バルコニーに着くと、空は澄み渡る晴天。こんなに明るい真昼間に花火を打ち上げても見れるのかと不安になりつつも三人で並んで打ちあげを待っていると、
「あたし、トリミアンを捕まえるのに全然活躍できてないけど、いいのかな?」
と不安そうにサナが呟いた。俺はそれに苦笑しつつ、「サナが言い出さなかったら、俺もカルムも動いてないさ。そこはサナのお手柄だろ?」と慰め、カルムも「うん。サナがいたから動き出せた」と同意してくれた。
「……そうかな、そうだといいなあ」
俯いていたサナが元気を取り戻して顔を上げると、そのタイミングで
ヒュ〜……ドォン!
と、花火が打ちあがる。花火が昼間に見えるか不安だったが、意外なことにくっきりと見え、その美しさと迫力に三人揃って息を呑んで見惚れてしまった。
「はあ……。すごかったね!」
「絶対に忘れたくないから心のアルバムにしまっとくよ!」と屈託なく笑うサナに「確かにきれいだったな」と同意して笑っていると、
「トリミアンのためのトレビアン花火!あなたたち、これでよろしいかな?」
と、言って悠々と歩いてきた男性。その後ろにはあの門番が付き従っていた。
「は!」
「うわおっ!?どうした」
唐突に叫んだサナを見れば、何かを思い出したかのように口を開いていた。
「そういえば……」
「ポケモンのふえ?」
カルムがサナに確認するように言えば、「おもいだした!カビゴンを起こすためのふえだよ」とサナが言う。
「はあ……。ポケモンのふえね……」
男性が「ほら」と門番の男に指示すると、門番の男が綺麗なお辞儀をして離れる。
「ショボンヌ城の宝物だったポケモンのふえも借金代わり。やはり金持ちのぼくとアイツとではつりあわなかったのだ」
男性がそう語っている間に門番が戻ってくると、男性が「ほら」と言って顎で俺たちを指す。すると、
「ポケモンのふえでございます」
と言って、カルムへとポケモンのふえを差し出してきた。
カルムはポケモンのふえを両手で受け取ると、カバンの中にしまい込む。
「いいかい、きみたち。借りたものは返す!これ、大事だからね」
そう言って、男性が去っていくのを見送る。
「サナ、いろんな思い出をつくりたいけど……。あの人のこと忘れよーっと」
「宮殿をまもる苦労は想像しかねますので……」
サナを宥める門番の言葉に、「そうだけど……」と渋い顔をするサナ。それを苦笑しつつも「サナ、聞きたいことがあるんじゃなかったのか?」と話を逸らさせると、
「そうだ、あの。執事さん。メガシンカって知ってる?」
と、サナが気を取り直したように質問すると、「図書室でそういった本を読んだ記憶があります」と話し始めてくれた。
「いまでいうトレーナーが不思議な石をかざすと、ポケモンがさらに進化したとか。よければご覧になってください」
話し終えると、「これはわたしからです。ささやかなものですが、どうぞ」と、俺たち三人にそれぞれわざマシンを手渡してきた。
「まもるの技は相手の攻撃を防ぎます。ただし連続で使うと失敗しやすくなります」
「では、失礼いたします」とお辞儀してさっていく門番。……というか、多分執事さん。彼も見送ると、「それにしても」とサナが話し始めた。
「今の人とショボンヌ城のご主人。お友達だったの驚き!」
「まあ、金持ちならではの付き合いってやつじゃあないか?」
「なるほどねえ」
「カビゴンを起こしたら、ふえ返さないとね……」と話すサナに「そうだなあ」と同意しつつ、「カルム、はやいところカビゴンを起こしにいこうぜ」と呼び掛ければ「そうだね」と言うと、カルムは早速バルコニーを後にして走り去っていった。
「……あいつ、意外と協調性ないのか?」
「置いてかれたねえ……」
サナと呆然とした後、慌てて追いかけるのだった。