新スーパーロボット大戦OG64   作:舟太郎

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12話 裁く者、裁かれる者

 

 

「オーライ!オーライ!・・・」

 

セント・クルスシティの沿岸ドッグに停泊するシロガネから積み荷が降ろされ、その後から更にスイームルグが搬出されていく。

 

「改めてみると可愛いですね~・・・マーダちゃんの次に。」

 

「ハミル家が開発したスイームルグ、その設計思想はSMSCアンジュルグにも流用されているらしいが、先刻の戦いを見る限り特筆するべき点も見当たらない。正直言って優れた機体とは言い難いな。」

 

グレース・ウリジンとアーウィン・ドースティンがスイームルグを見てそんな感想を抱く。

 

「でも~多分ですけど、あの機体にはまだ上がありそうですね~。あの背面こ~ぞ~だと~、追加パーツがドッキングするはずですよ~。」

 

グレースはスイームルグの外観からその隠れた機能を推察する。

 

「マナミはどうなっちゃうんだろ・・・一応、UCE貴族院が便宜を図ってくれるらしいけど・・・。」

 

「・・・あの男はどうにも好きになれないな。」

 

ミーナ・ライクリングが現在取り調べを受けているであろうマナミ・ハミルを憂うと、レナンジェス・スターロードが貴族院と言う言葉に嫌悪を示す。

 

「珍しいわね、ジェスがそこまで他人に嫌悪感を持つなんて・・・まあ確かにアタシたちもアレを取られちゃったけどさ・・・。」

 

「いや、そう言う事じゃなく・・・」

 

「その感覚は正しい、今の貴族院はまともじゃないからな・・・。」

 

そこへ見覚えのある中年男が現れそう告げる。

 

「・・・いくらなんでも堂々と現れ過ぎじゃないですか?今遭遇したら流石に捕えざるを得ませんよ?」

 

ジェスが男をみて呆れながらそう反応する。

 

「悠長にはしてられん・・・お前さん達に頼みたいことがある。」

 

男はそう話を切り出した。

 

 

▽▽▽

 

 

「いかがですか、マナミお嬢様。ボクの用意したローズティーのお味は?」

 

セント・クルスシティにあるUCE庁舎の一室で一人の男がマナミ・ハミルに紅茶を差し出す。享楽的な鋭い目つきを濃いサングラスで隠した、身なりの良い男だ。その後ろにはやはり身なりの良い金髪の女性と、神経質そうなインテリの男、そして黒いプロテクターで顔と身体を覆った兵士達が付き添っている。

 

「お茶などどうでもいいわ、アーチボルト・グリムズ少佐、それに・・・!?」

 

マナミが男に尋ねる。目の前の男はアーチボルト・グリムズ、向こう側であればカール・シュトレーゼマン子飼いの傭兵でありテロリスト、そしてエルピス事件の実行犯であった男だった。

 

「おっと、僕の事はアーチボルト男爵とお呼びください。同じ貴族院の仲間じゃありませんか、マナミ伯爵?」

 

こちら側では没落せずに残っていたグリムズ家の家督を継ぎ、男爵の地位に付いている。

 

「いえねえ、問題だらけの伯爵令嬢に便宜を図ってあげようと思いまして。僕ってほら、UCEの軍部にも顔が聞きますからねぇ。」

 

更には少佐階級を持つ軍属でもあり、実家のグリムズ商会を母体とするグリムズ財閥を継ぎ会長職を兼任、UCEに多額の出資を行っている。

 

「結構よ、あなたの力は借りないわ・・・」

 

「いい加減にしてちょうだい、マナミさん!せっかくアーチボルト様がUCE上層部や貴族院と掛け合い、貴女の問題行動を不問にすると言ってくれているのに!」

 

マナミがアーチボルトの申し出を断ると、その後ろの女性が強い声を上げる。

 

「アーチボルト様ですって!?アイシャ、一体どうしてしまったというの!!?」

 

マナミが女性に尋ねる。アイシャ・リッジモンド、リッジモンド侯爵家の後継者であり、マナミとは従姉妹同士の関係にある。

マナミは位の高い侯爵家のアイシャが男爵家のアーチボルトに畏まる姿に疑問符を打つ。

 

「大人しくいう事を聞きなさい、マナミさん。あなたの身勝手な行動がUCE内での祖国の立場を悪くしていることが分からないのかしら!?」

 

アイシャは更に語気を強めて続ける。

 

「アイシャ・・・なんで貴方がこの男と一緒に・・・?」

 

「おやおやアイシャさん、ひょっとして僕との婚約をお伝えしていないんですか?従姉妹同士だというのに随分と冷たいのですねぇ?」

 

「何と・・・!?」

 

「婚約ですって!?こんな男と!!?」

 

突如飛び出したワードに対してローレンスとマナミが驚きの声を上げる。

 

「こんな男とはまた随分な言いようですね?この婚姻はむしろ破綻寸前のリッジモンド家を救済するためのものだというのに。」

 

「破綻ですって!?侯爵家であるリッジモンドが・・・!?」

 

「当然でしょう、我々貴族の爵位とは女王陛下より賜ったもの。そして我々の祖国は今やUCEの一員、それに従わないハミル家と繋がりのあるリッジモンド家に類が及ばないわけが無いでしょう?そこでUCEの上層部にも顔の利く僕が救いの手を差し伸べたという訳です。これも一つのノブレスオブリージュというやつですよ。ま、立場はボクの方が下なんですけどね。」

 

「感謝しています、アーチボルト様。」

 

アーチボルトはそう言って両腕を広げ、大げさに振る舞うその隣で、アイシャは従順な態度を取る。奥に立つ男がその様子を見て眼鏡を上げながら嫌な笑みを浮かべている。

 

「しかしアーチボルト男爵、なぜわざわざあなた様がリッジモンド家を救済しようと?まさかご自身の半分の年齢であるアイシャお嬢様をお見初めになったわけではないでしょう?」

 

ローレンスが尋ねる。

 

「ほう、アイシャお嬢様は齢17でしたか?今初めて知りましたよ。まあ問題ないでしょう、貴族社会においては珍しくもないですしね。」

 

「貴方、相手の年齢すら把握していないくせに結婚しようというの!?一体、何を考えているの!!」

 

マナミが怒りに満ちた声で食って掛かる。

 

「ふむ・・・別に説明する義理は有りませんが、僕の目的は簡単に言えばクラスチェンジですよ。男爵家であることに別に不満があるわけではありませんが、侯爵家の令嬢とちょっと結婚するだけでグリムズ家も3ランクアップ、グリムズ侯爵家の誕生です!おや、ハミル伯爵家のクラスを一気に超えてしまいますね?アーハッハッハっ!!」

 

アーチボルトは高らかに笑う。

 

「この・・・っ!?アイシャ、なんでこんな・・・今すぐ婚約を解消して!!」

 

「貴女の方こそ、アーチボルト様に逆らうのを止めて言う事を聞きなさい!」

 

アイシャはマナミの声に対して聴く耳を持たない。

 

「ご自分の心配をしてはどうです?ハミル家の雇った傭兵が新連邦の機体を攻撃した事実は消せませんよ?ましてや相手はUCE最高幹部の一人であるベルクト直属の部隊なのですからね。全く、貴族でありながら傭兵やらゲリラやらと通じるなんて、僕のような清廉潔白な人間からしたら考えられませんねぇ。」

 

「清廉潔白ですって・・・?あなたが?笑わせないで!!」

 

「ベルクト・・・?」

 

マナミが激昂する隣で、ローレンスが初めて耳にする名前に疑問符を打つ。

 

「おっと、口が滑りましたね・・・とまあ、そう言う事ですので、今後はハミル家がボクに従うのなら不問に付してあげますよ?」

 

「何を言っているの!?従うわけが無いでしょう!!」

 

「いいえ、貴女もすぐにボクに従いますよ、アイシャお嬢様と同じようね・・・。ルビッカくん、よろしくお願いしますよ。」

 

「クフッ・・・承知しましたよ、男爵閣下。」

 

奥に控えていた神経質そうな男が前に出る。

 

「さあ、私の目を見なさい・・・」

 

「え・・・?」

 

ルビッカと呼ばれた男はマナミの顔を覗き込み、その瞳を見つめると、マナミの意識が朦朧としてくる。

 

「いけません、お嬢様!!」

 

「老いぼれが、私の邪魔をするな!!」

 

ローレンスが咄嗟に両者の間に割って入ると、男はそれまでとは打って変わった形相でローレンスの腹部にナイフを突き刺した。

 

「むぅ・・・・」

 

「いやあああああ!!?」

 

膝を付くローレンスの腹部から大量に赤い液体が流れ落ち、それを見たマナミが悲鳴を上げる。

 

「くふっ・・・くははははは!いい声だマナミ・ハミル、今度はこの老いぼれではなく直接その美しい肌を切り裂いてやろう!!」

 

つい先刻までの物静かなインテリ風だった男は、まるで人が変わったようにその凶刃をマナミに向ける。

 

「やれやれ、ただマナミお嬢様に催眠術を掛けてくれればよかったのですが、ルビッカ君は血の気が多くて困りますねぇ。」

 

アーチボルトはグリムズ家の会計士[ルビッカ・ハッキネン]に対して呆れたようにそう言いつつも、楽し気に笑みを浮かべている。

しかし次の瞬間、部屋の壁が爆破され、一人の男が現れた。

 

「リチャード少佐!?」

 

マナミが現れた男、リチャード・クルーガーを見て声を掛ける。

 

「ちっ・・・一足遅かった。済まない、俺のせい辛い目に合わせたようだな、マナミ嬢。」

 

「あたしは平気・・・だけどローレンスが・・・!!」

 

「まずは脱出だ。」

 

「おーっと、そうはいきませんよマナミお嬢様。」

 

アーチボルトと黒い兵士たちがリチャード達の前に立ちはだかる。

 

「いや、行かせてもらう。」

 

リチャードは小銃を斉射するも、黒い兵士たちはそれを正面から受けてもビクともしない。

 

「なんだこいつ等は・・・!?」

 

今度は建物の外から壁が破壊される。外には紅い戦闘機、ライアスが停滞している。

 

「こっちです、少佐!」

 

「いいタイミングだ、サヤ!」

 

リチャードはローレンスを抱えながらマナミの手を引き、ライアスの上に飛び乗った。

 

 

 

 

「・・・一時は英雄ともてはやされながらも友軍を壊滅させ、あげくにゲリラ共に与するとは、見下げ果てた男だなぁキョウスケ・ナンブぅ。貴様のせいでかつての連邦軍がどれほどの損害を受けたのか解っているのか?あ?」

 

別の取調室ではUCEの特殊部隊ファイア・バグによって身柄を拘束されたキョウスケも尋問を受けていた。

目の前には元の世界でのかつての上司、ハンス・ヴィーパーが高圧的な態度で文句を言い続け、その後ろにはやはり黒い兵士たちが無言で付き従っている。

 

(・・・・・)

 

ハンス・ヴィーパーを前に、キョウスケは鼻から溜め息をつく。

ベーオウルフと混同されることに辟易していたキョウスケだったが、DC戦争で戦死したかつての上官との再会には何の感慨も湧かない。むしろ得体のしれないマリリン・キャットを相手取るよりは安心できる、取るに足らない小物だった。

 

「あの部隊に民間施設を襲わせたのはお前か、ハンス・ヴィーパー?」

 

「あ?あの施設を襲ったのは貴様とマーチウィンドとか言うテロリストだろう?まさかオーランド議員のご子息を誘拐するとは、実に許しがたい。」

 

(ちっ、こちら側でも相変わらずのサマ師か・・・)

 

キョウスケはハンスの言葉に呆れ果て、もはや怒りすらわかない。

 

「それとなキョウスケ・ナンブ大尉。」

 

「・・・っ!?」

 

ハンスはゆっくりとキョウスケに近づき、次の瞬間その顔を殴打した。

 

「ハンス・ヴィーパー准将だ、上官に対する口の利き方がなっていないぞ。そう言えば貴様は曹長だった頃から生意気な態度を取っていたなぁ。え?キョウスケ・ナンブ大尉ぃ。」

 

(この男が准将だと!?この世界の連邦軍は本当に大丈夫なのか?)

 

キョウスケは元の世界でのDC戦争で連邦からDCに寝返り、自分をはじめとするハガネ部隊との交戦によって戦死した男が将官クラスまで昇進していることに疑問を抱く。

 

「とは言え貴様もここまでだな。かつての部下を処分せねばならんとは、実に胸が痛い・・・。だが私は貴様のDC戦争、防衛戦争時の戦果やシャドウミラー隊を討伐したという功績を忘れてはいない。特別に帝国監察軍の親衛隊へと推挙してやろう。」

 

「帝国監察軍だと!?」

 

「そう、本来ならザドックに搭乗した適正のあるパイロットだけが転送され、グリーンフラワーで強化措置を施されるのだがな・・・こいつ等のように!!」

 

ハンスが部下のヘルメットを弾き飛ばすと、そこからは機械の様なものに繋がれた緑色に光る球体が現れる。

 

「馬鹿な・・・そいつ等は人間なのか・・・!!?」

 

「ふっふっふ、驚いたようだなぁキョウスケ・ナンブ。こいつ等こそ帝国観察軍より与えられたUCEの新たなる戦力、強化兵。そしてお前の未来の姿だ、光栄に思え!」

 

「くっ・・・・!?冗談じゃない・・・!!」

 

キョウスケは強化兵を一目見てその異常性に気付くと同時に、棟内が騒がしくなる。

 

「何事だ!?」

 

ハンスが職員に尋ねる。

 

「大変ですハンス准将!マナミ・ハミルが逃亡したとのことです!」

 

「何だと!?アーチボルト少佐は何をしているんだ!!?」

 

報告を聞いたハンスが声を荒げると、次の瞬間この部屋の扉が開き、焼夷弾がばらまかれる。

 

「今度はなんだ!!?」

 

緊急報告からの咄嗟の出来事にハンス・ヴィーパーは動揺する。

 

「無事か、キョウスケ!!」

 

「ハミルトン!?・・・一体どうやって!?」

 

突入してきたハミルトンがキョウスケの拘束を解く。

 

「俺も捕まってんだが、知り合いの傭兵に助けられたのさ。そんで手はずを整えてアンタともう一人の仲間を救出しようって算段だ・・・。」

 

「もう一人?(さっきのマナミ・ハミルと言う名・・・確かマーチウィンドを支援しているという貴族だったか・・・)」

 

キョウスケが状況を理解するが、しかし二人は強化兵たちに囲まれる。

 

「ふっふっふ、逃げられると思ったか?この強化兵たちに煙幕など通用せん。残念だったなぁ、キョウスケ・ナンブぅ・・・・ん!!?」

 

部屋内の煙が残る中、ハンス・ヴィーパーが勝ち誇った顔でキョウスケに近づくと、その額に何かゴリっとした金属が接触する。

 

「射撃はあまり得意じゃないが、この距離なら外さん。」

 

煙の中でキョウスケはハミルトンから渡された拳銃をハンスの額に突き付けていた。

 

「ま・・・まてキョウスケ大尉!?強化兵は引かせる、銃を降ろせ、話し合おうじゃないか、な?」

 

ハンスは慌てた顔でそう提案してくる。

 

「お前にはこのまま人質になってもらう・・・その価値があるかは知らんがな。」

 

キョウスケとハミルトンはハンスに銃を突きつけながら部屋を後にした。

 





【人物紹介】

「魔装機神」
ルビッカ・ハッキネン(CV:長嶝高士)

「新スーパーロボット大戦」
強化兵


本来アーチボルトの好きな紅茶はアッサムらしいのですが、ここはあえてローズにしてみました。

貴族の階級は国によって異なるらしいのですが、ここでは日本に根付いたイメージで[騎士→男爵→子爵→伯爵→侯爵→公爵→大公→王族]としています。(間違ってたらすいません)つまり本来、ブロッケン伯爵はあしゅら男爵よりだいぶ偉いはずなんです(まあアレは爵位というよりフルネームが「あしゅら男爵」「ブロッケン伯爵」と言ったニュアンスですが)。

忘れてる人も多いと思いますが、ルビッカ・ハッキネンは魔装機神1に登場するキャラクターです。元々は会計士をしながら殺し屋稼業を営んでいる快楽殺人鬼で、催眠術の使い手(本来は会話の中で暗示を掛けていく手法なのですが・・・)、そしてテュッティの家族を皆殺しにした犯人であり、ザムジードの初代パイロットを殺害した人。
ここではグリムズ家の会計士として登場させてみました。

強化兵は新に登場する敵兵士で、Dr.ヘルの人体実験によって改造された地球人です。作中では「化け物に改造された」というニュアンスで表現されてますが、グラフィックはただの黒いプロテクターの兵隊になってます。なので外見の描写はサルファでの「エツィーラに改造されたアヤ」の姿を流用してみました。
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