「ちくしょう、このままじゃ落とされちまう!?」
シースの群れがレイディバードを取り囲むように飛び、ハミルトンが操縦しながら一人で嘆いている。
「馬鹿な・・・この私が乗っているというのになぜこんな・・・!?」
拘束されているハンス・ヴィーパーが自分の存在を考慮せずに攻撃を仕掛けてくるシース群を見て狼狽する。
「おい貴様・・・こうなったのも貴様のせいだぞ!早く何とかしろ!!」
「連中を止められなかったくせに偉そうにすんな!」
ハンスがシースの部隊に攻撃を中止させようとしたが、その声は無視され今に至る。
「・・・なんで俺がこんな奴と一緒に逃げなきゃいけねえんだ・・・ったく、泣けてくるぜ。」
ハミルトンが心底落胆すると、突然ミサイルの雨が飛来し、レイディバードを避けるようにシースだけが爆撃された。
「なんだ!?何が起こった!!?」
「トレイラーシップ[ヴァルストーク]!ブレス艦長が来てくれたのか!!?」
△
「アレがリチャードから報告があったレイディバードだな。追っ手はUCEが運用しているシース、さてどうしたもんか・・・。」
民間輸送艦ヴァルストークのブリッジで、艦長であるブレスフィールド・アーディガンが呟く。
モニターにはUCEの起動兵器、シースに追われる輸送機が映し出されている。
「乗っているのはマーチウィンドのハミルトンさんとその執事のローレンスさんだっけ?」
「アカネ、ローレンスさんはハミル家の執事よ。そしてハミルトンさんはハミル家の人間じゃないわ。」
アーディガン家の次女[アカネ・アーディガン]が姉の[シホミ・アーディガン]に勘違いを訂正され、「ややこしいな」と呟く。
「どうします?あなた。レイディバードを助けるにはUCEの機体を撃墜するしかありませんよ?」
ヴァルストークの総舵手を担当している[ユウミ・アーディガン]が艦長であり夫でもあるブレスに尋ねる。
「・・・そう言えばあのレイディバードにはUCEのハンス・ヴィーパー准将も乗っているはずでは?」
続けてシホミがブレスに告げる。
「ああ、そう言えばそんな事も言っていたな。だったらこのまま放っておくと准将殿の命が危険だ。仕方がない、アカネ、誘導マイクロミサイルだ。」
「了解、ミサイル発射!!」
ヴァルストークは無数のミサイルを発射し、レイディバードに纏わりつくシースを撃退した。
▽▽
「流石にこれ以上は・・・だがただでは終わらん!」
スイームルグは肩に刺さったランスを掴み、ランスバロンの動きを止めると至近距離からアッシャークルーを浴びせる。
ランスバロンは咄嗟にランスを手放し、シールドを構えながらスラクターで急上昇する。
『まったく、往生際の悪い事で・・・しかしこのランスバロンも相当なダメージを受けてしまいましたねぇ、お遊びはここまでにしておきましょうか!』
後方から飛行戦艦ストークが現れ、ザドックやシースが大量に出撃し、スイームルグはその部隊に囲まれる。
「ちっ・・・ここに来て新たな山札とは・・・。」
「そんな・・・私たちはあの男に弄ばれていたの!?」
「そういう男だ・・・だが大人しくやられてやる筋合いはない!」
キョウスケはそう言って半壊したスイームルグでの交戦を続ける。
「少佐、スイームルグが・・・!?」
「なんとか耐えているようだが・・・アレでは・・・。」
スイームルグの状況を見てリチャードとサヤが呟く。
しかしアンノウン・エクストライカーズの二機はハーラルとシアスィ群を相手に手数が足りずに劣勢を強いられていた。
「何とか援護に廻りたいところだが・・・まさか会計士にてこずるとはな・・・」
『ふふふ、起動兵器での殺しなど味気ないと思っていたが・・・、素晴らしい・・・実に素晴らしい機体だよ、このハーラルは・・・!まるで私の高揚感がそのままマシンの力になるかのようだ!』
ハーラルが腕部から高出力のビームを連射してくる。
「戦うにつれてだんだんパワーが上がって行っている?無人機として運用されていたハーラルとは比べ物にならんほどの性能だが・・・これがE2の真価という事なのか?」
あらゆるエネルギーを増幅させるE2コアに、本来ならば魔装機操者として召喚されるほどの適正を持っていたルビッカのプラーナが反応し、ハーラルの能力を著しく高めていた。
「私が援護に・・・」
『アーチボルト様の邪魔はさせませんわよ!』
ライアスがスイームルグのフォローに廻ろうとすると、正面からエルブルスが現れ連装ミサイルやビームキャノンを発射する。サヤはそれに対してリバービームとスターリーミサイルで応戦する。
「アイシャ・リッジモンド・・・貴族の令嬢がこれほどの操縦技術を身につけているなんて・・・?」
『貴女たちのような無法者が手を貸すから、あの娘が更生できないのです!大人しく撃墜されなさい!!』
戦闘機同士のドッグファイトの中、アイシャがサヤに食って掛かる。
「(催眠状態ときいていたけど、マインドコントロールの類・・・?)言いがかりですね。私たちは傭兵、ただ雇われただけです・・・もちろん仕事は選ばせてもらいますが。」
『世迷言を・・・後ろを取りましたわ、これで終わりでしてよ!!』
エルブルスがライアスの背後を取り、砲撃を繰り返す。
「ええ、この状況を待っていました・・・これで終わりです!」
サヤはエルブルスの前を飛びながら電磁機雷、リュラーマインを設置する。
『しゃらくさいですわ・・・コード・ノーブルフェニックス!!』
エルブルスは炎を纏い、勢いに任せてリュラーマインの電磁網を突破する。
「なんて出鱈目な・・・!!?」
『これで終わりでしてよ・・・え!!?』
「武装セーフティ解除、ヒートエッジエクスプロイラー!!」
エルブルスがノーブルフェニックスを発動しライアスを追い詰めようとした瞬間、それとは別の炎の鳥が飛来しエルブルスに突進する。
「あれはヴァルホーク・・・ヴァルストークファミリーが来てくれた・・・!?」
サヤが炎の中から現れた青と白を基調とした戦闘機を見てその名を呟くと、更に200Mにも満たない小型戦艦が現れ、高出力のビームがストークやザドック部隊を撃退した。
「よっしゃ直撃、どんなもんよアタシの腕前は!!」
「油断しないのアカネ、敵はまだ残っているわ。」
現れた小型戦艦、ヴァルストークのブリッジで火器管制と砲撃を担当するアカネがガッツポーズを取りながら叫ぶと、オペレーターを担当しているシホミがそれを窘める。
「戦艦なのか・・・?随分と小型だが・・・」
「アレはヴァルストーク、お爺様の代から付き合いのあるトレイラーの船よ!」
「トレイラー、たしか宇宙開拓時代の業者だったか・・・?」
「数は減っているけどトレイラーは今でも活動している人たちもいるわ。あのヴァルストークファミリーも以前からアンノウン・エクストライカーズと共に地球圏のために時々協力してくれているの!」
キョウスケの疑問にマナミが答えると、キョウスケは「時々なのか・・・」とつぶやく。
そこへヴァルストークからの通信が入る。
『聞こえますか、マナミさん!ハッチを開きます、スイームルグはヴァルストークへ・・・。』
キョウスケとマナミは指示に従いヴァルストークへ着艦する。
『おやおや、ゲリラや傭兵の次は宇宙海賊とは・・・ハミル伯爵家の人脈は随分と黒いようですね?」
アーチボルトがヴァルストークに向けて語り掛ける。
「いえいえ、殺人鬼を会計士として取っているグリムズ男爵家の人脈には遠く及びませんよ、アーチボルト・グリムズ男爵。」
ヴァルストーク艦長のブレスはアーチボルトと似たような調子で言葉を返す。
「貴方方の事は存じていますよ、ヴァルストークファミリー。聞けば随分と経営に困ってらっしゃるとか・・・どうです?今こちらに付くのであれば我がグリムズ財団が専属契約を結んであげてもいいのですよ?もちろん料金は言い値で構いません。』
「マジで!?」
「あなた・・・?」
ブレスの反応に妻であるユウミが訝し気に視線を送る。
「そんな顔をすんなよユウミ、こんな話に乗るわけねえだろ?ハミル家とは親父の代からの付き合いなんだからよ・・・全速前進、離脱する!」
ブレスが誤魔化すように指示を出す。
「そう言うわけだアーチボルト男爵、ここは退かせてもらう。次に会ったときは容赦しないからな、覚えてろよ!」
「なんでそんなわざとらしい捨て台詞を・・・・」
ユウミはそう呆れながら舵を取る。
「よし、サヤ、俺たちも退くぞ!」
『そうはさせんよ、傭兵!』
「ちっ、面倒な会計士だ!」
ハーラルが全身から複数の刃を発生させながらオルフェスに迫る。
「キャレット、クロスコンバットモード、ゴーッ!」
「了解デス、システム移行、リンクゲージ確認、バランサー確認、白兵戦モード確認、ヴァルホーク、変形シマス。」
ヴァルホークのパイロットが叫ぶとサブシートの自律型サポートロボット[キャレット]がそれに答え、ヴァルホークは戦闘機から人型ロボットへと変形する。
そしてオルフェスの前に割って入り、二刀のビームソードで[レイブレード]でハーラルの攻撃を受けとめた。
「くらえ、プラズマエクスキュージョン!」
ヴァルホークはハーラルを押さえながら腹部からプラズマの球を発生させ、至近距離で発射する。
『トレイラー、宇宙のチンピラごときがこの私の邪魔をするか。ならばお前から・・・・なんだ!?』
プラズマエクスキュージョンに耐えたハーラルはエネルギーコアの出力を更に上昇させ、乗っているルビッカさえ動揺し始める。
『エネルギーが上昇し続けている!?アーチボルト閣下、これは一体!?』
『おやおや、どうやらE2コアが暴走しているようですねぇ・・・このままではこの辺りが消滅するほどの大爆発が起こってしまいます。』
『そ、そんな・・!!?クソッ!男爵閣下、私は一体どうしたら・・・!?』
アーチボルトの言葉でルビッカは慌て始める。
たとえ脱出装置を起動しようと、そのまま機体に乗り続けようと、もはやE2の大爆発から逃れるすべはなかった。この瞬間、ルビッカ・ハッキネンの死はすでに確定したのである。
『そうですねぇ・・・もはやキミに出来ることは一人でも多く道連れにする事くらいです、期待していますよルビッカ君。あ、とりあえず危ないので僕は離れておくことにしますね。』
『そんな、待ってくださいアーチボルト閣下!!・・・アーチボルトォォォ!!!!』
ランスバロンが最大出力でその場から離脱すると、ハーラルを中心に激しい白光が放たれ、辺り一帯を包み込んだ。
▽▽▽
「流石に狭いな・・・。」
辺りを見てリチャードが呟く。輸送機としても小型の部類に入るヴァルストークのペイロードに、オルフェスとライアスに加え、50M級のスイームルグが詰め込まれていることで空間が圧迫されて見える。
「どうなる事かと思ったが、なんとか全員無事だな・・・?」
「先に回収されていて助かりました、スイームルグではあのとてつもない爆発から逃げきれなかったでしょうから。」
キョウスケがリチャードにそう答える。
「あの爆発は一体・・・そうだわ、アイシャ・・・アイシャはどうなったの!?」
「あのエルブルスの性能ならば難を逃れるのは可能ですが、ルビッカ・ハッキネンに洗脳されていたアイシャ・リッジモンドがそれを見捨てて離脱するとは考えづらいですね・・・」
「そんな・・・アイシャ。」
マナミの問いにエルブルスと交戦していたサヤが答える。
「今考えても仕方のない事だ。経験上この場合、生きているパターンも少なくない。」
何度も死にかけたことがあるキョウスケが不器用にマナミを励ます。
「にしてもこの艦、ヴァルストークと言ったか?ストーク級には見えないな・・・随分と小型、そして高性能だ。」
キョウスケは違うと予想しつつも、その名称からストークとの関連性を問う。
「ストーク級とは関係ありません、このヴァルストークは何十年も前に火星で発掘された船なんです。けれど基本性能は現行の軍用機にも引けを取りませんよ。」
格納庫で出迎えてくれたシホミ・アーディガンがキョウスケにそう説明する。
「さっきの戦闘機の姿が見当たらないようだが?」
キョウスケは乱入してきた機動兵器、ヴァルホークの姿が見当たらない事を尋ねる。
「ヴァルホークはこの下に専用の格納ブロックがあるんです。あの子もそろそろ上がってくるころですけど・・・。」
シホミがそう告げると、ヴァルホークの専用ブロックに通じるエレベータから栗色の髪をした少女と小型の自律型ロボットが登ってくる。
「シホミ姉ちゃん、ただいま!」「タダイマモドリマシタ」
「お疲れ様、ケガはない?」
「へいきへいき・・・その人が例のベーオウルフ?」
少女はそう言いながらキョウスケの顔を覗き込む。
(またか・・・)
キョウスケがその名で呼ばれやや眉をひそめるが、少女のリアクションはキョウスケの予想外のものだった。
「やっべぇ、ちょーイケメンじゃーん!」
やや品性に欠けるその少女、それは本来の宇宙では男子として生まれるはずだったアーディガン家の三女、アリア・アーディガンの姿だった。
【人物紹介】
「スーパーロボット大戦W」
アリア・アーディガン(W女性主人公の没データ)
ブレスフィールド・アーディガン
シホミ・アーディガン
アカネ・アーディガン
ユウミ・アーディガン
キャレット
【ロボット紹介】
「スーパーロボット大戦W」
ヴァルストーク
ヴァルホーク
スパロボWの主人公は男で固定ですが、なんでも女性バージョンの没データが存在しているとのことなのであえてそれを引っ張ってきました。名前は作中の内容から、カズマが女の子だった場合に付けられていたはずの[アリア]の名前をそのまま使いましたが、ブレス以外の家族がみんな日本名なので一人だけ浮いてる感じがします。
総舵手にはホリスの代わりに原作ゲームでは故人となっているお母さんを使う事にしました。