新スーパーロボット大戦OG64   作:舟太郎

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15話 ほんの少しの休息

 

 

「それじゃキョウスケ中尉は無事なんだな?」

 

リュウセイがセレインに問いかける。

 

「ああ、ハミルトンの話では今はヴァルストークファミリー・・・信用できる人物に保護されているらしい。」

 

「だったらできるだけ早く合流しねえと・・・フェイ中尉、俺たちが元の世界に帰る方法はあるんだよな?」

 

今度はフェイ・ロシュナンテに尋ねる。

 

「かつて連邦兵器開発局のジル・バルドナ博士が開発した転移装置[バルドナドライブ]が太平洋沖に存在しています。それを起動させて条件をそろえれば・・・」

 

「ジル・バルドナ・・・なんだ?なにか懐かしいような・・・。」

 

隣で聞いていたバレル・オーランドがその名前に反応する。

 

「バルドナ・ドライブ・・・?俺もどこかでその名前は・・・って、バルドナだって!!?」

 

その名を聞いてリュウセイが少し遅れて驚く。それは惑星エリアで共に戦った[オータム・フォー]が運用していた戦艦[アーク・アルファ]に搭載されていた[Vドライブ]、そして敵対していた[シーズン]の首魁、[ドクターシキ]が使用していた次元転移システム、[バルドナ・ペネストレイター]を連想させるものだった。

 

「こちら側のバルドナドライブは17年前の暴走事故以降使われていないはずですが・・・UCEの幹部であるベルクトがそれを起動させるためにエネルギーを集めているようです。」

 

「ふ~ん、だったらそのバルドナチャージが終わったところで使わせてもらえばいいって事か?」

 

「なんでそうなるんだ!?暴走事故の事は気にならないの?」

 

バレルが呆れた様子でリュウセイに尋ねる。

 

「いや~、そもそも俺とキョウスケ中尉がこの世界にいること自体が事故みたいなもんだしな。暴走だろうと事故だろう転移現象に巻き込まれれば元の世界に戻れるんじゃないか?」

 

それを聞いたセレインが「どんな理屈だ・・・。」と遠目から呆れた様子を見せ、リュウセイは「こっちの連れは分の悪い賭けが大好きだからな」と返す。

 

「小規模の次元転移に必要なエネルギーは十分残っているはず・・・ですがベルクトはバルドナドライブを何か別の事に使おうとしている・・・それが何かは分りませんが、これだけは言える」

 

フェイ・ロシュナンテはバレル・オーランドを見て呟く。

 

「彼は世界を憎んでいる。」

 

 

◆◆◆◆

 

 

『ベルクト、E2の残留エネルギーはおおむね回収できたわ。爆発から直接吸収したわけでもないのにかなりのチャージ量よ。』

 

ハーラルの爆発跡地にて、ベルクト隊のグリゴリが集まっている。

 

「ご苦労だ、アンジェ。ハーラルのE2コアにルビッカ・ハッキネンのプラーナが反応した結果か。アーチボルト・グリムズはいい仕事をしてくれた。」

 

紅い戦闘母艦[セプティン]のブリッジで黒い仮面の男、ベルクトが部下のアンジェ・レイバーに答える。

 

「あらゆるエネルギーに反応し、自らのエネルギーを増殖させるE2物質、そしてあらゆるエネルギーを取り込み変換するバルドナドライブ。やはりこの二つの親和性は高いらしいね。」

 

モニターの向こう側で男が話す。映像では顔を確認できない。

 

「顔くらい見せたらどうだ、アルバート・ライネン。」

 

「それはお互い様だろう、ベルクト。」

 

ベルクトがモニターを通して男に語り掛け、相手も常時仮面をつけたままのベルクトに同じ指摘を返す。

アルバート・ライネン、かつて連邦軍兵器開発局局長を務めた科学者であり、地球圏の防衛を目的とする新兵器の開発プロジェクト進めていた人物である。

 

「だがそれでもやはりバルドナドライブのフルチャージには足りないようだな・・・。」

 

「フェル・グレーデン博士のチームが開発したタイムタービンさえ残っていれば話は速かったのだがね。」

 

アルバート・ライネンは自分と同じく兵器開発局で別の研究を行っていた科学者の名をを引き合いに出す。

 

「時間の流れから永続的に生み出されるエネルギー、時粒子、眉唾物だな。シャドウミラー隊はエクサランスを評価していたようだが・・・。」

 

「動力源としては魅力的だよ・・・テスラ・ライヒ研究所のヘリオス・オリュンポス博士もアレをリュケイオスやアギュイエウスの補助システムとして利用しようと考えていたようだからね。」

 

「アンノウンによる干渉があったとは言え、起動兵器単体で勝手に次元転移を発生させるなど、バルドナドライブにとってはノイズにしかならんさ。」

 

「そうだね、結果としてフェル博士の子供たちはこことは別の世界へと旅立った。そしてそれはキミの目的ではない。」

 

「そう、そして私と貴様のの目的もまた異なる。」

 

ベルクトとアルバート・ライネン、両者は互いに全く逆の目的を口にする。

 

「私はこの世界を破壊する。」

 

「ならば私はこの世界を守るとしよう。」

 

 

◆◆◆◆

 

 

「美味い。」

 

ヴァルストークの食堂でキョウスケが冷やし中華を啜りながら呟く。

 

「にしても、まさかいきなり宇宙に上がるとはな・・・。」

 

「追っ手を撒くのにはそれが一番楽だからね。大気圏を超えてこのヴァルストークに追いつける戦艦なんていないんだから!」

 

「何言ってんのアリア、スペースノア級やトライロバイト級が追いかけてきたら流石に逃げ切れないよ。」

 

アリア・アーディガンがキョウスケに答え、アカネがそう異を唱える。

 

「揚げ足取らないでよアカネ姉ちゃん、そんなレア物がやすやすと持ち場を離れて追ってこれるわけないでしょ?あとマヨネーズかけ過ぎ。」

 

アカネの手元では冷やし中華が大量のマヨネーズで覆い隠されていく。

 

(冷やし中華にマヨネーズ・・・かける者もいるとは聞いていたが、あの量は異常だな・・・)

 

キョウスケがアカネの皿を見て若干引きつつ、自分の皿の端にも少し乗せてみる。

 

(・・・悪くない。)

 

「大気圏内外を問わず航行できる輸送艦ならタウゼントフェスラー辺りが同規模でしょうか。ペイロードはタウゼントフェスラーの方が広いですが、航行・戦闘においてはヴァルストークの方が遥かに上です。」

 

「それどころか、大気圏内のみ、大気圏外のみだけで評価してもこのトレイラーシップに対抗出来る船はそうそうないだろうな。」

 

サヤ・クルーガーとリチャード・クルーガーがそれぞれヴァルストークを評価する。

 

「ヴァルストークは俺の親父、トースト・アーディガンが火星で発掘した戦艦なんだが、今の技術でも解析できないブラックボックスのせいで解放されていない機能が多く残されているようだ。」

 

この艦の艦長であり、料理当番のブレスが餃子と唐揚げを運びながら娘たちの会話に混ざる。

 

「その発掘作業や解析を支援していたのがハミル家という事ですか・・・(という事はこの艦もまた古代兵器の類なのか?)」

 

キョウスケはそう言いながら自分のチームで運用されている超機人を連想する。

 

「それ以降もマナミちゃんちとはなんだかんだで付き合いがあるんだよね。ハミル家の依頼で土星でタイムマシンを作ろうとしてた人たちに補給物資を運んだりしてたし・・・。」

 

「フェル・グレーデン博士の研究チームだな・・・。連邦の兵器開発局の所属だったが軍からの予算はあまり降りなかったらしい。」

 

「そりゃ作ってるのがタイムマシンじゃね。アタシはそう言うの好きだけど、普通は税金で何作ってんだって話になるもん。」

 

アカネがそんな感想を抱きながら餃子にマヨネーズをかけ、一口で頬張りる。

 

「だが彼らはハミル家の支援で10年にわたって土星で時粒子の採取と研究を続け、時間の流れをエネルギーに変えるタイムタービンの開発に成功した。」

 

(フェル・グレーデン、もしやラウルたちの父親か・・・?ひょっとしてアイツらも土星で生活していたのか・・・?)

 

キョウスケはインスペクター事件や修羅の乱で共に戦った仲間の思わぬ経歴に関心を示す。

 

「時の流れをエネルギーに変えるタイムタービン、それをこの世界、この時代だけの技術で一から作り出したとなると、まさに天才だな・・・。」

 

リチャードが小声で呟く。粒子加速炉[レプトンベクトラ―]を搭載するオルフェスに乗る彼もまた時粒子を用いた技術に興味をもっているようだ。

 

「ところでさ、キョウスケさんは恋人とかいるんですか?」

 

アリア・アーディガンが唐突に不躾な質問をキョウスケに投げかける。

 

「ああ、元の世界にな・・・。」

 

キョウスケが事実を短く答えると、アリアは「ちぇっ!」と舌打ちする。

 

「アリア、あんたイケメンなら誰でも言いわけ?」

 

「イケメンなら誰でもいいわけじゃないよ、マッチョなら誰でもいいアカネ姉ちゃんとは違ってね。」

 

アリアは「チッチッチ」と人差し指を振り、更に答える。

 

「イケメンであること、それは前提条件と言うものだよ、おねえちゃん。」

 

「アタシの妹がルッキズムの権化だった・・・!?」

 

「アカネ姉ちゃんのマッチョ好きだって一種のルッキズムだからね!」

 

「何言ってんの、筋肉の見た目は努力と忍耐、そして規則正しい生活の証だよ。真面目な人間じゃないとマッチョにはなれないんだから!たまたま運よく美形に生まれた人だけの間とは違うのだよ!」

 

「部屋に地味な水泳選手のポスターを張ってるくせに!」

 

「ゲンナジー選手は地味じゃない!」

 

「我が娘たちながら酷い会話だな・・・」

 

ブレスが娘たちの会話に呆れる。

 

「ママみたいな美人と結婚したパパにはルッキズムに関して何も言う資格無いよ、鷹の目。」

 

この父親こそ、昔素顔を隠してトレイラーとして活動していた妻ユウミが美形であることを見抜いた[鷹の目]の異名を持つ男だった。

 

「アリア・・・お前なんでそんな事を・・・?」

 

「この前ダイマ社長が話してくれたよ、パパとママの馴れ初め。いや~、やるもんだね~、元宇宙海賊で鷹の目って・・・世界最強剣士とかじゃなくて本当によかったよ。」

 

「またダイマかよ・・・あんにゃろう・・・」

 

ブレスはこの場にいない同郷の悪友に対し、怒りを覚える。

アーディガン一家による団欒の傍らで、マナミの箸は止まっている。

 

「フォークの方が良かったか?」

 

「いえ、そう言うわけでは・・・ただローレンスやアイシャの事が心配で・・・」

 

そう口にするマナミの表情は暗い。

 

「マナミ、一つ確認しておきたいんだが、お前やマーチウィンドの連中は反体制側の人間なのか?」

 

キョウスケがマナミに問いかける。

世界は違えど、こちら側の連邦政府に当たるUCEとベーオウルフとの関係を引きずる形で政府軍に追われるのは好ましくない状況だった。

 

「そうね、少なくともあたしは今のUCEの在り方を認めていないわ。キョウスケ中尉、あなたは先刻のUCEを垣間見てまともな組織だと思うの?」

 

「俺はこの世界の人間じゃないし、それに元々それを問う立場にもはない。この世界の国家や組織が腐敗しているとは聞いていたが、そこに口出しするつもりは無い。」

 

キョウスケ・ナンブは議論しない。あくまでも[戦争]と言う緊急事態において国のために戦う事を職務とする生粋の軍人あり、それを自覚し、わきまえている。

マナミはそんなキョウスケの返答に対し「ズルい答えね」と返す。

 

「でなければ軍人などやってられんからな。・・・だがお前はA級市民とやらであり、その恩恵を受けていた側の人間だろう?貴族でもあるお前の立場なら体制側でも出来ることはあったんじゃないか?」

 

「無いな、地球圏統一国家と言えば聞こえはいいが、その実態はUCEの独裁政権でしかない。大統領と言っても選挙で選ばれているわけじゃないんだからな。」

 

そう切り返したのはリチャード・クルーガーだった。

旧西暦、地球連邦制が設立する以前は、独立した世界各国のいずれも既に自国民の支持を失い、民主主義を掲げる国に至っては政権の存続すら危うい状態だった。

 

「『世界各国が一つになって協力し合う』、建前としては上等だが、為政者が結託して民衆が逆らえない仕組みを再構築したのが旧地球連邦政府だ。時の権力者は地球連邦の設立をきっかけに民主主義を排除し、連邦・・・つまり自分たちによる支配体制を盤石なものにしようとしたのさ。」

 

「・・・・・。」

 

キョウスケは黙ってリチャードの話を聞く。

 

「それでも連邦時代は各国の裁量権が強かったし、旧西暦の名残が強く残っている日本育ちのお前さんには実感しづらいだろう。だが宇宙移民に対する仕打ちを見れば連邦が独裁政権を維持したがっていたのは明白なんじゃないか?」

 

ホープ事件、エルピス事件、どちらもその実情は宇宙移民の独立を阻む弾圧でしかなかった。異星人の存在が確認される以前、宇宙はあくまでも地球の支配地であり、連邦の高官がそれを覆すことを良しとするはずがなかったのである。

 

「政治家にとっては民衆の声なんざジャマでしかないのさ。古来より、為政者の目指すところは独裁だよ。そして様々な国の様々な時代で人類はそれに対して革命を繰り返してきた、もちろんお前さんの祖国である日本でもな。」

 

「リチャード少佐はまるで地球連邦政府が誕生する以前の世界を知っているかの口ぶりですが・・・?」

 

キョウスケはリチャードの説明に対し、その内容よりもそれを説明するリチャード自身に疑問を持つ。

 

「そうか?これでも歴史好きなのさ、三国志とかな・・・。」

 

「少佐とサヤちゃんは潜伏する時には落語家とその弟子を名乗ってるしね、歴史に詳しくないと落語なんて出来ないもん。ねぇねぇサヤちゃん、久しぶりにアレ聞かせてよ!」

 

リチャードの話にすっかり飽きているアリアがそう補足しながらサヤに要求する。

 

「アレを・・・?今この場でですか?」

 

サヤはアリアの急な申し出に困惑する。

 

「いいじゃん!アレはいつどこで何度聞いても面白いんだからさ!」

 

「そうですか、そこまでおっしゃるなら一席だけ・・・」

 

サヤは両手をピストルの形にして前に付きつけ、ガニ股で軽くジャンプをしながら叫ぶ。

 

「ゲッツ!」

 

「それは落語じゃない。」

 

キョウスケが一瞬でツッコむ。サヤが披露したそれは落語の一席ではなく、旧西暦の日本で一世を風靡したピン芸人の超絶面白一発ギャグだった。

 

「キョウスケ中尉、キミはツッコミのタイミングが上手いんだな。」

 

ブレスがキョウスケのツッコミのスキルを見て感心する。

 

「そうでしょうか?自分が所属する部隊では同僚たちが常にふざけがちなので自然とこうなりましたが・・・。」

 

「ふふ・・・。」

 

ずっと暗い表情をしていたマナミの顔に、いつの間にかかすかに笑みが浮かんでいる。

キョウスケとしてはもうすこしこのメンバー、マナミやマーチウィンド、それに協力するアンノウン・エクストライカーズやヴァルストークファミリーの立ち位置や方針を把握したかったが、ヴァルストークのクルーたちによってこの場はいつの間にか和やかなムードになっていた。

 

「・・・まあいいか。」

 

キョウスケは鼻から溜め息を漏らしながらそう呟いた。

 




【登場人物紹介】

[Another Century's Episode2]
アルバート・ライネン(CV:増谷康紀)


【登場機体】
[Another Century's Episode3]
セプティン



ブレスの父[トースト・アーディガン]は双葉社の[スーパーロボット大戦W 完全解析ファイル]という攻略本のブレスの紹介文の中で名前が載っているだけの存在です。(エンターブレイン版の攻略本には載ってませんし、ゲームに登場せず一部の攻略本にのみ乗ってる名前が公式なのかは分かりませんが)

スパロボRの主人公たちは原作ゲームでは[新連邦(ガンダムX)]の兵器開発部を名乗っているんです。
そしてアルバート・ライネンはUCEの兵器開発局に在籍していた科学者なので、その二つを合わせてアルバート・ライネンとフェル・グレーデンの所属は旧連邦の兵器開発局と言う設定にしてみました。
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