うちはイタチ…再び陰として生きる   作:ペリカン96号

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第27話 過去

 

『シャドウガーデンの幹部を全員集めろ』

 

というシャドウの指示のもと、七陰の全員に加えて、ナンバーズも全員が集まりを見せる。

 

各々が任務に就いていたこともあり、それを為すころには、完全に夜が更ける時刻となっていた。

 

「シャドウ…いわれた通り、幹部に当たる者達を集めたわ。…そして559番と666番も…」

 

イタチが意識を失った際、その場にいた2人。

 

本来ならこの場に居合わせることのない2人であったが、アルファが聞くべきだと判断し、招集したのだ。

 

アルファは、玉座に座り、虚空を眺めるようにして黄昏ているシャドウに、真剣な様相で口を開く。

 

「…さあ、教えてちょうだい…。イタチのことを……あなたの言う、イタチの真実を……」

 

アルファの言葉に、その後ろに控えているシャドウガーデンの面々は、酷い緊張感に苛まれていた。

 

なぜこの場に集められたのかの真相をよく理解しているアルファ、ベータ、ガンマ、イプシロン以外の面々は、未だその真意を的確に理解してはいないのだ。

 

だが、この場で、シャドウが目の前にいる場で、不用意な発言は憚られる。

 

一体何が行われるのか…、その概要のみが知らされている彼女らにとって、今すぐにでも多くの問いを投げかけたいところであった。

 

しかし、そんな思いは許されぬまま、シャドウがゆっくりと口を開く。

 

「まず初めに問う…。この中で、ベータの書いた『復讐と英雄』…これに目を通していない者はいるか?」

 

シャドウの言葉に、誰一人として首を縦には振らない…。

 

唯一、つい先ほどまでそれを見知っていなかったローズですら、ベータがあのナツメ・カフカであるという暴露と共に、その物語を読むに至っていた。

 

「この場にいるものが全員、読んでいるわ」

 

アルファは、ローズに視線を移した後、彼女が肯定に似た身振りを見せたことで、皆を代表して口を開く。

 

「そうか……。既に聞き及んでいる者もいると思うが…。ベータが書いた『復讐と英雄』…あれは、イタチ・ウチハの過去の話だ…」

 

シャドウの宣言に、アルファ、ベータ、ガンマ、イプシロンの4名は、ぐっと更に真剣な様相を見せる。

 

既に聞き及んでいた4人がその様相を見せたことは当然であろう。

 

そして、それを聞き及んでいない他のメンバーが驚愕に大きく目を見開かせたのも、当然と言えば当然である。

 

「ど、どういうことなのです!」

 

「あの物語が…イタチさんの…過去…?」

 

七陰の中で唯一、その繋がりを知らないデルタとゼータが声を放つ。

 

「…ッ!つまり…それは…、シスイ様…いえ、イタチ様がこの物語の弟にあたると…そういうことなのでしょうか?」

 

「まさか…そんなことが…」

 

イタチに力を与えられたニューと、同じく力を与えられ、且つ何度も命を、それどころか国すらも救われたローズは、酷く狼狽した様子を見せる。

 

そんな2人に、シャドウは珍しく顔を強張らせる。

 

「違う…!」

 

「「「「「ッ!!」」」」」

 

あからさまに怒りを孕んだその言葉に、アルファ達シャドウガーデンの面々は喉を鳴らすようにして押し黙る。

 

「…一体、何が…違うのかしら…」

 

あらかた予想のついていたアルファは、言葉を詰まらせる。

 

アルファと同等以上の頭脳を持つガンマも、シャドウの言いたいことが、なんとなくわかっている様子であった。

 

しかし、2人の顔には、明確な拒絶、そして不信にも似た表情が見て取れる。

 

「弟ではない……。イタチは…その物語の…兄だ…」

 

玉座の間は、静寂に包まれている。

 

だが、ただの静寂ではない……。

 

余りの衝撃に生まれた、一種の狂騒ともとれる静寂であった。

 

「どういう…ことなの…?」

 

ある程度は予測できた…。

 

かつて、イタチの過去を聞こうとした際に見せた、シドの完全なる拒否…。

 

そして、『知るには早すぎる』という意味深な発言……。

 

加えて、この物語がイタチの過去であることを知った際の、『真意』という意味の言葉…。

 

それら単体では、いやこれら複数の情報を得てしても、アルファとガンマの予想は大きく外れる結果を生んだ。

 

その誤りの上に、今日知りえた、『真実』という言葉……。

 

それを聞き及んだことで、アルファとガンマはある仮説にたどり着いた……。

 

その仮説が……今、シャドウの口から肯定されてしまったのだ。

 

「そのままの意味だ…」

 

「お待ちくださいッ!!」

 

シャドウの確固たる肯定に意を唱えたのは、それを本として執筆した張本人である、ベータであった。

 

「ッ!シャドウ様の御言葉が全て事実だとしたら…イタチ様は…家族を、一族を…皆殺しにしたということなのですか…⁉」

 

「……そうだ」

 

「「「「「ッ!!」」」」」

 

衝撃を遥かに超えるカミングアウトに、息が漏れるような音が木霊する。

 

シャドウガーデンにおいて、イタチと同様に、シャドウの言葉は絶対……。

 

そして何より、彼がこんな冗談をいうはずがない……。

 

その前提条件が生み出す答えは……、

 

「本当…なの…?」

 

アルファは、シャドウの言葉を疑った。

 

イタチに対して抱いている敬愛の感情、それをシャドウに対しては抱いていないものの、尊敬を遥かに超える感情は抱いている。

 

故に、彼の言葉を疑うような真似は、初めて会った時に抱いた以来であった。

 

そして何より、他のメンバーは、更にそれ以上の感情を抱いていることは明白である。

 

余りの衝撃に口を閉ざす彼女らに、シャドウは更に畳みかけるようにして口を開く。

 

「…更に言うなら、属していた国を抜けたことも、犯罪組織である暁に所属していたことも事実だ…」

 

「そんな……イタチ様が……」

 

「嘘でしょ……」

 

ガンマとイプシロンが、雀のような声を漏らす。

 

この場にいるものが全員、同じ感情を抱いているのか、『なぜ…』という感情が玉座の間を支配している。

 

「…そして、イタチが弟に殺されたということも…事実だ」

 

「もうやめてッ!!」

 

アルファの悲痛にも似た叫びが、玉座の間に響き渡る。

 

彼女が発するにはありえない声量、そしてシャドウに対して発するにはありえない言葉に、その場にいるもの全員が息を呑む。

 

「…冗談なんでしょ…?嘘に決まってるわ…。だって、イタチは生きているじゃない!」

 

アルファの叫びは、動揺こそしているもの、的を射た内容であった。

 

確かにそうだ…、とその場にいるものの全員が頷いて見せる。

 

弟に殺されたというのが事実なら、イタチは既に死んでいるはずである。

 

だが、イタチは生きている。

 

ならば、逆説的に弟に殺されたということが嘘ということになる。

 

そうすると、弟に復讐された理由すらも、家族や一族を皆殺しにしたということも嘘になりえる…。

 

アルファは、信じたくない一心で、明晰な頭脳をフル回転させ、一瞬でその仮説にたどり着いた。

 

シャドウが一瞬、黙りこくったことで、アルファに一時の安堵が芽生える。

 

やはり冗談なのだと、嘘なのだと…。

 

…だが、それが続くことはなかった。

 

「…君たちは、酷い誤解を…勘違いをしている…」

 

「…誤解…?勘違い……?」

 

何のことだ……。

 

アルファの頭には、それだけがグルグルと駆け巡っている。

 

「あいつは…イタチは……この世界の人間ではない…」

 

「「「「「ッ!!」」」」」

 

もう何度目になるのか…。

 

シャドウから齎された衝撃的な内容に、皆が一様にして驚愕を浮かべながら黙りこくる。

 

「イタチは…この世界とは別の世界から転生してきた人間だ…」

 

「転生……ですって…⁉」

 

アルファは、いや、最高幹部たる七陰と、幹部たるナンバーズ、そして559番と666番には、思い当たる節があった…。

 

いや、ありすぎた……。

 

その『別の世界』たる脅威から、ある国を救う作戦を成功させたばかりなのだから……。

 

「魔界…ッ!」

 

ローズが、思い当たりが過ぎるそれを口にする。

 

「まさか……イタチ様が魔力の元がチャクラであったことを知っていたのも…ッ!」

 

「魔界から来たから…ッ!」

 

ベータとイプシロンが、モードレットとの会話の際に疑問を抱いた一つの事柄に対して、解消を示す。

 

この点だけは、何を言っているのかさっぱりなシャドウであったが、流れが戻ったことを加味し、あえてそこには触れない。

 

その態度が、それを肯定しているように、彼女たちには思えた。

 

「そう…。イタチは、魔界…正式には忍界というが、その世界で弟に殺され、この世界に転生した…。そしてローズと出会い、我と出会い…アルファと出会った……」

 

自身の名が出てきたことで、ローズとアルファは大きく目を見開く。

 

「じゃ、じゃあ…本当に……」

 

「そうだ…。イタチは家族と一族を殺し、国を捨て、犯罪組織に入り、弟と戦い、命を落とした」

 

アルファは、自身の仮説が音を立てて崩れていくのを理解する。

 

余りにも筋の通った話に、一切の付け入る隙のない話に、対抗できるだけのものを持ち合わせていなかったのだ。

 

家族や一族を殺し、国を抜け、犯罪組織に入り、弟に殺されてこの世界に転生してきた……。

 

他の面々も、それが事実であると、シャドウの話がストンと心に入り込み、理解するに至る。

 

そんな中、ゼータが、ぐっと歯ぎしりをして見せる。

 

「……じゃあ…イタチさんは…根っからの悪党だったってこと…?」

 

ゼータの怒りが滲む言葉に、アルファはこれ以上にないほどの怪訝な様相を見せる。

 

「ゼータッ!!!」

 

今迄仲間に向けたことのないような憤怒が、その顔に浮かび上がる。

 

だが、ゼータは怯まない。

 

なぜなら、それを肯定するのが、自身の主、神であるシャドウなのだから…。

 

「ッ!だってそうだろう!自身の器を高めるためだけに、力を得るためだけに…家族や一族を滅ぼし、国を裏切り、犯罪組織に入った!!…ッ!やってることは……それこそ、教団のクソ野郎と変わりないじゃないか!!」

 

「あなた…ッ!!」

 

自身が敬愛するイタチを、剰え教団の連中と同列にされたことに、アルファは一瞬で冷静さを失う。

 

失った冷静さは、右手にスライムソードを形成し、更に強大なまでの魔力を放出するまでに至る。

 

「アルファ様ッ!」

 

「どうか落ち着いてくださいッ!」

 

仲間内での言い争いという様相を遥かに超えたそれを、ベータとガンマが止めに入る。

 

「ッ!あなた達は悔しくないのッ!!イタチがこんな風に言われて……ッ!!」

 

「それがッ!!」

 

アルファはそれでも冷静さを欠いたまま、止めに入ったベータとガンマにも詰め寄るようにして声を荒げるが、しかしそれを止めるかのようにして、シャドウが信じられない声量を放つ。

 

シャドウが放った声量は、冷静さを欠いていたアルファも、怒りに声を荒げていたゼータをも押し黙らせる。

 

そして、沈黙が確認できた後、シャドウは、静かに呟く。

 

「…それが……、国から下された、任務だったとしたら……?」

 

「「「「「なっ!」」」」」

 

シャドウの言葉に、皆が一様に詰まらせるような驚き方をして見せる。

 

「任務…ですって…⁉」

 

欠いていた冷静さを一瞬にして取り戻したアルファは、生成したスライムソードを消し去り、狼狽する。

 

「そうだ…。そしてそれが、その物語の…イタチの真実への入り口だ…」

 

「真…実…」

 

ここに集められた理由……その根幹に関わる言葉に、ゼータは一瞬で怒りを収め、震えるように呟いた。

 

「…運命の日…。あの夜、イタチは己を殺し……任務をやり遂げたのだ…」

 

何を言っているのか……。

 

任務……?

 

何が…どれが……。

 

シャドウ以外の全ての者が、瞳を激しく震わしながら呆然とする。

 

「どういう……ことなの…」

 

一早く話の流れを掴んだアルファが、シャドウにそう呟く。

 

「…その説明をするには、イタチの居た国…『木の葉』の話は避けては通れない…」

 

「木の葉……それがイタチさんが生まれ育った国…」

 

その名を脳に刻むように、ローズは1人呟く。

 

「…イタチは、犠牲になったのだ…」

 

「犠牲……?」

 

イプシロンが、怪訝な様相で聞き返す。

 

「そうだ…。木の葉とうちは一族の因縁……その犠牲にな…」

 

些少の怒りと絶望が滲んだシャドウの言葉に、皆は一様に生唾を飲み込んだ……。

 

 

 

 

 

 

時を同じくし、ミドガル王国の王都…。

 

そこに聳え立つ王城の一室にて、アイリスとアレクシアは、信じられないといった様子を見せていた。

 

「ッ!では、イタチさんとローズ王女はッ!!」

 

「…行方不明のままだ……」

 

アイリスの言葉に、オリアナ王国から出向いたベアトリクスが、淡々と答える。

 

「じゃあ、2人はもしかして……」

 

「…シャドウガーデンに連れ去られた…。私はそう考えている」

 

アレクシアの心を読んだかのようにして、ベアトリクスはキッと視線を鋭くさせる。

 

事の経緯を聞いたアイリスも、その可能性が高いことを理解し、苦悶の表情を浮かばせる。

 

「くっ…シャドウガーデン…。やはり教団と同じく悪たる存在だったか…!」

 

アイリスは、ぐっと血が滲むほどに拳を握りしめる。

 

あの場には、七陰という最高幹部が2人、そして自身が手も足も出ず、イタチをもってしても勝てないと言わしめるシスイがいた…。

 

加えてイタチは、ローズとオリアナ王国を人質に取られ、何もできなかった……。

 

アイリスはそう捉えていた。

 

もし仮にこれが正しければ、イタチもローズも、すでに無事ではないだろう……。

 

そんなアイリスの様相に、ベアトリクスは怪訝な様子を見せる。

 

「…私は、諦めていない」

 

「ッ!」

 

「イタチは、必ず生きている……ローズも…」

 

もう一人の存在を忘れかけていたベアトリクスであったが、何とか思いだすに至り、語尾に付け加える。

 

「…ベアトリクス様…。そうですね…。諦めては、いけませんね…」

 

ベアトリクスの覚悟を目の当たりにし、アイリスは真剣な表情をもって、再度口を開く。

 

「我々も、出来うる限りのことをさせて頂きます。ミドガル王国として、イタチさんをローズ王女を捜索致します」

 

「…助かる」

 

トントン拍子で話が進み、ベアトリクスは小さく安堵の声を漏らす。

 

「姉さま…私もイタチとローズ先輩を探します!」

 

「アレクシア…ですが…」

 

アレクシアの懇願に、アイリスは一瞬迷うそぶりを見せたが、彼女の真剣な眼差しを見て、覚悟を決める。

 

「わかりました…。ベアトリクス様、どうか、アレクシアも一緒に連れて行ってはくれませんか?」

 

「…危険だ…。奴らの中には、私ですら足元にも及ばない連中がいる…」

 

「承知の上です!…これ以上、何もしないわけにはいきません!」

 

アレクシアは、睨みにも似た表情を浮かべる。

 

本来なら、断るべきだ。

 

一国の王女を危険に晒す行為なのだから…。

 

それでも、アレクシアが自身と同等…とまではいわずとも、アイリスと同じくらいの力を有しているのであれば、承諾もできただろう。

 

だが、彼女はアイリスにすら及ばない…。

 

断るべき要素しかない…。

 

だが、彼女の悲痛にも似た叫びを、イタチへとぶつけていたその想いを思い出し、ベアトリクスは揺れ動く…。

 

そして、決断する。

 

「死んでも、恨まないでくれ」

 

「もちろんです!」

 

些少の脅しをもって放った言葉であったにも関わらず、アレクシアはさも当たり前のように承諾する。

 

「…アレクシア、約束してください…。危険だと感じたら、すぐに逃げるのですよ?」

 

「姉さま……。わかりました……。逃げ切れるかどうかは別として、そのようにします」

 

シャドウガーデンが本気になって、それこそシャドウやシスイが本気になってアレクシアを消しにくれば、まず逃げられないだろう。

 

だが、姉の悲痛にも似た願いを無下にもできず、あえてそれを口に出さずに頷いて見せる。

 

「…それで、ベアトリクス様…。どこをお探しになる予定なのですか?」

 

「シドのところに行く…。カゲノー男爵領…だったか…?」

 

その言葉に、アレクシアは特に目を見開いて見せる。

 

「なるほど…確かに、彼ならばイタチさんの行方を知っている可能性もゼロではありませんね…」

 

「ぽt……あいつがシャドウガーデンの情報を持っているとは思えないけど、現状シドに接触するのが一番なのは確かね…」

 

「ああ…今はシドの情報だけが頼りだ…。それ以後は、考えていない」

 

余りにもガバガバすぎる計画に、ベアトリクス自身も情けなさを感じているが、情報がないものは仕方がない。

 

「わかりました。では、私は動かせるだけの騎士団をもって、ミドガル国内を捜索します…。お父様にもお伝えしなければ…」

 

「ああ、そっちは任せた…」

 

ベアトリクスは、そうアイリスに言い残し、あまり気乗りはしなかったが、アレクシアと共に、カゲノー領へと向かうのであった…。

 

 

 

 

 

「…木の葉…。イタチが生まれた時には、大国とまで言われる国となっていたが、その根底には歴史の歪が渦巻いていた…」

 

シャドウが語り始めた、イタチの生まれ育った国……。

 

アルファ達は、それを真剣な様相で聞き入っていた。

 

「元々、木の葉という国は、対立していた忍の一族が一つになってできた国だった…。その中に、イタチがいたうちは一族もあった…。木の葉創設当時こそ、うちは一族は他の一族と共に、国の中心となって実権を握っていたが、初代火影の座を…お前達にもわかりやすくいえば、王の座を奪い損ねてからは、徐々にうちはは主権から遠ざかっていった…」

 

「…つまり、うちは一族は、権力争いに負けたということね…」

 

アルファが、シャドウの説明をかみ砕くようにして説明して見せる。

 

それにより、アホの子代表であるデルタと、彼女の部下であるパイが理解したような表情を見せる。

 

「その通りだ…。当時のうちは一族の長であった、マダラという男は、そのことに耐えかね、国を抜けるに至った…」

 

「王の座を得られなかったことが、納得できなかった、ということですね」

 

今度は、ベータが分かりやすく言い放つ。

 

「王の座を奪い損ね、国の実権を得られなかったマダラは、その後木の葉に襲撃を仕掛けてきた…。力づくで国を奪い取ろうとしたのだ…」

 

「ッ!なんと傲慢な…ッ!」

 

自身の欲を優先し、争いを持ち込んだマダラに、ガンマは酷く嫌悪感を示す。

 

「マダラの力は絶大だった…。それこそ、イタチを上回るほどにな…」

 

「…ッ!イタチ様…以上に…ッ!そんなに強いやつだったのです⁉」

 

自身が決して敵わない男よりも強いという話に、デルタは声を荒げる。

 

イタチの強さは、シャドウガーデンにいる者であれば、だれもが知っていることであった。

 

それこそ、シャドウと同等とまで言われるほどの力を有している。

 

故に、その衝撃は大きかった。

 

言うなれば、それはシャドウよりも強いという意味合いにもなるからである。

 

「だが、王の座に就いた男もまた、マダラと同等かそれ以上の力を持っていた…。マダラは、その男に敗れ、襲撃は失敗するに至った…。だが、元うちは一族の長による襲撃は、国に残ったうちは一族に対する偏見を齎すことになった…」

 

「…そうよね…。国に残ったうちは一族の人たちは関係ないけど…、他の一族の人からしたら、同じに見えるわよね…」

 

イプシロンが、どこか納得したように、苦い顔をして見せる。

 

「それは、時が経っても柔らぐことはなく、それどころか加速していった…。そして、いつしかうちは一族は、国から差別や迫害を受け、最終的には厄介者として、扱われるまでになった…」

 

「…国はうちはに、またマダラのような存在が出てくるかもしれないと警戒し、うちは一族は、マダラ個人の失態のせいで長年にわたって苦渋をなめてきた…ってことか…」

 

ゼータが、うちは一族の置かれた状況を鑑みて、どこか悲痛にも似た様相を見せる。

 

「そして、イタチが生を受けた時代にも、うちはに対する偏見は残っていた…。だが、イタチはそれに必要以上に囚われることなく成長し、やがて忍となって木の葉に仕え、任務をこなすようになっていった…」

 

「一族や国に縛られることなく…さすがはイタチ様…ッ!」

 

ニューは、確執ある中でもすくすくと育ったであろうイタチを想像し、思わず口角を上げる。

 

「…お前達も知っての通り、イタチは優秀な男だ…。それは木の葉時代においても例にもれず、イタチは忍者養成機関をわずか7歳で卒業、10歳で上位の忍びへと昇格を果たした…」

 

華々しいイタチの忍人生に、シャドウガーデンの面々から些少の歓喜が漏れる。

 

しかし、先の話の内容から、このまま順調に事が運ばないのを知っている彼女らは、それを手放しには喜べなかった。

 

「そして、その優秀さは国から評価され、暗部という国直轄の組織に所属するに至った…」

 

「暗部…?」

 

聞きなれない言葉に、ローズが思わず首を傾げる。

 

「…そうだな…、シグマよ…」

 

「ッ!はっ!」

 

突然シャドウから直接名を呼ばれたシグマは、一瞬遅れて返答を返す。

 

「イタチと異なるとはいえ、同じ忍として生きてきたお前に問う…。忍とは、忍者とはなんだ?」

 

「はい。権力者の元、偵察や潜入任務をこなす存在です」

 

「…イタチの世界の忍者も、些少の違いはあれど、似たような存在だった…。そして、暗部とは、それに特化した組織だった…。忍者の花形とも言える存在…。だが、そこからイタチの人生は狂い始めた……」

 

話の流れが不穏な様相を見せ始め、シャドウガーデンの一員は表情を締める。

 

「暗部、つまりは国の中枢との繋がりを得たイタチに、当代のうちは一族の長でもあったイタチの父は、イタチに木の葉への諜報活動を命じた」

 

「ッ!つまり、うちは一族側のスパイ…ということですか…?」

 

イタチのことを、自身の王子だと認識しているミリアが、苦悶に満ちた表情を浮かべる。

 

「そうだ…。イタチは、うちは一族の処遇が少しでも改善するよう、国側に働きかけつつ、うちはが国にとって有益であると示すため、奔走した…」

 

自身の一族の差別や迫害、それらを緩和しようと働きかけるイタチを想像し、アルファ達は居た堪れない気持ちになる。

 

「…だが、イタチのその努力も空しく、うちは一族の国に対する不満は増すばかりだった…。しかしそれは、ある意味当然とも言える…。いわれのない偏見、差別…、それらを長い歴史の中で受け続けたうちは一族に、次第に過激な思想を生む者が出てきた…」

 

「過激な思想…」

 

聞き流せない一言を聞いたアルファが、表情を曇らせながら小さく呟く。

 

「彼らはうちはの実権を取り戻すため、そして何より、誇りを取り戻すために、ある計画を企てた…」

 

「計画…?」

 

ガンマが、不穏な表情を見せる。

 

それが良くないことであることは、容易に理解できたからだ。

 

「イタチの父をリーダーとした木の葉の乗っ取り…いわゆるクーデターだ…」

 

「ッ!うちは一族が…クーデター⁉」

 

「それに…イタチさんのお父様がリーダー…ッ!」

 

ベータとローズが、声を震わせる。

 

特にローズの狼狽は激しく、瞳孔が定まっていなかった。

 

なにせ、つい先日まで同じような状況下において、自身の国が騒然となっていたのだから、それも当然と言えよう…。

 

想定以上に話の流れが不穏になってきたことで、アルファ達に動揺と騒めきが走る。

 

「勘違いして欲しくはないのだが…イタチの父は、穏健派…つまりはクーデターに反対の立場だった…。しかし、一族の多くが過激派であったがゆえに、その流れを止められず、一族を束ねる長として、仕方なくその計画に乗った…。彼がそれをはねれば、うちは一族内での内乱になりかねなかったからな…」

 

「ッ!イタチ様のお父様も、お辛い立場だったのですね…ッ!」

 

ラムダが、その隻眼を強く閉じ、その心情を推し量る。

 

「そして、うちはのクーデターに感づいた木の葉上層部は、うちはに一人のスパイを送り込んだ……」

 

シャドウの言葉に、アルファが今まで見せたことのない表情を見せる。

 

それは、驚愕と困惑、信じられないと言った様相を呈していた。

 

「まさか…そのスパイというのは…ッ!」

 

「そう…それがイタチだ…」

 

シャドウが目を伏せて発した言葉に、アルファ達は愕然とする。

 

そして、明晰な頭脳を持つものは、あることに気付く。

 

「では…ではイタチ様は…うちはと木の葉の、二重スパイだったということなのですか⁉」

 

「こんなことって…ッ!!」

 

ガンマとアルファが、イタチの置かれた立場を想い、歯を砕かんばかりに噛みしめる。

 

「…うちはと木の葉…双方のパイプ役を担い、何とかうちはのクーデターを止め、平和的解決を模索したイタチだったが…ついにその確執は、修復不可能な状況にまで陥ってしまった…」

 

「………ッ!」

 

当時のイタチの心情を想い、そしてその苦しみを想像したことで、ベータは両目にうっすらと涙を浮かべる。

 

「そして、国の上層部は、イタチにある任務を与えた……」

 

「任務…?」

 

イプシロンがそう呟いた後、バンッと何かが床に落ちる音が響く。

 

それを齎したのは一冊の本であった。

 

その本は、今しがた真相を打ち明けられている内容のものであり、それを抱いていたはずのベータが、両手を口元に添えている。

 

ワナワナと震え、両目から涙が流れ出ていた。

 

イプシロンがそんなベータに声を掛けようとしたが、シャドウが続けて口を開く方が早かった…。

 

「その任務というのが……ッ」

 

「…ッ」

 

少し遅れて、ガンマもベータと同じように、何かに気付いたのか大きく目を見開く。

 

「…うちは一族…全員の抹殺だった…」

 

…。

 

……。

 

………。

 

アルファの瞳から、光が失われる……。

 

ベータが、膝から崩れ落ちる音が響く。

 

続けて、シャドウの言葉を理解した者達が、大きく目を見開き、次々と震えだすこととなった……。

 

とりあえず、イタチ編を含め、本編は後3編で終了予定(話数にすると、プロットでは20話行かない程度)です。そこで、最終的にこの物語をどう締めくくるのか、大まかな流れを皆さんに問わせて頂きたく思います。

  • ハッピーエンド!
  • ハッピーエンド(イタチの身体一部欠損)
  • パッピーエンド(イタチ、シド共に欠損)
  • バッドエンド(イタチは皆の精神の中に…)
  • バッドエンド(イタチは精神の中にすら…)
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