読者の皆さん、お楽しみください!
「葵さん、ここに置いておけばいいですか?」
「ええ、ありがとう剣人君」
商店の仕事を終えた剣人は葵の料理の手伝いをしており、食事が乗せてある皿を運んだり箸やコップを並べるといった手伝いをしていた。葵に昼に夕飯の誘いを断った件は夕方頃でシンが結局夕方まで目を覚まさず今日の晶の夕飯は無理だなと判断して、葵にダメもとで前言撤回したところ彼女からOKサインが出たため誘いを受けることになり今こうして坂本家の二階の部屋に招かれるに至った。
ちなみに晶には夕飯のことはすでにメールで伝えていた。なんで電話じゃないのは丁度晶がリベレを迎えに行ってる時間帯なので急に電話をかけて前方不注意で事故でも起こしたらとメールで送信する判断を下したというわけ。
そんなこんなあって手伝いを続けていると―
「あ!目さめたー!」
シンを寝かしている部屋から花の声が聞こえてきた。どうやらシンが意識を回復して目を覚ましたようだ。
手伝いの手を止めた剣人は葵と共に部屋の中に入っていく、部屋には目を覚ましたことに喜びの笑みを浮かべた花と包帯を所々に巻かれ横たわったままではいるが目をパッチリと開いているシンがそこにいた。
「やっと起きたか」
「あら、よかったよかった」
仰向けになっていたシンはゆっくりと起き上がり目覚めたばかりか現状をうまく把握できておらず困惑していた。
「ここは・・・」
「商店の二階よ」
「あんたは・・・」
「傷だらけのあんたをここまで運んだのは俺のなんだぞ。坂本さんがボコボコにしてくれたんで昨日の件はそれでチャラにしてやるよ」
昨日の口喧嘩の件をまだ根に持っていたが、商店で坂本にやられたことで水に流すことにした剣人。その後起き上がったシンを食卓に迎えみんなでご飯の準備を再開した。
何が何やらと状況を呑み込めずさらに困惑してしまうシンはただ用意された椅子に座るしかない。
「え?あの・・・」
「お米は大盛り?得盛り?メガ盛り?」
「普通で・・・」
葵のマイペースさにもついて行けず振り回されっぱなしであるシン。
そしてご飯の準備が整い剣人を含めた一家全員が席に着き置いてけぼりのシンを除いてみんな手を合わせた。
「「「いただきます(ま~す)」」」
食事を食べ始め出し、今だ現状を捉えきれずにシンは、
(な・・・なんでこんなことに・・・俺は任務を・・・ハッ・・・まさか毒が・・・!?)
現状を受け入れきれないシンは警戒するがあまり毒が入っているという盛大な誤解をしだした。
(フッ、毒の訓練なら死ぬほど・・・)
そんなを心情を胸に目の前に置かれた料理を口に入れ―
「!」
するとシンの口から暖かい味が広がっていき、感動のあまり目元から涙が溢れ出していた。
「うま・・・あったかい・・・」
「フフッ、昔のあなたと同じ反応してる」
「パパといっしょー」
「葵さんの手作りだ。じゃんじゃん食べてけ」
みんなからシンの反応を面白がりながら彼の気持ちに共感していた。シンの方も葵の料理に味を占め黙々と次々に料理を口に運び込みそれを運び込む箸も気づけば止まらなく経っていた。
シンは今まで殺しの仕事を続けていたて食事をとることがあってもこんなに暖かく穏やかな気持ちになったことは一度もないこの幸せを感じ取っていた。
そこでようやくシンは気づいた。
(そうか、坂本さんはこの“なんて事のない日常”を守るために・・・殺し屋を・・・)
同時にシンの脳裏に昨日の剣人の言葉が蘇ってきた。
『坂本さんは好きでこの生活を過ごしてんだ。これは坂本さんの選んだ道なんだから無理に戻そうとすんのはお間違いだろうが!』
今ならあの言葉の意味をシンは理解でき、ご飯を食べながら嬉しそうに坂本達を見守る剣人を見ながら敗北感を胸に刻んだ。
(生意気なやつかと思ったら今の坂本さんを理解しているのは・・・この人なんだろう)
だがこみ上げてきた感情は悔しさよりも同じ坂本を思う者としての尊敬であった。
ごちそうになったシンは食事を終えた後、すっかり夜になった外に出て帰路に就こうとしていた。
見送りのために坂本と剣人も同伴してきた。ついてきた二人の方に振り返り口を開いた。
「えっと、剣人って言ったかあんた」
「!ああ」
覚えていてくれたことに感心を抱きながら彼の言葉に耳を傾ける剣人。
「その・・・昨日は悪かったな。色々・・・悪口言っちまって」
「!フッ、構わねーて。あんなに嬉しそうにご飯食べてたら昨日の不完全燃焼もすっかり引っ込んじまったし、それにこれで分かったんだったら俺からなにも言うことはねぇ」
素直に謝ってくれたシンに剣人はあっさりと許してあげた。
まあ、昨日の晶のド叱りを受けて喧嘩しないと叱責されたものあるが。許してもらったシンは坂本の方に向き直ったが、剣人の時とは違い彼に銃口を向けてしまったのもあって後ろめたくなってしまいなんて言えば分からなくなりいい淀んでしまう。
「・・・ごちそうさまでした」
食事に誘ってくれた感謝のみを伝えてその場を去ろうとしたが、坂本が後ろの商店の方に指をさし、シンもそれに気づき指の先の方に視線を向けると―
“またのご来店お待ちしております。”
坂本商店
「またいつでも来い。そん時にはお前の知ってる坂本さんのこと教えてくれ」
入口に張り付けられていた張り紙と剣人の彼を歓迎する言葉といった相も変わらずといった彼らの表現にシンの来店を待ち望んでくれている二人を見て、僅かに微笑んだシンは胸の中でこう思った。
(ほんと敵わねえな、この二人には)
そのままシンは暗い夜道を歩いて行った。
シンは現在町のはずれにある倉庫の中で所属している殺し屋が大勢に取り囲まれている先に木箱の上に座っている。集団の中からシンに坂本の抹殺の指示を出したボスが彼の前に姿を現した。
「話ってなんだァ?シン・・・」
ボスの機嫌は火を見るより明らかで坂本を殺せなかったシンに非難の態度をとっていた。
「情けねぇ・・・結局てめぇじゃ坂本は殺れなかったか」
「ボス・・・」
「なんだ?言い訳なら聞く気は―」
黙って聞いていたシンは座っていた木箱から飛び出しそのまま地面に土下座をしながらあることを懇願した。
「坂本さんを見逃してくれませんか!」
突然の坂本をかばう発言に一瞬周りは膠着したが、そのあと出たのはそんなシンの必死な懇願を情けないと嘲笑うかのように嘲笑が倉庫内に響き渡った。
ボスの方はただ疑問が浮かんだだけだった。
「なぜだ・・・?なぜ坂本をかばう?」
「今のあの人には帰るところがあるんです」
「坂本はこの世界のルールを破った。責任を放棄したんだ。だから殺す」
シンの言い分は通らず頑なにボスは坂本の抹殺を諦めてはくれない。その為シンはある行動に出た。
「責任というなら代わりに俺が死にます。坂本さんは見逃して下ださい!」
なんとシンは自分に銃口を突き付けて自害を選ぶことで坂本の脱退の責任を帳消しにするつもりらしい。
「・・・なぜそこまでする?」
「憧れの人に銃口を向けちまった俺なりのケジメです」
「・・・いいだろう、お前が死んだら坂本は生かしといてやるよ」
シンの身を通した交渉は成功したように見えたが、
(ケッ、くだらねぇ・・・なワケねぇーだろバカが。さっさと死ね・・・)
ボスは初めからシンの交渉にまともに応じるつもりはなくシンが死んだらこのあと坂本を殺す腹積もりだったが、シンの前で気を抜いて思考してしまったのが運の尽きだった。
「丸聞こえだぜ」
ボスの思考を読んだシンはすぐさま自分に向けていた銃口をボスの方へと向け直した。
そう、シンも初めから彼らが自身の頼みを素直には聞いてもらえないくらい予想していたのでそこまで動揺はしておらずむしろそんなことだろうと思っていた程度だった。
シンの真の目的はボスたち殺し屋たちを全員殺す覚悟でここに帰ってきたのだ。
突然の謀反にボスを含めた全員から動揺の声が上がり、ボスはすぐさま自分の思考を読まれたことを察した。
「ッ!殺せ!」
(やるしかねぇーか・・・!!)
倉庫内から銃声が響き渡り、それがシンと殺し屋たちの殺し合いの合図となった。
一方そのころ坂本達は、すでに店仕舞いとなっている商店内でエプロンを着込んでいる坂本と竹刀袋を持ち合わせている剣人がおり、二人はそれぞれヘッドセット片方の耳に当ててシンの銃に取り付けていた盗聴器から聞こえてくる音を拾っており、今聞こえてくる銃声はもちろん先程のシンの会話や坂本に対する思いも聞き取っていた。
「なんだ、やればできるじゃないか。見直したぜシン!」
そう意気込む剣人は坂本の方を見ながら頷き、坂本の方も彼に応じて頷き返しレジの警告 色の付いた鍵穴にカギを差し込みレジにパスワードを打ち込むと商店に異変が起きた。
商店の隙間が発光し、商品棚が次々に下に吸い込まれていき天井から並べられている武器が降りてきた。さらに壁がどんでん返しの仕組みで裏返り、そこにも様々な火器、重火器、近接武器といったものがずらりと並んでおり、そこから坂本は警告色が着色されているハンドガン式のテーザーガンを取り出し銃の点検をした。
それに対し剣人は手に持っていた竹刀袋二本の袋の紐を解き中にあったものを取り出した。そこにはこのご時世では基本的に持つことを禁じられている≪日本刀≫がその姿を現した。
それも一本だけではなくもう一方の袋から現れたのは日本刀より短い刀≪小太刀≫だった。しばらく使っていなかった刀に不備がないか刀身を改める。その刀は本来刃があるはずの部分に刃がなく峰の方にも刃はなく通常の刀にしては殺傷力はなく模造刀や居合刀といった実戦での耐久性が低い刀とは異なった仕様ではなく、小太刀の方も同様であった。
「よし!そんじゃ今度こそ行くとしますか!」
それぞれの武器の支度が整い昼間の出オチを取り戻すかのように息巻く剣人に応えるように坂本も頷く。
場面は戻りシンはたった一人で殺し屋たちを相手取り、敵の銃撃をコンテナなどで弾丸を防ぎながらリロードをし、敵にも見つかったが走りながら素早く銃を撃ち次々に敵を倒していきながらなんとか生き残っていた。
ラン&ガンをしながら撃ち続けているシンの先には障害物に隠れている敵がいた。
(蜂の巣にしてやる・・・!)
殺し屋はそう思いながら近づいてきたタイミングで飛び出すがそこにはシンはおらず倒れた仲間の姿だけがありさっきまでいたシンを見失ったことに混乱を起こしたが、シンは隠れている敵の思考で位置を読み取りすぐに上に飛び移りのこのこと現れた敵に鉄鋼に手をかけて勢いをつけての蹴りを食らわした。
飛び降りたシンはすぐにリロードを行いその場を移動しようとしたが高い足場から敵に再び発見されてしまいその手にはロケットランチャーを有していた。
(ハハッ、上からなら丸見えだぜ・・・!)
だがこれも読み取ったことでいち早く気が付いたシンがギリギリでその場から飛んだことで回避することができた。
今だたった一人の男を殺せないことに“クソ”と悪態をついた。
「何してる!たった一人に」
「なんかこっちの動きが読まれているみたいで・・・」
「奴はエスパーだ。近づきすぎると心を読まれるぞ」
「遠巻きに回り込め!」
シンの能力を知っているボスはすぐに部下に能力の詳細を明かし、心を読まれないように遠くから追い詰めていく作戦を立案した。
索敵している殺し屋だが上に隠れていたシンが逆さまになりながら敵に銃撃し、周辺の敵を倒したシンは下に降りてやってきた敵を牽制しながら物陰に隠れた。
弾切れになったマガジンを変えようとした時、閉まってあった予備のマガジン確認したところ手に取ったこのマガジンしかないことに気付いた。
「チッ・・・これで最後か」
最後のマガジンに皮肉を言いながらどうしたらいいのか思案したところ―
(強行突破するしかねぇ!)
全員を倒すことは不可能と判断してひとまず体勢を立て直すために戦略的撤退を行うために敵さん真っただ中を真っすぐ突っ切るしかないと考え、走り出していき出たところを狙っていた敵を撃ちぬいたがうち一人が死に際トリガー引いてしまい銃が暴発してシンの足に命中してしまった。
(しまった!)
走っていた勢いでそのまま転んでしまったシン。その隙を見逃してくれるほど殺し屋たちは甘くなく冷たい殺気と銃口を向けられたシンはここまでかと諦めてしまった。
とその時―
バチッバチッ
『ぐあああああぁ!』
突然目の前の殺し屋たちの体に電撃が走り、そのショックで気を失った。
倒した敵の後ろから姿を現したのはシンの憧れの人であり、身を挺してでも守ろうとした敵を気絶させたテーザーガンを携えた坂本であった。
「坂本さん・・・」
なぜここにと言いたい表情を浮かべながらシンはただただ驚愕していた。
「坂本・・・ッ!殺せ!」
「グワアアァ!」
「!?どうした!?」
変わり果てた坂本を見て一瞬動揺したがすぐさま殺す命令を出したボスだが近くからを悲鳴を上げながら足場から落ちてきた部下を見てボスはさらに混乱を起こした。
だが部下を倒した存在はすぐに明らかになった。
「やれやれ驚いた」
「ッ!」
部下が落下してきた足場から声を聞こえ、皆がそちらに目線を向けると腰のベルトに二刀の刀の差し込み、片手に肩に刀を構えながら手すりにを片足を乗せながら見下ろすように殺し屋達に圧を放つ剣人が参上した。
姿を現した剣人は商店にいた時の子供好きで口調こそ悪いが好青年ならぬ好少年といった性格だったが、今目の前にいる彼はただ
「まさかこの程度で俺と坂本さんを殺れると思ってたとはな。随分とおめでたい連中だな」
剣人の威圧感に飲まれてしまいほとんどの殺し屋は尻込みしてしまい戦える状態ではなくなっていしまっていた。
「くっ!怯むんじゃねぇー!!このままおめおめと逃げれるか!!いいか逃げた奴は俺が後でぶっ殺すからな!!!」
しかし腐ってもプロであったボスは気圧されつつも正気を保ち、逆に部下に逃げ場をなくすことで前進しかない状況にし恐怖しながらも戦える状態にまで引き戻した。
「フン、そううまくはいかないか」
「剣人、分かっていると思おうが」
「ええ、皆まで言わなくても承知してますよ」
少年とは思えない威圧感を出している剣人だが根本にある他者を思いやり尊重する部分はそのままで圧を出しつつも冷静さを保っている。剣人は手すりを飛び越えそのまま重力に従いながら地上に足をついた。
「何ぼさっとしてやがる!ガキもろとも殺せ!!」
ボスの号令で再び士気を取り戻した殺し屋たちはそれぞれ剣人と坂本に向かっていった。対する坂本は割り箸を割り、足に力を込めてその場のコンクリートにヒビを入れながら走り出し、敵が銃撃してきたが坂本は銃弾を割り箸で弾きながら一気に近づき敵の構えを崩してからの横蹴りを放ち、突撃してきた殺し屋も膝蹴りをかましてノックアウト。
遠距離ならと部下が銃撃したが、なんと坂本は今度は器用に割り箸で銃弾を挟み込む離れ業をやってのけた。
その直後坂本は割り箸を置き去りにして殺し屋の視界から消えた。突然消えたことに呆然とし、次の瞬間部下の後ろから彼の襟を掴まれそのまま寄り固まっていた敵の所へと投げ飛ばしぶつけた。
「このレベルなら一刀で十分だな」
剣人は腰に差してある小太刀は抜かずに手に備えている刀一本で十分と判断した。それを聞いた殺し屋たちはなめられていると感じ彼に向けて銃を乱射したが、それに物怖じせず冷静に刃のない刀で銃弾を見切りって叩き落していきながら彼らに近づき一瞬のうちに殺し屋たちを数人斬り伏せていった。隠れていた部下が剣人の背後を狙い撃ちしたが後ろに目が付いているかのように刀を後ろに添えて銃弾を防ぎ、瞬間殺し屋の瞼が一回閉じている間に間合いを詰めて殺し屋の顔を鷲掴みして集団がいる方に突き飛ばして巻き込ませて一網打尽にした。
「くたばれ!」
一方坂本は、彼の後ろから刀を振り下ろそうとしてきた敵の攻撃を避け、続けざまに攻撃してきたがひらりと避けざまに蹴り飛ばした。さらに短機関銃の掃射も両手のボールペンで全て弾き、弾切れした瞬間を狙いペンを投げ飛ばし急所を外して突き刺し失神させた。
剣人の方は、頭上から飛び降りざまにナイフで突き刺そうとしてた殺し屋の刺突を難なく避け、次々に雑に振り回してくる攻撃をひらりひらりとかわしながら隙を晒した殺し屋の脇を狙い刀を振りぬき敵をふっ飛ばした。
「ここからなら刀も届かないだろ」
彼を狙おうと足場から狙撃しようとしている殺し屋の気配に気づいた剣人はスナイパーのいる足場に視線を向けた。スナイパーはこちらに気付いたことに驚いたがバレても問題ないとして心を落ち着かせようとしたが剣人は足元に落ちていたさっきの殺し屋のナイフがいくつか転がっておりそれを拾い上げスナイパーのいる足場を支えている部分をただのナイフで次々に貫いていき支えが利かなくなった足場はスナイパーを巻き込み崩れていった。
さらに増援が来たが坂本は高く飛び上がり設置されていたクレーンの先端を掴みながら増援のいる方へと降りながら蹴とばしてクレーンを放り投げ、後ろから来た殺し屋たちを巻き取り廃棄と書かれたコンテナへと投げ飛ばされていった。
今度は狙っている敵の方へと標的を変え引き金を引く前に間合いを詰めて一瞬のうちに銃を分解して殴り飛ばした。
殴られた殺し屋は歯が折れて何が起こったか知る由もない。
ドスを持った殺し屋が坂本に突き刺そうとしが、刺す前に腕を掴まれ裏拳をかまされた。
剣人は刀を装備した複数の敵に襲われたが素人臭い動きに彼がやられるはずもなく一瞬で敵の刀を全て破壊していき無防備になった相手達に頭、腹、首、胸部と打ち込まれていき意識を奪っていった。ロケットランチャーを抱えた殺し屋が剣人に狙いを定めて発射されたが剣人は刃のない刀にも拘らず発射されてた弾頭を真っ二つに切り裂き、そのまま素通りしていき後ろで爆発を起こした。
発射した本人は何が起きたか理解できずに一気に距離を詰められた剣人の拳をもろに受けた。ハンマーを引きずりながら後ろから彼を潰そうとしている大男だが気づいていた剣人は大男の両足を切りつけ体勢を崩させそのまま顎を切り上げて後ろに倒れた。
「ひ・・・一人ずつ行くな・・・!一斉に撃つぞ!」
ボスを含めた残り三人となった奴らは一斉射撃に全てを賭けようとしている。
合流した剣人は刀を正眼の構えを取り、坂本は両手から丸い縦長上の物体を出し蓋を外すと仕込まれていたナイフが飛び出した。
「撃て!」
ボスの合図で二人を狙って掃射してきたが走りながら避ける二人には一切当たらず接近を許してしまう。そして阿吽の呼吸の如く剣人の刀が三人の銃を切り裂き、坂本が無防備となった三人を死なない程度に切りつけた。
「クソ・・・が・・・」
そう吐きながらボスは意識を失った。
(スゲェ・・・これが・・・坂本 太郎!)
尊敬する人が自分が手間取っていた連中を圧倒する光景を見て圧巻されるシン。
(だけど・・・和泉 剣人・・・あいつは坂本さんの動きについて行ってた。)
そしてもう一人、大勢を相手に息も切らさずに敵を蹂躙した少年。最初はただの運動神経のいい少年と思ったが敵を前に鬼のような雰囲気を纏いながら現れた彼を見たとき向けられたわけでもないのに僅かばかりの恐怖を抱いたが、同時に自分を助けるために戦う姿を見たときは逆に頼もしいとすら思えた。分からないことは多いがそんな彼でも一つ断言できることがある。
(こいつは―いや、
そう思えるくらいこの剣人という少年をシンとって目指すべき目標の一つになっていた。
だがここで一つ疑問が浮かんだ。なぜここに自分がいるのが分かったことだった。
「坂本さん。なぜここが?」
シンの答えを示すために坂本は彼の銃をとりスライドを引くと発信機が出てきてシンはそれを手に取り、それで気絶している間に取り付けていたこと理解した。足の痛みも大分引いてシンは立ち上がった。
「坂本さん。俺決めてたんです。例えどうなっても、今日でこの町をでようかと―」
全部言い切る前に坂本はシンに“あるもの”を投げつけた。シンは不思議そうに落ちる前に手に取るとそこには“シン”と名札の書かれたエプロンだった。
「時給800円。残業手当な・・・あり」
「え?」
急な要望にシンは頭が真っ白になった。
すると坂本に手を肩にポンと乗せる剣人がいた。
「残業代の件は気にしなくていいって。俺がちゃんとふんだくるから」
「ええ!?」
「お前は余計な事言うな・・・」
いきなり残業代をふんだくる剣人の発言にシンの脳内に宇宙空間が広がるといった更なる混乱を招き、特に坂本は昼間のことを忘れていなかったことのショックで眼鏡がひびが入った。
「フゥ~大分遅れちまったな」
その後シンは怪我が大したことはなくそのまま自宅に帰宅し、剣人は電車で帰ろうとしたが坂本がバイクで送っていくと言い、最初は妻子のこともあり断ろうとしたが働いてくれた恩返しと言われたために断れずありがたく乗せてもらいしばらく坂本とツーリングを楽しみながら晶のいる隣町に帰っていき家の前でお別れをした。
あとは扉を開けて家に帰るだけなのが一つ問題がある。
(想像以上に残業しちまったな)
現在はもう午前零時。そうつまりもう日付が変わっていしまっており、早く帰ると約束したのにその約束さえ守れなかったので剣人は絶賛悶絶していてどうしたいいのかと頭を抱えていた。
(こうなったら忍者のように忍び足で行くしかない・・・!)
覚悟を決めて忍者の印のポーズをとりながら抜き足差し足忍び足で上がることを決断した。
扉の前に立った剣人は鍵を音を極力出さないように努力して開けて、
「ただいま~」
起こさないように小さく呟きながら靴を脱ぎ、音が忍者が使う歩法―ナンバ歩きをしながら目の前の階段に向かいながらそーっと歩きあと一メートルまで近づいた時―
「何やってるの?剣人」
「!」ビクッ
突然真横からいつも聞きなれている、でも今は一番聞きたくない声が聞こえてきた。そしてここで一番見落としてはいけないことを思い出した。
なぜ
「えっと・・・ただいま晶・・・」
「うん、おかえり剣人」
普通そうな会話に見えるが一度でも踏み外せば真っ逆さまという別の意味で吊り橋状態な状況になっている。
「その・・・」
「うん」
「あの・・・」
「なーに?」
緊張のあまり言葉が続かなかったが、剣人は意を決して晶に全霊の土下座をした。
「本当にすみませんでした!!約束反故にした上に早めに帰るって言っておきながらこんな時間まで待たせてごめんなさい!!」
今思い当たることを全てを白状し、怒りを鎮めようと全力の謝罪を行った。
「それもあるけど、私に言うべき事はそこじゃないの」
「え?」
しかし彼の本気の謝罪はどうやらややからぶってしまっておりでは何に対して怒っているというと。
「夕ご飯食べるってメール以降の連絡が一切途絶えていることでしょ!!」
「あ!」
晶に言われてようやく気が付いた。そう剣人は夕ご飯以降のシン救出のごたごたで連絡を今に至るまで忘れてしまっていた。だから彼女が怒っているのだとやっと理解した。
「すまねぇ、残業が忙しすぎて頭から抜けてた」
「いくら忙しいからって連絡を忘れるなんて今までなかったよ!正直に言って一体何があったの!?」
今まで剣人は晶への連絡は欠かせずに行ってきているので今回の連絡の途切れが原因で異変が起きたと感じ取った晶は不安でいっぱいだった。そんな晶の不安に満ちた表情を見て剣人は彼女にどんな思いをさせたのかを察し申し訳ない気持ちでいっぱいとなり、もはやこの状況では言い逃れはできないと悟り大まかに今日の残業の出来事を話すことにした。
「実は―」
今日の残業の出来事を剣人は大まかにされど細かいところはぼかして伝えた。
店長の昔いたところがいちゃもんをつけて引き戻そうとし、店長の昔の知り合いがそれを止めようと単身で挑み、それを前もって予測していた店長の手伝いとして同行して知り合いを助けるためにそいつらを懲らしめた。
といった感じで事の顛末を伝えた。
「ということなんだ」
嘘は言っていないが本当のことも言わないように細心の注意を払いながらすべて答えたが晶は彼が経緯を話している途中で話しかけたり問いただしたりせず、言い終わった今でもただ俯きながら黙っていた。
「ほら全部吐いたぞ。もう遅いしそろそろ眠らねぇといけねぇし」
気まずいと思った剣人はその場を離れるための言い訳をして階段を上がろとした時、晶に腕を自分の体に絡めさせた。
「!?ど、どどどうしたんだ晶!?」
突然の晶の意味不明な行動に顔を紅潮させて声が裏返ってしまい、晶の方はいまだ俯かせたまま腕をさらに強く掴んだ。
「剣人」
「な、何?」
やっと声を出した晶は伏せていた顔を上げた。彼女の目は涙が出そうなくらい潤んでいた。
そして彼女は口を開いた。
「今日は、一緒の部屋で寝て」
・・・
「ええええええええええ!?」
なんと一緒に寝ると衝撃的な発言に剣人の頭の中はどうしてこうなったとぐるぐる渦巻きが出来てしまうくらいにパニックとなってしまい、顔の温度が上がってしまいさらに頬が真っ赤に染まってしまう。
「あ、ああー!一緒の部屋って言ってもベッドは別々ってことだな?」
なんとか落ち着かせようと寝るとこは大丈夫だろうと想定していたが、
「ううん、寝るところも同じだよ」
「んな!?」
しかし彼の予測は空しく外れてしまいこのままでは本当にベッドに直行してしまう。そして剣人の理性はいずれ崩壊し、彼女に手を出してしまう未来を案じてしまいこれはマズイと直感した剣人はすぐさま晶の説得を開始した。
「い、いやいくら幼馴染でも、もう年頃なんだから一緒に寝ると俺、変なことするかもしれないぞ」
「剣人ならそんなことしないよ」
「うぐ・・・あ、明日は学校なんだしさ早めに寝ないと」
「明日は学校休校なんだから」
「ぬぬぬ・・・ああ!俺は明日仕事あるんだから」
「剣人もお休みでしょ?」
「ううう・・・」
だがことごとく晶に抜け穴を突かれながら論破されてしまい、完全に退路を断たれてしまいもはや剣人に逃げ場はない。他に何かないかと考えを巡らそうとしたが想い人に体を押し付けられてしまって冷静でいられるはずもなく余計に顔が沸騰してしまうくらい熱がこもってしまいまともに晶の顔なんて見られる状態ではなかった。
「剣人・・・」
だが彼女の消えてしまいそうな切ない声に思わず視線を向けてしまい―
「お願い・・・傍にいて」
溢れ出してしまった涙を流しながら切願する彼女の顔を直視してしまった彼は断ることができなかった。
外に出たままの服装のまま剣人の部屋で寝ることになり、二人は同じ寝床で寝ることになり体の向きは晶が彼の方に向いており、剣人は理性を保つために彼女と向き合わないように窓の方に体を向けていた。
(どうしてこうなった・・・)
残業で予定より遅れて帰ってきたら雷を落とされたかと思いきや不安な彼女を落ち着かせようとしたが逆に泣いて縋ってきながら夜を共に過ごす羽目になったのだ。
(考えてもしかたない。ひとまずこのまま目をつぶって・・・)
「剣人」
「な、なんだ?」
剣人が眠ろうとしていた途端に声をかけてきた晶。
「こっち向いて」
「ええ!?でも」
「向いて」
彼女の強い要求に逆らえず彼女の方へ寝返った瞬間―
「な、何やってんだ晶!?」
突如剣人から悲鳴が上がった。それもそのはず、彼が自分の方へと寝返った隙に晶は大胆にも彼の懐に入り彼の体に抱き着いたのだ。
なんとか持ち直したはずの剣人の理性が再び胸に湧き上がる気持ちに動悸を起こしながら浸食されてしまった。
(あ―晶からいい香りがしてくる)
晶からほのかに香る甘い香りが彼の理性を緩やかに、だが着実に溶かしていき次第に彼の両腕が彼女を捉えようとゆっくりと彼女へと近づいていきあと数センチまで近づいた時―
「剣人は」
寸前で彼女の声が彼の顔の横から響き、腕の動きもぴたりと止まった。
「剣人はどこにも行かないでね」
「え?」
いきなり訳の分からないことを言い出した晶に剣人は困惑し、どういうことなんだと彼の思考を停止させたがその答えはすぐに分かった。
「剣人は、また
「!」
そう彼女が今まで不安になっていた理由は、剣人が帰るが遅く連絡がこないあまり、晶は彼がリオンのように自身の前から消え去ってしまうのではと思いこんでしまったのが今回の行動の真意。
晶の叔母のリオンは
ところが行方をくらましてから五年後にこの家に幼馴染が帰ってきてくれたことに晶は心の底から安堵した。だがそれとともに再び少年を失ってしまう恐れを密かに抱いてしまい、それが今回の件で爆発してしまったのだった。
晶の告げた答えにようやく剣人はなぜこのようなことをしたのかを理解した。同時に崩れかけていた理性も落ち着きを取り戻してきた。
「リオンさんがいなくなって、剣人もまたいなくなったら・・・私・・・私・・・」
彼の肩で嗚咽を漏らしながら晶の体は震えていた。そんな彼女の弱々しい姿を痛ましく思い剣人は彼女の体をしっかりと抱きしめ、背中をさすりながら頭も優しく撫でてあげた。すると晶の中で肥大化した不安が静まっていくのを彼女も感じていた。
「晶、心配すんなって。俺は君の前からいなくなったりしねぇって」
「本当に?」
「ああ、約束だ」
その言葉を聞き、晶の不安は完全に収まり涙もとまり彼女の表情に笑顔が戻った。
「ありがとう剣人。その言葉を聞けば私はもう大丈夫よ」
「それはよかった。ああ、それから気になったけど」
「ん?どうしたの?」
「今聞くことじゃないかもしれないが俺が残業で相手をボコボコにした件についてさっきなんも言わなかったから、正直晶はどう思ったんだ?あの時はなんで怒ったりも衝撃を受けたりとかしなかったんだ?」
「ああ、なんだそんなことね」
「え?」
意を決して話した残業の内容がそんなことと言われて剣人は呆然としていた。
「剣人は店長さんの大切な人を守ろうとしたんでしょ?それに剣人なら絶対に負けないって信じてたから」
晶は剣人がいたずらに誰か傷つけることをするような人物ではないことは知っており、そんじょそこらの相手にやられないくらい強いことも幼馴染の彼女は知っているから。
晶の信頼の断言に今度は剣人が笑みをこぼし、彼の笑顔をみた晶もつられて笑ってしまう。
「もう大丈夫だな」
「うん、心配かけさせてごめんね」
「それはお互い様だろ」
「ふふ、そうだね」
二人はしばらく話し合いながら楽しく夜を過ごしていきそのうち二人に眠気がやってきて目元が次第に閉じていき眠る前に幼馴染たちは声をかけてた。
「「おやすみ」」
その言葉と共に二人は眠りについた。
ここまでするのに言葉も慎重に選びながら描き切りました!
ちなみにSAKAMOTODAYSの中で一番好きなヒロインは無論、晶です!
それでは読者の皆さん、SAKAMOTODAYSファンの皆さん、晶ファンの皆さんも乞うご期待ください!