最強ヒロインの俺がクラスの美少女に正体バレたら、なぜか付き合うことになった件   作:潮井イタチ

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活動報告の名前募集より、だぶるすたぁさん、Layvnさん、明けでいあさんの名前案を採用させていただきました。


12:頑張ってるのは自分たちだけじゃない件

《やべーぞティテア、お前の姉さん闇堕ちしてる!》

《えぇっ!?》

 

 突如として現れ、俺を【傲慢】の魔人とやらと勘違いした謎の魔人。

 

 俺はとりあえず「やれやれバレてしまっては仕方がないぜ」という態度で黙ってフッと笑った。

 そして話してみろと無言で促したのだが、そこから語られた内容がまあとんでもなかった。

 

 なんだよ魔姫計画って。うちのティテアがせっせと姉の曇らせと理解(わか)らせをやっているところに、妙なものを重ねてこないでほしい。

 

 実浜仁(じつはまじん)こと【怠惰】の魔人はなんやかんやと喋っているが、俺のアドリブ力じゃここまでが限界だ。もう対応できない。

 そういうわけで、一も二もなくティテアにテレパシーを送った次第である。

 たすけてティテアえもん。

 

《……絵面はだいぶ間抜けですが状況はかなり不味いです》

《えっ、そう?》

《まず、まだ星一くんの新技は完成していない》

《うん》

《にも関わらず唯一ファフナーを倒せる姉さんは敵に取られており、いつでも人質にできる状態》

《うん……》

《そして魔人側は見るからに戦力に余裕がある》

《うーん……》

《死に体のヴァルハラとやり合うことによる僅かな損耗を厭わなければ、即刻ファフナーを起動されてもおかしくありません》

《あれ? 今ってもしかして諸々の瀬戸際??》

 

 ティテアの声色(テレパシーだが)がいつになくガチだ。確かに冷静に考えたらヤバいかもしれん。

 

 他にも魔人がいる以上、ここでこいつを殺したところで状況は解決しない。

 魔人たちを警戒させて江洲々或(えすえすある)先輩を人質にされたり、ファフナーを起動されたりしては元も子もないのだ。

 

 これ俺の演技力で乗り切れるか? 瞬間移動でティテアに交代……いや、そのための目くらまし発光で警戒される。それに服を交換する時間もない。

 

 くっ……不安だが自分を信じるしかない。思い出せ、ティテアと最近毎日やってる三十分の演技レッスンを……!

 

《最優先目標は実浜仁を騙し切り、何事もなく会話を終えること。第二目標は姉さんの闇堕ちを治療する方法の入手。第三は魔人たちの情報収集です》

《了解》

《これはピンチですが、チャンスであることもまた間違いありません。集中して挑みましょう》

 

 俺達の脳内会話が終わる。それと同時、実浜仁も話を一区切りして、こちらに問いを振った。

 

「しかし、あなたはなぜ魔姫計画を放棄したのです?」

 

 そりゃ俺が【傲慢】の魔人をブッ殺したからである。言えるわけもないが。

 

「上手くやれば唯一魔獣に対抗できる戦乙女(ワルキューレ)全員を我々の駒にできる、人間にとっては致命的な計画。この重要プランを放って、今まで何をしていたのですかねえ?」

《星一くん、一瞬だけフルパワー!!》

《え? ――ハァッ!!》

 

 一瞬だけ発生する震度2。

 突如撒き散らされた威圧感に、実浜仁がビクッと震える。あと多分街中の犬とか猫とかもビクッと震えた。

 

 俺はティテアの指示に従って台詞を発する。

 

「――説明が、必要か?」

「な、なんというパワー……。これを手に入れるため、だと……?」

「ククク……代償としていくらか記憶と人格が削れたがな。しかし、この力を得るための対価ならば安いものだろう?」

 

 引きつった顔で頷く実浜仁。……ヨシ、これで力の代償って言って色々誤魔化せるぞ!

 

《ですが、今のままではまだ信頼が足りないでしょう。どうにか貢献する意思があることを示さなくては……星一くん、覚悟はいいですか?!》

《……え、こんなんやるの? マジ?》

 

 俺はおもむろに立ち上がり、窓の外を見る。ちょっともうポーカーフェイスでこの台本を演れる自信が無い。

 

「で、なんだ? 神の娘(レギンレイヴ)を魔姫にした……という話だったが」

「え、ええ。ただ、元々あなた主導で進めていた計画ですから、私ではどうにも最終工程を詰め切れていないのですよ。今のままでは時間経過や人を殺した程度のショックで魔姫化が解除されてしまいますからねえ」

 

 おっ良い情報。俺は少し安心してパターンCの台詞を発する。

 

「別にいいだろう。神の娘(レギンレイヴ)ごとき放っておけ」

「なっ……」

「あんな雑兵に価値はない。こちらはとっくに大駒を落としているのだからな」

 

 俺は椅子に座ってパチンと指を鳴らし、人間大の黒いエネルギーをモヤのように渦巻かせた。

 そのままぶわりとモヤを広げ、部屋を暗闇に包む。

 

 そしてその一瞬後、俺の傍には黒いドレスに身を包んだリーレアが立っていた。

 

 言うまでもなく、中身は爆速で着替えて変身してきたティテアである。

 ぼんやりと虚ろな目をした彼女は、自我を感じさせない動きで俺の足元に跪く。こいつどんな役にも対応できるな……。

 

「‪馬鹿な……! 魔姫化したというのですか、あのリーレア・レジエンダを!?」

「その通りです……【怠惰】の、魔人さま……今の私は……忠実な、人形……命令とあれば、いかなることでも……」

 

 言いながら、流れるように俺の膝に座るリーレア(ティテア)。……あの、ティテアさん?

 

「演技、という可能性は? 【傲慢】の施術を疑うわけではありませんが、相手は唯一の☆6戦乙女ですよ? リーレア・レジエンダ、あなたは、彼に対して己の心臓を晒せるのですか?」

「…………。……お、お疑いになるのも……無理は、ありません……ですが、この通り……」

 

 しゅる、と巻き付けるように俺の腕を抱くリーレア(ティテア)。……だからあの、ティテアさん?? 

 

 そして彼女はそのまま俺の手を引き寄せる。

 自分の胸、リーレアに変身して大きくなった巨乳へ……ちょい! ちょいちょいちょい!! 待て! 待ちなさい!

 

《星一くん貧乳派なんでしょ!!》

 

 中身がお前だと話が変わってくるだろうが!

 

 ぽす、と布地越しに柔らかい双丘に触れた。

 当然揉みゃあしないが、手のひら越しに思った以上に激しく速い彼女の心拍が伝わってくる。

 

「フゥム……」

 

 実浜仁はそれを見てまだ少し訝しげに呟いた。

 そして、刀が鞘走るような音を立てて、自分の爪を長く鋭利に伸ばす。

 

「とはいえ、まだ疑念が残りますねえ。いくらか拷問して、それでもなお抵抗しないか確かめ――」

 

 瞬間、俺は【怠惰】の爪を全て叩き折り、ヤツの首を掴んで空き教室の黒板に叩きつけた。

 

 衝動的な行動だったが、長年の超パワーの自制経験が、どうにか手加減を間に合わせた。

 勢いに反し、思ったよりも小さな衝撃音。

 しかしビキ、と、今は使われていない黒板にヒビが入る。

 

「ごっ……!?」

「……誰がそこまで許した? 分を弁えろよ、【怠惰】。――こいつは、俺のモノだ」

 

 ゆっくりと手を離す。

 不味かったか、と思いはするが、流石にこれを看過するわけにはいかない。

 勝手なアドリブに申し訳なさを感じつつ、ティテアの方を振り返る。

 

 魔人ロールの流れで小っ恥ずかしい台詞を吐いてしまったが、そこはまあ大丈夫だろう。

 今のが演技の一環であることは当然ティテアにも伝わっているはずだ。

 

「ご……【傲慢】の魔人しゃま……っ!」

 

 彼女は顔を赤くして、潤んだ瞳でこちらを見上げていた。……演技だよね?

 

 その様子を見てか、実浜仁が咳き込みつつも納得する。

 

「ゲホッ……え、ええ。理解しましたよ、【傲慢】。彼女は完全にあなたに心を許しているようですねえ……」

「……分かったのならいい。すまなかったな」

 

 元の位置に戻る俺。そこに、ティテアからテレパシーが送られてくる。……え、これも回収すんの?

 

「……実のところ、お前の疑念ももっともだ。俺はまだ、こいつを完全には支配できてはいない」

「ほう?」

「リーレア・レジエンダの内に眠る『力』……それが、魔姫化を拒絶したからだ」

「『力』……」

「優れた素質と折れぬ意思、そして強い精神を持つ戦乙女(ワルキューレ)にのみ宿る『力』だ」

 

 ティテアはこれ俺に言わせてて恥ずかしくないのかね。自分のこと優れた素質と折れぬ意思、そして強い精神を持つってお前。間違ってはないけども。

 

「力には、微弱だが自我と呼べるものが宿っていた。その力が魔姫化を拒み、リーレアの内で暴走している。彼女の秘密を守り、己の使命を果たすという最優先プログラムにのみ従った状態でな」

 

 驚きの真実である。あのリーレア分裂事件もまた魔人の仕業だったのだ!(すっとぼけ)

 

「非洗脳状態のこいつからすれば、自身の『力』が使命を果たすことに拘泥し、制御を失ったように見えるだろうよ」

「その、使命とは?」

「分からん。が、我々魔人の不利益となるものであることに違いはあるまい」

 

 そこはまだ決めてない。いい加減決めねばならない気もする。でもまだ臨機応変の余地を残しておかねばならない気がするので決めていない。

 

「安心しろ、所詮はただの力の塊だ。大したことはできん。条件を満たさなければ暴走することもない」

 

 言って、俺はリーレア(ティテア)の肩を抱いて自分と彼女の周囲に黒いモヤを渦巻かせる。

 ……でもこの「肩を抱く」って指示要る? 要るの? そう……。

 

「理由は言えんが、俺はまだ潜伏する必要がある。この情報はお前の方で他の魔人たちに共有しておいてくれ」

「協調性が無いのは相変わらずですか……ま、いいでしょう。あなたがたと違って、私は人類を滅ぼすような計画を持たない身ですからねえ」

「目指すところに変わりはない。任せたぞ、【怠惰】」

 

 そうして俺は自分たちを黒いモヤに包み、瞬間移動でその場から消え去った。

 

 離れた場所に移動し、俺とティテアは一息つく。

 

「ふぅー……」

 

 自分で言うのもなんだが……かなり完璧だったのではないだろうか?

 

 実浜仁は騙しきり、会話はつつがなく終わった。

 江洲々或先輩は放っておけば闇堕ちから戻ることも分かった。

 魔人たちの情報はさほど入手できなかったが、例の事件でやや下がっているリーレアの信頼値回復の布石を置くことにも成功。

 

 ティテアの指示と俺の演技が合わさった、見事なオペレーションである。初めてパワー以外で活躍したかもしれない。

 リーレア姿のティテアに目をやれば、彼女もまた、満足そうに頷いた。

 ティテアが掲げる手のひらにパァンとハイタッチをし、俺たちは互いの健闘を称え合うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……【傲慢】がそんなことを?」

「ええ、そうですよ【強欲】。今、魔人たちで最も戦闘能力が高いのは彼、ということになるでしょうねえ」

「魔竜ファフナーが起動するまでは、だけどな。……ちっ、何が神の娘(レギンレイヴ)ごとき放っておけだ。ボクのファフナーはどうでもいいって言いたいのかよ」

 

 実浜仁……【怠惰】から伝えられた言葉に、【強欲】と呼ばれた少年がイライラとした様子で言う。

 

 場所は、【強欲】の呪いに侵されたヴァルハラ施設の一つ。

 魔人たちが話す(かたわ)らで、力への渇望に狂ったヴァルハラ戦闘部隊が一人の少女に向かっていく。

 

「――シッ」

 

 少女の大剣の一振りで吹き飛んでいく狂戦士たち。

 だが、そんな少女の目に輝きは無い。力を振るえば振るう度、彼女の心は闇に淀んでいく。

 

 普段の装束を黒に染めた江洲々或レアは、その正気を代償に、加速度的に自身の力を高めていた。

 

「人を殺させないよう気を付けてくださいよ、【強欲】。あまり強い精神的ショックを与えれば洗脳が解けかねませんからねえ」

「分かってるよ。それに、ファフナーに比べりゃゴミみたいなものだけど、あいつらも一応ボクの戦力だからな。ファフナーが起きるまで無駄使いはしないさ」

 

 戦いが一区切りつく。【強欲】は虚ろなレアに指示を出し、自身についてくるよう命じた。

 

「ヴァルハラの最後の砦が落ちるまで、あともう一押しだ。ボクは呪いを強めてくる」

「ええ、よろしくお願いします。まったく、頼りになる仲間たちに恵まれて私は幸せですねえ。自分では何もせずとも済むのですから」

「言ってろ、【怠惰】。美味しい汁だけ吸おうとして、そのうちしっぺ返しを食らっても知らないぜ」

 

 レアと【強欲】が去っていく。

 

「ふっ……しっぺ返しですか。ここから逆転できるものなら、してみせて欲しいものですがねえ」

 

 ビフレスト最高戦力であるリーレア・レジエンダは堕ちた。

 魔竜ファフナーを唯一討伐できる神の娘(レギンレイヴ)もまた同様。

 封印を司っているヴァルハラの精鋭も今や死に体。

 

 残された人間側の特記戦力など、もはや……。

 

「……ああ。そう言えば、あなたもいましたねえ」

 

 実浜仁のいる部屋の扉が、強引に弾き飛ばされる。

 ゴロゴロと足元に転がってくる、力に狂ったヴァルハラ隊員。

 

 戦乙女(ワルキューレ)に比肩しないまでも対抗しうるはずの彼らが、木っ端のように薙ぎ払われていた。

 

「あなたが、【強欲】の魔人ですか? 実浜先生」

「概ね正解、と言っておきましょうかねえ、素茂(そしゃげ)ヒイロくん。……どうしてここが分かったのです?」

「レアの跡をつけたんです。彼女の様子がおかしいことぐらい、とっくに気づいてる。ヴァルハラの仏請(ぶつこわれ)千糸(ちいと)も口を割ってくれた」

 

 彼の背後から現れる戦乙女(ワルキューレ)たちは、いずれもビフレスト一線級の実力者揃いだった。

 

 『神剣』の二つ名を有するキーラ・ジーンケーン。

 ☆4戦乙女(ワルキューレ)の落ちこぼれから成り上がった本霞(もとか)擦亜(すれあ)

 あらゆる戦乙女(ワルキューレ)の中で理論上最高火力を有する()滿号(まんほ)

 

 明らかに対魔人戦闘に特化した編成。

 しかし、そんな彼女らを前にしても、【怠惰】の魔人は不敵に笑う。

 

「なるほど、なるほど。神の娘(レギンレイヴ)……江洲々或レアを取り戻せば魔竜ファフナーにも勝てると、そう言いたいわけですか? しかし、無駄ですよ」

「……どういう意味だ」

「魔姫化したのが、彼女一人だけだとでも? フフ……あなたがたの最高戦力は、とっくにこちらの手の内だというのに」

「っ、まさか!」

「しかもそれを成した【傲慢】の正体は、素茂(そしゃげ)くんのよく知る人物ときた……いやいや、これは笑わずにいられませんねえ……!」

 

 刀の鞘走りのような音を立てて、【怠惰】の魔人の爪が伸びる。

 戦闘態勢に入った魔人を警戒するヒイロたち。

 しかし、その直後に放たれた超高速の斬撃により、戦乙女(ワルキューレ)の一人が浅からぬ傷を受けた。

 

「そして何より笑わずにいられないのは……その作戦が最初の一歩目で破綻していることですよねえ、素茂(そしゃげ)くん!」

「速い……っ!?」

「私には【強欲】ほどの精神干渉力も、【色欲】のような創造能力も無い。ですが、単体戦闘性能であれば七王でも最強――あ、いえ、【傲慢】に次いで最強! 最初に相対する七王が私であることを呪うべきですねえ、ビフレスト最優の司令官(コマンダー)!」

 

 冷や汗を垂らし、怖気づく戦乙女(ワルキューレ)たち。

 しかし、そんな彼女たちを安心させるように、ヒイロの声がかけられる。

 

「大丈夫……信じてくれ。僕を、そして、君たち自身の力を。僕が信じているのと同じように」

 

 彼女たちに流れ込む『契約』の力。

 司令官(コマンダー)の中でも屈指の素質を誇るヒイロの補助により、戦乙女(ワルキューレ)たちの戦闘力が引き上げられる。

 

「【傲慢】の魔人に何の攻撃も通用しなかったあの頃とは違う。この一戦で示すんだ、戦乙女(ワルキューレ)の、人間の可能性を! 七王の最初の一人をここで落とす! 行くぞ、みんな!」

「「「はいっ!!」」」

「ほざきますねえ、人間どもォ!!」

 

 そうして、ヒイロたちと【怠惰】の魔人の戦いが始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『――ただいま、ビフレストから速報が入りました! 先ほど司令官(コマンダー)・素茂ヒイロにより討伐された【怠惰】の魔人に関与している可能性があるとして、☆6戦乙女(ワルキューレ)リーレア・レジエンダと、◯◯高校に通う男子高校生・孤門星一、女子高生・江洲々或レア、同じく江洲々或ティテアの四名の情報提供を呼びかけているとのことです! 市民の皆さまは最寄りの警察署、または魔獣対処組織ビフレストの公式サイト特設フォームまで――』

 

「なんか大変なことになっちゃってるけど」

「あれぇー?」

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