イセリア人間牧場奮闘記 before&after 作:あるいてごろりと
マーテルが何かを唱えると、2人がいたはずの絶海牧場内部の景色はかき消された。
上書きされるようにして、周囲に木製の部屋が構築されていく。
そこは、天井の高い広々とした円形の一室だった。
広さは直径100mほどにも及び、およそ7850㎡ぐらいの広大な部屋である。
坪数で言うと約2374坪にもなり、600人未満であれば生活できるとされるほどだ。
室内のどこを見ても木の年輪が壁や床、天井の模様として浮かんでいる。
灯りの元が見えないのに、室内は明るすぎず暗すぎずのバランスの良い光量で満たされていた。
年輪と光以外何も無い部屋に、中央にいるロディルとマーテルの存在だけが際立つ。
「あなたの記憶の世界から抜け出ました。
これから、大樹の中を案内します。
とは言っても、まだ少ししか成長していないのでシンプルなものですが」
言いつつ、マーテルは花が開くような笑みを浮かべる。
ロディルは周囲を見渡す。
「ほう、ここが大樹の中ですか…」
(やはり、周囲はマナが満ちていますな)
ロディルは、精霊マーテルに大樹の中を案内された。
といっても、1階の室内はマーテルの言葉通りシンプルなもので置物1つすら無いため通り過ぎるだけであった。
歩きながら、マーテルは内部構造の説明をする。
大樹の内部は3階層で成り立っており、1階は2部屋並んでいる。
1部屋は、現在マーテルとロディルがいる場所で、空間を隔てた隣に同じ寸法のもう1部屋があるという。
マーテルは、「避難経路は2か所以上あった方がいいですからね」と言った。
1階の2つの部屋はつながっておらず、ロディル達が隣の部屋に行くためには階段を上がり、2階に行ってから別の階段を降りなければならないらしい。
「2階は、ここより3分の1ほどの広さです。
1階と違い、内装をアレンジしています。
壁や天井は、救いの塔のような硬度の高い素材を使っています。
テーブルやイスも用意していますので、会議室として使いましょう」
「どうやって、内装をアレンジしたのですかな?」
「実は、以前あなた方が交戦した夢魔との経験が活きています。
夢魔ほどではありませんけど、精神世界を自由に作り変えるコツを掴みましたので。
ここは大樹の内部であり、大樹の精霊である私の精神世界でもあるのですよ」
「そういえば、先ほども私の部屋から大樹の内部に一瞬で作り変えていましたな。
いやはや、一度の経験で習得できるとは大したものですな」
興味本位でロディルが今いる場所を絶海人間牧場の私室にしようと念じてみたが、何も起こらない。
ロディルの魂は精霊マーテル達と繋がっているので少しばかり期待していたが、思ったようにはいかないらしい。
(まぁ、私の固有マナは彼女らとはシンクロ率皆無に近いでしょうし)
マーテル達だけの精神世界であるならば自身にはできない技であるとロディルは観念する。
(しかし、ある程度の想像力と技量がなければ出来ないことでしょうけどね)
ユグドラシルの名を持つ者同士、マーテルも弟と同様高いセンスの持ち主であった。
階段を上がる最中に、ロディルは3階はどんな部屋か聞いてみる。
「私のプライベートルームで、会議室よりさらに3分の1ほどの広さです。
2階にある木製の扉を開けると、部屋の壁よりも外側にある空間をぐるりと周る螺旋階段があります。
位置的には、2階の真上が3階になります」
「私のような年寄りにはきつい話ですな」
ロディルの言葉にマーテルは、微笑む。
「確かに天井が高いので階段も昇り降りが大変ですが、いずれは転送装置を設置する予定です。
今後、移動も楽になります。
仕組みさえ分かれば、あとは想像でどうにかなるのが精神世界の良い所ですね」
バリアフリー意識の高いマーテルに感心したロディルであった。
「いやはや、大したものですな」
「それを言うのはこちらのセリフですよ。
あなた方が、私の夢の世界でより良い牧場の運営を志していたことが元々のきっかけですから」
確かに五聖刃はマーテルの夢の世界で働きやすい環境作りを進めていた。
作業内容の改善は当然として、プライベートの時間を大事にするため一日の勤務が終わると村や町へ帰れるよう取り決めをしたし、食堂を作り満足のいくラインナップを提供したりもしたものだ。
それがまさか大樹の精霊が見ていたとは途中まで露ほども彼らは知らなかったわけだが。
「ふぉっふぉっふぉ。
そう言われると照れますな」
○○
木の根でできた階段を数十段あがると、入り口に扉の無い会議室に入ることができた。
直径約30mほど(約706㎡)の広い円形の会議室の中央には、円卓のテーブルとその周囲に6つの椅子が等間隔で配置されていた。
壁や天井は、白い打ちっ放しのコンクリートのような素材でできている。
部屋の隅にはキッチンが配備されており、そばには食器棚が並んでいる。
ロディル達が来た入り口の向かい側に、もう1つの1階に下るであろう入り口が見えた。
2つの入り口の間にある壁際には木製の扉があり、ここから3階に上がれる、とマーテルは言った。
ロディルが見ると、すでに4人の元幹部達が着席していることが分かった。
マーテルとロディルの姿を認めると、男が喋りかけた。
「待ちくたびれたぜ!
どういうわけか、早く説明してもらおうじゃねぇか。
マーテル様よぉっ!!」
豪快に喋るのは、赤いドレッドヘアーの男で元パルマコスタ人間牧場の主であるマグニスだ。
反応を見るからに、状況はまだ伝達されていないらしい。
「黙りゃっ!
そなたは、静かに待てぬのかえ!」
マグニスに注意をしているのは、五聖刃の紅一点ことプロネーマである。
彼女は、他の4人と異なり支配地域を持たない特別な立場のハーフエルフだった。
マグニスに注意を言った後に、マーテルに向けて頭を下げる。
「失礼いたしました」
「構いません。
こちらこそ遅くなりました」
彼女らの様子を腕組みして見ている男がいた。
左腕に金属棒をはめた眼帯のフォシテスだ。
元イセリア人間牧場の主だった男である。
漫画版のおまけでは、アフロにもなった。
色々とオプションの多い男でもある。
「全員集まった…ということでいいでしょうか?」
マーテルに問いかけているのが、細目の金髪オールバックのクヴァルである。
生前は、アスカード(略)人間牧場の主を務めていた。
また、数が稀少ゆえに重宝されたハイエクスフィアまたはクルシスの輝石を人工的に製造する手法『エンジェルス計画』の発案者でもある。
計画内容としては、エクスフィアの他者への寄生時期を意図的に長くすることで突然変異を狙うというものである。
ロディルが着席したのを見届けたマーテルは、クヴァルの問いに対して「ええ」と返答した。
「皆さんにお願いしたいことがあります」
内容としては、スピリアの魂を見つけ出すことであった。
場所は恐らく絶海人間牧場とのこと。
ロディルが補足する。
「ソウルイーターの侵入は元から警戒していましたし、私が死ぬ前に牧場は入れない状態にしました。
大方、絶海人間牧場内にあると見て間違いないでしょうな」
念のため、マーテルを傷つけないよう水攻めのことはオブラートに包んで話した。
それからマーテルは、ソウルイーターに気を付けるように言い具体的に説明した。
以前、五聖刃が戦った夢魔とはまた別種であり、人の魂を食らう種族であること。
だが、夢魔と同様に肉体を乗っ取れる厄介な能力を持っていること。
これは生前のマーテルと他の古代勇者達が、道中戦い打ち倒したソウルイーターの特徴だと彼女は話した。
そして、ロディルの記憶で見たことも話し、すでに水面下で敵が活動していることもマーテルは五聖刃に伝えた。
プロネーマが挙手をして尋ねる。
「よろしいでしょうか」
「ええ、どうぞ」
マーテルは意見を促した。
「4000年前のソウルイーターと今危険視されている相手は、同一種であれば何か繋がりがあるでしょうか?」
「恐らくですが」
マーテルは、肯定して説明する。
「死に際に仲間がいることを明かしています。
彼は、私や弟達へ復讐させることを望んでいました。
実際、ロディルの記憶を読むと、宰相の体を乗っ取り争いを仕掛けようとしたことが分かりました」
「争い…でございますか?」
「ええ。
宰相の体を乗っ取ったソウルイーターは、シルヴァラント王に私たち4人がマナを独占しようとしていると偽の情報を伝えたのです。
きっと、先ほど話した仲間への復讐が狙いと思います」
マーテルが言い終わると、ロディルが質問する。
「マナを奪い合う戦争を起こし、人々の絶望に染められた魂を食すことも狙いでしょうな?」
マーテルは、首肯した。
プロネーマは、目を見開く。
何かが頭に引っかかった様子であった。
彼女は、ミトスが4000年間姉の蘇生に拘り続けたきっかけを知っていた。
ごくり、と唾を呑み込む。
「ユグドラシル様の運命を変えたのは、もしやそやつが…」
マーテルが俯く様子を見て、プロネーマは確信した。
敬愛する上司をいばらの道に追い詰めた黒幕の存在を知り、怒りが湧く。
察したフォシテスとマグニスの目つきが鋭くなったが、最も怒気を募らせたのはやはり一番の忠臣・プロネーマだった。
彼女は、マーテルに悟られぬよう机の下で拳を握りしめた。
プロネーマの隣の席のクヴァルが発言する。
「マーテル様、喉が渇きませんか?」
プロネーマの様子を見て、気を逸らす意味合いで発言したのだった。
「お茶が無いですな」
察したロディルも言い、フォシテスとマグニスを連れて3人でキッチンに向かう。
「気が利かず、すみません」
マーテルの謝罪に、クヴァルはゆっくりと左右に首を振る。
「構いませんよ。
それに、主たる精霊マーテル様にお茶汲みをさせたなんてあの世でユグドラシル様が知ったら、ひどい目に遭いそうですから。
ですよね、プロネーマ?」
プロネーマは、クヴァルの言葉にハッとした様子だった。
「そ…そうじゃな」
不意を打たれたようにして答える。
クヴァルを除く男3人がお盆に茶の入ったカップとお茶菓子を乗せて運んできた。
元から着席していた3人は礼を伝えた。
それぞれの気遣いのためか、会議の場は乱れることはなかった。
特に、ロディルとクヴァルは、ソウルイーターの所業に感情を揺さぶられることなく冷静に場を収めるために行動できた。
次にマーテルは、五聖刃の現在の状態を皆へ伝える。
「今のあなた方は私の加護が与えられた、言わば精霊の使い魔のような存在です。
無意識に地上をさまよう魂とは異なり、ソウルイーターへ抵抗する意志と力は持っていますが…。
危険な相手であることに変わりはありません。
十分に注意してください」
クヴァルがマーテルに質問する。
「以前、我々の魂は融合していたそうですが、今は独立しているのでしょうか?」
「いいえ。
現在分断している状態に見えますが、まだわずかに私達の魂は繋がっています」
マーテルの返答を聞いたクヴァルが重ねて質問をする。
「もし我々が敗北し魂が消失した場合、まだつながりがあるとされるマーテル様のお体はどうなりますか?」
「あなた方が事前の準備も無しに消えてしまうと、私自身への影響もあります。
どのようなことが起きるかは予想できませんが…」
マーテルの語気が弱くなった様子からして、自身の存在維持に関わることが起きるのではないかと周囲は察した。
「へっ、勝てばいいだけだろうが」
マグニスの言葉に、一同は頷いた。
話の内容を変えて、フォシテスが尋ねる。
「ソウルイーターが2体以上の可能性はあるのだろうか?
それと、場合によっては殲滅してもいいだろうか?」
「個体数については、把握できていません。
複数体存在して逃げ場が無いときは、やむを得ないでしょう。
ですが、なるべく無茶をしないでください」
マーテルの言葉に、フォシテスは頷いた。
マグニスが拳を手のひらに叩く。
「それじゃあ、早速行くとするかよっ!」
クヴァルが挙手をする。
「その前によろしいですかな」
場が静まり返り、意見を求めるマーテル。
「移動方法と侵入口、それに人数については、いかがなされますか?」
「移動方法は私が目的地まで飛ばします。
私は将来、ラスボスをデリス・カーラーンまで送れる力を有していますので、大陸内の移送ぐらいなんてことありません。
入り口は…どう思いますか、ロディル」
絶海人間牧場の主だったのだから、ロディルに聞くのは当然のことである。
「飛竜の巣がある地上ゲートからなら入れますぞ。
まぁ、大型の強化ガラスが蓋をしていなければですけども」
クヴァルがロディルに質問する。
「どのぐらいの強度なんですか?」
「ふぉっふぉっふぉ。
剣や足技じゃびくともしませんが、クヴァル殿の最大威力の魔術であれば、問題ないでしょうな」
(私の地面を隆起させる魔術を上手く使えば、地中の通路を塞ぐスライド式のドアもこじ開けれるでしょうが…。
クヴァル殿を連れていくためにも黙っていましょうか)
自然の成り行きでクヴァルの参加が決まった。
また、牧場主であることからも内部に詳しいロディルも参加することになった。
ロディルは、席に座る面々を見回す。
「…私としては、何度か絶海人間牧場に訪れたことのあるクヴァル殿と2人で行くことを薦めたいですな」
「おいおい、ロディルっ!
納得いかねぇだろうが!
理由を言え、理由を」
大いに不満そうなマグニスに説明を求められるロディル。
理由として挙げたのは、絶海人間牧場が複雑な内部となっているため、作業効率を考えると慣れた者が行くべきだということ。
また、下手に人員を割くわけにもいかないだろうと、ロディルは付け足した。
ロディルは、マーテルに尋ねる。
「マーテル様。
大樹の内部にソウルイーターが干渉する恐れは?」
「…あり得る話です。
大樹には魂がなくとも、生物であることに変わりありません。
それに、私達という精神体が大樹の内部にいるのですから。
ソウルイーターが人の肉体内部に侵入するのであれば、大樹も例外に洩れずと見ていいでしょう」
「ふぉっふぉっふぉ。
それならば、護衛の者が必要でしょうな」
「週に7度、大樹と私の様子を見に来る者がいます。
ですが、一日中滞在する訳ではないため、ロディルの言う通り戦力は保持した方がいいでしょうね」
マーテルの意見を受けて、マグニスは反論らしい意見を出さなかった。
満ちたやる気を向ける相手がいるのならば、場所はどこでもいい様子だ。
マーテルは、フォシテスに顔を向ける。
「フォシテスは他に何か意見がありますか?」
「…いや、特にない。
内容については理解した。
大樹の中で護衛に努めよう」
クヴァルは、てっきりプロネーマが「言葉がなっとらんぞ」とフォシテスを注意するのかと思っていたが、先ほどからそんな素振りはなかった。
チラリと見ると、相変わらず考え事をしていた。
(確かプロネーマは、昔ユグドラシル様に命を救われたのでしたね。
ユグドラシル様が4000年前に姉の不幸に翻弄されなければ、出会うこともなかった。
しかし、上司を想う気持ちも人一倍彼女は強いですから複雑な心境でしょうね。
4000年前の諍いだって、生まれてもないのですから止めようが無いわけですし。
とにかく、ここで私がとやかく言い解決を考えるなんて愚推もいい所でしょう)
クヴァルは、プロネーマの様子には触れないことにした。
なぜなら、プロネーマの目つきが鋭いからだ。
誰かを見ているわけではなく、虚空に向って視線を向けている。
彼女は何かを腹に決めている、とクヴァルは思った。
ただし、怖いので彼は何も聞けなかった。
一方マーテルは、フォシテスが何かを探るように彼女のことを見ていることに気が付いた。
「私の顔に何か…?」
マーテルから指摘されて、フォシテスは若干戸惑うような反応を見せる。
イマイチ理由を把握できず、マーテルはキョトンとして首を傾げる。
フォシテスは、目を背けて少し考えるような仕草をしたのちに、口を開いた。
「アイトラは、マーテル様の中にいるのだろうか」
その言葉を聞いて、夢の世界を思い出すマーテル。
かつて、夢魔に囚われていた時の話である。
先代神子のアイトラは、フォシテスの秘書としてイセリア人間牧場で共に働いていたのだ。
部下の所在が気になるのだろう。
ハーフエルフでありながらも生前毛嫌いしていた人間という他者を思いやる気持ちが、フォシテスの中に間違いなく芽生えている。
そう思うと、マーテルから自然と笑みがこぼれた。
胸の上に手を置くマーテル。
「はい。
彼女は、ここにいます。
もしかしたら、素敵な夢でも見ているかもしれませんね」
「そうか…」
どこかほっとした表情になったが、すぐさまいつもの固い表情に戻り腕組みをしてよそを見るフォシテス。
クヴァルは、フォシテスのそんな様子を穏やかな顔つきで見ていた。
スピリアの救出は、即時決行することになった。
魂だけの五聖刃には、水や食料にテントといった野営の準備の必要も無いためである。
最後にマーテルは、クヴァルとロディルに念じればマーテルと会話ができるので戻る際には伝えてほしいと話した。
それも魂がわずかにつながっている影響でもあるらしい。
ただし、消耗するため常時会話はできないようだ。
「それではクヴァル、ロディル。
スピリアのことをお願いします」
マーテルが立ち上がると、足元に魔術の陣が描かれる。
陣から光が沸き立ち、術が発動する。
会議室からクヴァルとロディルの2人の姿が消えた。
マーテルは、魔術を使うと息を吐く。
彼女の様子に気が付いたプロネーマがすぐさま席を立ち、マーテルの元に歩み寄る。
「失礼します」
言いつつ、表情から健康状態を読み取ろうとしていた。
「心配いりません、プロネーマ。
少し疲れただけです。
まだ、精霊となって日が浅いのに大きな術を使ったからかもしれません。
休めばすぐに回復しますから」
「それならば、寝室をお教えくださいませ」
マーテルが場所を答えるとプロネーマに手を引かれて、木製の扉の奥である3階へと連れられて行った。
「……」
「……」
会議室には、マグニスとフォシテスが残った。
一応、卓上に残ったカップとポットをキッチンに運び、2人で洗っておく。
「おい、フォシテス。」
「どうしたんだ?」
「戦いに備えて筋トレでもしておくか」
「…そうだな」
洗い物が済み、マグニスとフォシテスは暇になったので一階に行く。
2人とも服を濡らさないようにするためか、上半身裸で汗をかきながら鍛錬をした。
△△
一方、ロディルとクヴァルはあっという間に絶海人間牧場にたどり着いた。
場所は、指定した通り飛竜の巣がある地上ゲートだ。
ここまでは計画通り。
だが、2人は入り口を見て呆然としていた。
「強化ガラスに大きな穴が空いていますな…」
「足元にガラスが散乱していますね。
恐らく…外部から大きな衝撃でも与えたのでしょう。
火薬の匂いもしますから、爆弾でしょうか。
つまりは、もう内部に侵入した者がいるということ」
2人の頭によぎるのは、ソウルイーターという存在。
絶海人間牧場の居場所は割れているので、すでに侵入している可能性は十分あり得る。
「ソウルイーターとの交戦するかもしれませんが、ここにずっといるわけにも行きません。
一先ず入りましょうか」
「ふぉっふぉっふぉ。
そうですな、入らねば何も進みませんからな」
クヴァル達のいる足元は、海水でぬかるんでいた。
ロディルは、周囲の飛竜の巣の様子を見て少し時間、悲しそうな顔をしていた。
飛竜の巣からは、生命が存在する気配はなかったからだ。
だが、時間が惜しいため気持ちを切り替えた。
2人が割れた強化ガラスの穴から人間牧場の中へ入ると、管制室になっている。
部屋の仕掛けを作動したり、監視カメラ映像を映す場所だ。
ロディルが偽物の輝石を身に着けて、死んだ場所でもある。
海水は抜けきっていたが、辺りは物が散乱して濡れていた。
爆発の影響は、ほぼ無かったのか焦げた場所も強化ガラス付近以外見当たらない。
「誰だ!!」
突如、男の大きな声が室内に響く。
クヴァルとロディルが声の元へと視線を向ける。
「お、お前らは…五聖刃のロディルとクヴァルかっ!?」
今度は、別の男が声を上げる。
管制室には、ロディルとクヴァル…そして2人の男がいた。
2人の男は、独特な服装をしており頭はヘルメットをかぶっていて素顔は下半分しか見えない。
すぐに戦う雰囲気でも無いと判断したクヴァルは、2人の男達に問いかける。
「その恰好…ディザイアンの兵隊服ですね。
ですが、台詞からしてどうやら我々の部下では無い様子。
もしや、レネゲード…でしょうか?」
「ぐっ!」
指摘を受けたレネゲードの2人の兵隊は、痛いところを突かれたような声を出す。
当然だが、看破されて気持ちの良いものでは無かったようだ。
口元と声だけでも不愉快な気持ちがクヴァルに伝わってくる。
ロディルが、2人の姿をジロジロと見てあることに気が付いた。
「何か、透けてますな。
ということは、ここで亡くなった魂ということですかな?」
2人の兵隊はますます不愉快そうな雰囲気を醸し出した。
精霊マーテル
大樹の精霊。
マーテル自身は古代英雄もしくはクルシスの4大天使の1人でもある。
(4大天使の座は、ミトスが用意しただけ)
コレットを除く再生の神子達の魂と融合した存在。
夢の世界で五聖刃達が労働環境改善をおこなう様子を微笑ましい気持ちで見ていた。
そのため、彼らの会議に混ざることを内心楽しみにしていた。