ポケットモンスター 影   作:瓶詰め蜂蜜

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第26話 自転車レース

 受付に参加用紙を持っていくと、チーム戦の部と個人戦の部の二つがあった。

 もちろん俺は個人戦の部となり、Fブロックに登録された。

 

「俺たちのレースはまだまだ先だし、少しまちを見て回るか」

「ぶいっ!」

 

 相変わらず肩に乗っかったままのイーブイに語りかけながらまちを歩いていると、

 

「ジュワーっとそうかい、サイコソーダ1本300円。旅のお供にいかがですか?」

 

 偶然通りかかった道で売り子をしていたお姉さんに遭遇した。

 

「ぶいぶーい?」

「おっと、サイコソーダが気になるのか?」

 

 身を乗り出すイーブイに聞けば、「ぶい!」と元気なお返事。「しょうがないなぁ」なんて言いつつ、財布から600円取り出すと、サイコソーダを2本注文する。

 

「サイコソーダをどうぞ!また今度買ってくださいね!」

 

 にっこりと素敵な営業スマイルで手渡された瓶入りのソーダ。少し離れたところに並ぶベンチに移動して座ると、リュックからイーブイ用の皿を取り出してサイコソーダを注いで、地面に置く。

 

「ぶいー?ぶいっ!ぶいぶい!」

「おっ、美味しかったかイーブイ。んじゃあ、俺も……。おおっ!よく冷えてて美味いな」

 

 口内に弾ける炭酸のシュワシュワとした感覚が清涼感を覚えさせ、よく冷えた、うっすらと柑橘系の酸味を感じるテイストに「やっぱり炭酸は美味いなぁ」と思いながら飲んでいると、

 

「ぶいぶいっ!」

「おかわりか?んー……。仕方ない。ここで待っとけよ」

 

 空になった皿を前足でカンカン鳴らすイーブイにそう呼びかけて、先程のお姉さんのとこへと戻って、追加で3本ほど購入し、急いで元のベンチへと戻る。もちろんこの時、炭酸を振るなんて失敗はしない。

 ヒノヤコマとケロマツもボールから出して、一人と三匹でサイコソーダを飲んでいると、

 

「ショウヨウシティ自転車レース、個人戦の部Fブロックがまもなく始まります。参加選手は集まってください」

 

 とアナウンスが流れた。イーブイ達をボールに戻し、走って受付のあったカフェ裏手の空き地に向かう。

 到着した時、すでに俺以外の選手達が集まっていたようで、各々体をほぐしていた。

 

「よーし、頑張るか」

 

 気合いを入れるために頰を叩き、自転車を取り出してスタートラインに並ぶ。

 

パァンッ

 

 スターターピストルの音が鳴り響き、一斉にスタートを切ると、暫く川沿いを真っ直ぐに進む。

 ここでは無理に前に出ようとせずに、他の選手の後ろについて風除けに使う。うろ覚えの知識だがスリップストリームである。

 そして、サイクルロードに唯一ある横断歩道を超えると、道は走りやすいコンクリートから砂浜へと変わる。

 その上、いきなりカーブの為に横転しないように神経を使う中、二人ほどスリップして脱落してしまう。

 砂浜の道を走っていると、道はところどころ浅瀬に変わり、薄らと波が揺れていた。

 水分を多量に含んだ砂に波立つ海面。前を走っていた選手ももたつく中、必死になって漕ぎ進め、浅瀬ゾーンを一位で通過する。

 その後、カーブが続く砂浜のコースを抜ければ、まちの中のコンクリートの道に戻る。

 道沿いに並ぶ観客から声援を貰いながら、ポケセンの横を通り抜け、ブティックの前を曲がり、一番な難所であろう山道を登り始める。

 

「う、おおおおっ……!」

 

 叫び声を上げながら、気が遠くなる程に続く坂を登り、山道コースの一番上まで来た。……と思ったら、

 

「まさかあなたがここまで強かったとは」

「なっ!?」

 

 後ろから、涼しい顔をしたザクロさんが横に並んできた。

 

「ちょっと……。いつのまに追いついたんですか」

「つい、先ほどですよ。このレース、わたしが勝たせていただきますね」

 

 そう言って、スパートをかけたザクロさんの背中が遠ざかっていく。追いかけようと思っても、今以上に足の回転率は上げられない。

 

「くそっ……!」

 

 こうして、俺の最終戦績はFブロック二位。表彰台どころか本戦にすら行けずに終わった。

 結局、ショウヨウシティ自転車レースは俺を負かしたザクロさんが優勝し、二位はBブロックの勝者、チキャ・シンテジーゲスという海パン野郎だった。

 

「ジム戦でリベンジさせてもらいますよ、ザクロさん……!」

「ブイ、イーブイ!」

 

 レース終了後にボールから出てきて肩に飛び乗ったイーブイと共に、ザクロさんへのリベンジを決意するのだった。




 ゲーム本編にはなかった自転車レース。
 内容は全て妄想によって補われています。
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