イセリア人間牧場奮闘記 before&after   作:あるいてごろりと

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ソウルイーター

大樹の内部は、3階層で成り立っている。

直径100mの広大な円状の部屋が2か所(隣の部屋へ行き来は出来ない)の1階層、およそ3分の1の直径の部屋でコンクリの打ちっ放しのような内装をした2階層、そして2階層の高い天井の真上にありマーテルの部屋でもある3階層だ。

現在、マーテルと五聖刃は2階層の会議室に集まっていた。

部屋の中央には、大きなテーブルを設置して周囲には6つの椅子が等間隔に配置されている。

全員が席に着いている中、マーテルは静かに語り出す。

 

「クヴァル、それにロディル。

絶海人間牧場での任務、お疲れ様です。

スピリアの魂については残念ですが、ソウルイーターが所持しているのならば彼らを追えば問題ないでしょう。

幸い、パルマコスタに向かったという情報をロディルが入手しています。

すぐにでも向いたいところですが、その前にクヴァル」

 

クヴァルは、マーテルの呼びかけに応じて返事をする。

 

「はい」

 

マーテルは、つい先ほどのことを思い出しながら話した。

 

「シルヴァラント王のことですが、良くあの方をここへ来てくれるよう手配してくれましたね。

本当にありがとうございます。

おかげで4000年ぶりに話をすることができましたし、王が自らを許すきっかけが得られました」

 

マーテルは心から感謝を述べた。

4000年前に謁見した王と再会し、互いに腹を割って話し合えたからだ。

夢にも思わぬことができたのは、クヴァルが王を連れてきたことが大きい。

 

「私に比べると、王は背負うべき罪が過剰なのではないかと思い、意思を聞いたまでです」

 

クヴァルは謙遜した様子で話した。

 

「それでも、あなたがいなければ王は今も自身の枷に囚われたままだったことでしょう。

心より感謝致します」

 

マーテルは、もう一度感謝を述べた。

クヴァルは、素直なお礼をどう受けたものかと少し困った表情をする。

 

「恐縮です」

 

しかし、それ以上断り切れずに受け入れるような返答をした。

マーテルは、五聖刃の皆を見回して次なる話をする。

 

「それでは、ソウルイーターがいるというパルマコスタに向かうメンバーですが…」

 

言いながら、マーテルはどこか沈んだ顔つきだった。

 

「パルマコスタ…か」

 

腕組みをして天井を仰ぎ見るマグニスも同じような反応だ。

 

「パルマコスタ…のう」

 

プロネーマも同様の反応だ。

クヴァルは、3人の様子を見て不思議に思う。

 

(牧場主だったマグニスが、罪の意識を感じているのはともかくとして。

プロネーマとマーテル様は、パルマコスタで何をやったのでしょうか…)

 

しかし、ほじくり返して会議に支障が出ても問題なので、口には出さなかった。

時間に余裕はあまりない。

ソウルイーターがパルマコスタを出る前に、スピリアの魂を回収しておきたいからだ。

沈黙していたフォシテスが、マーテルに話す。

 

「次は、私が向かってもいいだろうか」

 

了承するマーテル。

 

「ええ、もちろん構いません。

あなたの力を頼りにしていますよ、フォシテス。

マグニスとプロネーマはどうでしょう?」

 

マグニスとプロネーマもご指名のため、今度は絶海で残った3人が行くことになった。

マーテルは、移送前に3人へ注意を促す。

彼女の手元には、いつの間にかフード付きの外套が3枚あった。

 

「敵のパルマコスタでの狙いは分かりませんが、接触すれば交戦の可能性もあります。

私から加護を受けた3人は、現実世界へ干渉できてしまうため、人々を戦いに巻き込まないようにしてほしいです。

それに、出来れば戦い事態を避けられればいいのですが…。

町中での移動は、これを羽織って下さい」

 

マーテルは、3人に外套を1枚ずつ渡す。

彼女の判断は適切だった。

なぜなら、町にはまだマグニスの顔を知る者もいるからだ。

フォシテスも顔バレしている可能性は十分ある。

救いの塔に勤務していたプロネーマにも外套を渡したのは、ソウルイーターへの対策のためでもあった。

敵にバレずにスピリアの魂を回収出来るのが一番良い。

マーテルは、足元に魔方陣を展開する。

 

「それでは、彼女をお願いします」

 

魔術が発動すると、フォシテス・マグニス・プロネーマの3人の姿は大樹から消えた。

同時に、マーテルがふらりとする様子をクヴァルとロディルが見た。

机に手をついて、辛そうな表情をするマーテルの元へクヴァルが駆け寄る。

 

「マーテル様っ!?」

「…すみません。

心配ありませんので。

少しだけ部屋で休みます」

 

ふらふらとした足取りで、3階層への階段を登って行くマーテル。

クヴァルとロディルは、肩を貸すこともできずに見送っていた。

ロディルがぽつりと漏らす。

 

「レネゲードの兵が言っていましたが…。

なぜ我々五聖刃なのでしょうか。

いや、あくまで同化は偶然かもしれませんがね。

どちらかというと、問題はその先かもしれませんな」

 

ロディルの言葉に対して、クヴァルは質問する。

 

「その先と言うと…?」

「クヴァル殿。

卵料理を口にして、たまたまその中に殻が入っていたらどうされますかな?

例え話なので、表現を軽くしていますがね」

「……ロディル。

それについて、今私達だけで出来ることはありません。

その話は、3人が戻ってきたらにしましょうか」

「…そうですな」

 

 

 

 

△△

 

 

 

 

パルマコスタは、海に面した港町である。

まだ世界が2分されていた頃、シルヴァラント大陸では最も大きく栄えていた町であった。

名物はパルマコスタワイン。

収穫を終えて販売時期になると、製造・販売者達は一年ごとにキャッチコピーを作成している。

 

『ジューシーかつ滑らかなのどごし』

『昨年を大きく上回る究極の出来栄え』

『今年は従来のぶどうの踏み方を変更した挑戦の味』

『奥様も喜ぶ、家計に優しいお値段で揃えました』

『昨年は値段、今年は質にこだわる奥様への宣戦布告』

『奥様、昨年はすみませんでした。今年はお安く販売致します』

 

などと、毎年様々な売り文句を消費者の耳に聞かせて魅了する。

生産者と製造・販売者の努力の甲斐もあり、パルマコスタ内を賑やかにさせるワインだ。

(食材屋にぶどうは売ってないので、九分九厘ワインにしていると思われる。

また、ぶどうは雨の少ない乾燥した気候で育ちやすいため、衰退世界の生育には向いている果物でもある)

 

そんなパルマコスタワインを片手に飲み歩く男と、見た目女らしきものの姿がパルマコスタの町内に見られた。

パルマコスタワインを飲む男は、ずんぐりしている見るからに中年のおじさん。

丈の長いカーキパンツを履き、紺のシャツの上にブラウンカラーのレザージャケットを羽織る。

短髪で顎に髭を生やした姿が特徴だ。

酒は強い方なのか、酔っている気配が無い。

 

女らしきものの体型は細身で、髪は栗色で肩につくかつかないかぐらいのボブヘア。

右耳には、3つのピアスをつけている。

ロングタイツの上に、黒を基調とし裾が白くもこもこしたハーフパンツを履いている。

シャツは体にぴったりなサイズの千鳥格子柄で白黒の長袖を着ており、さらにその上に白のコートを羽織っていた。

顔立ちは整っているが、三白眼で見る者にきつめの印象を与える。

中身は男だ。

女らしき者は、見た目が普通のおじさんことフーディーの酒を飲む様子を見て呆れる。

 

「あんたねぇ、ソウルイーターのくせに何酒なんか飲んでんのよ。

種族なりのプライドってものはないのぉ?」

「別に俺の勝手だろうが」

 

女らしき者は呆れたような表情でフーディーのことを見る。

 

「あっそ、数少ない同族だから言ってやったのに。

飲むのは勝手だけど、今度からアルコールイーターを名乗りなさいよ」

 

ただの酒飲みである。

フーディーは、ボトルの先端を口から話すとむくれたように返答する。

 

「そりゃ、トリエットでずっとおじさんになってたクロドレのせいもあるぜ?

だいたい、せっかく俺がここ110年体を取っ替え引っ替えしながらも、世界を転々としてかき集めた情報をお前にあげたっていうのに、すぐに『調理』してくれねぇんだからよ。

俺は調理できねぇんだから、味がしなくても腹満たすために他の物飲み食いするしかねぇだろうが」

 

フーディーは若干ヤケになっていた。

ワイン瓶をブンブン上下に動かしながらわめいている。

 

「とにかく俺は、お前が調理した魂が食いたくて食いたくてしょうがなかったんだよ。

ここ110年、腹の貯蔵庫に魂を保存してきたのはそのためなんだよ!」

 

クロドレと呼ばれた女らしき男は、口元を両手で隠す。

わざとらしく、視線をあちこちに動かした。

 

「あらやだ、照れるわぁ。

嬉しいじゃないの。

まぁ、あんたが腹の中にためこんだ人間の魂は、あたしにとっちゃ冷凍したいつでも調理できる保存食なのよ。

それに、110年ぶりにトリエットから復活したあたしの快気祝いなら、せっかくだし質の良い者を手にかけたいのよねぇ」

 

フーディーは聞きつつ、ワインを一度煽った。

 

「それなら、ちょうどパルマコスタにいると思うけどよ」

「なぁーんだ、そうだったの。

先にそっちから行きましょうよ」

 

クロドレは舌なめずりをする。

そんなクロドレの様子を見たフーディーは、数時間前に絶海人間牧場に訪れたことを話した。

 

「でもよ。

質とか鮮度の話なら、海の人間牧場のやつらをさっさと調理すればよかったじゃねぇかよ。

あそこは俺がマーキングしといたとっておきの場所だったんだぜ?

まぁ、お前がいなきゃ海水抜けなかったとはいえ…。

なんだって、急いで行かなきゃならなかったってんだよ」

 

クロドレは、眉をぴくりと動かしてフーディーを見る。

 

「あそこの魂は、パルマコスタにずっと居着いてしまった筋肉バカの重い腰を上げるための交渉材料よ。

たぁっくさん用意して満足させないと、ただ飯食われてこっちが損するだけになっちゃうからねぇ。

あと、急いで行ったのはあんたのせいよ!

なんだって、マーキングするために二冊も本を置いてきちゃうのよ!」

「け、けどよぉ…」

 

フーディーは、すっかり困り顔だった。

言い返そうにも、あまり感情的に言うと『調理』もお預けにされそうで口に出せない。

クロドレは、そんなフーディーの気持ちなどお構いなしに早口でまくし立てる。

 

「けどよ、じゃないわよ。

古臭い王の方は、別にいいのよ?

神子の方は、大樹の精霊相手に人質でも見せしめでも何でも利用できるんだから捨てるんじゃないわよ、おバカ!」

 

反論できずに、むぅっと唇を尖らせたまま黙り込むフーディー。

クロドレは、途端に唸りながら頭を押さえて左右に振っている。

 

「あーもう~、少し前にあんたから聞いた話思い出したら嫌になってきちゃったわ。

せっかくトリエットで仲間になったばかりの夢魔ちゃんが、大樹の精霊乗っ取りに漢を見せに行ったってのに帰ってこないだなんて…」

「仲間になったばかりって言っても、110年ぐらい前に少しの間だけの話だぜ。

乗っ取りに向かったのは、あいつがおじさんから解放されたつい最近だ。

まぁ、やられたんだろ?」

 

内容が、自分を責めることじゃ無くなったので態度をすぐに改めてすまし顔で答えるフーディー。

だが、そんな態度が気に入らなかったのか、クロドレは声を荒げる。

 

「ハッキリ言うんじゃないわよ!

不思議なことを話してた不思議な子だったけど、可愛かったのにぃ。

タイプの子が、ちょっといい面した女相手にやられただなんてあたしは信じないわ!

きっと、卑怯な手でも使ったに違いないわよ!!」

 

クロドレが、髪が逆立ちそうなぐらいの怒りを露わにする。

だが、普段の様子を知っているフーディーは冷静に口にした。

 

「お前がそれを言うかねえ」

「るっさい!

猪なあんたには分からないでしょうけど、あたし達は本来小狡くやって生きてきた種族なのよ。

大体そんなこと言って、あたし無しでまた100年以上過ごしたいの?

そうね、また味の無いものでも飲み食いしていればいいのよ」

 

クロドレはツンとそっけない態度を取る。

フーディーは、慌てて言葉を訂正した。

 

 

○○

 

 

2人が歩く食品売り場や宿が並ぶ通路では、賑やかな喧騒に包まれている。

雲一つない快晴で、人々も陽気に店の者と話したり、めぼしいものを探して店を出入りしていた。

 

やがて、フーディー達が石造りの橋を渡ると、広場にたどり着いた。

左手の方に総督府と呼ばれる大きな建物がある。

近くまで歩くと、見上げるような高さであることが分かる。

クロドレは、あたりをキョロキョロと見回す。

広場の人は、先ほどの店の通りに比べていないに等しい。

 

「フーディー。

ここなのよね?」

「ああ。

虫の体を乗っ取った時に、地下で偶然見つけてな。

ただ、手のひらサイズのクモに追われていたから食べる隙もなかったんだよ」

「あんたねぇ…。

やっぱり、ソウルイーターとしてのプライドをもっと持った方がいいわ。

虫になっている間に、クモに食われました…なんてことじゃ、ボスも浮かばれないわよ」

「むぅっ」

 

クロドレの言葉にしかめっ面をしたフーディーだが、途端に好奇心の眼差しで話題を変えた。

 

「そうだ、思い出したけどよ。

何か、お前の体からボスの匂いがしねぇか?

110年前に、砂漠地帯に目星を付けて探し回っても見つからなかったってのによ」

 

不思議がるフーディーを見て、クロドレはニヤリと笑みを浮かべる。

自身の口の中に手を入れると、歪な形の剣を2振り取り出した。

1本は白い角のような形をしており、もう1本は紫の何かうねうねしている不気味な剣であった。

フーディーは剣を見て鼻息を荒くする。

 

「おっ、おぉぉぉぉ!!

こりゃボスの肉体の一部かよ!?

すっかり変わり果てちまってよぉ」

 

豪快な言い方をしつつも、受け取った白い角のような剣を割れ物でも取り扱うようにそっと触れるフーディー。

クロドレは空いた手を頬に添えて思い出しつつ話す。

 

「砂漠地帯は間違っていなかったんだけども、サンドワームが食べちゃってたみたいなのよねぇ。

あたしがおじさんから復活したあとに、八つ当たりで腹を裂いたらボスが出てきたってわけ。

こんな剣なんかにされちゃって、ボスの秘書として胸が痛むわぁ。

んもう!

英雄だか何だか知らないけど、何であんな奴らにボスがっ…!」

 

遥か昔の事を思い出して悔しがるクロドレ。

クロドレ達は、とある村を襲っている最中にミトス達4人に遭遇している。

クロドレ達は、村人の体を乗っ取っていた。

英雄達の魂に惹かれ正体を現したボスだけが交戦するも、彼らには敵わないと悟った。

遠くから駆け寄ろうとするまだソウルイーターだとばれていないクロドレ達に、ボスは目配せで指示を出す。

ボスが足止めする中、主の指示に従いクロドレ達は泣く泣く退散していたのだ。

いつか、必ず英雄達に復讐すると胸に誓いながら。

クロドレは、うねうねする剣に向って喋りかける。

 

「ボス、見ていてちょうだいね。

こんな体にさせた上に、あろうことか大樹の精霊なんて者になった腹立つ女の体を乗っ取り、世界を支配してみせるわ。

それに、種族だって絶やさせないんだから。

けど、その前にすこーしだけランチの時間を頂くわね。

腹が減っては何とやらでしょ?」

 

クロドレがそう言うと、総督府の扉が開いた。

中から出てきたのは、兵を1人連れた女性であった。

フーディーは白い角のような剣をクロドレに返す。

クロドレは人目につかないようあっという間にのどの奥に2本の剣を流し終え、フーディーに問いかける。

 

「誰よ、あの女は」

「今パルマコスタを統治している女だな。

以前総督やってたやつの奥さんらしいぜ」

「ふぅん。

結婚しているのに女の統治者…か。

ねぇ、フーディー。

あんたが言っていた、あたしの快気祝いにおすすめの魂ってもしかして…」

 

クロドレの言葉を聞いたフーディーは、口角を上げる。

 

「ああ、地下にいるのは旦那のドアと呼ばれていた魂だ。

どうやら、エクスフィギュアになった奥さんを助けるために、ディザイアンにいい様に利用されて死んだらしいぜ」

 

クロドレは、興味深そうに話を聞く。

自身が口にする魂は、この時点ですでに決まりつつある様子であった。

 

「利用って何よ?」

「自分が守るはずの町民から金をだまし取ってディザイアンに横流してたみたいだぜ。

笑える話だよな。

しかも、人間になった奥さんの姿を拝むことは結局無かったらしいな」

 

フーディーは、クロドレが復活する前にパルマコスタに一度立ち寄ったことがある。

そこで仲間の1人から情報を得ていた。

話を聞いたクロドレは、愉快そうに笑いだす。

 

「おほほほ!

ドアってやつの魂は、ディザイアンに利用されていた上に、目的を達成できなかったことを湿っぽい地下室でずっと後悔し続けているのね。

いいわぁ~、素敵じゃないのよ。

そんな魂が僅かな希望すらを微塵も感じさせないような、絶望の淵に追いやられたらどうなるでしょうねぇ。

ううん、深く考えるまでもないわね。

きっと、絶品の味になると思うわぁ」

 

クロドレは鮮明な想像をしたためか、舌なめずりをして嬉しそうな表情をしていた。

 

「楽しみは生に刺激を与えるわねぇ。

じゃぁ、ここまででいいわ。

あたしは調理に入るから、あんたはレイジネスの重い腰をあげてきなさいな」

「おっと、ちょっと待ちな」

 

ずんずんと歩くクロドレにフーディーが声をかける。

振り返りつつ、不満そうな顔をするクロドレ。

 

「何よ。

あたしは、今とっても良い気分なの。

さっさと用件を言いなさいな」

 

クロドレは言葉を間違うとまた不機嫌になりそうな様子だった。

だが、対照的にフーディーは余裕そうに腕を組んで話す。

余程、話の内容に自信があるようだった。

 

「なに、悪い話じゃねぇさ。

お前がおじさんになっている間、俺は世界中を回っていてよ。

そん時に俺が食った魂の中に、協力を申し出ているやつがいたんだ。

役者は1人でも多い方が、調理しやすいだろ?

良かったら、持っていけよ」

 

フーディーが口内に手を入れると、黒くて丸い物質が取り出された。

クロドレは、フーディーの手のひらの上にある黒くて丸い物質を穴が空くほどじろじろと見る。

眉間に皺を寄せて、フーディーに向けて疑問を口にした。

 

「どうせ、命欲しさに申し出てるだけじゃないの?

第一、調理しやすいって言ったって役者次第よ。

我が身可愛さで、嘘ついてブルってるような奴ならいーらない」

 

ぷいっと顔をそむけるクロドレを見て、フーディーは大きく笑い飛ばす。

 

「ぐははは!

いいや、心配することはねぇよ。

こいつは自分の為なら、人の命を道具のように扱える人かどうかも疑わしい悪だからな」

 

言葉のワードに引っかかる物があったようで、クロドレはジッとフーディーの顔を見る。

 

「へぇ。

あんたがそこまで言うなら少しは期待しちゃおうかしら。

まぁ、それならもらっておくわね。

美味くいったら、後であんたの腹の中の魂も美味しく調理してあげるわぁ」

 

クロドレのご褒美の言葉を聞いたフーディーは、よしきたと言わんばかりに身を乗り出す。

両腕は腰の辺りでガッツポーズを取っていた。

 

「絶対だぞ!

俺はずっと楽しみにしてたんだからな?」

 

子どものような態度のおじさんであるフーディー。

 

「はいはい。

分かってるわよ」

 

そんなフーディーの様子にクロドレは呆れつつも了承し、黒くて丸い物質を受け取ると2手に分かれた。

 

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