うちはイタチ…再び陰として生きる   作:ペリカン96号

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第28話 真実

 

穢土転生によって、忍界へと魂が強制転移させられたイタチ。

 

ナルトとキラー・ビーと別れたのち、神のいたずらかサスケと思わぬ遭遇を果たす……。

 

マダラの手によって、イタチが隠し通そうとした過去を知っていたサスケは、彼に詰め寄った。

 

真実の追及、過去の清算……。

 

それを為すため、イタチを追いかけたサスケ。

 

『穢土転生を解除した後に、真実を見せてやる』

 

そう告げられたサスケは、穢土転生を用いたカブトを相手に、共に戦った。

 

…そして、その戦いにも終わりが訪れようとしていた…。

 

「カブトは、このループから逃れることはできない…。運命を決める術……。これがイザナミだ」

 

立ち尽くし、呆然と虚空を見つめるカブトの頭へと手を添えながら、イタチはそう言い放つ。

 

「これが…イザナミ…」

 

うちはの禁術…。

 

かつて戦ったダンゾウが使用していたイザナギ…。

 

それと対になる存在であるイザナミを見たサスケは、目を見開く。

 

「…これより、穢土転生の術を止める」

 

「ッ!」

 

イタチの言葉に、サスケは更に大きく目を見開く。

 

…それはつまり、兄であるイタチとの別れを意味していたからだ…。

 

「兄さん……」

 

「俺は木の葉隠れのうちはイタチとして、もう一度忍里を守ることができる…もうこの世界に未練はない…」

 

そう振り向いたイタチの目は、片方が真っ白な様相を呈しており、イザナミが光を失うことと引き換えの術であることを証明していた。

 

そしてさらに、イタチのその顔には、何か大きな腫物が消え去ったような清々しさが感じ取れた。

 

その要因の一つが、自身との軋轢であったとサスケは理解し、感情を露にする。

 

「ッ!なぜだ!兄さんにあんなことをさせた木の葉のために、なんでまた兄さんが!…兄さんが許せても、俺が木の葉を許せない!この世に未練がないだと…⁉俺をこんな風にさせたのは、兄さんなんだぞッ!!」

 

息を荒げながら、必死の様相でサスケはイタチを睨みつける。

 

そんなサスケを、イタチは表情一つ変えずに、見つめ、視線を外す。

 

「お前を変えられるのは、もう俺じゃない…。だからせめて、この術を止めることが、この世界で今の俺にできること…。ナルトに託したことを、ないがしろにしないためにもな…」

 

「ッ!」

 

ナルトという名がイタチの口から出たことに、サスケは酷く動揺して見せる。

 

そしてイタチは、カブトを幻術に嵌めて操り、穢土転生を解除するための印を結ばせる。

 

…カブトを操るイタチの言葉、印だけが、その場に木魂する。

 

サスケは、その様相を見て、苦悶の表情を浮かべたのち、強く両目を閉じる。

 

「もう…何を言っても無駄なようだな…。あんたを見かけた時、マダラやダンゾウの言ったことが本当なのかどうか、確かめたいとあんたについてきた…。だが、確かめられたのはそれだけじゃなかった…。あんたといると昔を思い出す…兄を慕っていた、幼き日の気持ちをな…」

 

サスケの言葉を、イタチは振り返ることなく、背中で受け止める。

 

「だからこそなんだ…。昔のような、仲の良かった兄弟に近づけば近づくほど、理解すればするほど、あんたを苦しめた木の葉の里への憎しみが膨れ上がってくる……それがどんどん強くなる…」

 

サスケは、一つ息を吐いたのち、固めた決意を口にする。

 

「ここで兄さんが木の葉を守ろうとも……俺は必ず、木の葉を潰す」

 

そうしてサスケが言い終えるのと同時に、穢土転生の解術の印が完成する…。

 

「……さよならだ、兄さん」

 

「穢土転生の術、解!」

 

微風に似た解術の様相が、サスケの肌を掠めていく。

 

直後、イタチの身体は白く光り輝いていった…。

 

 

 

 

 

 

うちは一族の抹殺……。

 

それが木の葉から下された任務であったと知り、玉座の間には、驚愕による沈黙が流れていた。

 

その沈黙の中、シャドウは呟くようにして再度口を開く。

 

「…うちは一族と木の葉…どちらを取ればいいのか、その合間に立っていたイタチの胸中は想像を絶する…ッ」

 

ハイライトを消したアルファの瞳に、少しずつ涙が溜まっていく……。

 

「最終的に、イタチは木の葉を取ったがな…」

 

シャドウの消え入るような声に、デルタが驚愕した様子で慄いて見せる。

 

「ッ!どうして…どうしてイタチ様は、木の葉を取ったのですッ!一族は……家族なんでしょ!」

 

「…第三次忍界大戦…」

 

デルタの叫びに、シャドウは宣言するように言葉を発した。

 

「第三次…」

 

「…忍界大戦…?」

 

「つまり…戦争ってこと…」

 

ガンマ、イプシロンがシャドウの言葉を復唱し、ゼータがその言葉を意味を汲み取る。

 

「そうだ…。木の葉を含めた多くの大国、同時に戦争状態に入った争い…それが第三次忍界大戦だ…。この世界で例えるなら、ミドガル、オリアナ、ベガルタ、エルフの国、獣人の国が一斉に戦争を始めるようなものだ…」

 

なぜ『大戦』と呼称したのか…。

 

その意味を知り、ほぼ全ての者が戦慄を覚える…。

 

特にオリアナ王国の王女であるローズは、シャドウの放った仮想戦争を思い浮かべ、苦虫を噛み砕いたような顔を見せる。

 

「…ラムダ、お前に問う…。戦争とは、どういったものだ?」

 

忍者について問われたシグマと同じように、ラムダは一瞬目を見開いたのち、苦悶にも似た表情を見せる。

 

「ッ!戦争とは…地獄です…。軍人も民も関係ない…。多くの者が命を奪われる…そういう…ものです」

 

以前軍人として従属していた彼女は、戦争というモノがどういうものなのか、よく理解していた。

 

「その通りだ。…その戦争により、イタチは僅か4歳にして、多くの人の死を目にしてしまった…」

 

「4…歳…」

 

「そんな…幼き頃に…⁉」

 

4歳などと言えば、記憶すら曖昧な年齢である。

 

イタチと同じ人間であるミリアとニューが、ありえないと言った様子で苦悶を滲ませる。

 

「そして、その経験が、イタチを国の安定と平和を第一と考える男に変えた…」

 

「安定と平和…」

 

「それを…第一に…ッ!」

 

ゼータは何かを考え込むように、アルファは大きく目を見開き、目に些少の光を取り戻す。

 

…どうやら、何かに気付いたようだ。

 

「…木の葉の上層部は、イタチのその優しい心を利用し、任務を与えたのだ…」

 

「…利用…?」

 

聞き流せない単語に、ベータが怒りに震えながら呟く。

 

「ま、まさか……、その任務というのが…ッ!」

 

「…一族の…抹殺…ッ」

 

オメガとカイが、互いに確認し合うようにして、口を開く。

 

この話が、一貫した繋がりを見せていることに、シャドウガーデンの面々はそれが嘘ではないことを察する。

 

そして、シャドウはスッと目を伏せる……。

 

何かに耐えるようにして……小さな声で、しかしはっきりとした口調でシャドウは呟く。

 

「…当時、まだ13歳だったイタチは、悩み…悩み…悩み……。如何ともしがたい、苦悩の中にいた…」

 

シャドウの言葉に、一早く反応を見せたのは、ガンマとイプシロンだった。

 

「13歳…ッ」

 

「そんな年齢で…こんな…ッ!」

 

各々がそれぞれの方面で、あらゆる成果を出している七陰……。

 

そんな彼女らから見ても、イタチの置かれていた状況は信じがたいものであった。

 

「普通に考えれば、家族や同胞に手をかけることなどできようはずもない……。良好な関係を築いていた者達がいたのならば、なおさらな…」

 

アルファ達は、家族や同胞と仲睦まじく過ごすイタチを想像し、そして苦悶の表情を見せる……。

 

「…だが、木の葉最強とまで言われていたうちは一族、そのクーデターを許せば、国は崩壊し、そこを突いて、他国は必ず攻め込んでくる…」

 

「木の葉最強…ッ!うちは一族の力は、それほどまで…」

 

「一つの一族で、国家を崩壊させる程の…ッ」

 

アルファとベータは、酷く驚いた様子で、大きく目を見開く。

 

だが確かに、イタチと同等の力を持つ忍が複数いるとなれば、その話も納得がいくものであった。

 

「それこそ、新たな戦争…。第四次忍界大戦の引き金になりかねない……。うちは一族の利己的な思想で、無関係の人々が死ぬ…。それだけはどうしても避けなくてはならなかった…ッ」

 

イタチの優しさが滲み出るようなシャドウの語りに、皆の顔が更に暗く苦しいものになっていく。

 

既にほとんどの者の目には涙が溢れ、鼻をすする様な音が何度も耳に入ってくる。

 

それを聞き取りながら、シャドウはゆっくりと天を仰ぐ。

 

「…だから、イタチは選択したのだ……。己の手で一族の歴史に幕を下ろすことを……」

 

バタッ…と、膝を床に落とす音が何度も聞こえる……。

 

立っていることすら敵わぬ者達が出てきたのだ。

 

中には、両手を床につけ、項垂れるものすらいた…。

 

「…そして、ベータの書いた物語へと、話は繋がっていく…」

 

「ッ…!」

 

シャドウの一言で、ベータはしゃがみ込みながら、床に落とした一冊の本へと視線を移す。

 

瞬間、止めどない涙が、彼女の瞳からあふれ出した。

 

「…任務だった…一族を滅ぼし、汚名を背負ったまま、国を抜けること…」

 

絶望と苦しみが支配する中であったが、看過できないシャドウの語りに、アルファはこの上ない怒りにも似た感情をその顔に表す。

 

「まって……。イタチは…彼は…、国のために、家族と一族を…て、手にかけたのでしょう……。国は…そんな彼を、守ってはくれなかったの…⁉」

 

アルファの言葉は、その場にいる者達の総意であった。

 

玉座の間には、それを肯定するかのような雰囲気が漂っていた。

 

シャドウは、まるで懇願するような視線を送るアルファを一瞥し、再び瞼をゆっくりと閉じる…。

 

「……その全てが、任務だった」

 

「「「「「ッ!」」」」」

 

信じられない……。

 

ふざけるな…。

 

そんな思いが、彼女たちの心を支配していく…。

 

そしてそれは、ある一人の憤怒の声によって増大していく…。

 

「そんな…ッ!そんな任務があってたまるかっ!!!」

 

怒号を上げたのは、ラムダであった。

 

床へと向けるようにしてはなったそれは、一切の減衰を持たず、玉座の間に広がりを見せる。

 

新人のみならず、七陰からも『鬼の教官』とまで言われている彼女が、涙ながらに口にしたそれは、この任務がいかに異様で、残酷な内容であるのかを証明するかのようだった…。

 

そんなラムダの様相を捉えながら、それでもシャドウは感情を抑え、再び口を開く。

 

「…イタチは、その任務を全うした」

 

つまり、家族を、一族をその手にかけた…。

 

そう理解した彼女たちの中で、既に冷静な思考ができる者は少なかった。

 

「ただ一つの失敗を除いて……」

 

「失敗……?」

 

「あのイタチ様が……?」

 

何とかシャドウの言葉に反応を示したゼータと559番が、信じられないと言った様子で口を開く。

 

…アルファとガンマ、そしてベータとニューが、ほぼ同時に大きく目を見開く。

 

「…ま、まさか…ッ」

 

「その失敗とは…ッ」

 

「あ、あぁ…ッ!」

 

「うそ………」

 

それが何であるのか……、理解した様子であった。

 

「いかに心を閉ざし、修羅と化したイタチでさえも、ただ一人…たった一人……」

 

先の4人に次いで、更に何人かがその言葉の意図に気付き、身体を震わせる。

 

シャドウは、伏せていた目を開き、鋭い視線を抱く。

 

「…弟だけは……殺せなかった…ッ」

 

これまで、感情をシャドウの顔に、悲痛な叫びに似た表情が生まれ、それが声に乗って響き渡る…。

 

「その後、イタチは弟を守るよう、当代の火影に嘆願し、他の上層部には弟に手を出さぬよう脅しをかけ、国を抜けた……」

 

消え入るような声で、シャドウはそう言い放つ。

 

数秒の沈黙ののち、ゼータとデルタが唇を震わせる。

 

「…イタチ様は…弟さんを利用したわけではなく……」

 

「守る…ために…ッ!」

 

「そうだ…。弟のことが、何より心配だったのだ…」

 

二人の言葉に、シャドウはそう反応する。

 

「そして、国を抜けたイタチは、犯罪組織である暁へと加入した」

 

「……国を追われたら…それしか…ないわよね…」

 

「ッ!わ、私は…イタチ様に対してなんてことを…ッ!」

 

なぜイタチが犯罪組織に入ったのかの流れを理解し、アルファとゼータがそれぞれに反応して見せる。

 

両者とも見せる様相は違えど、その感情はどこか同じものを感じさせた。

 

「それもある…。だがそれ以上に、国への危険組織を内側から監視するためでもあった…」

 

シャドウの言葉に、ベータとガンマが酷く呆けた様子を見せる。

 

「え…?」

 

「…ど、どうしてそのようなことを……」

 

「簡単な話だ…。一族を裏切り、国を抜けたとしても、イタチの心は木の葉と、そして何より弟と共にあった…」

 

その一言に、イタチが木の葉を、弟を想うその気持ちに、アルファ達は愕然とした表情を見せる。

 

言葉にならないほどの衝撃は、その全てが嗚咽と涙となって現れる。

 

だが、そんな中、ゼータが何とか一つの疑問を呈することとなる。

 

「でも、それなら何で、イタチ様は弟を…弟を追い込むような真似をしたの……?」

 

「それも、イタチの計画の内だった」

 

「……どういうこと…?」

 

ゼータが質問を飛ばしたことで、些少の思考を取り戻したアルファが、小さく呟くようにして問いかける。

 

「当時、イタチの弟にはある呪いがかけられていた…」

 

「呪い……⁉」

 

呪いという言葉に、アルファは驚いた様子を見せる。

 

何せ、ここにいるシャドウガーデンの面々も、その殆どが、この場に居合わせていないシェリーを除き、全員が悪魔憑きという名の呪いにかかった経験があるからだ…。

 

呪いという言葉に反応を示したアルファに、シャドウは珍しく彼女と思考をマッチングさせる。

 

「呪いと言っても、悪魔憑きなど比べ物にならない程強力なモノだ…。弟にかけられた呪いは、最終的には彼の身体を乗っ取るものだった…。悪意ある忍が、うちはの血を、身体を、そして瞳術を手にするために施したものだった…」

 

悪魔憑きは、正式には呪いではない…。

 

そんな悪魔憑きを、サスケにかけられた呪印と同じレベルで考えるのは、些か不釣り合いではあったが、シャドウは特に気にする様子もなく淡々とそう述べる。

 

なにせ、悪魔憑きを呪いと称したのは何を隠そうシャドウなのだから…。

 

だが、アルファ達からすれば、シャドウの言葉は驚きなどというレベルでは、到底言い表せないようなものであった。

 

自身の身体を貪り、全てを失う原因となった悪魔付きよりも強力な呪い…。

 

それだけで、その事実だけで、言葉を失うには十分すぎるものであった。

 

「…その呪いの根源を断ち切るには、弟を追い込む必要があった…」

 

「じゃあ…イタチ様が弟と刃を交えたのは…ッ!」

 

ゼータは、先の疑問に対する答えが、想像を遥かに絶するものであったこと気付いた。

 

「そう…。弟を呪いから解放するため…。そして、イタチは弟に殺されることで、仕立て上げようとしたのだ」

 

「…仕立て…あげる…?」

 

まだ何かあるのか……。

 

そんな感情を抱きながら、アルファは呻き声にも似た様相で呟く…。

 

「うちは一族の仇を討った英雄に…」

 

これまでの流れが、イタチの計画の全貌が見え始め、アルファは何とかこらえていた両足を、ぱたりと折り、床に座り込む。

 

「そ、それ…それを…弟さんは……知っているのですか……」

 

アルファが座り込むと同時に、ベータは拙い様子で口を開く。

 

「…知っていたら、イタチを殺すと思うか…?」

 

分かりきっていた…。

 

例えシャドウの答えを待たずとも、聡明なベータはわかっていた。

 

だが、思わず聞いてしまったのだ…。

 

余りにも残酷で、報われないそれに耐えかねて……。

 

しかし現実はあまりにも無慈悲で、思っていた通りの返答であった…。

 

「うッ!」

 

ベータは、救いのないその状況に、思わず吐き気を催して両手で口元を覆う。

 

何とか吐瀉は防げたものの、胸まで上がってきた胃液は、彼女に大きな不快感を齎す。

 

いつもであれば、七陰やナンバーズと言った面々が、そんな様相を見せたベータに駆け寄り、心配して見せただろう。

 

…だが、そんな余裕も、力も、そしてなにより正常さも、彼女らには残っていなかった。

 

嗚咽にも似た泣き声と、悲痛が混じった鼻をすする音だけが、この場を支配していた。

 

そんな中、シャドウは、ゆっくりと玉座の椅子から立ち上がり、玉座の段を一つひとつを降りていく。

 

そして、降りきったところで、窓から見える月を、その瞳に捉える。

 

「結局……、弟も、木の葉も、そしてお前達も、イタチのことを何一つ見抜けてはいなかった……」

 

その言葉の攻撃力は凄まじく、呻き声とも嗚咽ともとれるような涙声が、一層強まる。

 

「イタチは……、知人を殺し、友を殺し、上司を殺し、親戚を殺し、恋人を殺し、父を殺し、母を殺した…」

 

一族の抹殺……。

 

それを為したのだから、先のシャドウの言葉は当たり前ではあるのだが、それを言葉にされるのは、非常に辛いものがあった…。

 

それに何より……。

 

「恋人……ッ、恋人もいたの……ッ!」

 

「…ッ!木の葉…なんて、惨いことを…ッ」

 

アルファとローズが、その時のイタチの心情を想い、意識を失いかける。

 

「…だが、殺せなかった…。弟だけは……。血の涙を流しながら、感情を一切殺して、国のために家族と同胞を殺しまくった男が…。どうしても弟だけは殺せなかった……。その意味がお前達にわかるか…?」

 

わからないわけがない……。

 

なぜ弟を殺せなかったのか……。

 

ここまで聞き、理解してわからない者はいなかった。

 

…アホの子の代名詞でもあるデルタとパイですら、目を伏せ、苦悶に満ちた表情を見せているのだから…。

 

「…イタチにとって、弟の命は……。なによりも重かったのだ…ッ」

 

「……もう、いやぁ……」

 

何とか聞き取れるような声量で、アルファがそう漏らす。

 

咎めるものがいないほどに、彼女が発した言葉は、酷く総意を得るものであった…。

 

だが、シャドウは止まらない。

 

イタチの想いを、真実を、彼女たちに伝えるために。

 

彼女たちが、イタチを誤解したままでいることが許せないという感情と共に…。

 

「イタチは死ぬ間際まで…いや、死んでもなお弟のために…。弟に倒されることで、うちは一族の仇を討った、木の葉の英雄に仕立て上げるために……」

 

真っ白に輝く月を眺めながら、シャドウは続けて言葉を発する。

 

「両目の写輪眼は光を失いかけ…、さらにその身は不治の病に蝕まれ、近づく死期を感じながら、薬で無理に延命してでも…。弟と戦い、弟の前で死ななければならなかった……ッ」

 

「失明…不治の病…ッ!」

 

「そんな……ッ!」

 

アルファとニューが、耐えきれないと言った様子で深く目を伏せる。

 

「木の葉の、世界の平和のため、そして何より最愛の弟、サスケのために……」

 

「…サスケ…」

 

弟の名前を、ベータは誰にも聞き取れないほどの声量で呟く。

 

「犯罪者として、裏切り者として、死んでいくことを望んだ……。名誉の代償に汚名を、愛の代償に憎しみを受け取り、それでもなおイタチは笑って死んでいった……。弟のサスケに、うちはの名を託し…。世界をずっと騙し続けたまま……」

 

シャドウは、徐に視線を月から離し、ベータが落とした一冊の本へとそれを移す…。

 

『復讐と英雄』

 

表紙にそう書かれた本を手に取り、ゆっくりと、両目を細める。

 

「…それが、この物語の真実…ッ!……イタチ・ウチハの…生き様だ…」

 

……そう言い放ったシャドウに、返ってくる言葉はなかった…。

 

いや、返す言葉も、その余力もなかったという方が正しいだろうか…。

 

彼女らの憔悴しきった様相を見て、シャドウは嗚咽と涙だけが支配するこの空間を、玉座の間を、立ち去るのであった…。

 

 

 

 

 

 

意識が徐々に薄れていく中、覚束ない足取りで、イタチはサスケの元へとゆっくりと歩み寄る。

 

「まだ…間に合う…」

 

そう呟いたイタチに、サスケは目を大きく見開いて立ち尽くす。

 

「…別れる前に、お前が確かめたかったことを、教えよう…。もう嘘をつく必要はない…。お前と別れた夜、俺のやったことは、ダンゾウやマダラの言った通りだ……。お前に、全ての真実を見せよう…」

 

イタチはそう言い放ち、サスケに幻術をかけ、過去の記憶を流し込む。

 

その内容は、シスイとの死別に始まり、木の葉の上層部と一族の確執…。

 

そして、ダンゾウから齎された受け入れがたい任務と、条件提示……。

 

イタチと両親の最後の会話……、その後の殺害…。

 

更にはその時のイタチの感情と様相…。

 

両親殺害後の、サスケとの遭遇…。

 

それを最後に、幻術は終わりを見せた。

 

「これで、もう二度と言うことはない…。俺は、全ての真実を語った…。もう二度と……」

 

イタチは、薄れゆく意識の中で、ゆっくりとサスケへと歩みを進める。

 

「俺は、お前にいつも許せと嘘をつき、この手でお前のことをずっと遠ざけてきた…。お前を、巻き込みたくはなかった…。だが、今はこう思う。お前が、父を、母を、うちはを、木の葉を変えることができたのかもしれないと。俺が、初めからお前とちゃんと向き合い、同じ目線に立って真実を語り合っていれば…。失敗した俺が、今更お前に上から多くを語っても伝わりはしない…」

 

近づくイタチを、イタチの手を見て、サスケは大きく目を開き、瞳を震わせる。

 

「だから、今度こそ、本当のことを、ほんの少しだけ……」

 

サスケは、幼き頃に、イタチが死にゆくときにやって見せたように、また、額を小突かれるものだと思っていた。

 

…しかし、その予想とは裏腹に、イタチの手は、サスケの後方へと伸びて見せる。

 

「…⁉」

 

そして、その手は、サスケの後頭部を優しく包む。

 

「お前は、俺のことをずっと許さなくていい…」

 

イタチの手に力が入り、サスケの頭を前へと押し出す、

 

同時にイタチも頭を前へと突き出し、自身とサスケの額をくっつけるに至る……。

 

「だが、お前がこれからどのような道を進もうとも、俺はお前を、ずっと愛している…」

 

イタチの優しさが滲んだ声色に、その言葉に、サスケは限界を超えて目を大きく見開く。

 

直後、イタチの身体を構成していた塵芥が四散し、イタチの魂のようなものが剥離する。

 

魂だけの存在となったイタチは、ゆっくりと、空中へと上がっていく…。

 

「(これで…最後だ……本当に……)」

 

自身の魂が、再びあの世界に行くのか……。

 

それとも、この世界とあの世界が再び繋がりを見せるのか…。

 

それはわからなかったが、少なくとも、忍界においてサスケと会うのは、本当にこれが最後となるだろう…。

 

イタチはそう考え、ゆっくりと瞼を閉じる。

 

「ッ!兄さん!!」

 

サスケの悲痛にも似た声が、イタチの魂へと届く。

 

その声を聞き、イタチの脳裏に幼き頃の記憶が、サスケと過ごした記憶が鮮明に思い起こされる。

 

「(…ありがとう、サスケ…。俺は、お前の兄として生きることができて……)」

 

イタチは、消えゆく意識の中、満面の笑みを、サスケへと向ける……。

 

まるで、線香花火のようにしてイタチの魂が、その光と共に四散する。

 

「(…幸せだったよ…)」

 





これが…、これが書きたかった…!(ほぼ原作タダ乗り)

ちょっと大分やりきった感がありますが、この後の展開も自分が書きたかった内容ではあるので、そう長くはお待たせしないと思います。

…ですが、もしかしたら多くの方が思っているような話の流れにはならないかもしれません…。わかりませんが……。

それでも良いという方々は、どうかこれからもよろしくお願いします!!

とりあえず、イタチ編を含め、本編は後3編で終了予定(話数にすると、プロットでは20話行かない程度)です。そこで、最終的にこの物語をどう締めくくるのか、大まかな流れを皆さんに問わせて頂きたく思います。

  • ハッピーエンド!
  • ハッピーエンド(イタチの身体一部欠損)
  • パッピーエンド(イタチ、シド共に欠損)
  • バッドエンド(イタチは皆の精神の中に…)
  • バッドエンド(イタチは精神の中にすら…)
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