「一体なんなのです、あのザドックと言う機体は!?」
旧地球連邦軍北米支部ラングレー基地にて、エルリッヒ・シュターゼンはザドックと消えたパイロットに付いて参謀本部に掛け合い、問いただしていた。
『あ?特尉、何を訳の分からん事を喚いているのだ?ザドックはただの起動兵器に過ぎん、それもかなり優秀な部類のな。パイロットが消えたというのなら、あの得体のしれないベーオウルフが何かしたんじゃないのか?』
「ですがハンス准将!?」
エルリッヒが声を荒げる。通信の相手はハンス・ヴィーパー准将、もう一つの世界ではDC戦争時には敵に寝返り戦死した、地球連邦軍の中佐だった男である。
『言い訳をするな!ベーオウルフやゲリラ共を取り逃がしたのは失態だぞ、エルリッヒ特尉。何のためのGハウンドだと思っているんだ?あ?言いたいことがあるならまずは連中をさっさと捕まえることだな、特尉!』
ハンス・ヴィーパーはそう言って通信を切った。
「その様子じゃまったく掛け合ってもらえなかったようですね、エルリッヒ特尉。」
ラングレー基地に所属する二人の軍人がエルリッヒに声を掛ける。一人はスキンヘッドのいかつい男、もう一人は気さくそうな若い金髪の男だ。
「戦技研究班か・・・。」
「そんな呼び方はしないでくれよ特尉殿、俺たちは[グローリー・スター]だぜ!」
「それは失礼をした、トビー中尉。それにデンゼル大尉も・・・。」
エルリッヒはそう言って新地球連邦軍戦技研究班[グローリー・スター]のデンゼル・ハマー大尉とトビー・ワトソン中尉に謝罪する。
「今の話は例のザドックの件ですね?話には聞いていたが、まさか本当にパイロットが消えるとは。」
「けど特尉殿、今回やり合ったのは例のベーオウルフなんですよね?ハンスの野郎に同意したくはありませんが、なにか得体のしれない兵器でパイロットだけを消されたって可能性もあるんじゃ?」
やり取りを聞いていたデンゼルとトビーはそんな見解を示す。
どうやらトビー・ワトソンはハンス・ヴィーパーを快く思っていないようだ。
「いや、ベーオウルフ・・・ゲシュペンストmarkⅢの兵装は酷く原始的なもので、怪しげな雰囲気はなかったが・・・。」
エルリッヒは端末で戦闘時の映像を映し、二人に見せる。
「・・・なんだよ、この火薬の塊が突撃していくような戦い方は?」
「だが確かに、機体の中のパイロットだけを消失させるのが目的なら、このような戦い方はしませんね。」
一同は映像を見て、パイロット消失の要因がアルトアイゼンであるという可能性を取り除く。
「となれば、やはり怪しいのはザドックか・・・。」
「このラングレー基地には配備されていませんから直に見た訳ではありませんが、これまでに消えたパイロットは比較的練度の高い兵士だった聞いています。」
「腕のいいパイロットが消失しているという事か・・・何にせよ部下たちにこのままザドックを使わせ続けるのは・・・。」
エルリッヒが苦悩する。軍属である以上、上からの指示を聞かざるを得ない。
「集まっているようだな、諸君?」
そこへ大柄な黒人の軍人が現れる。
「グレッグ少将、挨拶が遅れてしまい申し訳ありません。」
エルリッヒが姿勢を正し敬礼する。現れたのはこれも向こう側の世界では既に戦死したはずのラングレー基地司令、グレッグ・パストラルだった。
「構わんよ、それにしても難儀しているようだな・・・あのハンス・ヴィーパーの元で働くのは・・・あの男の異例の出世は全てキミの功績あってのものだと聞いているが・・。」
「いえ、ハンス・ヴィーパー准将が新政府に重用されておられるだけです。」
「・・・キミは今の新連邦政府をどう思う?」
「質問の意図が分かりかねます。グレッグ少将が旧連邦派の方々と親しかったことは承知していますが、軍人が政権に疑問を持つなどあってはならない事です。そこが揺らいでしまえば人民は政権を軽視し、世の秩序が乱れる。」
エルリッヒはグレッグの問いに生真面目な回答を示す。
「だが現状、部下をザドックには乗せたくはない・・・。」
「それは・・・!」
グレッグに指摘され、エルリッヒは言葉を詰まらせる。
「時にエルリッヒ特尉、キミの部隊に任せたい任務がある。」
グレッグが唐突に提案してくる。
「お言葉ですが私の部隊は参謀本部預かり・・・そしてベーオウルフやマーチウィンドの討伐任務の最中です。」
「ハンス・ヴィーパーには私から話しておく。なに、あの出世に貪欲な男ならば嫌とは言わんさ、何せその政府の高官や貴族たちに名を売るチャンスだからな。」
「それはひょっとして・・・?」
「セント・クルスシティで例の催しがある。Gハウンドにはグローリー・スターと共にそこでの防衛任務に就いてもらう。キミの部隊にはこちらから機体を提供しよう。」
▽▽▽
「そんじゃそのセント・クルスシティってところに行けば、その向こう側から来たって女に会えるのか?・・・信用していいのかよ?」
テスラ・ライヒ研究所から離れ、一行が起動兵器で移動している最中、リュウセイがキョウスケに声を掛ける。
「解らん、本来なら慎重に見極めるべきだろうが。しかし今の俺たちにわざわざ俺たちに接触し、騙そうとは思わんだろう・・・。」
「ま、そうだわな・・・けど戦闘中のアルトの隙をついて接触するなんていい腕してるぜ。」
「クレイモアを使った後の硬直のタイミングを狙われた。以前アクセルにもそこを突かれて後れを取ったが・・・。」
キョウスケがかつての戦い(アニメ版)を思い出す。
「そういうのって普通は改修されたら直るもんなんじゃねえの?」
「いや、テスラドライブで機体のバランスを取ってはいるが、クレイモアを増やした結果使用時の硬直はむしろリーゼの方が悪化しているかもしれん。」
「どんな改造だよ・・・。まあアルトの武装は初見殺し的なところがあるけど、戦闘パターンの組み立ては限定的だし、知ってりゃ対応できなくはねえからな。」
「テスラ研での模擬戦ではお前にも遅れを取ったな。・・・さっきのエルリッヒ・シュターゼンとやらも次にやり合えばどうなるか分からん。」
リュウセイとキョウスケは惑星エリアに転移する直前に行っていた模擬戦を思い出しながら語る。
「キョウスケ中尉は一対一の勝負を好むけど、その辺はやっぱヴァイスとの連携戦闘を前提としてるよな。」
「手札を増やしたい所ではあるが、いかんせんWゲージも少なくてな・・・」
「ま、しばらくは俺がフォローするさ、エクセレン少尉みたいにゃいかねえだろうけど。・・・にしてもセント・クルスシティって聞いたことねえな、俺たちの世界には無かった街だよな?」
リュウセイが話を戻す。
「セント・クルスシティは新政府や軍の高官みたいな上流階級の連中が暮らすいけ好かない都市さ。」
リュウセイの後ろから男女の二人組が話しかけてくる。やたら目つきの悪い男と目元に星のマークを付けた赤いショートヘアの女だ。
「アンタらは、シグルーンに乗っていた奴らか?」
「そ、アタシはニーナ・フレーザー、そんでこっちの目つきが悪いのがホルヘよ。」
「ホルヘ・レイ・バルディビア・ロンバルディだ。」
「なんて!?」
リュウセイが思わずホルヘ・レイ・バルディビア・ロンバルディのフルネームを聞き返す。
「今の地球連邦政府はおかしいのさ。本当ならグライエン・グラスマンが次の大統領になるはずだったが、現大統領はアルバート・グレイ・・・カール・シュトレーゼマンの傀儡だ。」
「そのせいでノーマン・スレイ少将は地球圏防衛委員会の議長を退いて、今はカール・シュトレーゼマンがその席に座ってるって話よ。」
ホルヘとニーナが新地球連邦政府の現状を説明する。
異星人との徹底抗戦を唱えるグライエン・グラスマンやノーマン・スレイと、異星人に恭順しようとしていたカール・シュトレーゼマンやアルバート・グレイは政敵であった。
「カール・シュトレーゼマンにアルバート・グレイだって!?そいつらってたしか南極事件で地球を異星人に売ろうとしていた連中だよな!?それにノーマン少将が生きてんのか!?」
リュウセイが聞き覚えのある名前に食いつく。
元居た世界ではEOT特別審議会が南極のコーツランド基地において異星人と会談し、地球を明け渡そうとしていた。しかしそれはシュウ・シラカワのグランゾンによって妨害される。連邦軍、異星人、双方は多大なダメージを与えられ、事件はDC戦争の引き金となった。
EOT特別審議会のメンバーであったカール・シュトレーゼマンとアルバート・グレイはその後、エアロゲイターによって暗殺される事となる。
「・・・まさかこっちじゃ異星人との取引が成立してるなんてことねえよな?」
リュウセイが何気なくそんな事を口走る。
「異星人と会談?何の話?」
「何でもない。・・・それでノーマン少将はどうなったんだ?」
キョウスケが尋ねる。平行世界とは言えSRX計画やATX計画を立ち上げ、その後L5戦役で戦死したノーマン・スレイに関して気になるようだ。
「今はグライエン・グラスマンやケネス・ギャレットと共に旧連邦派を集めて抵抗運動を続けているよ。何を隠そう、アタシたちマーチウィンドの支援者もその一員さ!」
「ケネス・ギャレットは要らんな・・・。」
キョウスケは心の中でそうつぶやく。
「声に出てんぞ、キョウスケ中尉。」
声に出ていた。
「なるほどな、そこにシャドウミラーが加わるわけか。だいたいの状況は理解したが・・・ただ一つ、お前たちはシャドウミラーの目的を知っていたのか?」
「目的・・・?」
キョウスケはホルヘとニーナにシャドウミラーが自分たちの世界でやろうとしていた事を話した。
「闘争を日常とする世界、ヴィンデル大佐はそんな事を考えていたのか・・・挙句の果てにインスペクターと手を組むとはな・・・。」
「永遠の闘争を目的としていたのに、延々と逃走していたってのはウケるわね。」
話を聞いたホルヘとニーナがそんな感想を述べる。
「日本語上手いな・・・。」
リュウセイが妙な所で感心する。
「ホルヘ、ヴィンデル大佐はひょっとするとあの組織とも繋がってたのかもしれないよ。」
「やはりその可能性は高いな。」
ニーナがホルヘに告げ、ホルヘが同意する。
「あの組織?」
「そいつらは世界中の軍事企業の兵器開発を後押しすると同時に、その兵器をあらゆるテロ組織や傭兵の類に横流ししていたのさ。世界各地で起こっている紛争を長引かせ、コントロールするためにな。」
「一体何者なんだ?」
「その組織の名は、[LOTUS]」
▼▼▼
「副大統領、ザドックの普及が思わしくないようですが?」
ニブハル・ルブハルが不遜な態度で目の前の男にそう告げる。副大統領と呼ばれるには若すぎると言っていい外見の金髪の男だ。
「ああ、貴様たちが用意する機体は基本性能こそ高いが、これと言って売りになる長所も無い。既存の現行兵器を圧倒出来ねば販路は広がらないさ。」
「現状、この地球で作られた起動兵器の方が上だ。これでは新兵はともかく、一癖も二癖もあるベテランは使いたがらないだろう。」
若い男がさらに上から目線で返答し、その後ろに立つ長髪の壮年の男が無表情で補足する。
「言葉にはお気を付けください、副大統領。帝国観察軍が居なければ先の大戦で地球はゾヴォーク・・・インスペクターに支配されていたのですよ?」
「その帝国観察軍が影で地球を支配しているのだから同じことだろう、補佐官?」
「それが解っていながらその態度・・・全く理解しがたい。私は貴方を高く評価しているというのに・・・。」
「そうか、私はキミの事を大して評価していないが・・・?」
「貴様・・・!!?」
ニブハルは男の態度にイラついた様子を見せる。
「フフ、解りやすいなニブハル。向こう側の貴様はもう少し理性的だったぞ?」
「向こう側だと!?ルド・グロリア・・・貴様!!?・・・もういい、ザドックの販路はイスルギに任せる事にする。ご苦労だったな、副大統領!」
ニブハルはそう言って部屋を後にする。
「・・・良かったのか?あの様子では気づいていないだろう、虎の威を借る狐が別の虎の尾を踏んでいることに。」
無表情の男がルド・グロリアに尋ねる
「黒幕気取りの男にはああいう態度は堪えるだろう。・・・それにしても間者としてはあれほど有能だった男が立場を手に入れた途端にああも堕ちるとは、異星人と言っても地球人と何ら変わらんな。」
「それはそうと、[あの男]がキミに協力する事を約束してくれた。」
「そうか・・・ヴィンデルを失ったのは痛手だったが、あの男の協力を取りつけることができたのなら僥倖だ。話を付けてくれて感謝するよ、エイム・プレズバンド。私は[あの男]が苦手だからね。」
「向こうはキミの事を気に入っているようだがな。」
[あの男]を語るエイム・プレズバンドの顔に若干感情の様なものが浮かぶ。
「さあ始めよう・・・この世界は我らLOTUSによって浄化される。」
【人物紹介】
[スパロボOG1]
グレッグ・パストラル
ノーマン・スレイ
ハンス・ヴィーパー
アルバート・グレイ
カール・シュトレーゼマン
[スパロボZ]
デンゼル・ハマー(CV:石川ひろあき)
トビー・ワトソン(CV:近藤隆)
[スパロボL]
ルド・グロリア
[スパロボT]
エイム・プレズバンド(CV:増谷康紀)
[魔装機神Ⅲ]
ホルヘ・レイ・バルディビア・ロンバルディ(CV:伊藤健太郎)
ニーナ・フレーザー(CV:ゆきのさつき)
【ちょっと解説】
だいぶ忘れられてる人たちがたくさん出てきました。なのでまだ名前しか登場していないキャラも念のため【人物紹介】に挙げておきます。
向こう側の腐敗した世界とやらをどういう物にしようか迷った結果、ダメな大人を出来るだけたくさん出そうと思いこんな情勢になりました。
LOTUSは本来スパロボLでの自軍の部隊名なのですが、怪しげな組織の名称として使うことにしました。
誰だすぎる魔装機神Ⅲの二人は地上人召喚事件でラ・ギアスに召喚されたDCの兵士と言う設定ですが、マーチウィンドに参加させました。誰か女性隊員が居ないと17歳の女の子をリーダーに担ぎ上げるいかつい男たちの集団になってしまうので。