カルムに敗北した俺は、さらに強くなろうと8番道路でトレーナーや野生のポケモンとバトルしながら進み、ショウヨウシティへと訪れていた。
「イーブイ、このままショウヨウジムに挑むけど……良いよな?」
「ぶいぶーい!」
俺の言葉に戦意をたぎらせるイーブイの返事に俺は強く頷くと、サイクリングロードを歩いて登ると、
「おやまあ、あなたは……」
偶然遭遇した男性が俺の姿を見てそんなことを呟いた。
「自転車レースに今から参加するのですが、あなたも参加者ですか?」
「あ、えっと……」
「その割には自転車を持っているようには見えませんが……。まちの方に自転車屋がありますので、そちらで買ってはどうでしょうか?」
「では」と言って去っていくザクロさん。どうしたものかとイーブイと見合わせる。
「……まあ、行ってみるか」
「ぶいぶい」
来た道を引き返し、降りた先でサイクルロード沿いに建っていた自転車屋を見つけた。
ポケモン世界の自転車といえば、100万円の自転車が思い浮かぶため、値段だけでも確認しよう。無理そうなら、残念ながら諦めようと思いながら店内に入ると、
「いらっしゃい!お客さんすごいね!」
なんてレジ台にいた店員に、唐突に言われたために戸惑っていると、
「オープンしてから10000人めだよ!」
「うわお、マジっすか」
なんとも驚いたことに、偶然にも記念の客が俺だったようで、店員のところに手招きされたので近寄ると、
「というわけで、10000人記念でお客さんには自転車をプレゼント!」
「はいどうぞ」と渡されたのは折りたたみ式の最新モデル。青い車体がクールな印象を与える自転車だった。
「え、い、良いんですか!?」
「もちろん!それでカロスを駆け回って、カロスの風を感じてよ!」
「あ、ありがとうございます!」
慌てて頭を下げて感謝を述べながら自転車を受け取り店を後にする。しかし……。
「これ、もしかして主人公の自転車ゲットイベントを横取りしちゃった?カルム、大丈夫か?」
「もしそうなら、本当にごめん」と心の中で謝罪しながら、折りたたまれていたボディを早速広げてみる。
「おお……。やっぱかっこいいな、自転車って」
「ぶいー!」
側で俺が自転車を広げているのを見学していたイーブイも興奮したように周りをぴょんぴょんと跳ね回りながら自転車を観察している。タイヤに空気が入っているか、ブレーキは効くか、反射板が付いているかなどの、記憶にある限りの安全チェックを済ませた後、今生初の自転車へと跨り、ペダルを強く踏みつけた。
「うおー!意外と体……いや、魂か。覚えているもんだなぁ!」
最初は少しふらついたが、何事もなく自由に運転できるので、俺の気持ちは少し晴れた。
「よし、10000人目の客で、なんの因果か自転車も手に入った。これは自転車レースに参加しろってことなのか?」
「ぶいっ、いぶい!」
イーブイが激しく頭を上下に振るため、「これも何かの縁か」と自転車レース出場にサインしたのだった。
それにしても、ザクロさんとポケモン以外でバトルするなんて、なんとも数奇なことだと、そう思うのだった。