずさるようにして顔を引きつる。

 

「うん!陰から里を支え、時には汚れ仕事も請け負う!そしてその功績は大々的に祝されるわけでもなく、黙々と里のために動く!!すごいよ!まさか僕が目指していた影の実力者と直接出会えるなんて!!」

 

「……俺は、そんな立派な者じゃないさ…」

 

シドとの温度感の違いに、イタチは苦笑いを浮かべながら目線を反らす。

 

そんなイタチの様相を見て、何かあったのだろうということを察したシドは、些少の落ち着きを取り戻す。

 

「そっか…。うーん、まあ、人それぞれ色々と抱えているものはあるよね…。あ、ちなみに僕も違う世界から来たんだ。日本っていう国がある世界なんだけど、知らないよね?」

 

「なんだと⁉…そうか、シド君も違う世界から…。ニホンか…悪いが聞いたことがないな……」

 

唐突なシドの告白に、イタチは何度目かわからない困惑と驚きを見せる。

 

今迄に見たことのないタイプの人間に、イタチも次第に興味を惹かれ始めていた。

 

「謝らないでよ…僕も木の葉隠れとか知らなかったし…。でも、イタチさんを益々仲間にしたくなったよ!いや、絶対にする!!」

 

「そ、そうか…。まあ、この世界でやるべきこともないし…。別にかまわないが…」

 

そしてその興味は、シドと行動を共にしてもいいか、という結論へと繋がる。

 

「ほんとっ!いやー、嬉しいなー!!あ、じゃあ早速頂くもの頂いて行こう」

 

頂くもの…。それは紛れもなく金貨や財宝と言ったものであることは、言わずとも理解できた。

 

それよりも、別の点にイタチは疑問を抱いた。

 

「行く?一体どこに…?」

 

「それはもちろん、僕の家…はダメか…姉さんがいるし…うーん…。僕の父さんの領内にある廃村とか…かな?」

 

シドの言葉に、イタチは思わず鼻から息を出して、短く笑う。

 

「ふっ…。まさか仲間から廃村に案内されるとはな…」

 

「ご、ごめんって…。僕にも色々と事情が…」

 

シドの申し訳なさそうな表情を見て、イタチは再度小さく笑った。

 

「いや、構わんさ…。それに廃村というのも強ち悪くはない…俺一人が滞在できれば、それでいい」

 

「その、食料とか諸々は届けるからさ…」

 

イタチの欲のない発言に、更に罪悪感が募ったらしいシドは、些少の動揺を有しながら呟いて見せた。

 

「気にするな…あいにくと、君と同じで盗賊から結構くすねているからな…。当分は困らんだろう」

 

シドは、瞳をキランッと光らせて、ニヤリと下品な笑いを浮かべる。

 

「ふふふ…やはり僕の目に狂いはなかった…イタチさんも、中々の悪だね…」

 

「……君が思っている以上に悪い人間だよ…俺は…」

 

自身の過去を思い出しながら、イタチは大きく苦笑いを浮かべるのであった…。

 

 

余りにも接戦のため、選択肢を増やして再度アンケートさせて頂きます。『イタチもブシン祭に参加するか、参加しないか』

  • 参加する(vsジミナ戦あり)
  • 参加する(vsジミナ戦、シャドウ戦あり)
  • 参加しない(vsシャドウ戦あり)
  • 参加しない(ローズ主体)
  • 参加しない(ローズ主体、父救出)
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