「風は南西・・・目標までの距離約5メートル・・・遮蔽物なし・・・敵はこちらに気付いていない・・・よし・・・!!」
バシュン!
「はいはずれ、残念。次の方~」
警察体験イベントに参加している仕事の合間の休憩として坂本達は射的の屋台で景品を取ろうとしているがコルクの弾を使うおもちゃのライフルに使い慣れておらず景品の斜め上を飛び越えてしまい丁度今のが最後の弾だったのでシンはここで脱落となった。
「行ったか・・・」
「匿ってやったんだから」
「な!馬鹿な・・・狙いは完壁だった・・・さてはこのライフル銃口が
「いや止めやがれ、単純にあんたの腕が下手なだけだろ」
最後まで当たらなかったことに納得いかずにいるシンは射的用のライフルを分解しようとし剣人がすかさずベシッとシンの頭を叩き諫めようとしたが彼の気は収まっておらずむしろ剣人に食いかかってきた。
「いや、ぜってぇこのライフルが不調だったから当たんなかっただけだろ!!そーじゃなきゃあんな方向に飛んでいかねぇだろ!」
「いや、それを込みにしたとしてもそれを使いこなせなかったお前の落ち度であることには変わんねぇだろ」
「んだとコラ・・・!それじゃアンタはちゃんと当てれるんだろうな・・・?」
「悪りぃけど俺は銃の扱いは大の苦手でめっちゃ至近距離なきゃ当たんねぇんだよ」
「お前人のこととやかく言える立場じゃねぇーじゃねぇーか!!!」
「うっせー!!今外した奴に言われたくねー!!!」
近くを通りすがる子供達から“変なの〜”と奇異に見られながら一応大人と成人に近い年頃をした二人が大人気ない子供じみた喧嘩をしているのをよそに坂本はソフトクリームをペロペロ舐めながら片手でほとんどの景品を一発必中で決めて袋に詰めて買い占めていた。
ちなみに景品の数が9割切ったところで屋台の人は顔を真っ青にして坂本は出禁扱いして追い出した。
(仕事の途中・・・行くぞ・・・)
「「・・・!!!」」
先程まで喧嘩していた二人の男は行動で示した坂本の姿を見て何も言えなくなり喧嘩は収まることとなった。
その後バイクを置いてある場所まで戻りバイクに先程取った景品を乗せた。ちなみに剣人は建物を飛び越えて坂本達のバイクに追いついた。
と、その時女性の巡査が通りかかってきた。
「ここのバイクあなたたちのですか?」
「ああ、ごめん配達の途中だったもんで・・・」
シンが二人のかわりに答えたがそれを聞いた巡査はぷんすかと怒ってしまう。
「ここは駐車禁止ですよ!」
「え~ちょっと置いただけじゃん・・・」
「今日はただでさえ子供が多いんですよ!?こういう時こそ大人はしっかり・・・」
この巡査が言ってること自体は間違いではなく坂本達は制限時間の5分を超えていたため怒られるのは当たり前なのだが巡査がネチネチと注意するので坂本はスンッと無視の態度を取り剣人はそもそも駐車の件に関しては関係がないため知らぬふりを決め込むさまである。
一方のシンは巡査のバイクの後部座席の上に何かのチラシのようなものが乗っかっており気になり手に取って内容を読み上げる。
「“二人組の覆面男の情報求む”・・・?なんだこりゃ」
そう読み上げるシンのチラシに書いてあったのはちょうど先日坂本達がバスジャックで暴走したバスを止めるために正体ばれを避けるために仮面を被った坂本と剣人の姿が写った絵が貼られておりどうやらどこか指名手配みたいな感じで配られていた。
ちなみにこの情報はテレビでも流されており晶とリベレもこのニュースを見たため仮面を着けていても剣人だとすぐにばれてしまい剣人は二人にかっこいいと絶賛されてしまい嬉しさのあまり地面に転がり悶絶してしまった。
「!ご存じですか?今巷で話題のバスジャックから市民を救った正義のヒーロー覆面男!」
「ヒーロー・・・?はいはいまぁ知ってるっちゃ知ってるけどそんなそんな」
(正義のヒーロー・・・)
(おお、おお、どんどん賞賛をくれ・・・俺は褒めれば伸びるんで・・・)
巡査は覆面男たち―今目の前にいる3人―を探しているらしくどうも世間からはヒーローとして扱われているらしくその当事者である3人はご満悦になっており照れくさそうにしながらも嬉しそうにしていたが、
「私ッッ・・・!許せないんですっ・・・!この男たちが!!人を暴力で制圧して何が正義ですか!!絶対捕まえてやるんです!」
この巡査には良く思われておらずさらに正論まで言われてしまいさっきまで有頂天だった3人の気分は一気にどん底に落ちてしまい剣人の方はショックのあまりムンクの叫びのような顔になってしまい坂本にいたっては眼鏡にヒビが入ってしまう程落ち込んでしまう。
ショックを受けながら剣人と坂本は思考でシンに“行くぞ”と送ることでその場から離れようとしシンもそれに従ったついて行く。
「まぁでも乗客に
シンがそう告げて去ろうとしたが余計なある一言が巡査の興味を引いてしまう。
「・・・なんで知ってるんです?そこまではまだ公開されていないはずですが・・・?」
「え”」
「「ッ!」」
確かにニュースではバスジャックの件と仮面男達の情報をテレビでも取り沙汰されているが乗客の詳しい情報までは出回っておらず当事者の一人であるシンは自然と口に出てしまい巡査から不審がられてしまいその場に留められてしまう。
「あ、へえ~いや勘だよカン。全員無傷だったらいいなって思ってほらお客さんに
「お年寄り・・・?詳しいですね」
「あ」
(もうしゃべるな・・・)
(このバカシン・・・!あんだけ言ったのに・・・!)
言い逃れしようとしてさらにシンはボロを出してしまいさらに巡査に詰められててしまい坂本と剣人は思考でシンに りつけてこれ以上言わせないようにする。ついには巡査はトランシーバーをだして上に報告しようとしていた。
「こちらナカセ憩来坂商店街通りで怪しい男三人組を―あ」
坂本達は巡査―ナカセがトランシーバーに注意が向いているその隙を狙って猛ダッシュでその場から逃げた。
「ぜったい怪しい・・・!覆面男達と何かつながりがあるんだわ・・・!問い詰めてやる・・・!」
ナカセは腕をストレッチさせてから逃げ出した三人に追いつこうとするために走り出した。
「待ちなさーい!!!」
「うぉ!意外と早えぇ!」
坂本達は商店街の中をもの凄いスピードで走りぬいているがナカセも負けておらず昔の仕事上結構鍛え上げられているはずの三人に食らいつきながら追いかけて来ている姿を見てシンは驚きを隠せない。
周りの住人たちからは坂本が走っている姿を珍しく見たり相変わらず元気だと遠い目で見守っていた。
「坂本さ~ん!新商品食ってかない?」
その時団子屋の主人が新商品の団子があると言い、気づいた三人は一瞬で団子を受け取るとともにお金もちゃんと置いていきながら通り過ぎていった。
「アレ〜おかしいなぁさっきまで・・・」
ナカセは途中まで坂本達を追いかけていたが三人が団子を買った瞬間に完全に見失ってしまい周りをキョロキョロしながら探している。
その坂本達は顔出しパネルに顔をはめる事で擬態?することでナカセの目を欺いた。
灯台下暗しとはこのことだ。ついでに顔のはまったままの体勢で団子を堪能していた。
「アハハへんなの〜!!」
だが通りすがりの子供には通用せず笑いながら三人のいるところを指差してしまいその声に反応したナカセが目を光らせて顔出しパネルの方を向くとあっさりと見つかってしまい逃走劇が再開してしまう。
「なにふざけてるんですか!」
「バレた!」
「無垢の恐ろしさ!」
(ぬけない・・・!)
パネルに挟まったままの坂本を連れて商店街を走り抜けながらナカセを撒き切る為の作戦を立てようとする。
「どうしますか?俺が囮で―」
シンが言い切るよりも速く坂本は地面の
「何のつもりですか!?くだらな―あ」
足止めのつもりかと思いナカセは反射的に飛び越えたが、さっきのは足止めではなくあえて飛び越えさせることが目的でその先の地面に下を向けると“ペンキ塗りたて”という注意事項が貼ってありそのまま彼女の身体は地面に座り込む体勢でベチャという跳ねる音を出しながらペンキに浸かってしまい寄ってきた子供達に心配されたり濡れていることを指摘される有り様に恥ずかしさのあまりナカセは怒り心頭になってしまう。
「も〜〜〜絶対許さない!!」
猛ダッシュで再び見失った坂本達をを探すナカセであるが坂本達は近くにある焼き鳥屋の屋台の店主に匿われることで今度こそ撒いた。
「行ったか・・・」
「匿ってやったんだから10本ずつ買ってけ」
「も〜お腹いっぱい」
「俺は買う。家に帰ったら夕食のおかずにするから」
その後、ナカセはしばらく商店街中を探し回ったが結局坂本達を見つけることは敵わずしょげてしまい丁度近くを寄ってきた警察官のお爺ちゃんと出会い彼に状況を説明した。
「あ~結局逃げられちゃった・・・ここまで追って逃げられるなんて初めてです・・・」
「まぁ彼らは多分覆面男達とは関係ないよ・・・」
彼女はこう見えて陸上部で一位を取る程の俊足の持ち主だが今回取り逃がしたことは彼女のプライドにヒビを入れてしまったようだ。お爺ちゃんはナカセを慰める。
「ナカセちゃんは頑張り屋さんだねぇ・・・こっちの仕事はもう慣れた?」
「はい!充実してます!」
「そりゃ~何より・・・」
雑談をしている二人の近くに商店街の出口前の建物の死角となるところに坂本達がやってきて二組は互いに距離が縮まりつつ鉢合わせしそうになる。だが寸前でシンが気づいたことで立ち止まることができ建物の壁に張り付くことで対面を避けることができた。
「しかしナカセちゃん物好きだねぇ・・・エリートなのにわざわざ本部からこの町に来るなんて・・・」
三人の耳にも二人の会話が聞こえてきた。どうやら彼女は成績が優秀でそれも本部に所属できるほどの能力も高い彼女がなぜこの町に来たかの話らしい。
「私、昔この町に住んでたんです!その時おまわりさんに助けてもらったことがあって・・・」
ナカセは幼いころに帰りの途中で帰り道が分からなくなり迷子になっていたところを当時の警察が助けてくれたことがその警察に憧れたことが彼女の原点だった。
彼女が警察になった道を語りながらナカセは“だから”と間を置いて、
「今度は私がこの町で・・・誰かの力になれればいいなって思ったんです!」
彼女の純粋なまでの強く優しい正義感に坂本と剣人はどこか不思議と共感が持てる。二人とも身近にある大切の者のために戦う二人にとってはナカセの志はとても気持ちの良い真っすぐさは眩しく見えた。特に剣人は昔出会ったある警察官の事を思い出すくらい彼女は彼と似ていた。
「坂本さん!剣人!今のうちに行きましょう!」
シンは今が逃げるチャンスと出入口とは反対方向に走りながら坂本達に呼びかけ二人もナカセの様子を見終わったころでシンに追随してその場を走り去っていく。
ある程度ナカセから距離を開けた辺りで立ち止まり一呼吸をついてから後ろを確認し完全に振り切ったことを確信する。
「今度こそ撒けましたね」
「ああ」
「あの婦警さんにはもう二度と追いかけられたくないな」
そう言いながら三人は駐車してあるバイクに向かって歩き出すが、シンが坂本と剣人の方を向いて前を見ないまま進んでいると“ドンッ”と向かいから来ていた歩行者にぶつかってしまった。
「いてて、悪りぃ前見てなかった」
「いや、俺の方こそ考え事していたから」
シンとぶつかった青年はボロいジャケットに穴が開いているデニム柄にズボンと随分みずぼらしい服装で髪も手入れがされていないのかぼさぼさになっている。
だがシンの後ろにいた剣人はどこかその男に見覚えがあった。尻もちをついた男の高さに合わせて膝を降ろして確認すると剣人の表情が驚愕に変わる。
「ア、アンタ―あの時の新米警察官のヤツだろ⁉」
その男は依然と比べて荒れているが三年前剣人を誤って捕らえかけてしまいそのことに後悔していた当時駆け出しの警察官だった青年の顔とまるっきり一緒だった。
「き、君はあの時の少年の・・・!」
こんなところでまさかの再会を果たしたことに驚く二人をよそにシンは“え?知り合い⁉”と驚き坂本の方は昔の知り合いが帰ってきた程度の衝撃で済んでいる。
その後、坂本達と共に彼の自前の車と共に商店に帰宅し坂本とシンは仕事に取り掛かっているが少し席を外すようにと頼んだ剣人と青年は商店の外にある小さなテーブルとそれぞれパイプ椅子に向かい合いながら座っていた。
「それにしたってまさかあんなところで会うとは思ってもみなかったぞ。えーと、確か凱って名前だっけ」
「ああ、間違いない」
警察官であるはずの青年―
「久しぶりだな!あんたとは確か三年ぶりにまた会ったな」
「俺はまさか君に覚えてもらえているとは思ってもみなかったよ」
「忘れるもんかよ、あんなに良くも悪くも真っすぐな奴そうそういないからな」
話題を盛り上げて話に花を咲かせようとする剣人だったが、真っすぐという言葉を口にしたとき先ほどまで微笑んでいた凱の表情が陰っていく。
「どうしたそんな顔して?もしかしてなんか気に障ること言っちまったか?」
「い、いや・・・そういうわけじゃなくて・・・ただ、俺が真っすぐなせいで君にあの時ひどいこと言っちゃったからな・・・それを思い出して・・・」
「いやいや、あの時のことは水に流そうぜ!俺の方はあんまり気にしてないしさ。それにいつまでもそんなに暗いんじゃおまわりさん務まらないぜ?」
剣人は事情は分からないが落ち込んでいる凱を励まそうと背中をたたくが一向に凱の表情は曇っておりそれどころか余計に影を落としていた。
「本当にどうしたんだ?なんか嫌なことでもあったか」
剣人は意を決して凱の悩みに踏み込んだ。
そして根負けした凱は衝撃的なことを口にした。
「俺、警察官クビになったんだ」
「は?」
あれだけ正義感の強い凱がクビになった。
その衝撃の事実に剣人は言葉が出なかった。嘘だと思いたかったが彼が嘘をつく人間じゃないことは彼の誠実さから可能性から除外された。
いまだに信じられない剣人は再び凱により深く問い詰める。
「な、なんだってそんなことに・・・!」
凱は話そうかとしばらく迷うが剣人が三年前と変わらずにただただ真っすぐと自分を見つめ来る瞳を見て彼も覚悟を決めて話すことを決意する。
俺は三年前のあの日からずっと人々のために警察官の義務を全うしてその活躍が本部にまで届いて昇格の話が上がったんだ。俺は正直自分のような若手が上に上がるなんて分不相応でまだ早いと思った。
けど、周りの同僚や先輩たち、上司のみんながまるで自分のことのように喜んでくれて一丸で背中を押してくれた。俺も改めて考えてみて昇格すればできることが増えて犯人を捕らえるために死んだ俺の父もエリート警察官で少しでもあの人に近づけるのならと意気込んで俺は昇格の話を承諾した。
この町を離れるのは寂しいがもっと多くの人たちのためになれるのならと感情を押し殺して大きな都会に出ることになった。
だけどそこで待っていたのは非常な現実だった。
周りからは若手ということと隅っこの町からの出である理由から煙たがったりひどい時は直接暴言を吐かれることもあった。上司にも相談したがその上司はあるあるということにしてまともには取り合ってもらえず解決にならなかった。
それでも市民の為なら我慢し実績があればみんなも分かってくれると思い仕事に励んだ。
だがそこでも壁に直面した。
殺人犯の犯人は自殺することで罪を逃れたり、犯人を捕まえられなかったことを被害者に責められたり、事件が迷宮入りすることも少なくなく俺の心は窶れていった。
極めつけは暴行かつ強盗をした犯人を捕らえたがその人物は政府高官の一人息子ですぐに釈放されることになってしまったことだ。俺はそのことに納得できず彼がやったことの証拠と証言を地道に探していきようやく男の罪をでっちあげるための準備が整った時に上司と同僚達が押し入り俺を取り押さえて今までかき集めてきた証拠を押収し始め、さらには証言となってくれる者たちは権力で口止めされてしまい完全に八方塞がりとなってしまい詰んでしまった。
そして上司は俺を見下しながら侮辱の言葉を吐き続けついにはある事実まで口にした。
『お前もあの愚かな父親とそっくりだな。こうして私に見下されながら殺されたんだからな』
その言葉を聞いた瞬間、一瞬理解できなかったがすぐに言葉の意味を理解できた。父さんは俺と同じように犯人を追い詰めたがその犯人も何か政府関連の人物で都合が悪いと感じた本部上層部が口封じとして父を殺したんだと。その実行犯が今、目の前にいる。
その時、俺の目の前は真っ赤に染まり自分でも信じられないほどの雄たけびを上げた。
その後のことはよく覚えていないが気づいたら俺の目の前には何度も殴られたことで顔が変形するほどで原型を留めていない上司とその周りには今まで俺を罵ってきた同僚たちが血まみれになって横たわっていた。
かろうじて生きていたがそれでももう今後警察の仕事ができる体ではなくなってしまった。それをやったのが俺だと理解したのは立ち尽くしてしばらく経った後だった。その後他の警察官が突入して上司たちは病院に運ばれ俺は留置場に押し入れられた。上層部はこのことが公に出ると自分たちの威信に影響が出かねないためにあの日の全ての出来事の責任を俺に擦り付け俺は本部を追い出されクビにされた。
俺は行く当てもなくぶらぶらと流れこの町から少し遠い隣町のボロいアパートでひっそりと暮らすことになった。警察の正義を信じて進み続けた結果がこの有様だ。
「・・・」
剣人は言葉が出なかった。あの日別れた後の道のりがあまりにも報われないもので理不尽だと思った程。話し切った凱は今まで誰にも話したことがなかったことを吐き出せたのかさっきよりは少しマシな表情になっている。
「今思えばあの昇格の話も俺を使い捨ての消耗品の補充をするためのものだったのかもしれないな。ホント、都合のいい話ってないもんだな」
だがそれでも凱は暗い道から抜け出せないまま自己嫌悪に陥っている。それも仕方ない、あれだけ警察は人を守りものだと信じて疑わずに頑張って努力した結果周りの不条理に翻弄されて挙句に父を殺されてしたのがその上司だった者で、それに気づかずにその下にいて何も変えられなかったのだからショックはでかい。
「もし・・・」
すると今まで沈黙していた剣人が静かに、しかし明らかに怒りの色をこもりながら声を震わせていた。
「もし、そいつらが俺の前にいたら全員叩き斬ってた」
「え⁉」
この切り返しには凱は目を点にさせながら驚いていた。先程まで落ち込んでいた彼はさっきの話はスケールがでかすぎるから何も言えなくても当たり前だと思っていたつもりがまさか自分のためにここまで怒ってくれるとは思ってもみなかったからである。それも嵌めた上司と同僚達にをボコボコにしようとする意気込みすら臆せず口に出す程。
「でも、なんだってそんなに俺なんかのことを・・・」
「ん?前にも言ってたこと忘れたのか?」
「俺はあんたみたいな馬鹿正直で真っすぐな奴が好きだって」
「!」
3年前にも言われた剣人に評された言葉を突き付けられたことで凱はハッ!となりさっきまでの曇りがちな顔に光が灯り始めた。
「あんたは何にも間違えちゃいないし正しいことを為そうとしたこと、権力に屈せずに立ち向かったんだからあんたの勝ちなんだよ!」
「でも、結果的に俺は何もできなかった・・・」
「結果は重要じゃないんだ。大事なのは過程だ」
「え?」
「あんたは例えどんな奴が相手でも諦めずに食らいついて、正義を貫くために足掻き続けたんだからあんたは立派だ。他の誰が何と言おうともな」
「・・・ッ!」
凱の目元から涙が溢れ出し足を震わせながら崩れ落ちていく。ずっと心の奥底から誰かに言われたかった言葉を、自分よりも若い少年が言ってくれたことに感動と安堵と喜びのあまり涙止まらないくらい嬉しかった。
「ただ!一つだけ足りなかったことがあった」
だがかといって全肯定するわけでもないため涙のあまり伏せていた凱の目が一気に見開いた。
「お前は何の為に警察官になったんだ?」
「何の為に?」
警察官になった理由を剣人が突きつけたことで凱は逡巡し、考えて考えて思い当たった答えを口に出す。
「人を守る為・・・ただそれだけのつもりでやってきた・・・」
「人を守るって誰を守りたかったんだ?」
「・・・それは」
剣人の追い打ちの言葉に再び凱は何も言えなくなった。凱の頭は今堂々巡りを繰り返し答えが見いだせずにいた。
「じゃあお前の親父は誰を守りたいって言ってたんだ?それを思い出せばいいんじゃないか?」
されど剣人の助言を受けて凱は再び幼い記憶の中を彷徨い出し―
答えを見つけた。
『とうさん、とうさん』
『ん?なんだ凱』
『とうさんはどうしてけいさつかんになったの?やっぱり悪い奴らたおして人を助けるためでしょ!』
まだ年端もいかない幼い凱は純粋に父に憧れを抱き、テレビで見たヒーローのように思っている。
『うーんそれもあるが一番の理由はそれじゃないな』
『え?じゃあなんでけいさつになったの?』
疑問符を浮かべる凱に父は優しく頭をおいて撫でる。
『凱、お前のためだ』
『ぼくの?』
頭から手を離すと父は部屋にある女性の顔が写っている写真を手に取って切なそうな目をした。
『ああそうだ、俺は昔お母さんを悪い奴から守れなくてな・・・すごく悲しかったけど同時に自分の不甲斐なさに憤りもしたよ。もうそんな思いはしたくないしお前にそんな目にあってほしくない。だからどんな悪い奴にも立ち向かえるようにと遅まきながら警察官になって怖いものからお前を守ってこの平穏を享受できるようにという願いのもと警察になったんだ。それが俺の正義だ』
『うーんよくわかんないや』
『ははは、今は分からなくても大きくなって大切な人ができたら凱にも分かるはずさ』
『じゃあとうさんがぼくの大切な人だ!』
『ははは、嬉しいことを言ってくれるな!』
過去を振り返った凱の目には再び涙がこぼれだした。これはさっきの肯定による喜びによるものではなく父を失いただがむしゃらに彼の背を負うことで辛い気持ちから目を逸らしあまつさえ思い返せばまた悲しみに囚われて動けなくなってしまう身勝手な理由で父との思い出に蓋をしてしまった自分の弱さに対する悔しさへの涙だった。
「・・・俺は・・・今まで何やってたんだ・・・父さんとの思い出を忘れて、ただ盲目に張りぼての正義にすがって自分が何をしたいのかすら分からなくなって・・・例えどんなクズでも、俺は怒りのままに無意味に人を傷つけた・・・俺に正義を語る資格なんて・・・なかった」
自分の醜さと直面した凱は椅子から地面に崩れ落ちてしまい暗い表情になるが、
「それが分かったならあんたはやり直せる」
剣人からの予想外の言葉に凱は驚愕の表情で顔を上げた。
「やり・・・直せる?」
「ああ、あんたは自分がどうして警察になりたかったのか、その原点を思い出した。警察に戻るのは無理でも大切なものを取り戻せたならもう迷うことはねぇはずさ」
「だけど、もう父さんはいない!守りたかった人はもういないんだ!俺はこれからどうしたらいいんだ!?」
「だったらここで働けばいいじゃねぇか」
「!?」
凱は剣人の予想を斜め上を行く提案に今日何度目かになる驚きに包まれた。
「働くって、この商店で?」
「ああ、ここはいろんな理由があるヤツが集まってくる場所で坂本さんもシンもその一人でここから人生をやり直したんだ」
「でも、それと俺の守りたいものとなんの関係があるんだ!」
「だってここにいればお前は俺達の仲間なんだらか」
「!」
全てを失った凱にとって剣人の仲間という言葉は家族と同じくらいに感じられるような気がするほど慈愛に満ちたものだった。
「お前がここで働けばお前はもう一人じゃないはずだ。それに今店は人手不足で困ってたし都合がいいんだ」
「でも君だけの一存じゃ・・・」
「大丈夫、こう見えても副店長なんだ俺」
「ふ、副店長⁉」
まさかの年下の少年が商店の№2であると知って開いた口が戻らないほどに愕然とする凱。
「それに店長ならあんたみたいなやつ喜んで受けれてくれるはずさ」
「いいのか?」
「ああ、それにここで働けば見つかるんじゃないか?お前だけの正義がさ」
「!」
剣人の示してくれた道は迷走しかけていた凱の心に光を灯した。
「んで、どうすんだ?選ぶのはあんただ」
涙を拭った凱は自分の今までの事、今の事、これからの事を考えて考えた末に彼は自分の道を決めた。
「お願いします・・・雇ってください・・・!」
凱の答えに剣人はフッと微笑んでその選択を選んでくれたことが彼にとっては嬉しいことだったからだ。
「そんじゃ、坂本さんに報告するからついてきてくれ」
「はい!えっとあなたの名前は・・・」
「あ、そういやまだ名乗ってなかったな」
入口に向かう直前に剣人はまだ名乗ってなかったことを思い出し凱の方に振り返って改めて自己紹介をする。
「俺はこの坂本商店の副店長―和泉 剣人だ!よろしくな凱」
場面は変わって赤尾家の食卓に移る。
「それにしてもまさか剣人が働く店で新しく入ってきた人が家に来て食事までしてくれるなんて思ってもみなかった」
「ごめんな、突然一人分の料理追加しちまって」
「ううん、剣人がお客さんを招いてくれるなんて珍しかったから嬉しくていつもよりはかどったから。あ、料理は、その、おいしいですか凱さん?」
「はい!最近はずっとコンビニとかの惣菜だけで済ませてたのでこんな料理食べたのはホント久しぶりです!」
「お兄ちゃん!お口お米ついてる~!」
「あ、マジか・・・ありがとうリベレちゃん」
「えへへ~」
現在剣人と凱は晶とリベレと共に晶が作った夜ご飯を食べている。ここに至った経緯はあの後凱の雇用が坂本の許可もあってすぐに可決されその直後に今日その日が初日出勤となり剣人とシンの指導を受けつつ仕事に意気込んでいた。その後定時まで仕事をして初任給を貰った後剣人が素朴な疑問として凱に夕食はどうするのかと聞いたら警察を解雇されて以降はずっとコンビニの弁当や夕食で済ませていたことを知りそれでは栄養状態が悪くなってしまうと予感し剣人は晶の家まで凱の車でついてきてもらうことにした。坂本の家を頼らないかったのは丁度リベレの迎えを約束していたのと先日に晶に迎えを任せてしまったこともあり彼女に負担をかけさせないためといった理由からだ。最ももう一人分を料理するので負担は追加されるのだがどっちがマシかという話な上に今の晶の機嫌からしてむしろ上機嫌だった。
その後凱の車で晶のいる町まで帰っていき、途中で幼稚園に立ち寄りリベレのお迎えをした。この時リベレに剣人がパパと呼ばれた時に凱は口をあんぐりと開かせるぐらい驚いており恥ずかしいので坂本達には内緒として晶にも坂本達の事もある程度ぼかすくらいでその日あった出来事以外は口外しないととりなしも付けた。ちなみに家に帰って晶も娘からママ呼びされた時は凱が背中に宇宙を背負う羽目になった。
「いやそれにしたってまさか剣人さんがこんな家庭を持ってて娘までいるなんて」
「ぐっ・・・だからあんまり人は連れ込みたくなかったんだが」
「まあ、剣人が連れ込んで来るなんて相当なことだろうと思ったら凱さんが偏った食事をしてるから納得した」
「ああ・・・それはそうと凱。あんたいつまで俺に敬語やさん付けしてるんだよ?」
「だって剣人さんが仕事を紹介してくれたし、その上励ましてももらったんだから俺にとってはもう兄貴みたいなもんです!」
この凱という男は根明なためすっかり年下の剣人を兄貴として慕い尊敬しているが剣人は仮にも大の大人である凱がすり寄ってくることに嫌ではないが若干引き気味である。
「いや、でも返しきれないほどの恩がありますしここは一つ」
「だめだめ、絶対周りから奇異な目で見られるからやめてくれ」
「じゃあ、兄貴って呼びます!」
「却下」
「もういっそのこと親分―」
「訂正だ、やっぱさん付けでいい余計にややこしくなるから」
だが凱の熱意についに根負けした剣人はさん呼びで手を打った。
「ママ、パパ楽しそう~」
「うん、剣人が誰かを誘ってくるなんて昔の時にもなかったから」
昔から剣人は剣の道と晶以外の事には関心が低く学校でも友達はおらずそんな彼を気味悪がり晶以外誰も彼と交わろうとしなかったこともあり友達がいなかった。
しかし今の剣人にはこんなくだらないことで笑い合える友人が出来たことに晶は嬉しそうに微笑んでいた。
ピピピピピッ
「ん?俺の携帯からだ」
電話が鳴ったのは剣人の携帯からで席を離れてから携帯の画面を見ると着信相手は坂本からだと確認しすぐに電話に出た。
「もしもし坂本さん。どうしたんですかこんな夜中に」
『剣人、今朝に追いかけられたナカセという婦警を覚えているか?』
「ああ、あの人ですか。その彼女がどうしたんですか?」
『お爺さんから聞いた話だとどうやらあの後まだ交番に戻ってないらしくさっきから町中で警察が捜索しているが見つかっていない』
「話が見えてきました。なんかトラブルに巻き込まれているかもしれないから俺にも手伝ってほしいと」
『そういうことだ』
「分かりましたすぐに向かいます。随時連絡します」
ナカセ捜索の了承をし晶達のいる食卓まで戻る。
「剣人、どうしたの?」
「ああ、どうも商店がある町で婦警が行方が分からなくて警察が一同で探してるんだが見つからないから店長から探すの手伝ってとさ」
「え⁉それって大変じゃ・・・」
「ああ、だから今から遅めの残業に行ってくる。夕飯はあとで食べるから冷蔵庫で保存してほしい」
「・・・うん、でも気を付けてね」
「ああ、リベレも遅くまで起きてちゃだめだぞ」
「うん、いい子にしてる~」
晶とリベレに報告してから竹刀袋を持って出発しようとした時、
「あ、あの!」
凱が突如大声を上げて椅子から身を乗り出してきた。
「俺もついて行っていいですか?」
「あんたが?」
まさかの凱が同行を希望するとは思っておらず疑問を問い、凱は頷くことで肯定する。
「だが今行くところは危ないところだぞ。それでもいいんだな?」
だがいくら元警察だからといっても場合によっては死ぬかもしれない所かもしれない。そのため彼は凱に覚悟を問いただす。
「はい、元より警察官を志した時から命を懸けるのは当然の事です。人を助けるためならこの命、惜しくありません!」
しかしその剣人がもたらした問いに凱は迷いなく答えた。彼は警察が危険と隣り合わせあることは初めから分かっており今更やめたからといって心構えまで捨てたわけではなかった。
「分かった、ただし条件がある!」
「なんですか?」
また根負けした剣人は同行を許す代わりにある条件を付けた。
「絶対に生きて帰ってくること。破ったら許さないからな」
絶対に生還すること。その思いやりに溢れた言葉に涙が溢れるくらい凱は感激を受けた。
「はい・・・!」
「泣くな、床が水浸しになる」
「はい・・・!」
「それじゃ、二人とも行ってくる!」
「晶ちゃん、リベレちゃん、ご飯美味しかったです!ご馳走様でした!」
「うん、気を付けてね!凱さんもまたいらしてください!大歓迎します!」
「パパ、行ってらっしゃい~!お兄ちゃんもまたね~!」
今度こそ出発の準備が整い剣人と凱は凱の車に乗り込む。
「そんじゃ、あんたのドライビングテクニック見せてもらおうじゃねぇか」
「ええ、ガッカリさせませんよ!」
エンジンを入れてアクセルを踏み込んで車を発進させて二人は坂本達のいる町まで直行する。
道路を滑走している間に剣人は坂本の電話であったことを凱に伝えていると彼女の名前を伝えると驚きに満ちた表情を浮かべる。
「え、ナカセがですか!?」
「知ってるのか?」
「ええ、一方的に知ってるだけですけど彼女はどんな小さなことでも一生懸命にやる人で迷子になった子供を助けたり、おばあちゃんの荷物を持ってあげたりとまるで昔の俺みたいでした。」
「なるほど、やっぱ二人は在り方が似てるな本当に」
「ええ、だから俺にとってはこの事件は他人事じゃないんです。ですからナカセを絶対に助けましょう!」
「ああ、その意気だ!」
ナカセ救出にさらに気合を入れている間に目的地の町にたどり着いた。その辺りで剣人は携帯を取り出し坂本に連絡を入れる。
「坂本さん、俺と凱が今商店街付近に到着しました」
『・・・凱も連れてきたのか?』
「はい、こいつは元警察エリートですから腕は立つはずです。俺が保証します」
『・・・了解した、ターゲットは現在シンからの報告で商店街裏の廃工場に捕らえられている。他にも複数人の声を捉えたことから敵は大勢いる』
「分かりました。プランはありますか?」
剣人と凱は坂本から聞いた情報を頭の中で整理しながら坂本の作戦を聞く。
『まず俺が煙幕を奴らのいるところに投げつけ煙が上がったらミッション・スタート。その後4人で敵を排除する。それと凱』
「は、はい!」
ここで自分に話を振られるとは思っておらず凱は驚くが心して聞く。
『同じ商店で働く以上敵はノーキルで行く。破ったら殺すからな』
「なんでそんなこと・・・てか殺す⁉」
「まあ要するに殺さない程度にボコボコにしろって言ってるんだよ坂本さんは」
「は、はぁ」
『とりあえずお前たちは合図を待て。それと二人ともインカム付けておけ。シンの誘導が頼りだ』
「了解!」
「は、はい!」
必要なことを伝えきった坂本は電話を切り、剣人はポケットの中から二個のインカムを出し片方を凱の方へと投げ渡す。
「それを耳に付けとけよ、すぐにおっぱじまるから」
「ええ、それにしたって三人は何者なんですか?」
ここでふと凱は自分の中から湧き上がった疑問を聞かないわけにはいかず剣人に問いただす。
「ああ、俺達はちょっと裏の社会で色々あったからな」
「色々って?」
剣人は商店にいる以上いずれ知ることだからここで言うべきだと覚悟を決めて明かす。
「殺しさ」
「え?」
剣人の口から信じられない発言に凱は言葉を失う。
「坂本さんとシンは昔殺し屋をやっていて特に坂本さんは伝説と言われるくらい凄腕の殺し屋だったんだ。シンはエスパーで人の思考を読めるんだ。俺も二人と似たようなものだ。二人は大切なものを守るために殺しの世界から足を洗ったんだ」
「そうか・・・だから殺しをするなって言ったんだな坂本さんは・・・」
「失望したか?俺達がこんな人でなしな集まりだって知って・・・」
剣人はもしこの後凱が店をやめると言っても咎めるつもりはなくむしろ騙したのか罵られようとも甘んじて受ける。その事態を想定して剣人は事実を明かした。
「いえ、むしろ納得したんです!」
だが予想に反して凱は軽蔑などせずどちらかというと今までの違和感に歯車がピッタリとはまったといった感じにスッキリとした顔をしていた。
「あなたが人は変われる、間違ったならやり直せるって言ってのは自分たちもそれを実践してるからだったんですね!確かに殺しをしてたってのは驚きましたし駄目ですけど間違ってるって気づいたから守るために力を使ってるんだって思いました!」
「・・・驚いたよ、てっきり罵られるものかと思っていた」
怒られるつもりで言ったのだと言った時、凱はむしろそっちの方に怒っていた。
「何言ってるんですか!恩人にそんなこと言ったら俺は恩知らずになるじゃないですか!それに」
「それに?」
凱は大きく深呼吸して自身の想いを剣人に伝える。
「俺の心を救ってくれた人と居場所をくれた人達を最後まで信じるっていうのが今の俺の正義ですから」
その迷いない力強い言葉に剣人は目を見開いて驚くとともに希望と居場所を与えられたことで自分の過去を乗り越えた男の姿を見て剣人は彼はもう大丈夫だと安心した。
(
剣人は心の中で何かを呟きながら凱の目に向けて視線を合わせて彼の想いを受け取った。
「そうか・・・ひとまずは見つかったって感じか」
「ええ、これが俺なりの正義ってやつです」
お互いに腹を割って話し合ったことで絆が深まっているその時―
ボフッ!
「「!」」
工場跡地から煙が出てきたことで二人は坂本の合図であると悟り二人は工場跡地内部にかけ抜け出す。
「顔を隠しとけよ!顔が割れたら面倒なことになるから」
「了解です!」
剣人の助言を受けて凱は懐に閉まっていたサングラスをつけて目元を隠し、剣人はフードを覆うことで顔全体を隠す。入ると同時に坂本とシンと合流する。
「タイミング通りだな」
「はい、しっかしこの煙の中は視界が遮られてるから肉眼じゃ無理だな」
そう言いつつも剣人はシンの方に視線を向ける。そう、視界が見えずともシンには思考を読む特技があるため敵の思考をたどれば難なく位置を把握できる。
「まかせとけ、俺なら敵の位置が分かる」
「そっか!剣人さんから聞いたけどシンってエスパーだから思考を読めるだったんだよな」
「ああ、剣人から聞いたんだな俺達の事?」
「ああ、でも今は」
「ああ、人質最優先!」
4人は気持ちを一つにして廃工場内に突入する。
廃工場内部では煙が充満してナカセと他の女性二人を人質に取った暴走族達は完全に突然の煙に混乱しており指揮系統が機能していなかった。そんな中で4人は煙の中でも見えてるかのように敵を倒し続けていた。
「坂本さん、2時の方角3m先」
(了解)
シンの指示通りに坂本が3m先の敵に蹴りをかまし
「剣人はそのまま3歩前進2名」
「OK」
剣人が竹刀袋に収めたまま鈍器として振り払い
「凱は9時の方角5m三名」
「了解」
凱の警察で培った柔道と関節技の複合技術によって敵一人を複数いる方に投げ飛ばして一網打尽にするなど特に凱は初めてにして坂本達の動きに合わせていることから元々実力が高い。しかしそれを活かせる機会がほとんどなかったが迷いが振り払われ警察という重責から解放されたことで本領を発揮できるようになった。
「やられてる!!」
「誰かいるぞ!!」
「何モンだ!!?」
仲間が倒されたことでさらに混乱に陥る暴走族に対して剣人達は見事なまでに華麗な連携力で一人、また一人と次々と敵を制圧しあっという間に全滅した。
「く・・・クソ女・・・てめーのせいで・・・!」
「キャ・・・ッ」
その内まだ意識を失っていなかった男一人がパイプ椅子に拘束されていた目隠しされているナカセに手を出そうとした瞬間―
ドッ!
「オフッ」
坂本がフックで殴り飛ばすことで大事にはならなかったがその拍子にパイプ椅子が壊れ拘束も解け、目隠しの布もハラリと取れてしまった。これはマズイ。
(やばい、今の坂本さんは・・・)
(坂本さんは今日は顔隠してねぇ!!)
そう、剣人とシンと凱は顔を隠しているが唯一坂本だけが変装していないので顔がバレたら大騒ぎとなり後々大問題となる
が―
((!!!?))
だがその心配は杞憂に終わった何故なら―
「あ、あなた・・・誰・・・⁉」
今の坂本はさっきまでのふとましくなくスリムで筋肉質な若い優男の姿となっており知っている者以外からは完全に別人と言われても不思議じゃないくらいのレベルのビフォーアフターである。
((さ・・・坂本さん・・・⁉痩せてる!!?))
二人はいきなりの激変に口をあんぐりとさせ言葉が出なくなってしまっていたが剣人の方は“おお、瘦せた痩せた”くらいに思っている。ちなみに最初に剣人の前で痩せた時は今の二人と同じリアクションをしていたがここでは割合とする。
その後坂本から“逃げるぞ”と言われ4人はナカセの静止を聞かずその場から立ち去っていく。
翌日―
「1日でリバウンドした・・・!」
「どういう現象だ・・・!」
「そういうもんだと受け入れろ」
商店で清掃業に励んでいるシンと凱が坂本を見て驚く。それもそのはず昨日はあんなにスリムだった体型がたった一日でリバウドしたのだから。
昨日の坂本が痩せた理由はいつも以上に激しく動いたためにカロリーを大量に消費したことが原因によるものなので大食いの坂本なら大量に食べればいつものデブの体型に戻るのは当然の帰結である。
ちなみに凱の方も今朝に髪などの手入れをしたため昨日の比べて綺麗な身なりになっている。
「いやにしてもここでの仕事は捗りますね」
「警察いた時との労働環境はどうだ?」
「もう、最高ですよ!客さんの役にも立てて生きがいも感じますし」
本部での劣悪な環境と比べればここでの町での暮らしの方がずっと性に合っている凱はもしかしたら警察よりもここが天職かもしれないと思うくらい充実していた。
「お疲れ様凱君~棚に商品並べるのお願いできる?」
「ええ、任してください!」
それに坂本やシンに剣人と葵といった従業員にも恵まれている。もう凱はどんな困難があってもその原点を忘れぬ限り道を踏み外さず今度こそ人のためになるのだという確信が剣人にはあった。
「あなたまたこんなに・・・!2個だけって言ったのに・・・!!」
(ごめん)
「まあまあ一旦落ち着いて・・・」
同時に苦労人の役目も回ってくる羽目にもなった・・・