流星群の下で
駆紋戒斗と室井咲。
歳も性別も種族さえ異なるふたりは、今――
小さな丘の上に寝そべって、流星群を眺めていた。
「……何故俺がこんなことに付き合ってるんだ」
「しょーがないじゃん。ヘキサたちみーんな夜の外出ダメだったんだもん」
「お前はよく許可が下りたな」
「ううん。降りなかったから窓から脱走してきた。ヒマワリで」
勝利の天使の象徴たるヒマワリフェザーを無断外泊に使うのが、室井咲という少女である。戒斗も大分心得てきていた。
「願い事」
「ん?」
「しなくていいのか。今なら願い放題だぞ」
「んー、じゃあねー、戒斗くんがもっと沢芽にいるようになりますように」
「……おい」
――あの運命の戦いから、すでに1年近くが経とうとしていた。
戦いを通して、自分の世界に対する見方が狭すぎたことに気づいた戒斗は、小金を溜めてはあちこちを旅するという生活をしていた。
明日には、日本を出て海外に渡って旅をする予定だった。
もちろん沢芽市には当分戻らない。
ころん。
咲は流星群に背を向けるようにうつ伏せになり、戒斗を上目遣いに窺ってきた。
「次は、いつ会えるの?」
「さあな。帰国の時期は決めてない」
「じゃあやっぱりさっきのネガイゴトで合ってるじゃん。ね?」
いたずらな笑顔を満開に、戒斗を覗き込む咲は、果たして戒斗を異性と見なしているのか。
戒斗は腕を伸ばし、咲の髪を掬っては落とし、それをくり返した。咲は猫のように戒斗の手に擦り寄って心地よさそうな表情を浮かべた。
「明日。見送り、行くから」
「いらん」
「行くのっ」
ここで断りの言葉を重ねても、咲は授業をサボってでも来るだろう。
戒斗は早々に反論を諦め、咲の学校の放課の時刻に合わせたバスの時間を考え始めた。
――自分を慕う者ならいた。ザックやペコを初めとしたチームバロンのメンバーがそれだ。
だが、咲のような慕い方をする者は、今までにいなかった。
“んとね、ありがとう”
“変われるんだよ。今の世界のままでも、人は!”
「お前はいつも、俺が知らない言葉ばかり口にする」
咲はそれこそ意味が分からないというふうに首を傾げた。
「分からなくていい」
戒斗は咲の髪に手を滑り入れ、くすぐるように頭を撫でた。
翌日。沢芽市を出て本土に渡る高速バスのバス停で、軽い荷物を肩に引っかけた戒斗と、制服姿の咲が並んで立っていた。
「元気でね」
「ああ」
「荒れてる土地に行っても、むやみにオーバーロードになっちゃだめよ」
「それは状況次第だ」
「もー!」
やがて高速バスが緩やかにバス停に停車した。ドアが空気の抜ける音を立てて開いた。
戒斗は乗り込もうとして、二拍逡巡し、咲をふり返った。
戒斗は腕を伸ばし、咲の頬を指でなぞった。
「一緒に来るか?」
咲は目を瞠り、まじまじと戒斗を見返していたが――やがて苦笑を浮かべた。
「いじわる。そんなのムリだって、戒斗くんが一番知ってるくせに」
一人で行動を決定できるオトナである戒斗と違い、咲はオトナの輪に守られていなければいけないコドモ。
分かっていても、この野放図な少女は、あるいは肯くかもしれないと思ったのだ。
「――、じゃあな」
静かに咲の頬から指を外した戒斗は、咲に背を向けて高速バスに乗り込んだ。
拙作最終話~Movie大戦フルスロットルまでの間にあった日常の断片。
movie大戦フルスロットルにはまだ手が届きそうにないので、こういう短編を、心の赴くままに書いていこうと決めました。
座興程度にお楽しみください。