新スーパーロボット大戦OG64   作:舟太郎

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7話 忌むべき来訪者

 

「・・・。」

 

2機ガンアークが南海に浮かぶ海上都市セント・クルスシティの研究施設に着陸すると、機体を降りるなりマリナ・カーソンが蹲る。

 

「まったく、起動兵器のパイロットが乗り物酔いなんて、訓練が足りてないんじゃないか?」

 

同じくガンアークから降りたタック・ケプフォードがマリナに声を掛ける。

 

「愛情表現が幼いな、タック中尉。もう少しいたわったらどうだ?」

 

そこへエルリッヒ・シュターゼンが現れタックにそう告げる。その後ろには眼鏡をかけた不健康そうな科学者が同行している。

 

「・・・そう言ったからかい方はよしてください、エルリッヒ特尉。」

 

「からかう?キミ達は恋人同士ではないのか?」

 

タックの返答に対しエルリッヒは真顔で答え、タックとマリナは微妙な表情を見せる。

 

「シュターゼン特尉のおかげでガンアークもイクスブラウも思わぬ形で実践に投入されたが、なかなかいいデータが取れたようだね?フェイくんの姿が見えないが・・・?」

 

エルリッヒの後ろの科学者がタックとマリナに話しかける。フィーデル・バルクホルツ、ガンアークの開発責任者である。

 

「バルクホルツ博士、フェイ中尉なら情報部に出向いていますよ。」

 

「イクスブラウの開発とテストパイロット、そこに情報部としての業務とは多忙もいいところね。」

 

タックとマリナがフィーデルにそう報告する。平行世界からの来訪者であるフェイ・ロシュナンテは便宜上、情報部預かりとなっている。

 

「イクスブラウの方はまだ時間がかかりそうだが、ガンアークの開発もいよいよこれで大詰めだ。当初の参加パイロットは7人、それが事故や転属で次々と抜けていき、残ったのキミ達は二人だけだ。私も開発責任者として、この機体には苦労させられたが、それ以上に2人には本当に苦労を掛けた。」

 

「いえ、フェザーアークの後継機を俺たち以外に任せる気はありません。」

 

「今回の警備任務の後に行われる最終試験が無事に終わればこの二機とキミたちは正式な配属となる。エネルギーコアの調整だけは引き続き継続する必要があるがね・・・。」

 

「・・・という事はいよいよなんですね?」

 

マリナがそう確認する。

 

「ああ、このセント・クルスシティで行われる調印式をもって地球連邦政府は正式に新たな地球圏統治機構、[UCE(United Community of the Earth)]として生まれ変わり、連邦軍はその枠組みの中の一組織という位置づけとなる。」

 

バルクホルツは抑揚のない口調でそう答える。

 

「それで何が変わるんです?」

 

「これまでは連邦軍が強い権限を持っていたが、今後は完全に政府の管理下の一軍事組織と言う位置づけになる・・・政治家たちの時代がやってくるのだ。」

 

「けれど連邦軍の軍事力は健在です。仕組みだけを変えても、軍の権限や発言力を奪うなんて事、そうやすやすと出来ることじゃない。ギャスパル・ギラン元帥やダニエル・ハウエル議長が黙っているとは思えません。」

 

「・・・そのための新連邦だ。」

 

タックの言葉にエルリッヒが異を唱える。

 

「新連邦は従来の体制を保ちたい軍部の力を削ぐ為に生まれた、政治家たち・・・いや、カール・シュトレーゼマンの息のかかった私兵でしかないが、その勢力は既に軍部の半数を超えている。下準備は既に終わっているのだろう。」

 

エルリッヒは自分も所属する新連邦をそんな風に語る。

 

「なんにせよ帝国観察軍を名乗る異星人に恭順しようとする新連邦と、それに抗おうとする旧連邦派。くしくもインスペクターの言う通り、地球人は地球人同士の戦いを止められないのかもしれませんね。」

 

 

▽▽▽▽▽

 

 

「幸いにも、彼らの司令官であるゴッツォ閣下は、私との会談に応じてくださり、その結果、地球人類に3つの条件を提示された。これらの要求を受け入れるならば、人類抹殺と言う最悪のシナリオは回避しようと・・・。」

 

セント・クルスシティの議事堂で一人の男がそう語る。向こう側の世界においてはコロニー独立運動の指導者であり、本来なら10基のコロニーをまとめ上げたコロニー統合府、そして地球連邦政府の大統領を歴任した男、ブライアン・ミッドグラッドである。

 

「馬鹿な・・・それでは事実上の隷属ではないか!?UCEの発足には同意したが、これはどういう了見だ!!?」

 

地球連邦軍統合参謀本部の議長であるダニエル・ハウエル大将が苦悶の表情をでそう嘆く。

 

「どうもこうもない、人類の想像も及ばない遠い宇宙から飛来した異星人の技術力について、今更説明するまでも無いだろう?我々と彼らの間には、知識、技術力において歴然とした差がある。貴様たちの抵抗など所詮は無駄なあがきに過ぎないのだ。いや、無駄と言うよりはおろかと言う方が適切かもしれない。貴様たち旧連邦派が抵抗することであの御方の気が変われば、その結果として我々人類がこの宇宙から完全に抹殺される日が訪れることは確実なのだからな!」

 

地球連邦政府の大統領であるアルバート・グレイが連邦軍の重鎮に対して苦言を呈する。

 

「彼らは一方的に侵略してきたインスペクターとは違う。そして何より彼らから得られる外宇宙の情報は貴重だよ。」

 

「そもそも、何故お前が異星人と直接接触しているのだ、ブライアン!?それではまるで貴様が異星人の使者のようではないか!」

 

かねてより異星人との徹底抗戦を唱えているグライエン・グラスマン議員が尋ねる。

 

「そりゃ彼らの拠点である[グリーン・フラワー]はコロニー群に近い地球圏外周軌道に停留しているからね。それに、何でも僕の声が気に入ったとか、どうやらゴッツォ閣下に似ているらしい・・・。」

 

ブライアンはグライエン・グラスマンの問いに少々ふざけたように返す。

こちら側では向こう側とは比べ物にならない程の被害を出した[エルピス事件]の影響でコロニー統合府、そしてコロニー統合軍の設立は頓挫し、コロニーの独立は成らなかった。結果、ブライアン・ミッドグラッドは明確な地位の確立には至らなかったが、それでも宇宙移民の支持は厚いものだった。

そしてエルピス事件を裏で仕組んだ張本人である政界のフィクサー、カール・シュトレーゼマンも何食わぬ顔で議会に同席していたが、ブライアンの言葉でその表情は不機嫌なものへと変わる。

 

「宇宙移民の活動家ごときが・・・・!!」

 

カール・シュトレーゼマンが呟く。宇宙移民を見下し、宇宙を資源の供給源としてしか見ていない彼にとって、コロニーの代表であるブライアンは異星人に対する基本方針こそ同じではあるが、彼が帝国に重用されている現状は不愉快なものだった。

 

「3つの条件と言うのはなんだね?」

 

ダニエル・ハウエルの隣の席で、連邦軍代表であるギャスバル・ギラン元帥が平静を装いながら訪ねる。

 

「1つ目は即座に全ての抵抗を止める事、2つ目は地球の軍事技術を公開し共有する事。そして3つ目が・・・[E2]の献上。」

 

「E2だと!?貴様、アレがどういう物が知らん訳ではあるまい!?」

 

「E2、EOTI機関でアルバート・ライネンによって開発されたエネルギー結晶体だったな。あらゆるエネルギーに反応し、爆発的に威力を高める物質・・・DC戦争やあの事件で地球圏を混乱に陥れた要因の一つだぞ?貴様らは本当にそれでいいのか?」

 

ダニエルがブライアンに食って掛かる隣でギャスパル・ギランが説明しながら訪ねる。

 

「・・・ゴッツォ閣下は、これらの要求を呑むのであれば地球圏を直接の支配地とはせず、UCE・・・つまり人間による管理をお認めになり、更には前防衛戦争のような有事の際には地球圏の防衛に戦力を割いてくださると確約いただいた。」

 

ブライアンもまたE2の危険性は承知の上で、帝国観察軍の言葉を伝えるに徹する。

 

「決まりだな、異星人による勢力が複数存在する以上、彼らの庇護下に入るのは上策と言える。グライエン、ギャスパル、今後はこの地球を危険にさらすような真似をしてくれるなよ。」

 

機嫌を損ねたカール・シュトレーゼマンが初めて口を開き、そう釘を刺す

 

「・・・・・。」

 

名指しされたグライエン・グラスマンやギャスパル・ギランもまた、それぞれ怒りに満ちた表情で沈黙した。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

「退屈だ・・・、何か起きないのかな・・・。」

 

少年がベンチの上で物思いにふける。バレル・オーランド、セント・クルスシティで暮らす政府高官の息子で、現在は高校生である。

 

「ゲームセンターにでも行くか・・・。」

 

バレルは一人でそう呟き、ベンチから立ち上がって街中を移動する。セント・クルスシティの整備された美しい街並みの中歩を進め、巨大なアミューズメント施設にたどり着く。

 

「Great!!」「スゲエ!!」「これで47連勝、あと三回で50だぜ!」

 

ゲームセンターに入ると、奥のゲーム媒体に人だかりができている。バーニングPT、実際の起動兵器のコックピットを模した媒体でロボットを操縦し、プレイヤー同士が勝負する対戦ゲームだ。

 

「オラオラ、次の相手はどいつだ?」

 

連勝中のプレイヤーがゲーム媒体から顔を出し叫んでいる。

 

「今時あんな風に周りを煽るなんて育ちが悪いな。ひょっとしてこの街の市民じゃないのか?」

 

バレルはそのプレイヤーの品の無さに若干引きながら対戦台に入り、コインを入れる。

こちら側の『バーニングPT Infinite Battle』では各企業と連携し、この世界で実際に運用されている機体を使用してプレイが可能となっている。

 

「しばらく来ない間にユニットが増えてるな。」

 

バレルが機体選択画面で[株式会社アクシオン]の新製品[アクシオ]を選択し、サポート用の僚機としてフレモンド・インダストリーの戦闘機[ソルプレッサ]を2機選択する。

待ち時間なく対戦が始まる。どうやら相手の方が先に使用する機体を選び終えていたらしい。

 

「向こうはマオ・インダストリーのエルアインスか、強キャラだけどユニットコストが高くて僚機を設定できないはず・・・。」

 

ゲームが開始され、ソルプレッサがエルアインスにラピッドビームガンで牽制を仕掛ける。

エルアインスはそれを難なく回避しながらツインビームカノンでソルプレッサを撃破する。

 

「今だ!」

 

その隙を突いてバレルの使用するアクシオがエルアインスに向けてロケットランチャーを発射するも、エルアインスのはGレールガンでその弾頭を打ち落とす。

 

「ロケットランチャーが撃ち落された?そんな当たり判定があったなんて!?・・・けどやる事は変わらない!!」

 

アクシオはロケットランチャーを撃ち続け、その弾は同じように撃ち落される。そこへ残っていたソルプレッサがエルアインスを後ろから砲撃する。

 

「よし!」

 

ラピッドビームガンに被弾したエルアインスは、地上に落下する直前にツインビームキャノンとウイングパーツをパージする。そしてGレールガンで残るソルプレッサを狙撃した。

 

「!!?」

 

続けざまにGリボルバーを乱射しながら接近してくるエルアインスに対し、バレルはアサルトライフルで応戦する。

接近と同時に互いに被弾し、ダメージゲージが減っていく。

 

「くっ・・・ならEMダガ―で・・・!?」

 

しかしアクシオの武器をダガ―に切り替えるよりも速く、エルアインスのコールドメタルナイフがアクシオを切り裂かれた。

 

「やられた・・・何だこの相手、強すぎる。チートでも使ってるのか!?」

 

そう呟くバレルの目の前のモニターには『YOU LOSE』の文字が表示されていた。

 

 

▽▽▽

 

 

「まったく・・・アンタの相棒は1クレジットで何時間遊ぶつもりなんだ、キョウスケ?」

 

「向こう側で転移現象に巻き込まれて以来ずっと戦い詰めだったからな、こうして息抜きできるのも久しぶりだ。お前は付き合わなくてもいいんだぞ、ハミルトン。」

 

「別にいいさ、一応案内役なんでな。しかし、その息抜きがまた起動兵器の操縦を模したゲームってのはクレイジーだな・・・。」

 

キョウスケとハミルトンがゲームセンターのベンチで缶コーヒーを飲みながら話している。同行しているリュウセイが何時間もゲームに夢中になっている間、キョウスケは暇を持て余していた。

 

「どうせ意気込んでセント・クルスシティに来てみたはいいものの、あのフェイ・ロシュナンテを探す方法が無い・・・。」

 

「お兄さん、カッコいいですね。今お暇ですか~?」

 

水色の髪をしたゴスロリファッションの若い女性がキョウスケに声を掛ける。

 

「キョウスケ、お前逆ナンパされてるぜ!?まったく、美形は羨ましいぜ!」

 

「・・・他を当たってくれ。」

 

「おいおい、いいのかよ!?めちゃくちゃ可愛い娘じゃねえか!?」

 

「だったらお前が相手をしてやれ、ハミルトン。」

 

キョウスケは鼻でため息をつきながら短くそう促す。

 

「・・・という訳らしい。お嬢さん、俺じゃあダメかい?」

 

「私の目当てはこっちのイケメンさんなんだけどな~」

 

娘はそう言ってキョウスケの正面に近づいてくる。

 

「そもそも貴方に拒否権は無いのよ、狼さん!」

 

「!!?」

 

女はそう言って突如キョウスケの首元を鷲掴みにし、そのまま持ち上げる。

 

「・・・がっ・・・!?」

 

キョウスケは女の腕を引き剥がそうとするが、外見とは裏腹にその細い腕はピクリとも動かない。

 

「おかしいな~?ベーオウルフは生身でも異常な身体能力を持つ化け物だって聞いてたんだけど~。」

 

女は自分の顎を指でつつきながら可愛らしい仕草でそう呟く。

 

「化け物はテメエだろ!!」

 

ハミルトンが女に殴りかかる。

 

「きゃ~、こわ~い!助けて私のナイトちゃんたち~!」

 

女がそう叫ぶと、ヘルメットとプロテクターで武装した集団が現れハミルトンを殴打する。

 

「・・・・ぐう!?」

 

「みんなー!ありがとー!」

 

女が現れた武装集団に手を振る。

 

「うおおおお!」「姫~!!」「ブヒ♡」

 

女の感謝の言葉に武装集団は歓喜し、周囲に発砲し始める。

民間人の客たちが悲鳴を上げて施設内から逃げ出していく。

 

「姫、ターゲットの姿は見当たりません!」

 

ヘルメットとプロテクターで武装した隊員の一人が女に報告する。

 

「う~ん・・・この施設ごと燃やしちゃいましょっか!」

 

「過激にファイヤー!」

 

隊員たちはそう返事をしながら迅速にゲームセンター内に火を放ち始めた。

 




【人物紹介】

[Another Century's Episode]シリーズ
バレル・オーランド(CV:浪川大輔)
フィーデル・バルクホルツ(CV:青野武)


UCEはACE無印、ACE2での自軍組織で3では解体されて地球連邦に再編されています。

E2はACE無印では「UCEとドレイク軍の共同で作られた、オーラ力を物質化した結晶体」という設定なので、明言はされてませんが本来の製作者は多分ショット・ウェポン。

[新]の原作ゲームではバルマーの要求内容を伝えるポジションはシャアだったんですけど、そこにブライアンをはめ込んでみました。
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