ゴジラも71……いや72歳?1か。ホンマ長続きするコンテンツのファンでいれることは嬉しいですわよ。
新作映画のお出しがちょっとずつでも、海外からお出しされたものでも、確実に新しく、増えていっているという事実!これからもゴジラブランド、長く永く続いてほしいですわね。
「主砲、目標不明生物。距離五千だ、外すまいな?」
『この距離では無理です!』
副長が伝声管に叫ぶが、その向こう───艦橋より上の射撃方位盤に代わり二番主砲塔に詰める砲術長───から返ってきた声は、拍子抜け……というより期待外れも良いところだった。
「バカタレ! 目で見える距離だぞ、何で狙えない」
重巡洋艦の主砲は最大で二万メートル以上先まで届く。有効射程は勿論それより遥かに短いが、それでも距離一万メートルは超える。距離五千など海戦で言えば敵味方の入り混んだ乱戦に近い。常識的に"狙えない"とは考えられない解答だった。
しかし今の『高雄』は残念ながらその常識に当てはまらない状態にある。
「副長、主砲と方位盤はそれぞれ故障しておる。万全の状態ではないのだから、そう責め立ててやるな」
この期に及んで功を焦ったわけではあるまいが、恐らくは未知の敵を相手に若干や浮き足立つものがあったのかもしれない。それを戒める様に艦長は続けた。
「気持ちは分かるがね、ここで焦れてはいけないよ」
そこに、少し嫌味というより意地悪っぽく「しっかり休めていないのではないかね。俺に休憩せよなどと進言したのはだれだったかな?」などと付け加えた。
それには副長も顔を伏せて苦笑せざるを得ず、周りも釣られて少し表情の硬さが治まった。
「さぁ冷静にな。最後の任務になる、醜態をさらさぬように」
言って、艦長は双眼鏡を覗いた。確かに、掃海艇らしき船が小山──────いや崖山のように切り立った背びれを振り切ろうと白波を立てている。あのサイズであれ程の波の立ち方ならば、相当機関に無理をさせているに違いない。
一刻の猶予もない──────だが艦長はそれでも、砲撃命令を出さなくてよかったと確信する。
なぜなら、両者の距離が近すぎるからだった。百メートルとないあの距離で主砲を撃ち込もうものなら、ほぼ間違いなく掃海艇をも巻き込むだろう。
「取舵十度、第五戦速。測距は百メートル毎に更新せよ」
「了解。とぉりかぁーじ!」
カラカラカラ、と力強く舵輪を回すや『高雄』の巨体は意外なほど素直にその刃にも似た鋭い舳先を向ける。目標の未来位置を予測し、優位な射撃位置を確保するためだ。
その時──────
「……!」
小山のような背びれよりも、なお巨大な白濁としたものが突如として出現し、その背びれを覆い尽くした。水柱…………⁉
「もしや、機雷か!?」
副長の言葉は当たっていた。『新生丸』の乗組員が即席で改造した手動起爆式の機雷。それを爆雷のように投下し、爆破したのだ。
高々と立ち昇り、その存在をひけらかす水柱を見た『高雄』乗組員の顔はしかし、晴れやかなものとは言えなかった。その心中に渡来したのは寧ろ一抹の不安──────シンガポールから遥々この海までやって来た『高雄』は、我々は、遂に最期の奉公の機会すら失してしまったのか?
また──────役に立つことが出来なかったのか?
戦艦でさえ場合によっては無傷では済まないのが機雷という兵器だ。それの直撃を受けて生きていられる生物がいるとはとても思えなかった。
だが水柱が落ち切るより前に、彼らが心中で僅かに期待した物が現れる──────飛沫のカーテンを突き破って現れた岩塊そのもののような頭らしき部位。
がば、と開かれたそれは確かに顎門で、まるで先程の爆発に腹を立てたように、眼前の掃海艇に食いかからんとしている。
ややもすれば、あの顎によって木造の掃海艇など脆くも噛み砕かれてしまうだろう。
逡巡の時間は即ち、あの勇気ある掃海艇乗組員全員の、死の計時を早めることだ。
艦長は先程、部下に対して「焦れてはいけない」などと言った手前たが、この上恥の一つや二つ飲み込むべきだった。
「当たるも八卦、当たらぬも八卦か……」
「は……?」
「主砲一番二番、緩斉射用意!」は艦長の決意の表れだった。最早猶予はない。
そして何より──────この『高雄』に比して、余りにも小柄な掃海艇にありながら、爆発の巻き添えを承知で機雷を投下した蛮勇とでも言うべき行動力を発揮した彼らに対し、巻き添えを怖れただの一度も砲撃を加えなかったとあっては、大恥もいいところだ……!
「次の測的完了次第、砲撃せよ」
「了解、測的完了次第砲撃します」
戦禍を凌ぎ、潮に抗い、波を裂き、海原を超え、今日ここに『高雄』が参着したことに意味があるのならば、それは、今この瞬間に発揮されるはずであった。
「測的よし!」『───仰角修正……ヨーシ!』
そして遂に、『高雄』とその乗組員が待ち望んだ瞬間が訪れようとした
「主砲──────むっ!?」
──────その時!
ゴゥン──ッ……!
爆発音! …………それは明らかに、前方で再び立ち上がった白い水柱によるものだった。
二度目の爆発に目を丸くしたのは艦長だけではないはずだ。ヤケになったのか─────掃海艇と水柱は先程と比べて半分ほどの距離もない、確実に爆発に巻き込まれている。
眼球が飛び出るほど強く双眼鏡を押し付けた。船が先程と形が違う……? 一瞬、ぼやけて見えた視界が明瞭になる頃には、それが艇尾を潰さるれるように破壊された掃海艇の姿となって飛び込んできた。
「…………!」「掃海艇、停止しています!」「もしや、機関がやられたか」
相当な近距離で起爆させたからだろう、爆圧と衝撃で艇尾がひしゃげただけでなく、なけなしの機動力も奪われていた。煙突からはプスプスとばかりに不定期な煙が上がっている。
怪物は──────止まっている?
「衝撃で気絶したのでしょうか」「もしや、死んだ?」「一発目耐えたからと言って、二発目も耐えるとは限らんだろう」「だが死んだとも限らぬ」
「その通りだ。止めを刺すぞ」
掃海艇の乗組員達に「手柄を取られた」などと言われたら、「こちらではそれが確認できなかった」とでも言って、十回でも百回でも頭を下げてやればよい。
「……艦長、怪物が!」
その時艦長は双眼鏡を覗いていなかったが、驚くべきことに裸眼でもその光景を確認することが出来た。ゆっくりと上体を起こす怪物……!
まさに小山のよう。距離から逆算して、目算でこの『高雄』の艦橋より巨大かもしれない。それも見えてる範囲だけで……!
やはり生きていたか! 驚愕はしかし、同時に安堵をも生んだ。奴は、ゴジラは、己に痛撃を与えた小生意気な小船を粉微塵に砕かんとする意思を体現したがために、未だゴジラの意識外の『高雄』にとって、理想的な射線を提供したのだ。
──────そして今度こそ、『高雄』は吠える。
「主砲撃ち方はじめ!」
「撃ェ──ッ!」
ドォン!! ドンッッ!!
咆哮! 『高雄』の前甲板が、懐かしい轟きと煌きと、黒煙に染まる。それは『高雄』の全力からすれば半分ほどでもない投射量──────しかしそれは、凡そ単体の生物に向けて放たれるべきではない威力を誇っている。
弾丸重量百二十キログラムを超え、初速は音の二倍以上に達した。
大気を灼き白線を残しながら砲弾は突き刺さる──────閃光…………!
『命中! 初弾命中!』
「「「おおっ……!」」」
「間髪いれるな。装填しだい、急斉射!」
「了解。撃ェ!」
ドンドォン‼…………数拍を置き、水柱に混じって爆発閃光が煌めく───素晴らしい命中率だ! 混戦にも似た至近距離とはいえ、万全でない射撃管制でこれ程命中を出せるとは、実は艦長自身も思っていなかった。
「取舵一杯。右砲雷同時戦!」
「とーりかぁじ!」「とーりかぁじっ、イッパイ!」
独特な抑揚を以て航海長、そして操舵手が復唱すると、ガラガラガラガラ……! そう音を立て舵輪を目一杯に回す。ややもすると『高雄』の刃先にも似た艦首が波間を掻き分け、左に回頭し始める。遠心力で右側に傾いた『高雄』の甲板上で、圧倒的な殺意を孕んだ十の棒状が、同一方向に指向していた。
飛んだ砲撃の下命。
主砲発射を報せるブザー……
退避する甲板上の乗組員達──────
そして──────
ドォン! ドォドォッッ……ンッ!!
主砲五基十門による全力射撃! その威力たるや、同格の巡洋艦であっても無傷はあり得ない。
中空を赤熱化した砲弾が焼き進む。引っかき傷にも似た跡を空に残して、次々と水柱を突き立て果てた。その中に見える明滅──────
「命中!」
度重なる命中の火煙に包まれ、まるで海中に引き込まれるようにしてゴジラの姿は見えなくなった。
つかの間の静閑──────甲板上に躍り出た乗組員見張員達も息を呑んで海上を見守っている。
「…………」
「……!」
──────だが静閑はどよめきによって破られ、その根源たる一人が海上を指さし叫んでいた。
「背びれだ!」
海を割って進む剣山の如き連なりが、一直線に『高雄』に向かって激進していた。『高雄』の砲撃がよほど腹に据えかねたか? ──────明らかにゴジラの害意の矛先は、目前にあった些か作りの小船から『高雄』へと向き変わっている。
主砲発射を報せるブザーがけたたましい。「退けっ!」と誰かが言う。とにかく主砲の影になる場所か、あるいは遮蔽物に見張員達は身を隠した。
───スドォン!!!!
「「「〜〜〜ッ!!」」」
ビリビリビリと、衝撃波と大音響が全身を震わせる。発砲炎の熱すら感じられる甲板上で、三番砲塔の影に隠れていた彼は此処から僅か数千メートル先…………放たれた砲弾と怪物の対決の様相を目の当たりにする。
高々と立ち昇る水柱に命中を示すはずの黒煙や爆炎の煌めきは無かった。
──────もしや、命中していないのでは?
その疑念は艦橋においても共有されるものだった。軍艦に例えるなら丁字戦法に近い状況にあって、何故に命中が得られないのか。
「俯角が足りぬか!?」
士官の一人が発した言葉は正しく、されど完璧ではなかった。砲撃が命中しないのは、一つの事象ではなく、被断面積の低下であるとか寧ろ近すぎるが故に照準補正が追いつかないであるとか、そうした複合的な事情によって齎されたものだからだ。
「ならば、魚雷を使ってみては如何でしょう」「おお、面白い。相手は潜水艦ではないのだ、命中するやもしれん」
魚雷発射管はすでに指向されている。水雷砲台長の指揮のもと、細心の注意が必要なはずの酸素魚雷も既に装填されていた。久方ぶりとは思えない手際の良さであった。
「迫りくる山脈」とでも形容すべき威容が、けたたましく海を揺らす水柱の間隙を突き進んでくる。もはや双眼鏡など不要で、肉眼でもその姿を事細かに確認出来るほど距離は近い!
『魚雷撃て!』
「テ──っ!!」
バズン……バズン……! 質量にして約三トン、全長十メートルにもなる電柱のような塊が圧縮空気を使って押し出される。
白煙のような雲を伴って叩かれるようにして着水、そのまま航走を始めた。
魚雷の速度は四十八ノットに設定してある。酸素の猛烈な燃焼に任せて進む酸素魚雷は、水に溶けやすい二酸化炭素を主に排出するため航跡がほぼ見えない。加えて炸薬も多いため、速度、威力共に十二分だった。
──────本来は、戦艦という怪物を仕留める為の必殺の槍である。
その槍を、『高雄』は四本発射した。扇状に…………そこだけ切り取れば魚雷発射の教本通りだったが、それに至る過程──────命中射角を求める計算であるとか、それに伴う運動量の加味であるとか──────は全て省略されていた。何故ならば、そんな物が必要ない程にゴジラは至近にまで迫っている……!
しかし──────
「あっ!」
兵の一人が、指差す先で背鰭が海に沈んでいっていた…………くそったれめ! こんな時に!
ドン、ドン! と海中に達し爆裂する砲弾の音響、衝撃。その近傍を通過してゆく四本の魚雷。ゴジラの背鰭は既にそのはるか下方にあって、重石を放り込んだように急激な沈降を続けていた──────かと思えば、突如として燕返しを繰り出し─────────
怪物が海に沈み込んだ瞬間、は衝撃を受けたものだが、よくよく考えてみればあれは海の生き物である。潜って行かないわけがない。
取り逃がしたのならば癪であるし大いに問題だった。
「水上警戒厳に、甲板見張員を全員出せ」「主砲は装填のまま待機……!」
それでもなお、警戒監視をより厳にしたのは、取り逃がした可能性よりも、もっと我々にとって重大な事柄を目算したからだ。
ドォ────ン!!!
「「「⁉」」
大音響とか、轟音とか、そんな言葉では到底表現し得ないほどの、地殻が吹っ飛んだような、凄絶な破壊音が『高雄』に轟き、大地震に見舞われたと思う程に大きく震え、揺れた。ばかな、ここは海の上だぞ⁉
瞬く間に訪れた衝撃は、同じくらいの速さを持って解答を示してきた…………艦橋の外には壁のようにそそり立つ黒塊があった。
ガァオオォォ───ンッ!!
咆哮……⁉地の底から響き……或いは空間全体が震え上がってもなお足りないほどの、恐るべき音が鳴り響いた。
ゴシャア!!!! と聞こえてはいけない音が聞こえたのもその直後だった。それは直上、防空指揮所や測距儀が存在するはずの場所。奴は文字通りこの『高雄』に手を掛けている……!?
窓に掛かる滝のような飛沫と破片が、その証左だった。
いかん
「退避しろ」
「艦長!?」「何を──────」
死にたいか!
叱責は飛ばなかった。それは、その直前に、黒塊に吹き飛ばされた艦橋の構造材が、その場にいた士官全員を粉砕したからだった。
「艦長──!!」「艦橋が!」
子供が積み木を崩すような、抵抗の無さだった。
城塞の天守閣を思わせる『高雄』の鐘楼は、ゴジラの腕の一振りと組み付くような跳びによって脆くも瓦礫にその姿を変え、そこに、人や鋼鉄の違いはなかった。その被害は、艦後方の煙突付近にまで及んでいる。
『高雄』か傾く──────
血の色か、本来のリノリウムの色かも分からなくなった甲板の上を、押し出されるようにして乗組員たちが滑ってゆく。破片や衝撃で負傷し、或いは絶命した乗組員たちは、抗う術もなく海に落ちてゆく。健在な者たちもまた、押し潰されたり、砲塔などの突出した構造に身体を打ち、転落してゆく。
「ああ、くそっ!」
そんな中、辛くも艦橋の近くに居ながら破片を躱し、この状況にも何とか紐を掴んで命を繋いた彼は、悲鳴や怒号、破壊音に紛れて、ゴロンゴロンと言う音を聞いた。
見ると、三基の主砲塔がゆっくりと旋回していた。
主砲が生きている!
まだ勝機はあった。だが、主砲塔は測距儀が故障していて自力で照準が出来ないはずだ。砲台長は
何とか奴の居場所を伝える方法は──────そう思い立ったとき、幸か不幸か、偶然首を向けた先に無事な伝声管があった。そのうちの一つが二番主砲塔に繋がっている事を彼は知っていたし、同時に、その伝声管に辿り着けるのはどうやら自分だけらしい事も知った。
別の伝声管の破断し拉げた管が死地へ誘う死神の手に思えた。
「畜生!」
それでも彼は駆けた───或いは、駆けるしか無かった───艦は傾き…………それどころか、子供が悪ふざけで小船を揺らすように、一万トンの巨体が上下に揺れている。
必死の思いで伝声管にしがみつき、生きてるかも分からない伝声管に向かって叫んだ。
「はぁ、ハァ、主砲塔聞こえるか! 怪物は前檣楼のすぐ右舷にいるっ、主砲を後方に向けて目一杯回せ! そうすれば射線に入るっ!!」
息も絶え絶え、肺のすべてを出し切ったと思うほどに息が続かない。崩れそうになるが、でも伝声管を握る手に籠もる力は抜けなかった。震えている……?
祈るような思いだった。この伝声管が見えない何処かで破断してたら終わりだ。
『そこに誰かいるのか⁉』
「……!」
通じている! 天命を受けたような感動を覚え、返事をしようとした瞬間彼の頭上に影が落ちる──────その影の中で、いつか家族と躱した言葉が蘇った。
──────「兄ちゃん、戻ってきたねぇ」「何やってたんだ? 聞かせてよ」
まだ若い妹弟達。小さいあの子達は無事息災に過ごしているだろうか?
──────「帰って来てくれたんだから、無茶だけはしないでおくれよ」
お袋は俺が家を跡にするとき、決まって無茶するなと言っていた。
──────「……それで家のことを手伝わなかったらただじゃ置かぬ」
お袋が言っていた。親父が畑に出るよりも早く寺に出て、手を合わせていたと。
あらゆる色が消え去り、黒と白が支配する視界の中で、ゆっくりと迫ってくる岩塊の如き四本指の拳を捉えたとき、彼は自身のすべてを悟った
ごめんな、兄ちゃん約束守れなかった。お袋、親父、どうか赦してくれ──────
「──ッ!!」
|| \ 三
|| 〉 三
|| / 三
____上____三
\ 〜〜〜〜〜 / 三
ゴシァンッ!!!!
「ウッ……!」
艦が一瞬沈んだ! ──────爆弾の直撃を喰らったような大激動、そして伝声管の向こうから同時に聞こえた衝撃音からして、例え外の視界が皆無だった第二砲塔の砲台長をしても、何が起きたのかは容易に想像できた。
奴は──────あの想像を絶する怪物は、拳を振るったのだ! それも、文字通り鉄拳と言い切って良い破壊力を伴って……!
そこにはこの伝声管の声の主がいた違いない。その彼は恐らく…………だが彼は軍人──────否、勇者だった。ゴジラがその拳を振り下ろす寸前に、その場からから逃げ出すでもなく、悲鳴を上げて狂乱するでもなく。
その発するべき言葉を遺して逝ったのだ。
『撃てッ!!』
その直後にあの轟音。
拳の真下にいた恐怖たるや想像を絶する。それを耐え、この伝声管の向こうにいた、名も知らぬ彼は──────
その思いは確かに受け取った。そして、艦橋諸共轢き潰された艦長以下の士官、乗組員たちの無念。
今ここで晴らしてやる……!!
「撃てェ──ッ!!!」
叫んだ! 発砲! …………それも六門同時に!!
ズドドォ──ーッンッッ!!!!
…………それは、以心伝心というやつだったのかもしれない。射撃方位盤の指揮もなく、完全に同時に発砲するなど神業に等しい。
20.3センチ砲弾の直撃を受けて生きていたとはいえ、ほぼ零距離射撃でそれを喰らって生きていて良い道理など存在しない。
ゴジラが落ちる。
自身に倍する質量から開放された『高雄』は横転しそうなほどに横揺れを繰り返し、飛沫が土砂降りの雨となって降り注いでゆく。
乗員の約半数は戦死した。『高雄』も艦上構造物の過半を抉られるようにして失い、往時の面影はなく、終戦時より痛々しく力無いものだった──────それでも最後に海の上に姿を横たえていたのは『高雄』で……
「「「ウォオオオ────っ……!!!」」」
その現実を認識した瞬間、歓声───いや雄叫びに近い声が甲板の其処彼処から上がる。そして『高雄』も、大きく傷つきながら軍艦としての威容を辛うじて保っていた。
勝ったのだ……!! 死線の先でようやく辿り着いたそこには、万物に勝る感動があった。
──────だが
「…………ん?」「おい。何の光だ」
甲板の縁にいた乗組員がふと下を覗き込むと、海が青く輝いていた。その光景は幻想的に思えて、その実、見る者に諦観を強いる恐怖的な何かがあった。
数珠繋ぎの光は、なにか人が触れてはいけない、触れるべきでない領域を創り出しているような。或いは、荒ぶる神の怒りを物理的に目にしているような。
刹那───
『高雄』とその乗組員全員の存在が、この世から消滅した。
高雄の測距儀が〜〜の下り、後日改めて円盤を見返したら高雄の測距儀動いてて(アッッ…………)ってなったんですよね(笑)
それでは、さようなら!