「フェイさんが探していた人物が判明しましたよ。」
セント・クルスシティの旧連邦庁舎のオフィスで、柔和な顔の男がフェイ・ロシュナンテに伝える。
「本当ですか!?流石です、ホリス特尉!」
「やはり君の見立てどおりでした。ジル・バルドナ博士の実子は現在、オーランド議員の養子となりこのセント・クルスシティの高校に通っているようです。名前はバレル・オーランド、今顔写真を送りますね・・・苦!?」
連邦軍改め、UCE情報部に所属するホリス・ホライアンはそう説明を続けながらコーヒーを啜る。
「中将、これいつもより深く煎りすぎなのでは?そもそも、わざわざ豆を煎る必要なんてないでしょう。缶コーヒーで十分じゃないですか?何時でもすぐ飲めるし保存も効く、あれこそコーヒーの完成形ですよ。」
「これが大人の男の味と言うものだよ、ホリス。君も早く気付くべきだ、保存や常備と言う考えが鮮度を殺してしまう事実にね。」
情報部の長であるジェイコブ・ムーア中将が部下の言葉にそう返す隣で、フェイ・ロシナンテは自分のカップにはミルクと砂糖を大量に投入していく。
「フェイ中尉、それでは最早コーヒー牛乳だ・・・。」
「私は女ですので、大人の男の味とやらは要りません。あ、豆を煎ると掛けた訳ではありませんよ。」
フェイはそう言いつつ、ミルクで適温となったコーヒーを一気に飲み干した。
「・・・それでだフェイ中尉、そのバレル・オーランドとの接触こそが、キミがバルドナ博士から託されたミッションだったな?」
「はい、博士がかつてこの世界で開発していた次元転移装置[バルドナ・ドライブ]、その起動キーとして博士の実子、バレル・オーランドが設定されているそうです。」
「自身のご子息を・・・博士は何故そんな事を?」
「それは本人にしかわかりませんが、非人道的な実験を行っていたという話でないようです。ただバレル・オーランドの生体情報がそのまま起動キーとして設定されているというだけで・・・感覚的には『パスワードに子供の誕生日を設定した』、という程度の話かと・・・。」
「けれど本人からしたらたまった物じゃありませんよね。それで身柄を拘束される可能性だってあるわけですし・・・現にフェイ中尉も彼の存在を必要としている。」
ホリスがそう指摘すると、ジェイコブの端末が鳴る。
「・・・どうやらホリスの言う通りになった。ベルクトがバレル・オーランドを確保するため部隊を動かしたらしい。」
「そんな・・・ホリス特尉が余計な事を言ったせいで!?」
「僕のせいですか!!?」
フェイの言葉にホリスが不満を漏らす。
「けどバレル・オーランドは仮にもオーランド議員の養子でしょう、僕たちと同じUCEの部隊なら手荒な真似は出来ないはずでは?」
「それを踏まえての人選だろうな。向かった部隊の名を聞けばそうも言ってられん・・・」
ジェイコブは一拍おいて忌避するようにその名を口にする。
「出動したのは[ファイヤバグ]だ。」
▽▽▽▽
「一体何が起こってるんだ・・・・!?」
バレル・オーランドがバーニングPTの媒体から出ると施設内は謎の武装集団によって襲撃されていた。
「そんな・・・セント・クルスシティで武装集団なんて・・・!?」
バレルはUCEのおひざ元である安全を約束された街で起こっている出来事に混乱する。
「居たぞ、ターゲットだ!」
「えっ・・・!?」
武装集団はそう言ってバレルを取り囲む。
「コイツがベルクトが言っていたバレル・オーランドか・・・?ただのガキじゃねえか・・・。」
プロテクターを付けた武装集団の中から一人の男が顔を出す。黒とグレーが混ざった斑の長髪を後ろで束ねた長身の男だ。
「なんなんだよ・・・お前たちは!?」
「俺はリッシュ・グリスウェル、これでもUCEの一級特尉さ。こいつ等のお目付け役ってところだ・・・まあ俺の言う事なんざ全く聞かねえがな・・・。」
男は前髪を揺らしながらそう自己紹介する。
「我らファイヤバグが従うのは姫のみ!」「誰がお前の言う事なんか聞くか!」「一級特尉だからって偉そうにするなケツアゴ!」
「あの女からもそう指示されてるだろうが!いいから、さっさとこいつを捕えろ。」
ファイヤバグを名乗る隊員たちが立場を無視して上官を侮辱し、それに対してリッシュ・グリスウェルは気にすることなく命令を続ける。
「ウルァ!!」
その時、一人の青年がベンチを振り回し、乱入してくる。
「アンタは対戦台の・・・!?」
「いいから逃げろ!!」
青年はそう言って再びベンチを振り回すも、それはFB隊員たちの銃弾によって即座に破壊される。
「うぅ・・・!?」
「ハガネ部隊のリュウセイ・ダテ少尉・・・報告書には目を通したが本当に生きていたとはな。」
リッシュがそう言ってリュウセイの顔を確認する。
「リュウセイ・ダテだって?」「ハッハー!起動兵器の操縦以外は素人だってのは割れてんだぜ?」「こいつを捕まえればもっと姫に褒めてもらえる!!」
銃器を持った隊員たちが改めてバレルとリュウセイを取り囲む。
「ちくしょう・・・いったいどうすりゃ・・・!?」
「餓狼爪撃!」
「ぐわ・・・!?」
突如、上空からブラッド・スカイウィンドが現れ、FB隊員を打ち倒す。
「ブラッド!?」
「覚悟しろよ外道共・・・何が目的かは知らねえが、民間人を巻き込んで暴れるなんざこの俺が許さねえぜ!」
ブラッドはそう言ってファイア・バグの隊員たちを薙ぎ払う。
「リュウセイ少尉、こちらへ!」
「セレインも来てくれたのか!?」
ブラッドの後からセレイン・メナスが現れ、リュウセイとバレルを誘導する。
「おっと・・・その坊主は置いて行ってもらうぜ、お嬢ちゃん?」
「・・・・・どけ。」
「・・・!!?」
リッシュがリュウセイたちの逃走を遮ろうとした瞬間、間髪入れずにセレインがリッシュに発砲する。
「問答無用かよ・・・いくら何でも容赦なさすぎだろ!?」
「いきなり民間施設を襲撃しておいてどの口が言う!?」
セレインはそう言ってリッシュに向けた発砲を続ける
「ちょっと待てって・・・俺はUCEだぞ!?」
「そうか、私はマーチウィンドだ!」
リッシュは思わずセレインの銃弾から逃げ惑う。
「ブラッド!!」
リュウセイとバレルの脱出を確認したセレインがブラッドに呼びかける。
「セレイン、お前も先に行け、あとで合流する!」
ブラッドはそう言ってFB隊員たちとの戦闘を継続する。
「マズい、逃げられた!?」「姫に怒られる!」「・・・だがそれも悪くない。」
FB隊員たちはそう言いながら一斉にブラッドに向けて発砲する。
「瞬幻足・・・」
FB隊員たちの放った銃弾はブラッドの残像をすり抜け、その隙に本体は隊員たちに距離を詰める。
「なんだコイツ!?」
「狼牙!」
ブラッドが更に技を繰り出すと、隊員の一人が正面に立ち、それを受け流す。ブラッドは体制を崩しながら一回転し、その隊員と対峙する。
「ほう、外道にしては少しはやるようだな・・・竜王双撃!」
ブラッドは間髪入れずに目の前の隊員に両肘による連撃を繰り出す。ヘルメットが飛び、隊員の素顔が露になる。
「効かねえよ・・・システマやってるからな。」
「システマってそう言うんじゃないだろ・・・。」
素顔をさらした黒髪長身の男がつまらなそうな顔で呟くと、ブラッドは思わずそうツッコミを入れた。
▽
「こんな連中に後れを取るとは・・・だらしがないな、キョウスケ・ナンブ。」
カーツ・ファルネウスがキョウスケに語り掛ける。その足元には数名のFB隊員たちが倒れている。
「すまん、助かった・・・。だが気をつけろ、その女は普通じゃない。」
キョウスケがファイヤバグの隊長らしき女を差してカーツにそう忠告する。
「ふん・・・ただのパイロットであるお前と一緒にするな、我が武機覇拳流に敵は無い!」
カーツが女に向けて技を繰り出し、女は咄嗟にその蹴りを腕でガードする。
「武機覇拳流・・・防衛戦争じゃライフに参加して戦っていたらしいけど、まだまだね坊や。その程度じゃヴィローちゃんの足元にも及ばないわ。」
「ヴィローだと・・・!?貴様、我が師・・・ヴィロー・スンダを知っているのか!?」
「私の名前はマリリン・キャットよ!ヴィロー・スンダとは古い知人同士なんだけどぉ〜、もし詳しく知りたいのなら本人に聞いてちょうだい・・・今からあの世で逢わせてあげるから!」
マリリン・キャットは袖口からスリーブガンをスライドさせ、カーツに向けて発砲する。カーツは銃弾を避けながら接近し、再び蹴りを繰り出すも、それをいなされ体制を崩したところで銃口を突き付けられた。
「動きが単調すぎよ、スペアくん。」
「くっ・・・!?スペアだと・・・!?」
スペア呼ばわりされることに疑問符を打つと、その様子を見たマリリンは銃を降ろす。
「あなた、足技の方でしょ?ヴィローちゃんが自分の機体を二つに分けて二人の弟子に与えた真意は分らないけど、上半身のアースゲインと下半身のヴァイローズ、どちらが武機覇拳流の後継者かなんて一目瞭然じゃない?」
「馬鹿な・・・誰がそんな出まかせを・・・っ!!?」
カーツはマリリンの言葉にショックを受け動揺する。
「フフフ、そうは言ってもちゃんとショックを受けてるみたいね?可哀想。あっ、そうだいいアイデアがあるわ!あなたがアースゲインを倒しちゃえばいいのよ!」
マリリンは胸の正面で両手を合わせながらドヤ顔で提案してくる。
「・・・俺が・・・ブラッドを?」
「そう、そしてアースゲインとヴァイローズは本来の形に戻してぇ~、貴方が乗る。そうすればハレてあなたは武機覇拳流の継承者じゃない?戦って勝ち取った物なら天国のヴィローちゃんもきっと文句は言わないわよ!」
「耳を貸すな、カーツ!」
キョウスケがカーツに呼びかける。
「ちょっとおすわりしててもらえるかな、ワンコちゃん?」
マリリンはキョウスケに告げると携帯端末を操作する。
「おいで、リスニルちゃん!」
マリリンがそう呼ぶと、施設の天井がを破壊され20M級の起動兵器が乱入してきた。
▽
「・・・ちょっと待ってくれ!!?」
リュウセイとセレインがスタッフルームの廊下を駆け抜ける途中で、後ろを走っていたバレル・オーランドがその足を止める。
「何なんだ・・・何なんだよこれ・・・・・・アンタたちはアイツらとどういう・・・」
バレルは俯きながら恨み言を口にし始める。
「・・・私は反地球連邦、いや、今は反UCEと言った方が正しいか・・・レジスタンスの一人だ。」
「レジスタンスだって!?だったら・・・だったらアンタたちのせいじゃないのか!?アイツらはアンタたちを捕まえるために・・・」
「なら連中の所にいけばいい、奴らがUCEならA級市民であるお前にとっては頼るべき政府だろう?別に私達に付いてくる必要はない。」
「セレイン、高校生相手にそんな言い方しなくてもいいんじゃねえか?」
「高校生・・・」
セレインは冷たい視線をバレルに向ける。A級市民として何不自由なく育った年の近い男子が狼狽するその姿は、彼女の目には酷くつまらないものに見えた。
「それとバレルつったか、お前もだ。事情は知らねえが狙われていたのは明らかにお前だったじゃねえか、こっちに文句を言うのはお門違いだぜ。」
「そんな・・・なんで俺が・・・!?」
「それはキミがジル・バルドナ博士の実子だからさ。」
通路の正面から黒いスーツの男が現れ、そう告げる。それに対してセレインは咄嗟に銃を構える。
「おっと、銃を降ろしてくれたまえ、マーチウィンドのセレイン・メナス。私はUCE情報部のギド・ゼーホーファー、分かりやすく言えば旧連邦派だ。」
男は両手を挙げながらそう名乗る。
「情報部という事はジェイコブ・ムーア中将の部下か・・・。だが味方でもないだろう?」
「そうだな、キミ達マーチウィンドはシャドウミラーに協力していた組織でもある、表立って仲良くは出来ないだろう・・・。だがこの場は私に任せてもらいたい、キミ達を無事に逃がしたうえで、そこのバレル・オーランドも安全に保護しようじゃないか。」
ギドはそう言って距離を詰め、セレインをじっと見つめる。
「ふむ、個人的には君も保護してあげたいのたが、そう出来ないのは残念極まりない。」
「・・・・・。」
セレインはギドのナンパな態度にノーリアクションを貫く。
「セレイン、今は迷ってる暇はねえし、とりあえずはそれでいいんじゃねえか?バレルにとっても俺達といるよりは・・・!?」
リュウセイがそう結論を出そうとした時、突然通路の天井が崩れ、ダークグレーの機体がその顔を覗かせる。
「E2シリーズのリスニル!?バカな、市街地であんなものを・・・!?」
「あの機体を知ってんのか、セレイン?」
「かつてDCで打ち出された地球圏防衛計画の一つ[ライネンプロジェクト]で開発された無人起動兵器の一つだ・・・。E2という特殊な高エネルギーの結晶体がコアに使用され、破壊されれば大爆発を起こす・・・!!?」
セレインがそう説明していると、リスニルがバレルに向けてその巨大な腕を伸ばす。
「うわああああ!?」
その時、リスニルの横合いから深い青色の機体が現れ、リスニルを取り押さえる。
「あれはテスラ研に居た・・・」
リュウセイが現れた機体に反応する。それはテスラ研で交戦した機体の一つ、イクスブラウの姿だった。
【登場人物紹介】
[スーパーロボット大戦64]
リッシュ・グリスウェル
[第二次スーパーロボット大戦Z]
マリリン・キャット(CV:ゆきのさつき)
FB隊員たち
[スーパーロボット大戦W]
ホリス・ホライアン
[魔装機神シリーズ]
ギド・ゼーホーファー(CV:桐本琢也)
【ロボット紹介】
[Another Century's Episode]シリーズ
リスニル
64のリッシュ・グリスウェルやエルリッヒ・シュターゼン、Wのホリス・ホライアンはスパロボオリジナルキャラクターにしてOZの軍籍を持つ人達です。
大尉に変更しても良かったのですが、64とWという別々のタイトルの中に同じカテゴリのキャラクターが存在している状態が面白くてそのまま使いました。
そのせいで階級がごちゃ混ぜになってます。(ちなみに三人ともノインと同じ階級)
タイトルはマリリンのBGMの曲名