劇場版・少年少女の戦極時代   作:あんだるしあ(活動終了)

15 / 49
闘争の仕掛け人

 その「戦争」は、夜明けを合図に始まった。

 

 沢芽の街を闊歩する、二つの大規模軍団。

 

 凰蓮と城乃内が率いる傭兵部隊に加え、何十体ものスイカアームズの戦士。

 貴虎が率いる、大量の地上のトルーパー部隊と、ダンデライナーに乗って滞空する量産型黒影。

 

 ――戦いは、両者を率いる三者が変身したことで、火蓋を切って落とした。

 

 乱戦――否。もはや地上は、小規模の戦争をしているような有様だった。

 生身の傭兵が量産型黒影に向けてマシンガンを連射し、量産型黒影は生身の傭兵に槍を揮う。

 

 ナパーム砲でビルが爆発し、黒煙を上げる。黒煙の数は何秒と数えない内に増えていった。

 

 

 

 

 咲とラピスは、夜を明かしたビルの屋上から、地上で争う人々とアーマードライダーを見下ろしていた。

 

「どうして……命を奪い合わなくてもいい戦い方を、人間は持っているのに……どうしてこんな!」

 

 ラピスは悲しげに、あるいは悔しげに、金網を叩いた。そして、ずるずるとその場に膝を突いて、項垂れた。

 

 いつもなら何かしらスキンシップを図って相手を慰める咲も、ラピス相手にそれはできなかった。

 ラピスの「顔」が、「彼」と同じ「顔」が、ラピスに触れることを咲に恐れさせた。

 

 

 どのくらいの時間、ただ動かず見つめていただろうか。

 

 やがて、ラピスがぽつりと口にした。

 

「サキ。ボクをあそこに連れて行って」

「……いいよ」

 

 咲は戦極ドライバーに開錠したヒマワリの錠前をセットし、カッティングブレードを叩き落とした。

 

《 カモン  ヒマワリアームズ  Take off 》

 

 月花へ変身し、ヒマワリフェザーを広げた。ん、と両腕をラピスに差し出すと、ラピスは月花に体を預けた。

 月花はラピスを担いで飛び立った。

 

 

 

 

 現場は小康状態に入っていたものの、酷い有様だった。あちこちのビルから煙が上がり、街路には足の踏み場もないほど転がる傭兵と量産型黒影。

 

 月花はラピスと共に、被害がなかった天井付き階段に降りた。

 

 ラピスは死屍累々とした光景を見下ろし、苦しげに顔を歪めた。咲はとっさにラピスの顔から目を逸らした。

 

(そんな顔されたら思い出しちゃう。あたしがいじめてたあの子のこと)

 

 

「ようやく見つけた」

 

 咲ははっと顔を上げた。見上げれば、階段の最上段に光実が立っていた。

 

「光実くん」

「久しぶり、でいいのかな、ここは。それとも初めまして?」

「光実くん、あたしが分かるの?」

「そう言うってことは、咲ちゃんも、僕の知ってる咲ちゃんなんだね」

 

 光実はブドウの錠前を構えたまま、階段を降りてくる。

 

「あそこで戦ってたのはキミの兄さんだろ? 見殺しにしたのか?」

「それより重要なことがあるからね」

 

 階段を降りきった光実は、ラピスを鋭く睨んだ。

 

「戦極凌馬の研究を調べた。お前が全ての元凶だな」

「え!?」

 

 光実は語った。――戦極凌馬は、オーバーロードの遺物から、黄金の果実を造り出す研究の痕跡を見つけ出した。凌馬が「黄金の果実を造る研究」を再現しようとして、現れたのがラピス――シャムビシェだった。

 

「何が目的か、どんな手段を使ったかは分からない。けど僕たちをこの偽りの沢芽市に閉じ込め、アーマードライダーを消していった犯人はお前だ。違うか?」

「ま、待ってっ。光実くん、待って」

 

 咲はラピスと光実の間に立った。

 

「ラピスにそんなことするメリットなんてないよ。だってラピスは平和な世界がスキなんだもん」

「その平和な世界に、力の象徴たるアーマードライダーが邪魔だと判断して、こんな手に出たとも考えられるよ」

「そんなっ」

「現に! 碧沙はこの世界では、笑うことも泣くこともできず、ただ眠り続けてる!」

 

 今までずっと欲しかったヘキサの情報なのに、素直に喜べない内容だった。

 

「……え?」

「碧沙はヘルヘイム抗体保持者。ヘルヘイムが世界に手を加えたせいで、碧沙の中の抗体がヘルヘイムを拒んで、小さな碧沙はあのザマだ。この世界で真っ先に、ヘルヘイムに抗いうる抗体保持者の碧沙を封殺した。それが証拠だ」

 

 ヘキサは病院にいた。光実、それに貴虎の、眠り姫として。

 

「――確かにキミたちをこの世界に巻き込んだのはボクだ」

「ラピス!?」

 

 真実であっても、この状況で告げるのは、自分が犯人だと認めるようなものだ。

 

「なら帰してもらうよ。僕には本物の兄さんと碧沙を守る役目があるんだ。こうしてる間にも、僕らの本当の世界はオーバーロードに壊されていってるんだから」

 

 いざ光実がブドウの錠前を開錠しようとし――

 

 

『早とちりするなよ』

 

 

 咲たちは驚いて階段の上を見上げた。そこに立っていたのは、民族衣装姿のサガラの、ホログラムらしきものだった。

 

「サガラ? どうして」

「――蛇か」

『そいつを倒されちゃ困るんだ。「この」沢芽市を創ったのは確かにそいつのしわざだが、それとアーマードライダーの消滅は別の話だ』

「どういうことだ」

『この事態の真犯人を封じていた“楔”、それこそがそいつの役目だった。だが、戦極凌馬は“楔”を抜いて“果実”を覚醒させちまった』

「真犯人ってだれ!?」

 

 サガラはにやっと笑った。

 

『黄金の果実そのものだよ』




 光実にとって大事なのはあくまで「本物」の貴虎と碧沙。このおかしな世界の兄は勘定に入らないのです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。