うちはイタチ…再び陰として生きる   作:ペリカン96号

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第2話 悪魔憑き

シドとイタチが出会ってから早5日…。

 

イタチは、シドの案内でカゲノー家がある場所からそう遠くない場所にある廃村の一角で過ごすこととなった。

 

その中でも、比較的無事な家屋の中で寝泊まりをしながら過ごしているイタチを、シドは暇を見つけては訪れている。

 

その目的は、主に修行である。

 

シドは、自身よりも強いイタチから、戦闘訓練と忍術を教えてもらっていた。

 

しかしそれは同時に、イタチにとっても訓練や知識を得る機会にもなっており、今しがたイタチが身に纏っている暁の衣に似た服装もその一種であった。

 

「このスライム、中々に素晴らしいものだな…」

 

「でしょ?魔力伝導率99%!まさに僕に使われるために、生まれてきたと言っても過言ではないね!」

 

魔力を剣や身体に付与して身体能力や威力を上げるというのは、この世界では一般常識である。

 

シドの言葉を借りると、自身の魔力を剣やその他物体に付与、伝導する際には幾ばくかの無駄が生じてしまう。

 

だが、このスライムという生物は、その損失がほとんどないのである。

 

シドはここ最近でそれを発見したとのことで、このスライムを主とした戦闘スタイルを確立しつつあった。

 

そして、この効率の良い魔力伝導率は、イタチの戦闘の幅も広げることになった。

 

本来の忍術や体術、瞳術といった力に加え、シドと同じようにスライムを有した力を得たためだ。

 

「…魔力を込めれば、手裏剣やクナイのように使えるというのもいいな…」

 

スライムで作った暁の衣の袖から、数本のクナイと手裏剣を生成する。

 

スライムといえど、適切な魔力を込められたそれは、本来のクナイや手裏剣を上回る鋭さと力を持っていた。

 

「お、さすがは忍者って感じだね!…それにしても、忍術というのは中々に難しいものだね…」

 

シドは、何度か両手を重ね合わせて印を形成し、影分身の術や火遁の術を発動して見せる。

 

イタチと比べれば、天と地ほどの差があったが、驚くべきはその成長速度であった。

 

「…いや、俺が与えたチャクラを、たったの数日で使いこなし、忍術に落とし込んでいる君が言っても、嫌みにしか聞こえないぞ…」

 

シドにチャクラを与えたのは、出会った翌日。実際に忍術として昇華して見せたのはその翌々日…。

 

さらに翌々日である今日の時点で、形態変化と性質変化を基礎以上の力で使いこなしているのだから、驚いたものである。

 

イタチをもってして、何の忖度もなく、シドは天才と言わざるを得なかった。

 

「うーん、でも僕もイタチさんみたいに大きな火とか水とかぶわって出してみたいんだけど…。あと、剣に纏わせて使ったりもしたいかなー」

 

「…シドなら、すぐにでも習得できるだろう。俺を超えるのも、そう遠くない」

 

一切の脚色なく放った言葉であったが、シドは少しばかりムスッとした表情を浮かべた。

 

「あのさ、それこそ嫌みにしか聞こえないんだけど…」

 

「ふっ…。それもそうだな…」

 

現状でのイタチとシドの忍術の熟練度の差は計り知れない。

 

確かに、自分よりも高度な忍術を扱う者にそんなことを言われても、いい気はしないなと感じたイタチは、小さく笑いながら返す。

 

だが、その言葉に嘘はなかった。

 

「(5年…いや3年もあれば、身体の成長と共に追い抜かれるだろうな…)」

 

忍術においては、熟練度の差もあり、イタチの方が上回っているのは当たり前のことである。

 

たった5日で自身よりも強くなられたら、イタチにとってはたまったものではない。

 

…魔力に関しても、似たようなことが言える。

 

魔力は、その性質上、チャクラとよく似た部分がある。

 

制御、圧縮、放出、変質…そのどれもがチャクラを扱う際の動作と似ていた。

 

故に、チャクラを扱うことに関してはプロと言っても過言ではないイタチであったが、一点だけ、シドに対して驚くべき事実があった。

 

それは、『魔力の圧縮』においては、シドの方がすでに上であるということだ。

 

2日前に一度、シドが随分と格好つけた言い方をしながら放ったとある力、技をその目で見たのだが、イタチはそれを大口を開けて驚き、眺めたのだ。

 

それと同じ力を発することができないのか、と言われれば無理ではないが、相当なチャクラを消費することになるのは必至であった。

 

「(まあ、俺も魔力の制御や圧縮、その他諸々を鍛えれば、それを引き延ばすことはできるだろうが…)」

 

もしかしたら、万華鏡写輪眼の力を発動しなければ、並びえないかもしれないほどの力だった。

 

「(もしシドが、俺と同じくらい魔力を効率的且つ緻密に制御、放出できるようになったのならば、一体どれほどの力を有するのか…)」

 

何度も繰り返し忍術の修行を試みるシドを眺めながら、イタチは思わず息を漏らす。

 

「(まさか、神童と言われた俺を遥かに超える奴が現れるとは…。シドならば心配はないと思うが、あの力が無辜の人々に向かぬよう、俺が道しるべとならなければ…)」

 

 

 

 

シドは夜が更けると、家族や召使の目を盗み、盗賊狩りや修行と称した遊びに勤しむことを趣味としている。

 

暫く一人で行っていたそれは、イタチとの出会いをきっかけに更に楽しいものとなり、今では毎晩のようにイタチと月夜が照らす闇の中へと身を投じる。

 

ちなみに、盗賊を発見すると、それを狩るのは殆どがシドであった。

 

『僕に狩らせてよ』とお願いすると、イタチは優しい兄のように『ああ』と承諾してくれる。

 

もし兄という存在がいたのであれば、イタチはシドにとって理想的とも言えるものであった。

 

…歳は11個と結構離れているが…。

 

しかし、前世の年齢を合わせると、シドの方が7つ上なのを思い出し、思わず笑ってしまう。

 

だが、立ち振る舞いや経験値は圧倒的にイタチの方が上なので、シドにとってイタチは兄であるという認識を持っている。

 

…そのポジションを、自身の姉と変わってもらいたいくらいである。

 

「ヒャッハーッッ!!金目のものは全ておいていけー!!!」

 

満たされた心は、そのまま言葉として現れ、興奮を隠しきれないと言った様子で盗賊どもを根絶やしにしていく。

 

時折、イタチの視線が憐れみを含んだものに感じることがあるが、きっと気のせいだろう。

 

そんな風にして盗賊を狩り尽くすと、盗んで得たと思われる金品を強奪していく。

 

盗みは盗みでも、盗賊からの盗みなので、これは正義の行いなのである。

 

さらに、イタチの生活費、シドの影の実力者プレイを行っていくための貯蓄として、それはとても、とても重要なことでもあった。

 

正義の鉄槌を下しつつ、利を得ることができる。

 

一石二鳥とはまさにこのことである。

 

さて、今回も同じようにして金品を漁っていると、何やら大きな四角い箱のようなものを発見する。

 

「なんだろ…これ」

 

覆いかぶさっていた大きな布をどけると、それは檻であった。

 

その中には、言葉では言い表せないほどの醜悪な見た目をした物体が、ウネウネと動いていた。

 

まさしく肉塊といってよいものであった。

 

「…魔物か?」

 

イタチはそれを写輪眼をもってして観察する。

 

同時に、肉塊が発する魔力を身体で感じ取る。そして、大きく目を見開く。

 

「……いや、これはッ…人間…なのか?」

 

「ええっ!見た目はまさしくモンスターって感じだけど…」

 

イタチの言葉に、シドは信じられないと言った様子を見せる。

 

イタチは、思わず生唾をのむ。

 

元の世界では見たことのない状況に、思わず恐怖と困惑が生まれたのだ。

 

「間違いない…人間…と断定はできないが、それに近しい種族のようだ…」

 

「うーん、人間に近いというと、獣人とかエルフなのかな?…あ、これ、悪魔憑きだ…それになんか、魔力が暴走してるかんじ?」

 

シドもイタチほどではないが、その一端を探知したことで、仮説を口にする。

 

シドが確信を突いたことで、イタチは些少の関心を見せた。

 

「これが悪魔憑きなのか?…確か、身体が黒く壊死していく奇病だったな…。だが、よくよく見るとこれは…経絡の喪失?に似ているな…どちらにしろ、魔力の制御が利かないようだな…。この魔力暴走を制御できれば、まだ救えそうだ…病というよりは、制御ができていないという感じか…」

 

イタチは己の手をその肉塊へと向け、魔力の暴走を止めようとする。

 

だが、そんなイタチをシドは慌てたように制止する。

 

「あ、ちょっとまってよ、イタチさん。それ、僕にやらせてもらえないかな?」

 

苦しんでいる人間らしき肉塊を前に、イタチは悩んで見せた。

 

だが、シドの必死の形相に、イタチは半ば諦めたように口を開く。

 

「…確かに、魔力の制御を学ぶには良い機会だな…。だが、危なくなったら介入するぞ」

 

シドの魔力制御を高めるには良い機会であると判断し、その利を優先することにした。

 

「うん、それでいいよ。そっちの方が僕も安心だしね…。早速持って帰ろうよ」

 

シドとイタチは、スライムスーツに金品をしまい込み、檻ごと人間らしき肉塊を廃村へと運び込んだ。

 

 

 

 

イタチの滞在する廃村の、崩れかかった家屋に、肉塊は保管されることとなった。

 

シドはまるで新しいおもちゃを買い与えられた子どものようにして、好き放題に魔力を流し込んでは制御して…とその肉塊に対して繰り返していた。

 

元は人間らしき肉塊ということもあり、それをする際には間違えて殺してしまわないようにイタチが傍で見守っている。

 

そうして暫くの月日が流れ、シドの魔力制御も成長をみせたある日…。

 

肉塊の動きとシドの魔力制御が共鳴のような様相を見せる。

 

それを察したイタチは、座った姿勢からバッと立ち上がって見せ、シドに声を掛ける。

 

「待て…。危なっかしいから、一緒にやるぞ」

 

「了解…」

 

イタチの言葉を素直に聞き入れたシドは、一緒に魔力を流し込んで暴走を落ち着かせる。

 

肉塊は一気に収縮し、人間の形へと姿を変える。

 

年齢は、シドと同じくらいであろうか…。

 

長い金髪を有した、幼い少女であった。

 

何も身に纏っていない裸体であったが、シドもイタチもそれを気にする余裕がないといったばかりに目を見開いていた。

 

「おお…ッ!戻ったね…。あんなに腐ってたのに…」

 

「ああ…。正直なところ、俺も驚いている」

 

写輪眼と魔力探知で人間に似た生物であることは理解していたが、あの肉塊が本当に人の姿を取り戻すのを見て、イタチは驚きを隠せない。

 

「人間…か?」

 

「いや、これはエルフだね…。ほらここ、耳が長いでしょ?」

 

イタチの疑問に、シドは少女の耳を指さしながら答える。

 

「なるほど…だが、見た目の殆どが人間と同じだな…」

 

イタチは、耳を確認した後、エルフと呼ばれた少女の全身を注意深く観察する。

 

第三者から見たら、幼女の裸体を嘗め回すような目で見ている変態の如き所業であったが、イタチにそんな変態的な思考がないのは言うまでもないだろう。

 

そんな風にして観察していたイタチであったが、少女が吐息に似た声を上げ、瞼を動かしたことでそれを止める。

 

「目を覚ましそうだな…」

 

「そうだね…ッ!っと、いいこと思いついた!…イタチさんも合わせてね!」

 

シドは、何かを閃いたような素振りを見せた後、後ろに積んである木箱へと座る。

 

言葉の意味を理解できなかったイタチは、顎を引いてシドへと口を開く。

 

「…?どういう意味だ?」

 

「んー、陰の実力者の初舞台を演じようと思ってね…」

 

「…はぁ?」

 

聞いてもなお理解できなかったイタチは、些少の呆れを含んだ声を漏らす。

 

「目が覚めたか?」

 

シドは、そんなイタチを気にも留めず、ゆっくりと瞼を開いた少女に向けて問いかけた。

 

少女はその視界にシドを捉えた後、自身の身体へと目を向ける。

 

そしてその瞳は大きく見開かれる。

 

「…えッ!私の身体…ッ!嘘ッ…!」

 

「君を蝕んでいた呪いはもう解けた…もはや君は自由だ…」

 

醜悪な肉塊から元の姿へと戻ったのだ。

 

その驚きと歓喜は言うまでもないだろう。

 

「あなたが…わたしを…」

 

「正確には、僕たちが…だね」

 

シドは、視線をイタチへと向ける。

 

それに合わせて少女もイタチの姿を捉えるが、一向に口を開かないイタチに痺れを切らすようにして、再度シドに視線を戻す。

 

「の、呪いって…」

 

「ああ、呪いというのは……」

 

シドは、言葉を詰まらせる。

 

イタチからすると、なぜ言葉を詰まらせるのか理解できないと言った様子であった。

 

そもそも、なぜ呪いなどと口にしたのかすら、わからない。

 

『悪魔憑きとなった君を、魔力暴走を制御して救った』と言えば済む話であるのに…。

 

だが、イタチのその思考は、シドの思惑によって、非常に的外れであったと知る…。

 

「君たち英雄の子孫にかけられた忌まわしき呪いだ…」

 

…何を言っているんだ、こいつは…。

 

これがイタチの抱いた感情であった。

 

「驚くのも無理はない…だが君も、知ってるだろう?」

 

「経典にある3人の英雄が、魔神ディアボロスを斃し、世界を救ったという御伽噺を…あれは本当にあったことさ」

 

…それに関しては、イタチでも知っている、この世界の御伽噺であった。

 

だが、本当にあったことかと問われると、わからないというのが正直な感想であった。

 

「…ッ!」

 

どうやら、少女もイタチと同じような感情を抱いたのか、驚いている。

 

「魔神は死の間際に呪いをかけた…。それを君を腐った肉塊へと変えたものの正体だ…。だが何者かが歴史を捻じ曲げ、君たちを悪魔付きなどと蔑まれる存在にした…」

 

「そんな…ッ」

 

ここでイタチは確信する。

 

こいつ、例の影の実力者として振舞っていると…。

 

そして同時に、これらの話が全くの出まかせであることも察する。

 

だが、少女は心底信用し、話を信じ切っている様子であった。

 

「その黒幕の正体は……正体は……」

 

シドが言葉を詰まらせる。

 

イタチは思わず、はぁ…とため息をつく。

 

早速ネタが尽きたか…。そう思ったのだ。

 

いい加減止めるか…と口を開こうとしたが、しかしシドが再度言葉を発する方が早かった。

 

「まだ口にすることはできない…。知れば君にも危険が…」

 

「構わないわッ!」

 

「…え?」

 

少女の唐突な大声に、シドは素っ頓狂な声を上げる。

 

「一体何者なのッ!」

 

「そう…か……。ならば教えよう……ディアボロス教団だ」

 

シドは視線をキョロキョロとさせながら、何とか言葉を結びにまで持っていく。

 

「魔神ディアボロスの復活を目論む者達だ」

 

イタチは、思わず目を細める。

 

よくもまあ、意味もなく純粋な少女にそんな嘘を付けるものだな…と、イタチは逆に感心してしまった。

 

「くっ!」

 

しかし、やはり少女はシドの話を信じ切っている様子で、真剣な眼差しを向けていた。

 

「奴らは決して表舞台にはでてこない…我が…いや、我らが使命は、その野望を陰ながら阻止すること…かな…」

 

シドは、少しだけ魔力を解放して見せる。

 

その魔力を見た少女は、大きく目を見開いていた。

 

イタチからすれば、大したことのない魔力であったが、年端も行かない少女からすれば、それは非常に強大な魔力に思えたのだろう。

 

事実、それは同じく年端も行かない少年が発していい魔力ではない。

 

イタチは、シドとの関りのなかで、変な慣れを覚えてしまったことに気付いてしまった。

 

そうして放たれた魔力は、シドの周りに例のスライムを呼び起こし、服装を変えるに至る。

 

黒を基調とし、所々に金色の装飾を見せるその身なりは、なるほど確かに彼の言う『陰の実力者』と言えなくもない様相を呈していた。

 

「そう…我が名はスタイリ……いや、我が名はシャドウ…陰に潜み、陰を狩る者」

 

「シャドウ…ッ」

 

嘘の名を少女に伝えているシドに、イタチは大きな呆れを有する。

 

「そしてそちらは、イタチ…。僕の右腕にして、師にもあたる男だ…」

 

「イタチ…ッ!」

 

…俺は実名なのか…。

 

今に始まったことではないが、やはりシドの考えていることはよくわからないと言った様子で小さくため息をつく。

 

「困難な道のりになるだろう…だが、成し遂げなくてはならない」

 

「英雄の子よ…我と共に歩む覚悟はあるか?」

 

シドの問いかけに、少女は一切考える素振りを見せずに、自身の胸に手を当てる。

 

「病…いえ、呪いに侵されたあの日、私は全てを失いました…。醜く腐り落ちるしかなかった私を、救ってくれたのはあなた方です…だから、あなたがそれを望むなら…私はこの命を賭けましょう…。そして、罪人には死の制裁を!!」

 

そこで、イタチはあることに気付いて大きく目を見開く。

 

…あまりの驚きと呆れた雰囲気に、少女への配慮が足らなかったことを、ようやく認識したのだ。

 

だがしかし、興奮した様子の少年少女らの会話は止まらない。

 

「敵は恐らく、強大な権力者とかだ…真実を知らずに操られている人たちもたくさんいるはず…」

 

「でも、立ちふさがるものに容赦はできない…」

 

「そうそう、そんな感じ!」

 

シドが理解を示す少女に嬉しそうに答えたタイミングで、イタチは初めて少女が聞いている前で口を開いた。

 

「…盛り上がっているところ悪いが…裸のままでは色々と困るだろう…もっと早くに与えられれば良かったんだが…」

 

イタチの有するスライムが、少女の身体を包み込む。

 

そのスライムはコートのような様相を見せる。

 

「あっ…///…ありがとうございます…」

 

少女もそこで初めて自身があられもない姿をさらしていたことに気付き、顔を赤らめて俯く。

 

だが、その俯きは瞬時になくなり、立ち上がってシドへと詰め寄って見せた。

 

「あとは、他の英雄の子孫を探し出して、保護する必要もあるわね…」

 

「え…ああ…うん」

 

少女の気迫に、シドは押し負けるようにして、たどたどしい言葉で答える。

 

「組織の拡張と並行して、拠点を整備しないと…そのための資金集めも…!」

 

「うん…ほどほどにね…」

 

どうやら、この少女は非常に頭脳明晰な様子であった。

 

確定ではないが、シドの話はその殆どが嘘である。

 

そう理解しているイタチからすると、その少女の頭脳はそれを嘘だと見抜くのにそう時間がかからないだろうな、という思考に至る。

 

「じゃあ…そうだな…。僕らの組織は…『シャドウガーデン』…そして君はアルファと名乗れ!」

 

「アルファ…ッ!」

 

シドはそう言いながら、崩れかけた家屋の出入り口へとゆっくりと歩みを進める。

 

そして、何かに気付いた様子で視線をイタチへと向ける。

 

「我が右腕であり、師でもあるイタチよ…。アルファの世話は任せたぞ…」

 

「……はぁ、了解だ」

 

イタチは、一瞬目を細めて抗議の視線を送るが、アルファと命名された少女の前で口にするのは憚られ、一応の了承を口にする。

 

アルファは、イタチの様子を伺いながら、緊張した面持ちを見せていた。

 

「よ、よろしくお願いします…」

 

「…ああ」

 

普段のイタチであれば、もう少し優しい声掛けができたのだが、シドに対する抗議の感情が勝り、それを可能としなかった。

 

そしてその感情は、そのまま当たり前のようにシドに向けられる。

 

「…シド…いや、シャドウ」

 

「ん?…ッ」

 

何気なく返答をして見せたシドであったが、イタチの視線に怒りにも似た感情が宿っていると察すると、冷や汗をダラダラと流して見せた。

 

「…後で話がある」

 

「…うん…。お手柔らかに…」

 

シドは苦笑いを浮かべながら、サッと光の速さで視線をそらした。

 

 

 

 

「改めて…俺の名はイタチ…イタチ・ウチハだ…」

 

シドこと、シャドウが去った後、ローズとのやり取りで知った呼称をもって、イタチは一族名を含めてアルファに名乗る。

 

「イタチ…ウチハさん…」

 

アルファは、その名を噛みしめるようにして、ゆっくりと呟く。

 

「イタチでいい…。1つ聞かせてくれ…君は、どうしても戦うというのか?」

 

「…ッ!私は、私の人生をめちゃくちゃにしたディアボロス教団を許すことはできません…。それに、私と同じように苦しむ子たちを救いたいッ!どうか、あなた方と一緒に、戦わせてはくれませんか⁉」

 

イタチの言葉に、未だ認められていないと察したアルファは、焦った様子を見せる。

 

その焦りには、何かに取りつかれたような、狂気じみたものがあった。

 

イタチは、年端も行かぬ少女をありもしない戦へ、存在しない組織との戦いへと巻き込みたくはない一心で、突き放すような視線を向ける。

 

「…はっきり言おう…。君では力不足だ。戦いとは辛く苦しいものだ…。それでもいいのか?」

 

「ッ!わかっています…。どんなにつらいことでも乗り越えて見せます!必ず強くなって見せます!だから、どうか、どうかお願いします!」

 

どうやら、これ以上言っても意味がない様子であった。

 

シドのホラに、すっかりと騙されてしまっている。

 

今ここで何を言っても、彼女の耳には届かないだろう。

 

ならば、少し時間をおいて、先の話が真っ赤な嘘であることを聞き入れられる状況になってから伝えようと決め、渋々承諾する。

 

「……わかった。君の覚悟を信じよう…」

 

「ありがとうございます!」

 

説得を諦めたイタチは、緊張感を解くようにして、微笑を浮かべる。

 

先ほどまで一切表情を変えた様子を見なかったアルファにとっては、それはとても新鮮なものに思えた。

 

どこか、頬に熱がこもる様な感覚を覚える。

 

そんなアルファの様相に気付かぬイタチは、サッと背中を向けて崩れかけの家屋から出ようとする。

 

「…とりあえず、暫くは俺の家で過ごすといい…。汚い場所だが、ついておいで…」

 

「はいっ!」

 

アルファは、まるで親の後を付けるようにして、イタチの後ろをテクテクと歩く。

 

暫くして、アルファは聞きづらそうにイタチへと話しかける。

 

「あの、イタチさん…」

 

「どうした?」

 

イタチは、後ろをついて歩くアルファに視線を送りながら、優しく言葉を返す。

 

「イタチさんは、シャドウの師匠なのですよね?」

 

「…まあ、うん…。そうだな…」

 

師匠…。まあ、チャクラの扱いや、忍術の修行を付けたという意味では、師匠とも言えなくもない。

 

嘘ではないか…。と思いながら、些少の詰まりを見せながら答える。

 

「であれば、なぜイタチさんはシャドウの右腕なのですか?…その、普通に考えれば逆なように思うのですが…それに、年齢的にも…」

 

やはり、相当に頭の回る少女だ。

 

その疑問は、正常なものである。

 

もしイタチが逆の立場であっても、同じ疑問を抱いたことだろう。

 

イタチは、些少の沈黙を有した後、それっぽいことを口にする。

 

「…それは……。シャドウが先んじて盗賊…いや、教団と戦っていたからだ…。俺はそんなシャドウに誘われる形でシャドウガーデンへ入ったに過ぎない…。いわば、後発者だ」

 

「なるほど…。だからイタチさんは…」

 

アルファはどこか納得した様子で顎に手を当てている。

 

…嘘だ…。教団なんてものは、存在しない。

 

もちろん、シャドウガーデンという組織も、今さっき出来上がった組織である。

 

アルファに対して、嘘を吐いた己が口に嫌悪感を抱いたものの、全ての始まりはあのバカのせいだと、自分に言い聞かせる。

 

それと同時に、自身の過去を振り返り、今度は本当の想いを口にする。

 

「それに…。俺に組織のトップは…務まらん…」

 

「そ、そんなことは…ないと思います」

 

アルファは、確信にも似た思いでイタチの背中に向けて言葉を放った。

 

しかし、イタチの様相は変わることはなく、どこか寂しく、そこか虚無感のような雰囲気を纏っていた。

 

「そんなことは、あるさ…」

 

イタチは、アルファから視線を反らし、前へとそれを向けると、小さく目を細めて呟いた。

 

【再投】短い時間でしたが、『誰を投入するかによる』が圧倒的に多かったので、ブシン祭終了後の吸血鬼編以降、NARUTOのキャラである『うちはオビト(原作死亡後)』を登場させるかどうかのアンケートです。

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